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anko2317 赤ゆのたのちいイス取りゲーム (後)
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赤ゆのたのちいイス取りゲーム (後) 39KB
虐待 愛情 不運 仲違い 家族崩壊 親子喧嘩 同族殺し 番い 野良ゆ 姉妹 赤ゆ ゲス 希少種 都会 透明な箱 現代 虐待人間 うんしー ぺにまむ お暇なときに
【5】
---------------------------
「ゆっくりしていってね!!!」
「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!!」
「おそらをとんでるみたいっ!!」
「そろーり、そろーり!!」
「ぷくううううう!!!」
お兄さんは分かってしまった。
ゆっくりは単純な生き物だ。
思考も言葉もシンプル極まりない。
そんなゆっくりに25年も付き合ってきたお兄さんである。
ゆっくり漬けが過ぎて、ゆっくりの笑顔に飽きてしまったのだ。
満たされない感じはそれが原因だった。
それが分かった鬼意山。
柄の長いハエ叩きを調達し、ドキドキしながら家に帰る。
もっともそのハエ叩きを振るうのに、二週間ばかりの覚悟が必要だったが。
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もとのもくあみ。
鬼意山の屁理屈(?)により、また地獄まで突き落とされたまりさ一家。
一度持ち上げられただけに悲しみは激しい。
絶望も激しい。
四匹の赤ゆはまたテーブルの上だ。
「おちょーしゃんのうしょちゅきいいいい!!!!」
「でいびゅかえれりゅっておぼっちゃのにいいいい!!!」
「ゆっくりちねええええ!!!!」
「ばりぢゃのゆっぐりをがえぜえええええ!!!」
鬼意山にさんざん脅された赤ゆたちは鬼意山に逆らえない。
生還できなかったことへの怒りは父まりさにぶつけられることになった。
赤ゆたちの罵倒に、親まりさは泣くしかない。
こんなはずじゃなかったのに……。
まさにそんな表情であった。
「さて、ようやく四回戦目だな」
「「「ゆっくち……」」」
すでに三匹の赤ゆが死んだ。
残るはれいみゅ2.まりしゃ2。
イスは三つ。
この戦いでようやく半分を割ることになる。
♪~
「はい、音楽にあわせて」
赤ゆたちも慣れたもので、手拍子と動きが完全に一致していた。
しかしこれは遊びではない。
音楽に乗る様子には、もう最初の様な楽しさが無くなっている。
これは殺し合いだ。
「どぼぢて……」
「ゆっくちできにゃい……」
ゆぐゆぐ泣きながら回る。
回る。
回る。
「ぼうやべでよぉ……」
一方親まりさはゆん生の落伍者のような面持ちでその様子を見ていた。
少し前まで、あんなにゆっくりしていた家族だったのに。
つがいだったれいむはもうこの世に無い。
その上その死はまりさ一家に何ももたらさなかった。
犬死にである。
出しゃばったがために、散らさなくてもよい命を散らした。
れいむがその事を知らずに逝ったことが唯一の救いだろうか。
まりさがもっと約束の内容を確認していればこんなことには……。
(とはいえどんなにしっかりした約束でも、鬼意山が守るという保証すらないのだが)
おちびちゃんからの罵倒もあり、まりさは精神的に追い詰められていた。
くるくる。
くるくる。
回る赤ゆを目で追う。
このうちの三匹が死ぬと考えると、まりさの目尻に涙が浮かんだ。
どれもまりさの大切なおちびちゃん。
絶対ゆっくりさせるって誓ったのに。
くるくる。
くるくる。
おちびちゃんはぐるぐる回っている。
まりさの涙は止まらなかった。
れいむの死はまりさの価値観をも揺るがしていた。
れいむが死んだ事でまりさは人間さんがゆっくりできないものだと理解できた。
家に入った瞬間のゆっくりできた記憶が、まりさを油断させた。
もう人間さんにはかかわらない。
生きて帰れたら、山へ戻ろう。
おちびちゃんも少なくなってしまったから山でもやっていける。
まりさは歯ぎしりをしながら、町へやってきたことの間違いを悟った。
まりさのおちびちゃんへの愛情も余計に深まった。
つがいを失って、役割を補完しようとしているのだろうか。
れいむが命をかけて守ろうとした、かわいいおちびちゃん。
このままじゃ駄目だ!
何とか、何とかしておちびちゃんに生き残って貰おう。
そしてたとえ一匹しか残らなかったとしても、
そのおちびちゃんを立派なゆっくりに育てよう。
……。
おちびちゃんはまだ回っている。
音楽はそろそろ3週目に入っている。
思考に気を取られていたまりさは、そこでやっと気づいたらしい。
「……ゆゆ? ちょっとまわりすぎなきがするよ?」
親まりさが気付いた通り、まわりすぎである。
回り始めてそろそろ五分。
とっくにホイッスルが鳴ってもいいころなのに。
「ゆひぃ、ゆひぃ」
「ゆっ、ゆっ……」
「ちゅかれ、ちゅかれたよぉぉ……」
「ゆぅうう、ゆぅぅ……」
赤ゆたちは延々と回らされている。
皮は汗だく、息も荒い。
三回のイス取りを経て、一度趣向を変えてみようと思った鬼意山。
第四回戦はイス取りゲームを装った体力勝負となっている。
ホイッスルを鳴らさないのも、忘れているからというわけではない。
許容量以上の運動を強いるゆ虐なのだ。
「もうぢゅかれたあああああ!!!!」
一匹のれいみゅがぐたっと倒れる。
ぷんにゃり横になって、疲れをいやそうとする。
しかしそんな怠け者を見逃すほど鬼意山は甘くない。
「れーみゅはゆっくりしゅ<バチン>いぢゃいいいいいい!!!!」
赤れいみゅは一瞬で飛び上がった。
鬼意山の強烈デコピンだ。
容赦ない。
れいみゅのお尻は真っ赤に腫れあがってしまった。
「止まろうとするようなルールを守れない子はお兄さんのデコピンだよ」
れいみゅは疲れた体をおして跳びはねる。
おしりが腫れたので余計に苦しむ羽目になった。
10分、15分、20分。
止まったゆっくり、リズムにあわせて飛ばないゆっくり、ゆっくりすぎて後ろの姉妹においつかれたゆっくり。
鬼意山は容赦なくデコピンを喰らわせた。
間抜けな赤ゆはデコピンを喰らうほど不利になるっていうのに何度もルール違反をする。
どの赤ゆもほっぺや尻が真っ赤に染まっている。
黒っぽい内出餡(?)の痕も現れ始めている。
手拍子に疲れたお兄さんはその役目をメトロノームにまかせ、
オレンジジュースでゆっくりしているようだ。
「頑張るなあ」
あまあまをごくりと飲み干す。
まさか20分耐えるとは思っていなかった鬼意山。
素直に感心している。
「おばえだげゆっぐりずるなああああああ!!!!」
れいむの霊が乗り移ったかのように、怒りながら透明な壁を叩くまりさ。
しかしそんな行動もやはり空しく終わる。
破れない壁。
加工所は一年を超える長期ゆ虐にも耐えうるように、透明な箱を設計している。
一日で破壊できるようなものでは決してない。
一方赤ゆたちはボロボロで、瞳は真っ黒に濁っている。
そして非ゆっくち症の初期症状が現れているのが、一匹のれいみゅだった。
「ゆげぇぇ、おげえぇええ……」
軽く吐餡をしている赤まりしゃがいるのである。
「おぢびちゃあああああんん!!!! あんござんはがないでねえええ!!!!」
まりさが騒いでいるが、現実は動かなかった。
そしてついに。
「ゆぐっ!?」
一匹のれいみゅが止まる。
「ゆげっ!! ゆげえええええ!!!!」
非ゆっくち症を発症したれいみゅの大量吐餡。
口からゆっくりできない餡子がもりもり溢れてくる。
もう限界らしい。
「ゆげっ! ゆげえげげげええええええ!!! げほっ!! ごほっ!!」
咳と吐餡の波状攻撃。
もう助からないだろう。
すでに大半の餡子を吐き出してしまっている。
「おぢびぢゃあああああんん!!!!! おぢびぢゃああああんん!!!」
まりさは体当たりを繰り返す。
そんなことをするせいで親まりさ自身、傷だらけになっているのだが、
まったく気にもしていない様子だ。
「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」
吐餡から一分も経っていない。
あっという間に痙攣が始まった。
「ゆんやああああ!!!! ゆんっやああああああ!!!!」
親まりさは半狂乱になってどしどし透明な壁を叩く。
何の意味もない。
そして赤まりしゃへのトドメとなったのが、
魂が抜けた抜け殻のような顔で回っていた赤まりしゃのしかかりである。
殺意もなにもなく、通るべき道の上で倒れていたから踏んでしまっただけだった。
赤ゆたちは三つイスの周りを、同じルートをぴょんぴょん跳ねていたのだ。
「ゆぎょ! ぼっどゆっぐち……」
自分以上の重さが圧力としてかかり、餡子が減って無防備な中枢餡がつぶれる。
その潰れ方は深刻なものであり赤れいみゅが永遠にゆっくりするには十分だった。
脳を潰された動物が生きていけないのと同じだ。
一際大きな痙攣をおこすとそのまま永眠してしまった。
音楽が止められる。
鬼意山は勝者に拍手とあまあまを贈る。
「れいみゅちゃんが死んだから、残った子たちは不戦勝だ。おめでとう!」
「ゆがあああああああああああああああ!!!!!!」
喉が枯れるかというほどまでの大声。
それでもまりさは無力だった。
残ったのはいよいよ三匹。
れいみゅ、まりちゃ、まりちゃ。
一匹目のまりちゃはその優しさのために死んだ。
二匹目のまりちゃは運悪く熱したイスを選び死んだ。
三匹目のれいみゅは席を争い姉によって殺された。
四匹目のれいみゅは吐餡を繰り返し、姉妹にのしかかられ結局死んだ。
ここに残った三匹は本当に運が良い。
しかし体はぼろぼろで、心も本当にぼろぼろだった。
生まれて間もないこの時期に命がけのお遊びをさせられ、
性格も大いに歪んでしまったことだろう。
どの子供が残っても、親まりさは苦労するに違いない。
お互い傷だらけなのに、ぺーろぺーろすらしなかった。
近づいてきたとしても、ぺろぺろなんてさせなかっただろう。
傷を癒し、痛みを和らげ、親愛を示すぺろぺろ。
そんなことをすれば次の戦いで不利になる。
そんな打算があったに違いない。
希望の光により一度回復の兆しを見せた姉妹の仲は、
絶対に取り返しのつかないところまで悪くなってしまった。
「……」
黙り込む親まりさもすでに満身創痍だった。
最初に食らった金槌はまりさのあたまの皮を傷つけている。
そしてたび重なる、透明な壁への体当たり。
半ば自滅するような形で皮は傷だらけになっていた。
そして続く家族の死。
つがいのれいむとおちびちゃん。
あわせて五匹が永遠にゆっくりしている。
ゴミ箱にはおちびちゃんの死体。
部屋中に飛び散ったれいむの死体。
それを見るたびにまりさの精神は削られていった。
親まりさはもう、いつ発狂してもおかしくなかった。
ぼろぼろになった家族。ぼろぼろになった絆。
そろそろ限界か。
鬼意山は決断した。
「次でラストにしよう。次のイス取りで生き残った子を帰してあげよう」
鬼意山がカーテンを開けると、青みがかった家の庭がまりさたちの目に飛び込んできた。
夢にも願った外の世界。
ゆっくりたちの目に明るい外の光が入り込む。
次で、この地獄が終わるんだ。
【6】
---------------------------
に゛ゃああああああ!!!!!
らんじゃまあああああ!!!!!!
だれがごんなひどいごどおおおおお!!!!!
わがらないいいいいいい!!!!!
友ゆんの家から帰って来た時、ちぇんのつがいは息を引き取っていた。
「お兄さんが帰って来た時には、もう……」
ちぇんは泣き、一晩中ゆっくりできなかったが、
そのけなげな姿を見た鬼意山は、とてもゆっくりしていた。
---------------------------
れいみゅ1、まりしゃ2。
赤ゆが三匹、イスは一つ。
鬼意山は赤ゆたちを等間隔で置いてゆく。
赤ゆたちはお互いをゆっくりできない目で睨んでいる。
♪~
最後の戦いは唐突に始まった。
三匹の赤ゆっくり。
勝利を確信しているゆっくりは一匹もおらず、笛の音を警戒し続ける。
イスの数から言うと、生き残れるゆっくりは一匹だけだ。
「はいはい、イスさんたちの周りをくるくるしてね!」
お兄さんが音楽に合わせ、リズムよくゆっくりと手を叩く。
「「 …… 」」
最初のころのような楽しさはかけらもない。
歯茎をむきだしにした表情で、イスのみに視線を送っている。
お兄さんが手拍子をするごとに、赤ゆたちが一歩進む。
音楽と手拍子だけが鳴り続ける、静かな戦いだった。
「おちびちゃん……」
まりさはもうなにも出来なかった。
助かるのは一匹だけなのだ。
どの子も応援できない。
パン! パン! パン! パン!
パン! パン! パン! パン!
今度は一分もたたず、笛の音が鳴る。
ホイッスルのキンと高い音色。
一個のイスをめぐる、醜い争いが始まる。
「ゆっくちすわりゅよ!!」
「れーみゅのいすしゃん、まっててにぇ!!」
「げしゅどもはゆっくちしにゃいでちんでね!!」
最初に座ったのはれいみゅだった。
一匹だけ生き残ったれいみゅ。
最初にまりしゃが潰された時、かじょくなんだよ!!と鬼意山にさからった赤ゆだ、
「ゆゆーん♪ ここはれーみゅのゆっくちぷれいしゅだよ!! げしゅないもーちょはゆっくちしにゃいでちんでね!!」
ゆっへんと胸を張るれいみゅ。
しかしまだ戦いは終わっていない。
「げしゅはおみゃえだよ!!」
まりしゃのうちの一匹が、回転体当たりでれいみゅを落とそうとする。
胸を張って完全に無防備になっていたれいみゅは、あっさり命のイスから転げた。
「ゆげっ!?」
「ゆびょびょ!?」
しかし勢いあまってそのまりしゃまで一緒に転がってゆく。
そこで断然有利になるのが、もう一匹のまりしゃだ。
末っ子れいみゅをぶち殺して生き残った、一番ゲス化の激しい赤ゆである。
「ゆひひっ!! いきのきょるのはまりしゃだよ!!」
ぴょいんとイスに飛び上がる。
しかし転がっていった二匹は、何も脱落したわけではない。
「ふじゃけりゅなああああああああ!!!!」
「きょのゆっくちでなちいいいいいいいい!!!!!」
すぐに体勢を立て直し、赤ゆにあるまじきスピードで迫ってゆく。
その速さは、おそらくGを超えている。
ゆっくりは思い込みの力を持っているという説があり、
いざという時に限って発揮されないというあてにならない力だが、
生命の危機がその力を呼び起こしたのだろうか。
「ゆわああああ!!!」
自分と同じ大きさの饅頭が、歯茎をむき出しにしてせまってきたらどう思うだろうか。
イスの上のまりしゃは、すでにおそろしーしーを漏らしている。
まりしゃは右のおさげに、そしてれいむは左のおさげに噛みついた。
引きずりおろしてやろうというつもりなのだろうか。
「やめちぇにぇ! ゆっくちできにゃいよ!!」
「ちるかあああああ!!!」
「でいびゅのいすしゃんかりゃはやきゅどけえええええ!!!!」
走る力も凄まじければ、引っ張る力も恐ろしかった。
あくまで赤ゆを基準にしての話だが。
「いだいいいいい!!!」
おさげを引っ張られるまりしゃは、どんどん横に伸びてゆく。
すでに縦1:横2のワイドサイズになっている。
「やべであげてね!! いだがってるよ!!!」
何の意味も無いと分かっていながら、親まりさもつい本能から言ってしまう。
やはりおちびちゃんが痛がっている所を見ると、
親心が刺激されてしまうのだ。
とはいえ引っ張ることをやめるというのは、イスを譲ることに等しい。
「だばれええええ!! ぐじょおやああああ!!!」
「でいびゅはゆっぐぢずるんだあああああああ!!!!」
かえって怒りを招き、まりしゃはイスの上で余計に伸びることになった。
それにしても、赤ゆは餡子脳だ。
二匹が同じ方向に引っ張ればすぐにでも引きずり降ろせるのに、
それぞれが逆方向に引っ張ってしまうのでまりさは殆ど移動していない。
まりしゃがイスの上で踏ん張っているのもあるのだが。
鬼意山はその様子を観察しながら笑みをこぼす。
「ゆぎ! ゆぎぎぎぎ!!!」
まりしゃはあにゃるをキュっと絞め、イスを譲るまいと闘っていた。
その様子に変化が起こり始めたのだ。
あにゃるが切れ痔を起こしている。
イスの下の姉妹の怪力に、まりしゃの皮が負けつつあるのだ。
「ゆぴいいいい!!!! おじりがいぢゃいいいいい!!!!!」
突然襲い掛かる新たな痛み。
「どぼぢだのおおお!!???」
親まりさの叫び。
そしてちょっとづつ、ちょっとづつ広がってゆく切れ痔。
びりびりと嫌な音を立てながら、その裂け目は誰にでも分かるほどまでに広がってきた。
まむまむの部分まで裂け、あんよから餡子が漏れ始めている。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!! やべであげでよおおおおおお!!!!!」
まりさはおちびちゃんを守ると誓った。
一匹になってもその子を守ると覚悟した。
しかしそんな決意、ゆっくりの心には重すぎるものだった。
現実の殺し合い。
先ほどとは違う、今度は姉妹全員の殺し合い。
三回戦目の殺ゆんでは一匹のゲスのせいだと考えればよかった。
今回の殺し合いは姉妹全員が、自分の命の為に殺ゆんも躊躇わない。
まりさが信じていた絆はとうに崩壊している。
その象徴がこれだった。
「ぱぴぷぺぽ!! ぱぽぷぺぽ!!!」
まりさはおかしくなり、ついにはくるくる踊る。
そして少量の餡子を吐きそのまま気絶してしまった。
べりょべりょべりょ。
まりしゃの皮はさらにめくれてゆく。
「ゆぎゃああああ!!! ばりぢゃのびゅーちふりゅなおはだぎゃあああ!!!!」
赤まりしゃはようやく自分に起こっている変化を理解したらしい。
しかしもう遅かった。
目と目の間が裂け始め。
ついに。
「ゆわっ!!!」
「ゆっぴょ!!!」
おさげを引っ張っていた二匹は、対抗する力が無くなったことでころころ転げて行った。
各々の口には、金色のおさげがのこっている。
そしてその先にはべろべろの皮。
イスの上に残ったのは、皮を剥がされた餡塊だけだった。
「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ……」
つるりと剥けたので、本当に綺麗な真っ黒餡子だ。
目はむき出し。
歯茎はむき出し。
その姿のまま痙攣している。
「ゆっくちすわりゅよ!!」
「こんどこしょ、れいみゅのいすしゃん!!」
ライバルの一人はすでに死にかけだ。
これであいつを蹴落とせば……。
しかし二匹がイスに近づいた所で、鬼意山はそれを取り上げてしまった。
「はい、時間切れ」
「ゆ゛!?」
切り株を模したイス。
生き残るためのイス。
それを鬼意山に取られ、れいみゅとまりしゃは茫然としている。
「れいみゅのいすしゃん!!」
「まりしゃのいすしゃん!!」
二匹は追いかけようとする。
しかしテーブルの周りのプラスチック壁に激突し、それ以上は進めなかった。
鬼意山はイスを持ったまま、まりさに近づいてゆく。
すると親まりさは気絶していたので、鬼意山は箱を蹴飛ばしてみた。
「ゆゆっ? まりさのけーきさんは??」
びっくり飛び起き、ぱちぱちと瞬きをする。
意外にあっさり起こせるものだ。
「ほらまりさ、帰れるおちびちゃんが決まったよ」
まりさは鬼意山を見上げる。
寝ぼけ眼のまりさは、10秒ぐらいの間をとって鬼意山の言葉を理解した。
「ゆゆっ!? まりさのおちびちゃん!!」
鬼意山はまりさの箱の前に、勝者のイスを置く。
そこにいたのは、得体のしれない餡塊だった。
「ゆ゛!?」
まりさは思い出し始めていた。
イスの上の塊は、姉妹に引っ張られ皮を破られていたおちびちゃんだ。
帽子がそれを証明してくれる。
「ばりざのおちびちゃんがあああああ!!!!」
餡塊は蠢く。
かすむ視界の中で父の姿を見つける。
「お、ど、お、しゃ……」
餡塊は一歩踏み出すと、重力に耐えられず自壊してしまった。
ぶよぶよの目玉がころころ転がり、透明な箱をこづく。
勝利のイスを手にしたまりしゃ。
その喜びを味わうことすらなく、永遠にゆっくりした。
「残念だね。おちびちゃんは一匹助かるはずだったのに」
優勝したおちびちゃん。
一緒に帰れるはずだったおちびちゃん。
そのおちびちゃんがまりさの目の前で永遠にゆっくりしたのだ。
つまり。
「さて、負けちゃった子にはどんなお仕置きをしようかな?」
テーブルの上を逃げ惑い始めるれいみゅとまりしゃ。
「ゆんやああああ!!!」
「ぎょないじぇえええええ!!!!」
まりさと一緒に帰れるおちびちゃんは、一匹も居ないということだ。
まりさは口をぱくぱくさせ、何も言いだすことが出来なかった、
おちびちゃんと帰れるはずだったのに。
最悪の結末だった。
「何で殺してあげようかなぁ」
「ゆぴいいいい!!!!」
「でいびゅまだちにたくにゃいいいい!!!」
鬼意山はプレイルームの箱をがさごそとやっている。
今思えばこの中にも、虐待用品が一杯詰まっていたのだろう。
「これにしようか」
その中からこれまた小さい箱を開けると中には注射器が二本そろっていた。
そのうち一本を取り出すと唐辛子エキスをとくとくと注いでゆく。
「これは毒だよ」
真っ赤な注射器がギラギラ光る。
赤れいみゅと赤まりしゃはカチカチ歯を鳴らしながら震えていた。
「これを注射されればあっという間に死ねるだろうね」
針の先からエキスが漏れ、液体の玉になり、真下に落ちてれいみゅのほほにかすった。
「ぢ、ぢみりゅううううう!!!!」
れいみゅの傷に唐辛子が触れ、その部分は酷いただれを起こしてしまった。
それだけで、その毒の恐ろしさがはっきりと分かる。
「それじゃあ、まりしゃちゃんからお注射だよ」
「ゆっぢいいいいいい!!!!」
つまみあげるとそのまりしゃはぶりんぶりんと、体中を振り回して逃げようとする。
ゆん生をかける最後の抵抗。
赤ゆっくりまりしゃが発揮できるうちの、最大の力でケツを振っていた。
しかし鬼意山に対抗するには、あまりにもしょうもない力である。
そして針が触れ、皮を破ろうかというその時。
親まりさの大声が耳に入った。
「ゆっぐりやべでね!!!!」
鬼意山はまりさの方を振り返る。
まりさの目は、決意に満ちた目だった。
「どうした?」
「ばりさのいのちとおちびちゃんのいのち、こうかんしてほしいよ!!」
【7】
まりさは、おちびちゃんを助けるのだと誓った。
一匹だけでも助けるのだと誓った。
しかし帰れるはずのおちびちゃんは死に、
まりさの手元には一匹のおちびちゃんも残らなかった。
残った赤ゆは親と一緒に帰ることが出来る。
最初に鬼意山が言ったその言葉を信じるなら、親まりさは一応生きて帰ることが出来るわけだ。
けれども。
おちびちゃんを残して帰って、本当にそれでいいのか?
母親役のれいむが死んだ結果、まりさの母性はますます強くなっていた。
まりさの提案は単純だ。
生き残れるはずの自分が死ぬ。
そのかわりおちびちゃんは助けてほしい。
それだけである。
「ばりざは、ばりざはぜったいおちびちゃんをゆっぐりざぜないどいけないんだよ……」
「そうか……。分かったよ、おちびちゃんを助けてあげるよ。ただし……」
鬼意山はまりさの提案に条件をつけた。
「交換できるおちびちゃんは、二匹のうちのどっちか一匹だけだ」
親まりさは箱から出され、テーブルの上に置かれた。
親まりさ、れいみゅ、まりしゃ。
久しぶりに、家族が一箇所に揃った。
まりさはこみ上げてくる感動を抑えきれない。
「しあわせ……」
最初から考えればすでに六匹も欠けているのだが。
それでもまりさは幸せだった。
一方鬼意山は赤ゆたちに事情を説明している。
赤ゆでも理解できるように、分かりやすく。
「つまり、おとーさんに選んでもらえた子だけが生き残れるんだ」
「ゆゆ!?」
「ゆっくち!??」
明らかに目の色が変わった。
痛い痛いデコピンに苦しめられることもあった。
儚い希望に踊らされ、ぬか喜びをしたこともあった。
最後の最後で負けて、殺されかけたこともあった。
その苦労が、おとーさんに選んでもらえれば報われる。
「ゆっくちれいみゅをえらんでにぇ!!」
「まりしゃだよ!! まりしゃがゆっくちしてりゅんだよ!!」
二匹の赤ゆは生き残りをかけて媚びを売りはじめた。
糞親とまで言ったそのまりさに、すーりすーりなどを始めている。
「おとーしゃんだいしゅきー!! だかられいみゅ!!! あっちのごみはむしちてね!!」
「ごみはおみゃえだろおおおおお!!!! あんなきたないのより、まりしゃだよ!!」
「れいみゅはおうちゃをうたえるよ~♪ ゆっくち~♪」
「ま、まりちゃはだんちゅができりゅよ!! ゆっくちまりちゃのだんちゅだよ~♪」
「ゆぴゅぴゅ!! まりちゃのだんちゅはへたくちょだにぇ!!」
「ゆゆ!! れいみゅのおうたこしょ、ざつっおんだよ!! みんにゃにめーわくだよ!!」
可愛らしさをアピールしているつもりのようだが、
言葉や行動の端々からすでに取り返しのつかないほどのゲス性が読み取れる。
ゆっくりしたいという感情がむき出しになっている。
相手をこきおろそうとするその言動。
侮辱するときの表情の汚さ。
ここ数時間で深刻なほどのゲスになってしまっていた。
確かな手ごたえを感じた赤ゆたちは、おうたやだんちゅのアピールに移る。
優柔不断な親の心を鷲づかみにするつもりのようだが。
おうたは音程がそもそもあってない。
だんちゅはくるくる回っているだけである。
親まりさは、そんなおうたやだんちゅなど気にもしていなかった。
まりさは目をつむって考え事をしていた。
この世で一番可愛いおちびちゃんたち。
それぐらいにまでおとびちゃんが好きなまりさの目にすら、この二匹はゲスのように映っていた。
それでもまりさは、この子たちは鬼意山のせいで一時的にゲスになってるだけだと信じている。
だから、時間がたてばもとの優しいおちびちゃんにもどってくれるはず……。
ゆんゆん考える。
残すべきなのは、どっちだ?
おちびちゃんとの一週間の思い出が蘇ってくる。
そうしてまりさは、やっと決心がついた。
舌がぺろりと現れる。
「まりさのほうのおちびちゃん……、おとーさんのおくちにはいってね……」
おくちに入れる。
それはおちびちゃんを守る時に行う行動だ。
守られるのは赤れいみゅじゃなくて、赤まりしゃ。
「ゆぎゃあああああああ!!!! でいびゅばだぢにだぐないいいいいいい!!!!!」
死の宣告をされたようなものだ。
狂ったように泣き叫ぶれいみゅ。
滝のようなちーちー。
そして赤まりしゃの瞳は、ダイアモンドのようにピカピカ輝き始めていた。
親まりさの口を目指しながら、勝利宣言をする。
「ゆわぁぁああいい!!! まりしゃは!! かわいいまりしゃはいきのきょったんだよおおお!!!!」
ゆったりした坂をのぼり、暖かい口内がまりしゃを出迎えてくれる。
「かわいきゅって! ご・め・ん・にぇ!!!! ゆぷぷぷぷぷぷ!!!! おおみじめみじめ!!! みじめなれいみゅ!!!! ゆぷぷ!!! かわいくなきゅて、くずで、のろまで、ばきゃなれいみゅはゆっくちしんでにぇ!!! まりしゃは、まりしゃはひとりでゆっくちすりゅよ!!!! ゆやっほおおおお!!!! ゆやっほおおおお!!! ばらいろのゆんせいが、まりしゃさまを<ブチブチブチィッ!!!>ゆぎゃあああああああ!!!!」
親まりさは吐きだす。
それは真っ二つになった赤まりしゃの体だった。
「れいむのほうのおちびちゃんを、かえしてあげてね……」
赤まりしゃをおくちに入れたのは理由があった。
親まりさが殺す方が、鬼意山の手にかかるよりも苦しみも少ない。
そう思ったのだ。
「ぐじゅ……お、や……」
赤まりしゃは親への恨みを抱きながら死んでいった。
まりさが自分で決めたことだ、後悔はない。
「それじゃあれいみゅちゃん、玄関まで送ろうか。まりさにも見送りだけはさせてあげよう」
まりさと赤れいみゅは鬼意山に抱えられ、玄関までやってきた。
暖かくすべすべの床を初めて味わった廊下。
家族であまあまを食べて、しあわせーをした居間。
つがいのれいむがうっとりと自分を眺めたあの鏡。
永遠にゆっくりしていった家族を思い出し、見るもの全てが悲しかった。
そしてまりさも、これから永遠にゆっくりするのだ。
赤れいみゅを助けるかわりにまりさは死ぬ。
これは揺るがない条件だった。
「助けると言っても、ここから出発した後のことは知らないからね?」
「りかいしてるよ……」
町は、赤ゆ一匹には辛い場所だ。
かといってここから山に帰ることは絶望的である。
しかし偶然、やさしいゆっくりがおちびちゃんをゆっくりさせてくれるかもしれない。
偶然町の群れに拾われ、すくすくと育ってくれるかもしれない。
分の悪いギャンブルである。
しかしまりさは、おちびちゃんのゆっくりを祈ることしかもうできない。
玄関の扉がゆっくり開けられる、
すでに太陽が出て、空は水色に染まり始めている。
しかしぽかぽかの暖かさは、そこにはない。
「ゆゆ……、しゃむいよ」
れいみゅは冬目前の寒さに体を震わせた。
「おちびちゃん、まりさたちはてんごくでみまもってるよ!!」
一匹でも生還させられたことに、涙を流して喜ぶまりさ。
「うるしゃいよ!!! くしょおやがこんにゃおうちにこにゃければ、れーみゅはもっとゆっくちできちゃんだよ!! くじゅなおとーしゃんはゆっくちちんでね!!!」
鬼意山の手から降りると、れいみゅはそんな捨て台詞を吐いてぴょんぴょん跳ねて行った。
まりさにも落ち度はあり、だから反論することはできなかった。
「ゆっくち!ゆっくち!」
少々寒いが、爽やかな朝であった。
れいみゅは久々の自由を満喫していた。
じじいとも、くそおやとも無縁の生活がこれから始まるんだ!
れいみゅの心には、謎の万能感が芽生えていた。
くそおやがいなくなれば、これからは何をするのも自由だ。
うんうんをする場所や、ちーちーをする場所だって自由だ。
ようやく鬼意山の家の敷地を出て、歩道をぴょんぴょん横断してゆく。
まりさはまだ見守っていた。
赤ゆが見えなくなるまで、鬼意山は潰さないでおくつもりらしい。
運命はすでに、鬼意山の手から離れている。
あの赤ゆがこの後どうなるのか、それは分からない。
まっすぐまっすぐ跳ねてゆく。
歩道をわたりきったれいみゅはやがて車道に入り込んだ。
そこでまりさははっとする。
赤れいみゅは車道を横断するつもりだ。
まりさとれいむがこの町に降りて来た時、外はすでに寒かった。
しかし町の現実を知らない二匹は見よう見まねでダンボールのおうちを作り、
そしてゆん生のはつすっきりーを体験する。
それで生まれたおちびちゃんが、あの七匹だ。
あのおちびちゃんがおうちを出たのは、
人間さんのおうちを回った時が最初だ。
お外の危険なんて、何も教えられていない。
あのれいみゅは車道の、車の恐ろしさを知らないのだ!
「おちびぢゃあああああんん!!!!! ぞごはあぶないよおおおお!!!!」
鬼意山の腕の中で、おちびちゃんに呼びかけるまりさ。
ついさっきもドスのようなトラックが通り過ぎて行くのを見た。
車というものは、ゆっくりがいてもおかまいなしに殺してゆく。
まりさ町について初めて知った危険だ。
しかしまりさの忠告はとどかない!
「くじゅおやはだまってね!! れいみゅはこっちにいきちゃいんだよ!!」
「ゆぎゃあああああ!!! おどーざんのいうごどをきいでええええ!!!!」
ずんずん進んでいく。
大きなエンジン音が、また聞こえてくると言うのに。
「ゆゆ?」
あんよに伝わる振動。
それでようやくれいみゅはせまりくるタクシーに気付いた。
しかしれいみゅの感想は、「なんだか速くてゆっくりできない」というだけ。
危機感は一切ない。
「きめーまりゅみちゃいで、ゆっくちしてにゃいにぇ!!」
れいみゅはタクシーと対峙する。
れいみゅの位置は、丁度タイヤが通過する部分だ。
「おぢびちゃんにげでええええええ!!!!」
まりさの声なんて、もう聞いてすらいなかった。
「ぷきゅうううう!!!! ゆっくちちてないやちゅは、あっちいっ<ベチャ>」
「ゆぎゃああああああああああああああ!!!!!」
れいむとまりさの愛の結晶は、七匹全てこの世から消え去った。
まりさの命がけの行動は、れいみゅの命は数十分ほど延命するだけの意味しかなかった。
「ばりざは、ばりざはなんのためにぃ……」
結局一匹も守れなかった。
「さて、そろそろまりさにも死んでもらおうか」
鬼意山はまりさに宣告する。
まりさはすでに廃人のようになっていた。
目はどこを向いているのか、泣いて水分を失い肌はがざがざだ。
鬼意山は両腕に力を入れる。
皮を破り、真っ二つにしてしまうつもりらしい。
「ごんなの、ごんなのぉ……」
涙はまだ溢れてくる。
「ひどずぎるよぉ……」
まりさは絶望の中、息を引き取った。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆
鬼意山はまりさをゴミ袋につめた後、そう広くも無い庭の土を踏む。
虐待向けのゆっくりを切らしていたところで偶然戸を叩いたのがまりさ一家だった。
季節は冬に向かいつつあったし、秋の一斉駆除も行われた後だ。
単品ならともかく、野良ゆの家族はなかなか見つからない時期である。
そこにやってきた一つの家族。
虐待してみた。
しかし鬼意山は満足できなかった。
「愛着のないゆっくりを殺しても、そこまでQNQNできないんだよなぁ」
ゆ虐を初めて一年。
鬼意山最初のゆ虐は人生最高のゆ虐だった。
可愛いゆっくりを虐待したいという性癖をもつ鬼意山なのである。
とても愛着のある、大事なゆっくりを虐めるのは特別だった。
「また、赤ゆから育ててみようか。こんどはありすでも……」
庭の片隅には二つの墓。
その下には二匹分の苦悶のデスマスクが埋まっていることだろう。
おわり
虐待 愛情 不運 仲違い 家族崩壊 親子喧嘩 同族殺し 番い 野良ゆ 姉妹 赤ゆ ゲス 希少種 都会 透明な箱 現代 虐待人間 うんしー ぺにまむ お暇なときに
【5】
---------------------------
「ゆっくりしていってね!!!」
「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!!」
「おそらをとんでるみたいっ!!」
「そろーり、そろーり!!」
「ぷくううううう!!!」
お兄さんは分かってしまった。
ゆっくりは単純な生き物だ。
思考も言葉もシンプル極まりない。
そんなゆっくりに25年も付き合ってきたお兄さんである。
ゆっくり漬けが過ぎて、ゆっくりの笑顔に飽きてしまったのだ。
満たされない感じはそれが原因だった。
それが分かった鬼意山。
柄の長いハエ叩きを調達し、ドキドキしながら家に帰る。
もっともそのハエ叩きを振るうのに、二週間ばかりの覚悟が必要だったが。
---------------------------
もとのもくあみ。
鬼意山の屁理屈(?)により、また地獄まで突き落とされたまりさ一家。
一度持ち上げられただけに悲しみは激しい。
絶望も激しい。
四匹の赤ゆはまたテーブルの上だ。
「おちょーしゃんのうしょちゅきいいいい!!!!」
「でいびゅかえれりゅっておぼっちゃのにいいいい!!!」
「ゆっくりちねええええ!!!!」
「ばりぢゃのゆっぐりをがえぜえええええ!!!」
鬼意山にさんざん脅された赤ゆたちは鬼意山に逆らえない。
生還できなかったことへの怒りは父まりさにぶつけられることになった。
赤ゆたちの罵倒に、親まりさは泣くしかない。
こんなはずじゃなかったのに……。
まさにそんな表情であった。
「さて、ようやく四回戦目だな」
「「「ゆっくち……」」」
すでに三匹の赤ゆが死んだ。
残るはれいみゅ2.まりしゃ2。
イスは三つ。
この戦いでようやく半分を割ることになる。
♪~
「はい、音楽にあわせて」
赤ゆたちも慣れたもので、手拍子と動きが完全に一致していた。
しかしこれは遊びではない。
音楽に乗る様子には、もう最初の様な楽しさが無くなっている。
これは殺し合いだ。
「どぼぢて……」
「ゆっくちできにゃい……」
ゆぐゆぐ泣きながら回る。
回る。
回る。
「ぼうやべでよぉ……」
一方親まりさはゆん生の落伍者のような面持ちでその様子を見ていた。
少し前まで、あんなにゆっくりしていた家族だったのに。
つがいだったれいむはもうこの世に無い。
その上その死はまりさ一家に何ももたらさなかった。
犬死にである。
出しゃばったがために、散らさなくてもよい命を散らした。
れいむがその事を知らずに逝ったことが唯一の救いだろうか。
まりさがもっと約束の内容を確認していればこんなことには……。
(とはいえどんなにしっかりした約束でも、鬼意山が守るという保証すらないのだが)
おちびちゃんからの罵倒もあり、まりさは精神的に追い詰められていた。
くるくる。
くるくる。
回る赤ゆを目で追う。
このうちの三匹が死ぬと考えると、まりさの目尻に涙が浮かんだ。
どれもまりさの大切なおちびちゃん。
絶対ゆっくりさせるって誓ったのに。
くるくる。
くるくる。
おちびちゃんはぐるぐる回っている。
まりさの涙は止まらなかった。
れいむの死はまりさの価値観をも揺るがしていた。
れいむが死んだ事でまりさは人間さんがゆっくりできないものだと理解できた。
家に入った瞬間のゆっくりできた記憶が、まりさを油断させた。
もう人間さんにはかかわらない。
生きて帰れたら、山へ戻ろう。
おちびちゃんも少なくなってしまったから山でもやっていける。
まりさは歯ぎしりをしながら、町へやってきたことの間違いを悟った。
まりさのおちびちゃんへの愛情も余計に深まった。
つがいを失って、役割を補完しようとしているのだろうか。
れいむが命をかけて守ろうとした、かわいいおちびちゃん。
このままじゃ駄目だ!
何とか、何とかしておちびちゃんに生き残って貰おう。
そしてたとえ一匹しか残らなかったとしても、
そのおちびちゃんを立派なゆっくりに育てよう。
……。
おちびちゃんはまだ回っている。
音楽はそろそろ3週目に入っている。
思考に気を取られていたまりさは、そこでやっと気づいたらしい。
「……ゆゆ? ちょっとまわりすぎなきがするよ?」
親まりさが気付いた通り、まわりすぎである。
回り始めてそろそろ五分。
とっくにホイッスルが鳴ってもいいころなのに。
「ゆひぃ、ゆひぃ」
「ゆっ、ゆっ……」
「ちゅかれ、ちゅかれたよぉぉ……」
「ゆぅうう、ゆぅぅ……」
赤ゆたちは延々と回らされている。
皮は汗だく、息も荒い。
三回のイス取りを経て、一度趣向を変えてみようと思った鬼意山。
第四回戦はイス取りゲームを装った体力勝負となっている。
ホイッスルを鳴らさないのも、忘れているからというわけではない。
許容量以上の運動を強いるゆ虐なのだ。
「もうぢゅかれたあああああ!!!!」
一匹のれいみゅがぐたっと倒れる。
ぷんにゃり横になって、疲れをいやそうとする。
しかしそんな怠け者を見逃すほど鬼意山は甘くない。
「れーみゅはゆっくりしゅ<バチン>いぢゃいいいいいい!!!!」
赤れいみゅは一瞬で飛び上がった。
鬼意山の強烈デコピンだ。
容赦ない。
れいみゅのお尻は真っ赤に腫れあがってしまった。
「止まろうとするようなルールを守れない子はお兄さんのデコピンだよ」
れいみゅは疲れた体をおして跳びはねる。
おしりが腫れたので余計に苦しむ羽目になった。
10分、15分、20分。
止まったゆっくり、リズムにあわせて飛ばないゆっくり、ゆっくりすぎて後ろの姉妹においつかれたゆっくり。
鬼意山は容赦なくデコピンを喰らわせた。
間抜けな赤ゆはデコピンを喰らうほど不利になるっていうのに何度もルール違反をする。
どの赤ゆもほっぺや尻が真っ赤に染まっている。
黒っぽい内出餡(?)の痕も現れ始めている。
手拍子に疲れたお兄さんはその役目をメトロノームにまかせ、
オレンジジュースでゆっくりしているようだ。
「頑張るなあ」
あまあまをごくりと飲み干す。
まさか20分耐えるとは思っていなかった鬼意山。
素直に感心している。
「おばえだげゆっぐりずるなああああああ!!!!」
れいむの霊が乗り移ったかのように、怒りながら透明な壁を叩くまりさ。
しかしそんな行動もやはり空しく終わる。
破れない壁。
加工所は一年を超える長期ゆ虐にも耐えうるように、透明な箱を設計している。
一日で破壊できるようなものでは決してない。
一方赤ゆたちはボロボロで、瞳は真っ黒に濁っている。
そして非ゆっくち症の初期症状が現れているのが、一匹のれいみゅだった。
「ゆげぇぇ、おげえぇええ……」
軽く吐餡をしている赤まりしゃがいるのである。
「おぢびちゃあああああんん!!!! あんござんはがないでねえええ!!!!」
まりさが騒いでいるが、現実は動かなかった。
そしてついに。
「ゆぐっ!?」
一匹のれいみゅが止まる。
「ゆげっ!! ゆげえええええ!!!!」
非ゆっくち症を発症したれいみゅの大量吐餡。
口からゆっくりできない餡子がもりもり溢れてくる。
もう限界らしい。
「ゆげっ! ゆげえげげげええええええ!!! げほっ!! ごほっ!!」
咳と吐餡の波状攻撃。
もう助からないだろう。
すでに大半の餡子を吐き出してしまっている。
「おぢびぢゃあああああんん!!!!! おぢびぢゃああああんん!!!」
まりさは体当たりを繰り返す。
そんなことをするせいで親まりさ自身、傷だらけになっているのだが、
まったく気にもしていない様子だ。
「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」
吐餡から一分も経っていない。
あっという間に痙攣が始まった。
「ゆんやああああ!!!! ゆんっやああああああ!!!!」
親まりさは半狂乱になってどしどし透明な壁を叩く。
何の意味もない。
そして赤まりしゃへのトドメとなったのが、
魂が抜けた抜け殻のような顔で回っていた赤まりしゃのしかかりである。
殺意もなにもなく、通るべき道の上で倒れていたから踏んでしまっただけだった。
赤ゆたちは三つイスの周りを、同じルートをぴょんぴょん跳ねていたのだ。
「ゆぎょ! ぼっどゆっぐち……」
自分以上の重さが圧力としてかかり、餡子が減って無防備な中枢餡がつぶれる。
その潰れ方は深刻なものであり赤れいみゅが永遠にゆっくりするには十分だった。
脳を潰された動物が生きていけないのと同じだ。
一際大きな痙攣をおこすとそのまま永眠してしまった。
音楽が止められる。
鬼意山は勝者に拍手とあまあまを贈る。
「れいみゅちゃんが死んだから、残った子たちは不戦勝だ。おめでとう!」
「ゆがあああああああああああああああ!!!!!!」
喉が枯れるかというほどまでの大声。
それでもまりさは無力だった。
残ったのはいよいよ三匹。
れいみゅ、まりちゃ、まりちゃ。
一匹目のまりちゃはその優しさのために死んだ。
二匹目のまりちゃは運悪く熱したイスを選び死んだ。
三匹目のれいみゅは席を争い姉によって殺された。
四匹目のれいみゅは吐餡を繰り返し、姉妹にのしかかられ結局死んだ。
ここに残った三匹は本当に運が良い。
しかし体はぼろぼろで、心も本当にぼろぼろだった。
生まれて間もないこの時期に命がけのお遊びをさせられ、
性格も大いに歪んでしまったことだろう。
どの子供が残っても、親まりさは苦労するに違いない。
お互い傷だらけなのに、ぺーろぺーろすらしなかった。
近づいてきたとしても、ぺろぺろなんてさせなかっただろう。
傷を癒し、痛みを和らげ、親愛を示すぺろぺろ。
そんなことをすれば次の戦いで不利になる。
そんな打算があったに違いない。
希望の光により一度回復の兆しを見せた姉妹の仲は、
絶対に取り返しのつかないところまで悪くなってしまった。
「……」
黙り込む親まりさもすでに満身創痍だった。
最初に食らった金槌はまりさのあたまの皮を傷つけている。
そしてたび重なる、透明な壁への体当たり。
半ば自滅するような形で皮は傷だらけになっていた。
そして続く家族の死。
つがいのれいむとおちびちゃん。
あわせて五匹が永遠にゆっくりしている。
ゴミ箱にはおちびちゃんの死体。
部屋中に飛び散ったれいむの死体。
それを見るたびにまりさの精神は削られていった。
親まりさはもう、いつ発狂してもおかしくなかった。
ぼろぼろになった家族。ぼろぼろになった絆。
そろそろ限界か。
鬼意山は決断した。
「次でラストにしよう。次のイス取りで生き残った子を帰してあげよう」
鬼意山がカーテンを開けると、青みがかった家の庭がまりさたちの目に飛び込んできた。
夢にも願った外の世界。
ゆっくりたちの目に明るい外の光が入り込む。
次で、この地獄が終わるんだ。
【6】
---------------------------
に゛ゃああああああ!!!!!
らんじゃまあああああ!!!!!!
だれがごんなひどいごどおおおおお!!!!!
わがらないいいいいいい!!!!!
友ゆんの家から帰って来た時、ちぇんのつがいは息を引き取っていた。
「お兄さんが帰って来た時には、もう……」
ちぇんは泣き、一晩中ゆっくりできなかったが、
そのけなげな姿を見た鬼意山は、とてもゆっくりしていた。
---------------------------
れいみゅ1、まりしゃ2。
赤ゆが三匹、イスは一つ。
鬼意山は赤ゆたちを等間隔で置いてゆく。
赤ゆたちはお互いをゆっくりできない目で睨んでいる。
♪~
最後の戦いは唐突に始まった。
三匹の赤ゆっくり。
勝利を確信しているゆっくりは一匹もおらず、笛の音を警戒し続ける。
イスの数から言うと、生き残れるゆっくりは一匹だけだ。
「はいはい、イスさんたちの周りをくるくるしてね!」
お兄さんが音楽に合わせ、リズムよくゆっくりと手を叩く。
「「 …… 」」
最初のころのような楽しさはかけらもない。
歯茎をむきだしにした表情で、イスのみに視線を送っている。
お兄さんが手拍子をするごとに、赤ゆたちが一歩進む。
音楽と手拍子だけが鳴り続ける、静かな戦いだった。
「おちびちゃん……」
まりさはもうなにも出来なかった。
助かるのは一匹だけなのだ。
どの子も応援できない。
パン! パン! パン! パン!
パン! パン! パン! パン!
今度は一分もたたず、笛の音が鳴る。
ホイッスルのキンと高い音色。
一個のイスをめぐる、醜い争いが始まる。
「ゆっくちすわりゅよ!!」
「れーみゅのいすしゃん、まっててにぇ!!」
「げしゅどもはゆっくちしにゃいでちんでね!!」
最初に座ったのはれいみゅだった。
一匹だけ生き残ったれいみゅ。
最初にまりしゃが潰された時、かじょくなんだよ!!と鬼意山にさからった赤ゆだ、
「ゆゆーん♪ ここはれーみゅのゆっくちぷれいしゅだよ!! げしゅないもーちょはゆっくちしにゃいでちんでね!!」
ゆっへんと胸を張るれいみゅ。
しかしまだ戦いは終わっていない。
「げしゅはおみゃえだよ!!」
まりしゃのうちの一匹が、回転体当たりでれいみゅを落とそうとする。
胸を張って完全に無防備になっていたれいみゅは、あっさり命のイスから転げた。
「ゆげっ!?」
「ゆびょびょ!?」
しかし勢いあまってそのまりしゃまで一緒に転がってゆく。
そこで断然有利になるのが、もう一匹のまりしゃだ。
末っ子れいみゅをぶち殺して生き残った、一番ゲス化の激しい赤ゆである。
「ゆひひっ!! いきのきょるのはまりしゃだよ!!」
ぴょいんとイスに飛び上がる。
しかし転がっていった二匹は、何も脱落したわけではない。
「ふじゃけりゅなああああああああ!!!!」
「きょのゆっくちでなちいいいいいいいい!!!!!」
すぐに体勢を立て直し、赤ゆにあるまじきスピードで迫ってゆく。
その速さは、おそらくGを超えている。
ゆっくりは思い込みの力を持っているという説があり、
いざという時に限って発揮されないというあてにならない力だが、
生命の危機がその力を呼び起こしたのだろうか。
「ゆわああああ!!!」
自分と同じ大きさの饅頭が、歯茎をむき出しにしてせまってきたらどう思うだろうか。
イスの上のまりしゃは、すでにおそろしーしーを漏らしている。
まりしゃは右のおさげに、そしてれいむは左のおさげに噛みついた。
引きずりおろしてやろうというつもりなのだろうか。
「やめちぇにぇ! ゆっくちできにゃいよ!!」
「ちるかあああああ!!!」
「でいびゅのいすしゃんかりゃはやきゅどけえええええ!!!!」
走る力も凄まじければ、引っ張る力も恐ろしかった。
あくまで赤ゆを基準にしての話だが。
「いだいいいいい!!!」
おさげを引っ張られるまりしゃは、どんどん横に伸びてゆく。
すでに縦1:横2のワイドサイズになっている。
「やべであげてね!! いだがってるよ!!!」
何の意味も無いと分かっていながら、親まりさもつい本能から言ってしまう。
やはりおちびちゃんが痛がっている所を見ると、
親心が刺激されてしまうのだ。
とはいえ引っ張ることをやめるというのは、イスを譲ることに等しい。
「だばれええええ!! ぐじょおやああああ!!!」
「でいびゅはゆっぐぢずるんだあああああああ!!!!」
かえって怒りを招き、まりしゃはイスの上で余計に伸びることになった。
それにしても、赤ゆは餡子脳だ。
二匹が同じ方向に引っ張ればすぐにでも引きずり降ろせるのに、
それぞれが逆方向に引っ張ってしまうのでまりさは殆ど移動していない。
まりしゃがイスの上で踏ん張っているのもあるのだが。
鬼意山はその様子を観察しながら笑みをこぼす。
「ゆぎ! ゆぎぎぎぎ!!!」
まりしゃはあにゃるをキュっと絞め、イスを譲るまいと闘っていた。
その様子に変化が起こり始めたのだ。
あにゃるが切れ痔を起こしている。
イスの下の姉妹の怪力に、まりしゃの皮が負けつつあるのだ。
「ゆぴいいいい!!!! おじりがいぢゃいいいいい!!!!!」
突然襲い掛かる新たな痛み。
「どぼぢだのおおお!!???」
親まりさの叫び。
そしてちょっとづつ、ちょっとづつ広がってゆく切れ痔。
びりびりと嫌な音を立てながら、その裂け目は誰にでも分かるほどまでに広がってきた。
まむまむの部分まで裂け、あんよから餡子が漏れ始めている。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!! やべであげでよおおおおおお!!!!!」
まりさはおちびちゃんを守ると誓った。
一匹になってもその子を守ると覚悟した。
しかしそんな決意、ゆっくりの心には重すぎるものだった。
現実の殺し合い。
先ほどとは違う、今度は姉妹全員の殺し合い。
三回戦目の殺ゆんでは一匹のゲスのせいだと考えればよかった。
今回の殺し合いは姉妹全員が、自分の命の為に殺ゆんも躊躇わない。
まりさが信じていた絆はとうに崩壊している。
その象徴がこれだった。
「ぱぴぷぺぽ!! ぱぽぷぺぽ!!!」
まりさはおかしくなり、ついにはくるくる踊る。
そして少量の餡子を吐きそのまま気絶してしまった。
べりょべりょべりょ。
まりしゃの皮はさらにめくれてゆく。
「ゆぎゃああああ!!! ばりぢゃのびゅーちふりゅなおはだぎゃあああ!!!!」
赤まりしゃはようやく自分に起こっている変化を理解したらしい。
しかしもう遅かった。
目と目の間が裂け始め。
ついに。
「ゆわっ!!!」
「ゆっぴょ!!!」
おさげを引っ張っていた二匹は、対抗する力が無くなったことでころころ転げて行った。
各々の口には、金色のおさげがのこっている。
そしてその先にはべろべろの皮。
イスの上に残ったのは、皮を剥がされた餡塊だけだった。
「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ……」
つるりと剥けたので、本当に綺麗な真っ黒餡子だ。
目はむき出し。
歯茎はむき出し。
その姿のまま痙攣している。
「ゆっくちすわりゅよ!!」
「こんどこしょ、れいみゅのいすしゃん!!」
ライバルの一人はすでに死にかけだ。
これであいつを蹴落とせば……。
しかし二匹がイスに近づいた所で、鬼意山はそれを取り上げてしまった。
「はい、時間切れ」
「ゆ゛!?」
切り株を模したイス。
生き残るためのイス。
それを鬼意山に取られ、れいみゅとまりしゃは茫然としている。
「れいみゅのいすしゃん!!」
「まりしゃのいすしゃん!!」
二匹は追いかけようとする。
しかしテーブルの周りのプラスチック壁に激突し、それ以上は進めなかった。
鬼意山はイスを持ったまま、まりさに近づいてゆく。
すると親まりさは気絶していたので、鬼意山は箱を蹴飛ばしてみた。
「ゆゆっ? まりさのけーきさんは??」
びっくり飛び起き、ぱちぱちと瞬きをする。
意外にあっさり起こせるものだ。
「ほらまりさ、帰れるおちびちゃんが決まったよ」
まりさは鬼意山を見上げる。
寝ぼけ眼のまりさは、10秒ぐらいの間をとって鬼意山の言葉を理解した。
「ゆゆっ!? まりさのおちびちゃん!!」
鬼意山はまりさの箱の前に、勝者のイスを置く。
そこにいたのは、得体のしれない餡塊だった。
「ゆ゛!?」
まりさは思い出し始めていた。
イスの上の塊は、姉妹に引っ張られ皮を破られていたおちびちゃんだ。
帽子がそれを証明してくれる。
「ばりざのおちびちゃんがあああああ!!!!」
餡塊は蠢く。
かすむ視界の中で父の姿を見つける。
「お、ど、お、しゃ……」
餡塊は一歩踏み出すと、重力に耐えられず自壊してしまった。
ぶよぶよの目玉がころころ転がり、透明な箱をこづく。
勝利のイスを手にしたまりしゃ。
その喜びを味わうことすらなく、永遠にゆっくりした。
「残念だね。おちびちゃんは一匹助かるはずだったのに」
優勝したおちびちゃん。
一緒に帰れるはずだったおちびちゃん。
そのおちびちゃんがまりさの目の前で永遠にゆっくりしたのだ。
つまり。
「さて、負けちゃった子にはどんなお仕置きをしようかな?」
テーブルの上を逃げ惑い始めるれいみゅとまりしゃ。
「ゆんやああああ!!!」
「ぎょないじぇえええええ!!!!」
まりさと一緒に帰れるおちびちゃんは、一匹も居ないということだ。
まりさは口をぱくぱくさせ、何も言いだすことが出来なかった、
おちびちゃんと帰れるはずだったのに。
最悪の結末だった。
「何で殺してあげようかなぁ」
「ゆぴいいいい!!!!」
「でいびゅまだちにたくにゃいいいい!!!」
鬼意山はプレイルームの箱をがさごそとやっている。
今思えばこの中にも、虐待用品が一杯詰まっていたのだろう。
「これにしようか」
その中からこれまた小さい箱を開けると中には注射器が二本そろっていた。
そのうち一本を取り出すと唐辛子エキスをとくとくと注いでゆく。
「これは毒だよ」
真っ赤な注射器がギラギラ光る。
赤れいみゅと赤まりしゃはカチカチ歯を鳴らしながら震えていた。
「これを注射されればあっという間に死ねるだろうね」
針の先からエキスが漏れ、液体の玉になり、真下に落ちてれいみゅのほほにかすった。
「ぢ、ぢみりゅううううう!!!!」
れいみゅの傷に唐辛子が触れ、その部分は酷いただれを起こしてしまった。
それだけで、その毒の恐ろしさがはっきりと分かる。
「それじゃあ、まりしゃちゃんからお注射だよ」
「ゆっぢいいいいいい!!!!」
つまみあげるとそのまりしゃはぶりんぶりんと、体中を振り回して逃げようとする。
ゆん生をかける最後の抵抗。
赤ゆっくりまりしゃが発揮できるうちの、最大の力でケツを振っていた。
しかし鬼意山に対抗するには、あまりにもしょうもない力である。
そして針が触れ、皮を破ろうかというその時。
親まりさの大声が耳に入った。
「ゆっぐりやべでね!!!!」
鬼意山はまりさの方を振り返る。
まりさの目は、決意に満ちた目だった。
「どうした?」
「ばりさのいのちとおちびちゃんのいのち、こうかんしてほしいよ!!」
【7】
まりさは、おちびちゃんを助けるのだと誓った。
一匹だけでも助けるのだと誓った。
しかし帰れるはずのおちびちゃんは死に、
まりさの手元には一匹のおちびちゃんも残らなかった。
残った赤ゆは親と一緒に帰ることが出来る。
最初に鬼意山が言ったその言葉を信じるなら、親まりさは一応生きて帰ることが出来るわけだ。
けれども。
おちびちゃんを残して帰って、本当にそれでいいのか?
母親役のれいむが死んだ結果、まりさの母性はますます強くなっていた。
まりさの提案は単純だ。
生き残れるはずの自分が死ぬ。
そのかわりおちびちゃんは助けてほしい。
それだけである。
「ばりざは、ばりざはぜったいおちびちゃんをゆっぐりざぜないどいけないんだよ……」
「そうか……。分かったよ、おちびちゃんを助けてあげるよ。ただし……」
鬼意山はまりさの提案に条件をつけた。
「交換できるおちびちゃんは、二匹のうちのどっちか一匹だけだ」
親まりさは箱から出され、テーブルの上に置かれた。
親まりさ、れいみゅ、まりしゃ。
久しぶりに、家族が一箇所に揃った。
まりさはこみ上げてくる感動を抑えきれない。
「しあわせ……」
最初から考えればすでに六匹も欠けているのだが。
それでもまりさは幸せだった。
一方鬼意山は赤ゆたちに事情を説明している。
赤ゆでも理解できるように、分かりやすく。
「つまり、おとーさんに選んでもらえた子だけが生き残れるんだ」
「ゆゆ!?」
「ゆっくち!??」
明らかに目の色が変わった。
痛い痛いデコピンに苦しめられることもあった。
儚い希望に踊らされ、ぬか喜びをしたこともあった。
最後の最後で負けて、殺されかけたこともあった。
その苦労が、おとーさんに選んでもらえれば報われる。
「ゆっくちれいみゅをえらんでにぇ!!」
「まりしゃだよ!! まりしゃがゆっくちしてりゅんだよ!!」
二匹の赤ゆは生き残りをかけて媚びを売りはじめた。
糞親とまで言ったそのまりさに、すーりすーりなどを始めている。
「おとーしゃんだいしゅきー!! だかられいみゅ!!! あっちのごみはむしちてね!!」
「ごみはおみゃえだろおおおおお!!!! あんなきたないのより、まりしゃだよ!!」
「れいみゅはおうちゃをうたえるよ~♪ ゆっくち~♪」
「ま、まりちゃはだんちゅができりゅよ!! ゆっくちまりちゃのだんちゅだよ~♪」
「ゆぴゅぴゅ!! まりちゃのだんちゅはへたくちょだにぇ!!」
「ゆゆ!! れいみゅのおうたこしょ、ざつっおんだよ!! みんにゃにめーわくだよ!!」
可愛らしさをアピールしているつもりのようだが、
言葉や行動の端々からすでに取り返しのつかないほどのゲス性が読み取れる。
ゆっくりしたいという感情がむき出しになっている。
相手をこきおろそうとするその言動。
侮辱するときの表情の汚さ。
ここ数時間で深刻なほどのゲスになってしまっていた。
確かな手ごたえを感じた赤ゆたちは、おうたやだんちゅのアピールに移る。
優柔不断な親の心を鷲づかみにするつもりのようだが。
おうたは音程がそもそもあってない。
だんちゅはくるくる回っているだけである。
親まりさは、そんなおうたやだんちゅなど気にもしていなかった。
まりさは目をつむって考え事をしていた。
この世で一番可愛いおちびちゃんたち。
それぐらいにまでおとびちゃんが好きなまりさの目にすら、この二匹はゲスのように映っていた。
それでもまりさは、この子たちは鬼意山のせいで一時的にゲスになってるだけだと信じている。
だから、時間がたてばもとの優しいおちびちゃんにもどってくれるはず……。
ゆんゆん考える。
残すべきなのは、どっちだ?
おちびちゃんとの一週間の思い出が蘇ってくる。
そうしてまりさは、やっと決心がついた。
舌がぺろりと現れる。
「まりさのほうのおちびちゃん……、おとーさんのおくちにはいってね……」
おくちに入れる。
それはおちびちゃんを守る時に行う行動だ。
守られるのは赤れいみゅじゃなくて、赤まりしゃ。
「ゆぎゃあああああああ!!!! でいびゅばだぢにだぐないいいいいいい!!!!!」
死の宣告をされたようなものだ。
狂ったように泣き叫ぶれいみゅ。
滝のようなちーちー。
そして赤まりしゃの瞳は、ダイアモンドのようにピカピカ輝き始めていた。
親まりさの口を目指しながら、勝利宣言をする。
「ゆわぁぁああいい!!! まりしゃは!! かわいいまりしゃはいきのきょったんだよおおお!!!!」
ゆったりした坂をのぼり、暖かい口内がまりしゃを出迎えてくれる。
「かわいきゅって! ご・め・ん・にぇ!!!! ゆぷぷぷぷぷぷ!!!! おおみじめみじめ!!! みじめなれいみゅ!!!! ゆぷぷ!!! かわいくなきゅて、くずで、のろまで、ばきゃなれいみゅはゆっくちしんでにぇ!!! まりしゃは、まりしゃはひとりでゆっくちすりゅよ!!!! ゆやっほおおおお!!!! ゆやっほおおおお!!! ばらいろのゆんせいが、まりしゃさまを<ブチブチブチィッ!!!>ゆぎゃあああああああ!!!!」
親まりさは吐きだす。
それは真っ二つになった赤まりしゃの体だった。
「れいむのほうのおちびちゃんを、かえしてあげてね……」
赤まりしゃをおくちに入れたのは理由があった。
親まりさが殺す方が、鬼意山の手にかかるよりも苦しみも少ない。
そう思ったのだ。
「ぐじゅ……お、や……」
赤まりしゃは親への恨みを抱きながら死んでいった。
まりさが自分で決めたことだ、後悔はない。
「それじゃあれいみゅちゃん、玄関まで送ろうか。まりさにも見送りだけはさせてあげよう」
まりさと赤れいみゅは鬼意山に抱えられ、玄関までやってきた。
暖かくすべすべの床を初めて味わった廊下。
家族であまあまを食べて、しあわせーをした居間。
つがいのれいむがうっとりと自分を眺めたあの鏡。
永遠にゆっくりしていった家族を思い出し、見るもの全てが悲しかった。
そしてまりさも、これから永遠にゆっくりするのだ。
赤れいみゅを助けるかわりにまりさは死ぬ。
これは揺るがない条件だった。
「助けると言っても、ここから出発した後のことは知らないからね?」
「りかいしてるよ……」
町は、赤ゆ一匹には辛い場所だ。
かといってここから山に帰ることは絶望的である。
しかし偶然、やさしいゆっくりがおちびちゃんをゆっくりさせてくれるかもしれない。
偶然町の群れに拾われ、すくすくと育ってくれるかもしれない。
分の悪いギャンブルである。
しかしまりさは、おちびちゃんのゆっくりを祈ることしかもうできない。
玄関の扉がゆっくり開けられる、
すでに太陽が出て、空は水色に染まり始めている。
しかしぽかぽかの暖かさは、そこにはない。
「ゆゆ……、しゃむいよ」
れいみゅは冬目前の寒さに体を震わせた。
「おちびちゃん、まりさたちはてんごくでみまもってるよ!!」
一匹でも生還させられたことに、涙を流して喜ぶまりさ。
「うるしゃいよ!!! くしょおやがこんにゃおうちにこにゃければ、れーみゅはもっとゆっくちできちゃんだよ!! くじゅなおとーしゃんはゆっくちちんでね!!!」
鬼意山の手から降りると、れいみゅはそんな捨て台詞を吐いてぴょんぴょん跳ねて行った。
まりさにも落ち度はあり、だから反論することはできなかった。
「ゆっくち!ゆっくち!」
少々寒いが、爽やかな朝であった。
れいみゅは久々の自由を満喫していた。
じじいとも、くそおやとも無縁の生活がこれから始まるんだ!
れいみゅの心には、謎の万能感が芽生えていた。
くそおやがいなくなれば、これからは何をするのも自由だ。
うんうんをする場所や、ちーちーをする場所だって自由だ。
ようやく鬼意山の家の敷地を出て、歩道をぴょんぴょん横断してゆく。
まりさはまだ見守っていた。
赤ゆが見えなくなるまで、鬼意山は潰さないでおくつもりらしい。
運命はすでに、鬼意山の手から離れている。
あの赤ゆがこの後どうなるのか、それは分からない。
まっすぐまっすぐ跳ねてゆく。
歩道をわたりきったれいみゅはやがて車道に入り込んだ。
そこでまりさははっとする。
赤れいみゅは車道を横断するつもりだ。
まりさとれいむがこの町に降りて来た時、外はすでに寒かった。
しかし町の現実を知らない二匹は見よう見まねでダンボールのおうちを作り、
そしてゆん生のはつすっきりーを体験する。
それで生まれたおちびちゃんが、あの七匹だ。
あのおちびちゃんがおうちを出たのは、
人間さんのおうちを回った時が最初だ。
お外の危険なんて、何も教えられていない。
あのれいみゅは車道の、車の恐ろしさを知らないのだ!
「おちびぢゃあああああんん!!!!! ぞごはあぶないよおおおお!!!!」
鬼意山の腕の中で、おちびちゃんに呼びかけるまりさ。
ついさっきもドスのようなトラックが通り過ぎて行くのを見た。
車というものは、ゆっくりがいてもおかまいなしに殺してゆく。
まりさ町について初めて知った危険だ。
しかしまりさの忠告はとどかない!
「くじゅおやはだまってね!! れいみゅはこっちにいきちゃいんだよ!!」
「ゆぎゃあああああ!!! おどーざんのいうごどをきいでええええ!!!!」
ずんずん進んでいく。
大きなエンジン音が、また聞こえてくると言うのに。
「ゆゆ?」
あんよに伝わる振動。
それでようやくれいみゅはせまりくるタクシーに気付いた。
しかしれいみゅの感想は、「なんだか速くてゆっくりできない」というだけ。
危機感は一切ない。
「きめーまりゅみちゃいで、ゆっくちしてにゃいにぇ!!」
れいみゅはタクシーと対峙する。
れいみゅの位置は、丁度タイヤが通過する部分だ。
「おぢびちゃんにげでええええええ!!!!」
まりさの声なんて、もう聞いてすらいなかった。
「ぷきゅうううう!!!! ゆっくちちてないやちゅは、あっちいっ<ベチャ>」
「ゆぎゃああああああああああああああ!!!!!」
れいむとまりさの愛の結晶は、七匹全てこの世から消え去った。
まりさの命がけの行動は、れいみゅの命は数十分ほど延命するだけの意味しかなかった。
「ばりざは、ばりざはなんのためにぃ……」
結局一匹も守れなかった。
「さて、そろそろまりさにも死んでもらおうか」
鬼意山はまりさに宣告する。
まりさはすでに廃人のようになっていた。
目はどこを向いているのか、泣いて水分を失い肌はがざがざだ。
鬼意山は両腕に力を入れる。
皮を破り、真っ二つにしてしまうつもりらしい。
「ごんなの、ごんなのぉ……」
涙はまだ溢れてくる。
「ひどずぎるよぉ……」
まりさは絶望の中、息を引き取った。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆
鬼意山はまりさをゴミ袋につめた後、そう広くも無い庭の土を踏む。
虐待向けのゆっくりを切らしていたところで偶然戸を叩いたのがまりさ一家だった。
季節は冬に向かいつつあったし、秋の一斉駆除も行われた後だ。
単品ならともかく、野良ゆの家族はなかなか見つからない時期である。
そこにやってきた一つの家族。
虐待してみた。
しかし鬼意山は満足できなかった。
「愛着のないゆっくりを殺しても、そこまでQNQNできないんだよなぁ」
ゆ虐を初めて一年。
鬼意山最初のゆ虐は人生最高のゆ虐だった。
可愛いゆっくりを虐待したいという性癖をもつ鬼意山なのである。
とても愛着のある、大事なゆっくりを虐めるのは特別だった。
「また、赤ゆから育ててみようか。こんどはありすでも……」
庭の片隅には二つの墓。
その下には二匹分の苦悶のデスマスクが埋まっていることだろう。
おわり