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anko4468 お団子さん、こーろこーろするよっ!
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『お団子さん、こーろこーろするよっ!』 43KB
思いやり 愛情 育児 越冬 群れ 子ゆ 自然界 兵庫あき だいりしゅっさんは面白いなぁ
思いやり 愛情 育児 越冬 群れ 子ゆ 自然界 兵庫あき だいりしゅっさんは面白いなぁ
【書いたひと・兵庫あき】
#17
#17
「やっぱり、まりさはここにいたのね?」
「ゆっ?おさなのかぜ」
「むきゃきゃ。もう、おさじゃないのだわ。ただのぱちゅりーせんせいなのだわ」
「そーだったのぜ」
「きょうはきずまりさにてつだってもらいたいことがあったのよ。よろしくって?」
「まりさ、むれにひろってもらったおんがあるのぜ。ことわらないってしってるくせに
わざわざきくなんて、おさもひと(ゆっくり)がわるいんだぜ?」
わざわざきくなんて、おさもひと(ゆっくり)がわるいんだぜ?」
二頭はゆっくりと湖畔から群れの元へと戻っていく。
『お団子さん、こーろこーろするよっ!』
F.F.(ふぁいなる・○ぁんたじー)シリーズの回復魔法にケアルガがあり、対象を選択する
際に特定のターゲット1人を選択する場合と、全体掛けする場合とがある。他の誰かを癒そうと
してヒーラーがケアルガ全体掛けをしたとき、回復魔法を唱えたものは図らずも自らの白魔法で
ヒーラー自身への回復効果も同時に得ている。
誰かのために白魔法をかけるというのはひょっとしてそういうことなのかもしれない。
今回はざっくり言うとそんなおはなし(のはず)だ。
際に特定のターゲット1人を選択する場合と、全体掛けする場合とがある。他の誰かを癒そうと
してヒーラーがケアルガ全体掛けをしたとき、回復魔法を唱えたものは図らずも自らの白魔法で
ヒーラー自身への回復効果も同時に得ている。
誰かのために白魔法をかけるというのはひょっとしてそういうことなのかもしれない。
今回はざっくり言うとそんなおはなし(のはず)だ。
*
「はーい、みんな。ぱちぇせんせいのするところをゆっくりみていってね?
ほらっ、ほらっ! おだんごさん、こーろこーろするよっ!」
ほらっ、ほらっ! おだんごさん、こーろこーろするよっ!」
ぱちぇは口に咥えたヘラのようなもので泥団子をこーねこねする。木の板をまな板に見立て、その
平坦な板の上で何度も土くれと砂と少量の水からなる塊を転がしながら練り上げていくと、不思議と
生命を持ったごーれむの卵のようにひとつの団子の形へと次第々々にまとまってゆくのだった。
塊が魂へと化けるような。
生徒の見守る視線が徐々に熱を帯びてゆくのを感じるのは教師冥利につきる瞬間だ。
平坦な板の上で何度も土くれと砂と少量の水からなる塊を転がしながら練り上げていくと、不思議と
生命を持ったごーれむの卵のようにひとつの団子の形へと次第々々にまとまってゆくのだった。
塊が魂へと化けるような。
生徒の見守る視線が徐々に熱を帯びてゆくのを感じるのは教師冥利につきる瞬間だ。
「「ゆゆっ?!しゅごいのじぇっ!」」
「むきゅん、できましたっ。みんなもおてほんさんをまねして、
こーねこーねしてねっ!」
こーねこーねしてねっ!」
「「「「ゆっきゅりりきゃいしちゃよっ!!」」」」
「さてと。おどーぐさんをわすれてきたわるいゆはいないかしら?」
わるいゆ、だーれだっ?鬼ごっこをするように半分ふざけた口調でぱちぇ先生はおどけてみせる。
すると、ひやあせをたらしながら片方のもみあげをおそるおそるあげる生徒がいた。れいみゅである。
だが、よく見るとかんざしのようにおリボンさんの脇にれいみゅが日頃から大切にしている木製の
へらはしっかりと刺さっている。
すると、ひやあせをたらしながら片方のもみあげをおそるおそるあげる生徒がいた。れいみゅである。
だが、よく見るとかんざしのようにおリボンさんの脇にれいみゅが日頃から大切にしている木製の
へらはしっかりと刺さっている。
「しぇんしぇー、ゆっきゅりわしゅれたよっ。
れいみゅうっかりさんでごみぇんにぇ?」
れいみゅうっかりさんでごみぇんにぇ?」
汗はだらだらと とどまるところがない。すごく不自然だ。
ぱちぇ先生は生徒に厳しい視線を注ぐ。
ぱちぇ先生は生徒に厳しい視線を注ぐ。
「・・・なにをわすれたのかしら?だいになる いたさんのほうは、むれでたいせつに
ひきつがれているものをたーくさんっ、かりているから、れいみゅがもってくるのは、
おだんごさんをこーろこーろするためのおどーぐさんだけでいいのだけれど?
ぼうさんとか、たとえば、へら?とか」
ひきつがれているものをたーくさんっ、かりているから、れいみゅがもってくるのは、
おだんごさんをこーろこーろするためのおどーぐさんだけでいいのだけれど?
ぼうさんとか、たとえば、へら?とか」
と言ってちらっとれいみゅの髪飾りに目をやる。ぱちぇの厳しい追及の手は、だが、乱入者によって一瞬さえぎられる。
「はいはい、ごめんなすってなのぜぇー」頬に大きな十字傷をつけたゆっくりが板を何枚も何枚もたくさん
運び入れる。最近群れに加わったおとなの流れゆっくりで、いまは学校の用務員さんのような片手間
仕事をこなしている。種類はまりさ種で、立派な「だぜ」口調だがゲスではない。
運び入れる。最近群れに加わったおとなの流れゆっくりで、いまは学校の用務員さんのような片手間
仕事をこなしている。種類はまりさ種で、立派な「だぜ」口調だがゲスではない。
これが先生の言っていた台座の板で、群れに代々伝わる品物である。そして各自で用意するように言い
つけられていたのが、木べらである。形はなんでもよろしい。
その道具に足るものがれいみゅの髪に仕込まれているではないか。何をかいわんや。
つけられていたのが、木べらである。形はなんでもよろしい。
その道具に足るものがれいみゅの髪に仕込まれているではないか。何をかいわんや。
「ッ!ちぎゃうよっ。れいみゅ、けしゃはねむねむでおねぼーさんだったよっ。
だきゃら、おうちにうっかりおどーぐさんをわすれてきちゃったよ?」
だきゃら、おうちにうっかりおどーぐさんをわすれてきちゃったよ?」
言いながら後ろ髪をまとめる特別なお飾りを隠すように無意識にもみあげさんがおてあげさんに
なっている。いやはや、これで隠したつもりなのだろうか。
いまのリアクションを見てぱちぇ先生の疑心が確信に変わった。この子は故意に嘘をついている。
大人ゆをだましてごまかそうとしている。これは何らかの教育的指導を施さねばなるまい。
ぱちぇはふーっとためいきをつくと、そのまま視線を下にずらす。
なっている。いやはや、これで隠したつもりなのだろうか。
いまのリアクションを見てぱちぇ先生の疑心が確信に変わった。この子は故意に嘘をついている。
大人ゆをだましてごまかそうとしている。これは何らかの教育的指導を施さねばなるまい。
ぱちぇはふーっとためいきをつくと、そのまま視線を下にずらす。
「あら、こんなところにあまあまさんがっ?」
「ゆっ?どきょ、どきょおおっぉぉ?あまあまさんはゆっきゅり
れいみゅのおくちにおさまってにぇ?」
れいみゅのおくちにおさまってにぇ?」
ぱちぇはゆっくりと偽りのあまあまさんに気をとられて地面をはいつくばるれいみゅの背後に回りこみ、
さっとへらを引き抜く。
さっとへらを引き抜く。
「わすれたのなら、これをつかえばいいんじゃないのかしら?」
「ゆぴっ? い、いやじゃぁー、れいみゅのへらしゃんがどろしゃんで
べっとべとによごれりゅのは、いやじゃああぁぁーー。ゆんやああああああ!!」
べっとべとによごれりゅのは、いやじゃああぁぁーー。ゆんやああああああ!!」
中には今日のレッスンがなんであるかよく理解せずにきのうぱちぇ先生に言われた今日の持ち物を、
あまりふかく考えずになんとなく持ってきてしまったゆっくりもいたようである。
それぞれが様々なおどーぐさんを持参してきた。
あまりふかく考えずになんとなく持ってきてしまったゆっくりもいたようである。
それぞれが様々なおどーぐさんを持参してきた。
ギターのピックのような、三味線のばちのようなものを持ってきたのは子ちぇんである。そういえば、三味線
って猫の皮を使うという俗説があったよね。
子ありすは、自らの股間にろうろうとそびえ立つ(であろう)ぺにぺにさんを思わせる太くてたくましい
枝を用意してきた。
お帽子さんの中の枝で済ませて不精したのはぷっくり太ったジャイアンまりさである。このようちえん
にはもう1頭子まりさがいて、そちらを(ちび)まりちゃとする関係で以下、こう呼ぶことにする。
みょんは、やはり愛刀を粗末に扱うことはしないのであろうか別のお道具を、3本目の刀を用意してきた。
これでなにかに開眼してあるいは3刀流に目覚めるかもしれない。
って猫の皮を使うという俗説があったよね。
子ありすは、自らの股間にろうろうとそびえ立つ(であろう)ぺにぺにさんを思わせる太くてたくましい
枝を用意してきた。
お帽子さんの中の枝で済ませて不精したのはぷっくり太ったジャイアンまりさである。このようちえん
にはもう1頭子まりさがいて、そちらを(ちび)まりちゃとする関係で以下、こう呼ぶことにする。
みょんは、やはり愛刀を粗末に扱うことはしないのであろうか別のお道具を、3本目の刀を用意してきた。
これでなにかに開眼してあるいは3刀流に目覚めるかもしれない。
そして、にんげんさんの食べ捨てたはーげんだっつ!さんのガラにくっついていた木のヘラを宝物の
ように後生大事に抱えている子ゆっくりれいみゅは、今日それをうっかり持ってきてしまっていたのだ。
ここはキャンプ場が併設された自然公園に近く、にんげんとの接触もぎりぎりありうる山の端で、にんげん
さんの座標でいうと、兵庫県神ノ戸市北区あたりである。
ように後生大事に抱えている子ゆっくりれいみゅは、今日それをうっかり持ってきてしまっていたのだ。
ここはキャンプ場が併設された自然公園に近く、にんげんとの接触もぎりぎりありうる山の端で、にんげん
さんの座標でいうと、兵庫県神ノ戸市北区あたりである。
まだしゃぶったりねぶったりすれば、ほんのりとバニラ味が伝わってくるような思い込みが利いて、
自らを使いべりのしないあまあまさんを持った特別なゆっくりと日頃から吹聴していたれいみゅである。
普段からまわりのゆっくりに自慢げに見せびらかして持ち歩いていたので、まわりの子ゆっくりたちも
自らを使いべりのしないあまあまさんを持った特別なゆっくりと日頃から吹聴していたれいみゅである。
普段からまわりのゆっくりに自慢げに見せびらかして持ち歩いていたので、まわりの子ゆっくりたちも
「ざまぁ」
「いい気味なのぜ」
「いい気味なのぜ」
という冷ややかな目でみている。
「はやく やれみょん」(ニヤニヤ
「ゆっくりしないでやってね、れいむのはじになるから、れいみゅはこれいじょう
むのーをさらさないでねっ?」
むのーをさらさないでねっ?」
「じゅぎょうのさまたげになるんだねぇー、わかれよっ!」(ニッコリ
「れいみゅはさっさと、もってきたとっても とかいはなへらさんとやらで
こねこねしてればいいのよぉっ」(ニタニタ
こねこねしてればいいのよぉっ」(ニタニタ
「ありしゅー、きゃわいいきゃわいいれいみゅに、ありしゅのぼーをかちてねっ?」
となりのお姉さん的に頼るありすに最後の救いを求めるれいみゅであったが、せんなく終わる。
「なにいってるのかしら?ありすがれいみゅのへらさんを『ぺーろぺーろしてあげても
いいのよ?』っていったとき、れいみゅはなんていったかおぼえていないの?
まぁ、れいみゅはとりわけ あんこのーだからおぼえてないでしょうから、いってあげるわ。
『ありしゅのようないにゃかもにょにはもったいにゃいよっ!』って!
『いにゃかもにょ』とまでね!!
いうにことかいて、ありすにたいしていなかものとはっ。ばかなの?しぬの?」
いいのよ?』っていったとき、れいみゅはなんていったかおぼえていないの?
まぁ、れいみゅはとりわけ あんこのーだからおぼえてないでしょうから、いってあげるわ。
『ありしゅのようないにゃかもにょにはもったいにゃいよっ!』って!
『いにゃかもにょ』とまでね!!
いうにことかいて、ありすにたいしていなかものとはっ。ばかなの?しぬの?」
日頃から力による解決を訴えがちで、風見鶏のように機を見るに敏なガキ大将的な存在である
ジャイアンまりさがとどめの一言を発した。
ジャイアンまりさがとどめの一言を発した。
「りゆうもなく じゅぎょうをさぼるゆっくりはせいっさいっ!なのぜ?」
それをきっかけに生徒たちはいっせいに唱和を始めた。
「「「「せいっさいっ!せいっさいっ!せいっさいっ!せいっさいっ!」」」」
れいみゅは愚図りながらも周りの圧力に負けて、大事なへらを自らの手で汚す。
「ゆぅーっ、れいみゅのとってもゆっきゅりできりゅへらしゃん、
ごみぇんにえ?あとでぺーろぺーろしたげりゅから、ゆるちてねっ?」
ごみぇんにえ?あとでぺーろぺーろしたげりゅから、ゆるちてねっ?」
れいみゅ自慢のすぷーんはみるみるうちに茶色に薄汚れていく。後でなめても砂がじゃりじゃりと
やすりのように舌を削るばかりだろうから、れいみゅのゆっくりはもはや永遠にゆっくりしてしまった
のに違いない。
やすりのように舌を削るばかりだろうから、れいみゅのゆっくりはもはや永遠にゆっくりしてしまった
のに違いない。
一時はどうなることかとハラハラしながら見守っていた先生は途中で思いとどまり、介入をしない
ことに決めていた。この子らが大きくなって群れを支える立派な成ゆんになったとき、群れの中で
起こった諍いごとやトラブルを自ゆんたちで解決する能力も育てていかなくてはいけない。今日などは
その格好の機会だろう、と。
ことに決めていた。この子らが大きくなって群れを支える立派な成ゆんになったとき、群れの中で
起こった諍いごとやトラブルを自ゆんたちで解決する能力も育てていかなくてはいけない。今日などは
その格好の機会だろう、と。
というのは建前で。本音は・・・
「ゆぷぷっ。いいきみなのだわ。だいたいれいみゅなんかにあんなおたからは
たからのもちぐされだったのよ。むーきゃっきゃ!せんせー、すっきりぃー」
たからのもちぐされだったのよ。むーきゃっきゃ!せんせー、すっきりぃー」
幸い餡子で餡子を洗うような凄惨な修羅場を迎えることなく教室内には一定の秩序が再び戻り、
みな手元のお団子さんをこねるのに必死だ。おやっ?中でも一匹筋の良い子がいるのだわ。
教室となる洞穴の中を巡回するぱちぇ先生のあんよが1頭の子ゆっくりの横でぴたりと止まった。
このゆっくりが使うお道具さんは、川の上で水切りをするとさぞ遠くまで跳ねていくだろうと
思わせる薄っぺらい石だった。
みな手元のお団子さんをこねるのに必死だ。おやっ?中でも一匹筋の良い子がいるのだわ。
教室となる洞穴の中を巡回するぱちぇ先生のあんよが1頭の子ゆっくりの横でぴたりと止まった。
このゆっくりが使うお道具さんは、川の上で水切りをするとさぞ遠くまで跳ねていくだろうと
思わせる薄っぺらい石だった。
「ゆん、ゆん!おだんごしゃん、こーりょこーりょしてにぇっ!」
しんぐるまざーれいむのだいじな子まりちゃ。狩りの途中で危険な崖からあんよを滑らすという
不幸な事故で番のまりさをなくしたれいむにとって、まりさの忘れ形見ともいえる大切なおちびちゃん。
このやせっぽちで、一見したところ何のとりえのなさそうなまりちゃの作るお団子さんは不思議な黒光り
を放っている。真円に近い形とその怪しげな光沢は見るものの眼をとらえて離さない不思議な魅力を
孕んでいた。
不幸な事故で番のまりさをなくしたれいむにとって、まりさの忘れ形見ともいえる大切なおちびちゃん。
このやせっぽちで、一見したところ何のとりえのなさそうなまりちゃの作るお団子さんは不思議な黒光り
を放っている。真円に近い形とその怪しげな光沢は見るものの眼をとらえて離さない不思議な魅力を
孕んでいた。
「むきゅ、ゆっくりはみかけによらないものなのだわ。でも・・・」
このぱちぇは今でこそゆっくりようちえんの先生に収まってはいるが、元は先代の長を務めていたほどの
賢者である。けんじゃ(笑)ではない。泥団子は精魂込めて転がし続けると変な光を出し始める。とても
元が土くれとは思えないほどの黒真珠のようなつやと、銅鏡のように周りのものを反射するきらめきを
あわせ持つようになるのだ。過去にこのような光を放つモノが出来あがることは稀であった。
前にこのような輝きを見たときには、確か・・・。
賢者である。けんじゃ(笑)ではない。泥団子は精魂込めて転がし続けると変な光を出し始める。とても
元が土くれとは思えないほどの黒真珠のようなつやと、銅鏡のように周りのものを反射するきらめきを
あわせ持つようになるのだ。過去にこのような光を放つモノが出来あがることは稀であった。
前にこのような輝きを見たときには、確か・・・。
ほんの束の間、教室を離れようとふらふらと洞穴を出て、ぱちぇは深呼吸する。まるで新鮮な空気を
吸えば悪い想念がどこかへ飛んでいってくれるとしんじているかのように。そしてささやく。
吸えば悪い想念がどこかへ飛んでいってくれるとしんじているかのように。そしてささやく。
「ことしのふゆはあれるわ・・・」
その独り言ともつかない呟きを外で控える用務員、傷まりさは耳ざとく聞きつけた。
「そーなのかぜ?」
「えぇ、いじょーきしょーのしるしよ。あきのじてんですでにたいへんなことにきっとなるのだわ」(キリッ
ぱちぇは先の黒光りする玉になにかの予兆を見てとったのか。
*
ぴょーん、ぴょーんっ。帰り道をはしるはしる飛び跳ねるゆっくりの影がひとつ。
ぺかぺか光るお団子さんはお帽子さんの中で得意げに自己主張しているかのように、まりちゃが
跳ねるたびころころとその金髪を枕に転がり続ける。
先生に褒められたこのぺけぺかさんを母に早くみせてあげたい。その一心でまりちゃのしゅんっそくの
あんよさんはなおいっそう元気を出してくれるのだった。
ぺかぺか光るお団子さんはお帽子さんの中で得意げに自己主張しているかのように、まりちゃが
跳ねるたびころころとその金髪を枕に転がり続ける。
先生に褒められたこのぺけぺかさんを母に早くみせてあげたい。その一心でまりちゃのしゅんっそくの
あんよさんはなおいっそう元気を出してくれるのだった。
「おかーしゃ、ゆっきゅりただいまぁー!」
「ゆっくりおかえり。やけにげんきだね、なにかいいことでもあったのかい?」
「みちぇっ、みちぇーっ?」
「あら、もうそんなじきなんだね・・・。(ふーっ)」
それは生活に疲れた親のため息であった。
これほど素敵な泥団子さんを見てもしんぐるまざーれいむの額のしわは一向になくならない。まりちゃは
がっかりした。最近おつかれぎみの母もこれを見ればにっこり笑ってくれると思って駆けてきたのに。
これほど素敵な泥団子さんを見てもしんぐるまざーれいむの額のしわは一向になくならない。まりちゃは
がっかりした。最近おつかれぎみの母もこれを見ればにっこり笑ってくれると思って駆けてきたのに。
れいむはしんぐるまざーである。もし自ゆんがこの群れ以外の群れで生息していたら、完全に手詰まり
だっただろう。れいむはもともと狩りに特化した種ではないし、このれいむはいたって平凡なれいむで
あったから群れの施してくれる僅かばかりのしんぐるまざー手当てと、学童を預かってくれる ようちえん
制度がなければ、とても生きてはいけない。れいむはそう考えている。
しかし、赤まりちゃを日中預かってもらえたので、家を空けて狩りに出かけることもできたし、あまり
贅沢をいわなければ、ばったさんやちょうさんといった動物性タンパク質は滅多に口にさせられなくとも
赤まりちゃをやせっぽちながらも子まりちゃまで育て上げることは出来た。
幼いころにばったさんをむーしゃむーしゃ出来なかったツケはいずれ大人ゆっくりになって、狩りの
下手なまりさという形で子が支払うことになるのだろうが。
だっただろう。れいむはもともと狩りに特化した種ではないし、このれいむはいたって平凡なれいむで
あったから群れの施してくれる僅かばかりのしんぐるまざー手当てと、学童を預かってくれる ようちえん
制度がなければ、とても生きてはいけない。れいむはそう考えている。
しかし、赤まりちゃを日中預かってもらえたので、家を空けて狩りに出かけることもできたし、あまり
贅沢をいわなければ、ばったさんやちょうさんといった動物性タンパク質は滅多に口にさせられなくとも
赤まりちゃをやせっぽちながらも子まりちゃまで育て上げることは出来た。
幼いころにばったさんをむーしゃむーしゃ出来なかったツケはいずれ大人ゆっくりになって、狩りの
下手なまりさという形で子が支払うことになるのだろうが。
ばったさんのばねの利いた跳躍力とばったさんの行動パターンを含んだDNA(ゆ伝子)を幼児期に
たくさん取り込めなかったゆっくりはうんどーおんちのゆっくりに長じてなることが多く、それ以前の
段階で既に運動能力の伸びが悪いので子ゆ時代にぶいぶい言わすことが出来ない。
それが積もり積もって大人ゆっくりになったときの群れの中での立場の強弱や発言力の大きさといった
ものにまで影響を及ぼす。親の因果が子に報い、とはこのことだ。
たくさん取り込めなかったゆっくりはうんどーおんちのゆっくりに長じてなることが多く、それ以前の
段階で既に運動能力の伸びが悪いので子ゆ時代にぶいぶい言わすことが出来ない。
それが積もり積もって大人ゆっくりになったときの群れの中での立場の強弱や発言力の大きさといった
ものにまで影響を及ぼす。親の因果が子に報い、とはこのことだ。
それを思うと亡き番との約束、夫のまりさのように立派な狩人に育て上げるという約束を果たせていない
ことに忸怩たる思いを一方で抱きながら、自ゆんはそれでも自ゆんのできるベストは尽くしてきたとの
思いも他方でれいむにはある。
ことに忸怩たる思いを一方で抱きながら、自ゆんはそれでも自ゆんのできるベストは尽くしてきたとの
思いも他方でれいむにはある。
翌朝、がさごそという物音で目を覚ましたれいむは疲れきった身体を無理にひきずり起こした。
「こりぇをおとーしゃのおぼーししゃんにかざっちぇっと。ゆふっ。いいかんじぃー」
まりちゃはおそなえのつもりだろうか、"うろ"の奥に大切に飾られた亡き父の立派なお帽子さんに
ぺかぺかさんを備えているところだ。
ぺかぺかさんを備えているところだ。
「ゆ、そうだねっ。おとーしゃもおそらのゆっくりプレイスできっとゆっくりほほえんでるよ」
背後からの母のやさしい声にまりさがぱぁーっと顔をほころばせた。
れいむはさまざまな嫌な想念を振り払うようにゆっくり首を振ると、久しぶりにいいお顔をして
みせた。にっこりとまりちゃに笑いかけると2頭並んでおとーしゃのお帽子に礼拝する。
れいむはさまざまな嫌な想念を振り払うようにゆっくり首を振ると、久しぶりにいいお顔をして
みせた。にっこりとまりちゃに笑いかけると2頭並んでおとーしゃのお帽子に礼拝する。
「「おとーしゃ、きょうもいちにち ゆっきゅりしていってね!!」」
まりちゃをようちえんに送り出し、今日も今日とてれいむは狩りに精を出す。冬ごもりに備えて越冬用の
備蓄食料をガンガン蓄えないといけないのだ。だが、これがれいむにとってはなかなか至難の業である。
今年は殊に山の恵みが少なくて、群れの他のゆっくりも同様の苦戦を強いられていた。
備蓄食料をガンガン蓄えないといけないのだ。だが、これがれいむにとってはなかなか至難の業である。
今年は殊に山の恵みが少なくて、群れの他のゆっくりも同様の苦戦を強いられていた。
「こんなにふさくのとしはめずらしいのだわ、そうおもわなくって、大ありす?」
長は群れで一番の古老、ありす一族の最長老、大ありすに相談してみた。
「えー、えー、おかげしゃまでありしゅは100しゃい、100しゃいっ!」
「ごめんなさいねぇ、おおおばさまはさいきん、すっかりぼけられてしまって」
と世話役の孫ありすが謝る。空振りに終ったのだわ、むっきゅー。
でも、ひとつだけ確認できたことがあった。今年の夏は大ありす程の老齢化したゆっくりでさえ
ぽっくり逝かずにしのげたということである。言い換えるならば、冷夏だったということだ。
そこから予測できるのは天候の不順とこの秋の実りの少なさである。
でも、ひとつだけ確認できたことがあった。今年の夏は大ありす程の老齢化したゆっくりでさえ
ぽっくり逝かずにしのげたということである。言い換えるならば、冷夏だったということだ。
そこから予測できるのは天候の不順とこの秋の実りの少なさである。
「やはり、ことしは"あの"じゅんびをはやくからしておいて、せいかいだったのだわ。むっきゅん」
*
「けしぇらん、ぱっさーらん♪ ゆんっゆ、ゆーん」
すすきの葉をくちに咥えて、ぶんぶんふりまわしながらまりちゃは1ゆん秋の野を往く。ようちえんが
おわった夕方、まりちゃはよく群れの子ゆらと離れて一人遊びをする。それはそうと消せ、らん。
ぱっさー、らんって、どんな らんなのかしら?おとなのちぇんにこんど聞いてみようか。
物思いにふけってよそみをしてしまった。
おわった夕方、まりちゃはよく群れの子ゆらと離れて一人遊びをする。それはそうと消せ、らん。
ぱっさー、らんって、どんな らんなのかしら?おとなのちぇんにこんど聞いてみようか。
物思いにふけってよそみをしてしまった。
「いちゃっ!」
まりちゃの眼になにかの蟲が飛び込んだ。ゆきむしである。雪が降り出すちょっと前に、たんぽぽの白い
綿毛のようなふわふわとした毛を備えたとても小さな蟲が飛び交うようになると、本格的な冬の訪れは
すぐである。
綿毛のようなふわふわとした毛を備えたとても小さな蟲が飛び交うようになると、本格的な冬の訪れは
すぐである。
「んっも~っ。むししゃんはいぢわるしにゃいでにぇっ。ぷんっぷん」
まりちゃはなんども眼をしばたかせて、砂糖水の涙で蟲を洗い流した。
「ゆっへぇーっ。なきむしまりちゃがゆきむしにおそわれて、めそめそ
ないてるんだぜぇー?さすが、さいっじゃくのまりさなんだぜぇ~。
ムシいかのそんざいなのぜ。おなじまりさのつらよごしだから、ゆっくりして
逝ってね?」
ないてるんだぜぇー?さすが、さいっじゃくのまりさなんだぜぇ~。
ムシいかのそんざいなのぜ。おなじまりさのつらよごしだから、ゆっくりして
逝ってね?」
「ちぎゃうよっ。まりちゃ、そんにゃよわむしけむし じゃにゃいよっ」
「おお、こわいこわい。ちびまりちゃにほんきだされたら、まりさ、ひとたまりも
ないのぜぇー。くわばらくわばら」
ないのぜぇー。くわばらくわばら」
げらげらと笑いながら、同じ月齢でありながら栄養状態もよく丸々と肥え育ったまりさ(じゃいあん(と)
まりさ)は、からかいながら去っていった。
まりさ)は、からかいながら去っていった。
仲間同士でじゃれあって遊んでいられる楽しい時間ももうじき終わりを告げる。長い冬ごもりの時期が
近づいているのだ。この蟲の訪れが一つのシグナルである。それを幼き子らはまだ知らない。
日も落ちてきて、あたりの空気が冷え冷えとしてきた。寂しくなってきたまりちゃもおうちに帰ることに
した。
近づいているのだ。この蟲の訪れが一つのシグナルである。それを幼き子らはまだ知らない。
日も落ちてきて、あたりの空気が冷え冷えとしてきた。寂しくなってきたまりちゃもおうちに帰ることに
した。
*
「じゃあ、ありす、つぎのはるにまたげんきな おかおをみせあいっこしましょうね?」
「ゆーん、せんせいもおげんきでねっ?」
「「「「また、はるにっ!!」」」」
だが子ありすとは裏腹に親のありすとちぇんの番は複雑な顔をしている。恐らくどちらの側もそろって
顔をつきあわせることはできまい。ぱちぇの寿命がつきるか。はたまた、自ゆんたちが越冬に失敗するか、
その両方か。
もっといえばぱちぇが置いていったこの配給の板である。これが意味するところを思うと、親ゆは
さらに憂鬱な気分になるのだった。
顔をつきあわせることはできまい。ぱちぇの寿命がつきるか。はたまた、自ゆんたちが越冬に失敗するか、
その両方か。
もっといえばぱちぇが置いていったこの配給の板である。これが意味するところを思うと、親ゆは
さらに憂鬱な気分になるのだった。
先代の長ぱちぇ、ようちえんの先生のぱちゅりー・なれっじはありす一家の次に隣のしんぐるまざー
れいむの元を訪ねるつもりだった。
そこでおうちに戻った子まりちゃとちょうど家のまえで鉢合わせする格好になった。
れいむの元を訪ねるつもりだった。
そこでおうちに戻った子まりちゃとちょうど家のまえで鉢合わせする格好になった。
「あら、まりちゃ。ゆっくりしていってね!」
「ゆっきゅりしていっちぇね!しぇんしぇー、きょうはどうしちゃのっ?」
「ゆーん、なんだかそうぞうしいねっ。れいむはなれないかりのおしごとでくーたくーたなんだから
ちょっとはしずかにしてねっ。ゆっくりさせてほしいよぉ・・・」
ちょっとはしずかにしてねっ。ゆっくりさせてほしいよぉ・・・」
「ごめんなさい、おじゃまだったかしら?」入り口からすっと顔だけをぱちぇがのぞきこませる。
「ぱ、ぱちぇさま、ぶへぇっ。こんなむさくるしいところでよろしければ、どうぞどうぞ!」
慌てて飛び起きたれいむはそれまで横になっていたござを裏返すと、客ゆんに差し出した。
「おきづかいはけっこうなのだわ。それより、えっとーのじゅんびはどんなぐあいなのかしら?」
「ゆーっ。かんばしくないよっ。えっとーてあてが のぞみのつなっ!なんだよっ。かわいそうな
しんぐるまざーのれいむにいっぱい はいりょしてねっ!!」
しんぐるまざーのれいむにいっぱい はいりょしてねっ!!」
ぱちぇはきまずそうに、まりちゃを家から遠ざけにかかった。
「まりちゃ、ちょっとおとなどうしのはなしになるから、すこしおそとであそんでいてくれない
かしら?」
かしら?」
「ゆっきゅりりきゃいしたよ」
まりちゃは素直に言うことを聞いた。おうちを出るときに、頬に十字傷の入った大柄なまりさが
お帽子さんをぺったんこにして板を何枚も頭に載せてずーりずーりとはってくる所にすれ違った。
まりさは尋ねる。
お帽子さんをぺったんこにして板を何枚も頭に載せてずーりずーりとはってくる所にすれ違った。
まりさは尋ねる。
「そのいたさんはにゃんにゃの?どっかでみちゃきがしゅるよ」
「しっているのかぜ。ちびまりちゃがとくいだった、おだんごさんこーねこーねのいたなんだぜ?」
「ゆゆっ!おもいだしちゃよっ。まりちゃ、あれ、だーいしゅきっ!!」
中では深刻な会話が続いていた。
「ごめんなさい、かりのとりぶんをいっぱいわけておさめてくれたゆっくりがゆうせんてきに
いいめをみるのよ。れいむはむれにおさめたごはんさんがちょっとだったから、ちょっとだけね。
わけまえにはあまりきたいしないほうがいいのだわ」
いいめをみるのよ。れいむはむれにおさめたごはんさんがちょっとだったから、ちょっとだけね。
わけまえにはあまりきたいしないほうがいいのだわ」
「どぼじでぞんな"ごどい"う"の"おおぉぉー?ぱちぇはれいむに お、おっちねっ!ていうの?」
「れいむっ!あるていどかくごはしていてねっ。このいたさんをおいていくから。あとはいわなく
てもわかるわよねッ?!」
てもわかるわよねッ?!」
「・・・いやじゃよおおぉぉぉー。れいむ、いつまでもおちびちゃんのおそばでおちびちゃんが
おおきくなるところをみていたいよっ。おちびちゃんがしあわせ~なけっこんをしておちびちゃんの
そのまたおちびちゃんをつくるでしょぉー。それをりょうのもみあげでだっこしたいんだよっ!」
おおきくなるところをみていたいよっ。おちびちゃんがしあわせ~なけっこんをしておちびちゃんの
そのまたおちびちゃんをつくるでしょぉー。それをりょうのもみあげでだっこしたいんだよっ!」
「ゆっくりしたけっかがこれなのだわ。しんぐるまざーはもっともっとかりにせいをだすべき
だったのよ」
だったのよ」
「・・・わかってるよ。ちょっとぐちをいっててみただけさね。ゆっくりごめんなさい、ぱちぇさま」
「つとめをはたすのよ。ぱちぇがいえるのはそれだけなのだわ。むっきゅん」
「ちょいとごめんなすってなのぜ。よいしょっと」
外で待機していた傷まりさが頃合や良しと中へ板を運び込んだ。
タイミングをくれぐれも間違えるな、とだけ言い残して先代の長たちは去っていった。後には
深刻な顔のれいむと板だけが残されている。
深刻な顔のれいむと板だけが残されている。
「ゆ?しぇんせー、ごようじしゃんはもう しゅんだの?」
「あら、ごめんなさい。すっかりながいしてしまって。おつかれさまでした」
「?」
傷まりさがいわくありげな眼差しでちびまりちゃのことをじーっと見つめている。
「おちび。・・・つよく、いきぬくんだぜ?」
「・・・???」
首をひねりながら"うろ"に入ると珍しく母親の方から子まりさに身を寄せてきた。
「おちびちゃん、すーりすーりしようね。いっぱいするね。たーくっさんするよ」
すーりすーり。すーりすりすり。
やーん、くすぐったいよ。と言いながら、まりさはこんなに母親と密接にスキンシップを取ったのは
いったいいつ以来のことだっただろうかと考えていた。
やーん、くすぐったいよ。と言いながら、まりさはこんなに母親と密接にスキンシップを取ったのは
いったいいつ以来のことだっただろうかと考えていた。
「やめちぇね、まりちゃ、もうおこしゃまじゃないのじぇ~。ゆんやぁー」
言いながらもまんざらでもない様子のちびまりさである。心からくつろいで、母親に甘えるモードに
入っていることが言葉遣い一つとっても伺える。
入っていることが言葉遣い一つとっても伺える。
季節は進み、本格的な冬の訪れとともに各家は入り口を堅く固く閉ざして、寒風すら通さぬように強力な冬結界を
張って越冬を開始する。
張って越冬を開始する。
しんぐるまざーれいむ一家の危機はにんげんさんカレンダーで越冬開始から28日後、ゆっくりにとっては赤ゆが
子ゆになるほどのたくっさんの日を経て後、やってきた。遂にしんぐるまざーれいむ一家の食料備蓄が尽きたのだ。
もう、これまでか。母れいむは覚悟を決めた。
子ゆになるほどのたくっさんの日を経て後、やってきた。遂にしんぐるまざーれいむ一家の食料備蓄が尽きたのだ。
もう、これまでか。母れいむは覚悟を決めた。
「ゆーっ、おにゃかしゅいたのじぇー。ごはんしゃんまじゃぁー?」
「・・・ごめんね、おちびちゃん、もうごはんさんはないんだよ」
「みゃッ!どーいうことなのじぇ?」
「おちついてきいてね。おちびちゃんはこれから『おだんごさん、こーろこーろ』するんだよっ?
おかーさんが"おたべ"をするでしょ? でもまりちゃがむけーかくにむーしゃむーしゃしてたら、
ふゆがあけるまでは、ぜったいもたないんだよっ」
おかーさんが"おたべ"をするでしょ? でもまりちゃがむけーかくにむーしゃむーしゃしてたら、
ふゆがあけるまでは、ぜったいもたないんだよっ」
「おかーしゃがにゃにをいっちぇるのか、ぜんっじぇんわからにゃいんだじぇ?」
いや、わかりたくないだけなのだ。本当は子まりちゃにもわかっているのだ。母が「さぁ、おたべなさい!」
をして子ゆの生命を繋ぐ決断をしない限り、一家全滅の運命は逃れようがないということは確定的な動かし
がたい事実である。
をして子ゆの生命を繋ぐ決断をしない限り、一家全滅の運命は逃れようがないということは確定的な動かし
がたい事実である。
「おちびちゃんはおだんごこーねこーねがおじょうずだったよ。れいむはとってもほこらしくって、
いまでもそのことをおもうとあんこさんがぽーかぽーかするよ。おちびちゃんは、おかーしゃのあんこ
さんをなるべくこわけにして、まるめて、おだんごさんをできるだけたーっくさんつくってね。
そして、ほんとうにめがまわってうごけなくなるぎりぎりまでたべるのをがまんするんだよっ。そうすれば、
きっとはるさんがやってきて、おひさまぽーかぽーかだよっ!れいむのぶんまでつよく、りっぱでやさしい
おとなゆっくりになってねえぇー?」
いまでもそのことをおもうとあんこさんがぽーかぽーかするよ。おちびちゃんは、おかーしゃのあんこ
さんをなるべくこわけにして、まるめて、おだんごさんをできるだけたーっくさんつくってね。
そして、ほんとうにめがまわってうごけなくなるぎりぎりまでたべるのをがまんするんだよっ。そうすれば、
きっとはるさんがやってきて、おひさまぽーかぽーかだよっ!れいむのぶんまでつよく、りっぱでやさしい
おとなゆっくりになってねえぇー?」
「いやじゃよおおぉぉー。まりちゃをおいてかないじぇにぇー?」
「いいかい、まずはおだんご、こーろこーろ、だよっ。おなかがぺーこぺーこになってももうひとふんばり
がまんしてから、1こだけくちにするんだよ。さいごに、まりちゃのいいおかおさんをみせておくれだよ?」
がまんしてから、1こだけくちにするんだよ。さいごに、まりちゃのいいおかおさんをみせておくれだよ?」
「ゆわぁーん、おかーしゃ、だめなのじえぇー。おかーしゃ、ゆっきゅり、ゆっきゅりっ!」
「さいごにれいむはまりちゃのえがおがみたかったよ・・・・さぁ、おたべなさいっ!!」
ぱかっとマンガみたいなふざけた擬音が鳴ると、そこにはまっぷたつに割れたおまんじゅうさん、れいむの
顔を模した人形焼の大型版が縦に二つに割れてころんと転がるばかりだ。生き物だった痕跡など微塵も
見られない。不思議生ものゆっくりがどうしても生物とは認められない一つの越えがたい壁である。
顔を模した人形焼の大型版が縦に二つに割れてころんと転がるばかりだ。生き物だった痕跡など微塵も
見られない。不思議生ものゆっくりがどうしても生物とは認められない一つの越えがたい壁である。
「おかあああああしゃぁぁぁぁーーんっ!!!」
気が済むまで泣きはらすと、まりちゃは重い身体を引きずって、部屋の片隅に立てかけられた板を引き倒すと、
ヘラとなる平たい石をお帽子さんから引っ張り出した。まだ、なにかをしていた方が気がまぎれる。それが
自ゆんの好きだったお団子こーねこーねの作業であるなら尚更だと思った、が、よほどひどかった。
これは何の罰ゲームなのだろう。最愛の母の餡子を練り練りと小分けにして、丸薬のようにこねくり回す。
保存食のように母の中身を108つの(もし数える能力があったなら、偶然そういう数だったとわかったであろう)
断片に分け、お団子さんに仕立て直す。
ヘラとなる平たい石をお帽子さんから引っ張り出した。まだ、なにかをしていた方が気がまぎれる。それが
自ゆんの好きだったお団子こーねこーねの作業であるなら尚更だと思った、が、よほどひどかった。
これは何の罰ゲームなのだろう。最愛の母の餡子を練り練りと小分けにして、丸薬のようにこねくり回す。
保存食のように母の中身を108つの(もし数える能力があったなら、偶然そういう数だったとわかったであろう)
断片に分け、お団子さんに仕立て直す。
1日1個のペースで3月と半、節制が利くゆっくりであればもう少し長持ちさせられるのだろうか。
まりちゃは暗闇の中で日がな1日ぼーっと過ごす。心はとうの昔に死に絶えた。ときどき、まだらぼけのように
ふっと昔の健全な子どもの頃の記憶がよみがえり、いっしゅん目に輝きが戻るのだが、それを闇に引き戻すのは
決まって父のお帽子さんを飾り台に据えた黒光りする泥団子だった。それは鏡のようにまりちゃの顔を映し出し、
その写像は決まってまりちゃにこう問いかける。
ふっと昔の健全な子どもの頃の記憶がよみがえり、いっしゅん目に輝きが戻るのだが、それを闇に引き戻すのは
決まって父のお帽子さんを飾り台に据えた黒光りする泥団子だった。それは鏡のようにまりちゃの顔を映し出し、
その写像は決まってまりちゃにこう問いかける。
「ねぇ。にゃんでおまえがいきのこってりゅの?おまえがおっちねばよかったのにっ!」
そう問いかけるのは、心の中のまりさ自身の写像でもあるような気がするし、まだ母を知りそめし頃の父まりさの
少年時代の姿でもあるような気がした。父に何故母を守れなかったと問い詰められているようで、割れそうに
心が痛い。それでますます現実から逃避してしまうのだった。今では思い出したように、母の餡をしゃぶるという
最初は厭わしくてたまらなかった行為が唯一のゆっくりできる時間になった。それでも1回1個以上は食べない
というお約束だけは律儀に守られ続けている。それは母の執念にも似た想いが母の子宮にも似たこの閉鎖空間を
支配しているせいなのかもしれない。
少年時代の姿でもあるような気がした。父に何故母を守れなかったと問い詰められているようで、割れそうに
心が痛い。それでますます現実から逃避してしまうのだった。今では思い出したように、母の餡をしゃぶるという
最初は厭わしくてたまらなかった行為が唯一のゆっくりできる時間になった。それでも1回1個以上は食べない
というお約束だけは律儀に守られ続けている。それは母の執念にも似た想いが母の子宮にも似たこの閉鎖空間を
支配しているせいなのかもしれない。
「(にゃんで、まりちゃはおかーしゃにさいご、ほほえんであげられなきゃったのかにゃ?
あんにゃにみたがっちぇたいいおかおも みせちぇあげられにゃかったまりちゃは、おやふこー
で、いきてりゅしかくがにゃいんじゃよ?)」
あんにゃにみたがっちぇたいいおかおも みせちぇあげられにゃかったまりちゃは、おやふこー
で、いきてりゅしかくがにゃいんじゃよ?)」
*
やがて春がやって来た。
こつ、こつ。卵の殻を内から雛が割るように、冬ごもりを終えた各戸から、冬の結界を内から破る元気な音が
群れ中にこだまする。先代の長ぱちぇもどうやら、今年も生き延びることに成功したようだ。
基礎代謝が低いぱちゅりー種ならではのしぶとさである。
ぱちぇは、昨年めぼしをつけていた家々を回る。きっと、中で親が「お食べなさい」をして、子だけが
残されたに違いなく、子の力だけでは堅く封鎖された結界をこじあけられないだろう家々を回って歩く
ところまでして、初めてお団子こーろこーろの辛いミッションは完結するのだ。
こつ、こつ。卵の殻を内から雛が割るように、冬ごもりを終えた各戸から、冬の結界を内から破る元気な音が
群れ中にこだまする。先代の長ぱちぇもどうやら、今年も生き延びることに成功したようだ。
基礎代謝が低いぱちゅりー種ならではのしぶとさである。
ぱちぇは、昨年めぼしをつけていた家々を回る。きっと、中で親が「お食べなさい」をして、子だけが
残されたに違いなく、子の力だけでは堅く封鎖された結界をこじあけられないだろう家々を回って歩く
ところまでして、初めてお団子こーろこーろの辛いミッションは完結するのだ。
まだ体調が越冬から完全に戻ってはいないのか、ぐらりと身体のバランスをくずしかけた老ぱちぇを脇から
たくましい傷まりさが支える。扉をこじ開ける力仕事を仰せつかったのだ。、
たくましい傷まりさが支える。扉をこじ開ける力仕事を仰せつかったのだ。、
「ぱちぇ、もうすこしたいちょうがよくなってからでも・・・・」
「むきゅ、ことはいっこくをあらそうのだわ。ぱちぇがもたもたしていたせいで、たすかるいのちが
たすからなければ、ぎせいになったおやたちがむくわれないのだわっ!いそいで、まりさっ!」
たすからなければ、ぎせいになったおやたちがむくわれないのだわっ!いそいで、まりさっ!」
「ゆっくりりかいしたのぜ」
「まりちゃはぶじかしら?しんぐるまざーれいむの ごはんさんのびちくがいちばんすくなくて、
いちばんきがかりなのだわ」
いちばんきがかりなのだわ」
「ゆ。ついたのぜ。ぱちぇ、ちょっとじりきでたってくれなんだぜ。ゆっがぁぁー!」
どしん、どしんと何度も結界に体当たりをする。やがて、さしもの頑丈な結界にも亀裂が入る。最後の
一撃で傷まりさは結界の破片ごと中に転がり込んだ。
一撃で傷まりさは結界の破片ごと中に転がり込んだ。
「ゆーっ。いたたたっ。ゆゆっ、まりちゃなのかぜ?へんじをするんだぜっ?」
そこには部屋の片隅で父の形見のお帽子をびりびりに引き裂いて身にはおり、少しでも暖をとろうと
思ったのか、黒い繊維にうずもれた子ゆの姿があった。
頬と目が落ち窪んで、すっかり体内餡が減ってやせっぽちだった身体がさらにやせさらばえているが、まだ
かろうじて生きてはいるようだった。
思ったのか、黒い繊維にうずもれた子ゆの姿があった。
頬と目が落ち窪んで、すっかり体内餡が減ってやせっぽちだった身体がさらにやせさらばえているが、まだ
かろうじて生きてはいるようだった。
こうしてレスキューされた5頭のみなしご赤・子ゆらは群れの庇護下に入って、1月ほどはリハビリの期間に
あてられた。さつきの声を聞く頃、
あてられた。さつきの声を聞く頃、
「そろそろ、あのこたちもはたらきはじめてもいいころだとおもうのだわ。きずまりさ、
あなたに はたらきかけのやくわりをおねがいしたいのだけど・・・」
あなたに はたらきかけのやくわりをおねがいしたいのだけど・・・」
これは本来ならぱちぇが嬉々としてやっていた仕事なのだろう。そして、自らの老い先短きを知り、
別の誰かにバトンを渡そうとしているんだと傷まりさは思った。果たして、老ぱちぇのように
上手く出来るかは自信がないが、やれるだけのことはやってみようと思った。
別の誰かにバトンを渡そうとしているんだと傷まりさは思った。果たして、老ぱちぇのように
上手く出来るかは自信がないが、やれるだけのことはやってみようと思った。
傷まりさの担当はちびまりさだった。他にも高いゆん格を持った立派なゆっくりたちがそれぞれの担当の
みなしごゆっくりたちをめいめいでカバーしている。
みなしごゆっくりたちをめいめいでカバーしている。
「にゃーんだ、まちゃ きじゅまりさなのじぇ。どーせ、ゆーこときくまじぇ
かえらないのじぇ?」
かえらないのじぇ?」
「ゆふふ、よくわかってきたみたいなんだぜ?」
「で、きょーはどーしゅりゅのじぇ?」
「ぴくにっくさんなんだぜ?たまにはおそとのくーきで
すーはーすーはー しんこきゅうするのもわるくないのぜっ!」
すーはーすーはー しんこきゅうするのもわるくないのぜっ!」
傷まりさがおちびを引きずり出して連れて行った先は、護岸をにんげんさんがこんくりで固めた人造の湖、
というか大きな水たまりだった。
というか大きな水たまりだった。
「こころがいたいときに、まりさ よくここにきてるのぜ」
それきり、水面を見ながら背を向けて傷まりさはなにも語らない。だからちびまりさも意地でもなにも
しゃべらないつもりだった。だが、我知らず、つい独り言を口走ってしまったようだ。
しゃべらないつもりだった。だが、我知らず、つい独り言を口走ってしまったようだ。
「どーちぇ、まりちゃはひとりぼっちにゃんだじぇ」
「そーでもないんだぜ。
むれのみんながまりちゃのあたらしいかぞくになるのぜ?」
むれのみんながまりちゃのあたらしいかぞくになるのぜ?」
「・・・にゃら、きずまりさがまりちゃのおとーしゃになっちぇよっ!
あたらしいおとーしゃになっちぇね?なれりゅの?
どーにゃの」
あたらしいおとーしゃになっちぇね?なれりゅの?
どーにゃの」
「ゆ。それはできないんだぜっ」
「ほりゃ、やっぱりできないでちょぉー?できもしないきれいごちょを、
えらしょーなかおしちぇ ゆーにゃああああぁぁぁ!!!」
えらしょーなかおしちぇ ゆーにゃああああぁぁぁ!!!」
すねた子どものようにぷいっと顔を背けたまりちゃの横顔に傷まりさはなおも熱い視線を送り続ける。そのとき
はっと雷に打たれたように子まりちゃの表情が変わる。このゆは自ゆんに何かをつたえようとしている。
それは何かのメッセージを必死に伝えようとして、そこを必死で思いとどまる、葛藤する大人の顔だった。
はっと雷に打たれたように子まりちゃの表情が変わる。このゆは自ゆんに何かをつたえようとしている。
それは何かのメッセージを必死に伝えようとして、そこを必死で思いとどまる、葛藤する大人の顔だった。
そして、その何かをなぜ言葉にして言ってしまわないのかといえば、大事な秘伝、奥義の類は決して言葉では
伝えられないからなのだった。それは表面的な言葉の層を越えて直観的に把握され、伝承される類のものなのだ。
言葉にはれっきとして限界がある。万感の思いも口にした瞬間にたちまち安っぽいものに成り下がる。
情報の質を劣化させずに伝達するためには情報を言葉でこと分けするのでは駄目だ。喩えるなら、豚の部位をばらばらに
切り分けて渡すのではなく、まるごと豚1頭を生贄として捧げなくてはならないのだった。
その豚をして尽きせぬ泉のように受け手が常に意味を汲みだし続けることで、初めて最初の送り主の尽きせぬ思いに
等しい量の情報を受け手が引き受けることに成功したことになる。
伝えられないからなのだった。それは表面的な言葉の層を越えて直観的に把握され、伝承される類のものなのだ。
言葉にはれっきとして限界がある。万感の思いも口にした瞬間にたちまち安っぽいものに成り下がる。
情報の質を劣化させずに伝達するためには情報を言葉でこと分けするのでは駄目だ。喩えるなら、豚の部位をばらばらに
切り分けて渡すのではなく、まるごと豚1頭を生贄として捧げなくてはならないのだった。
その豚をして尽きせぬ泉のように受け手が常に意味を汲みだし続けることで、初めて最初の送り主の尽きせぬ思いに
等しい量の情報を受け手が引き受けることに成功したことになる。
ともあれ、今まりちゃが傷まりさから汲みだすべきメッセージとは。
まりちゃは足りない餡子脳をフル回転させて、禅問答の公案を考えるように頭を悩ませた。やがて
とても長い時間をかけて、ひとつの仮説にたどりつく。
まりちゃは足りない餡子脳をフル回転させて、禅問答の公案を考えるように頭を悩ませた。やがて
とても長い時間をかけて、ひとつの仮説にたどりつく。
「ゆっきゅり、りきゃい・・・。ちがうのじぇ。ゆっくりりかいしたよっ!」
はっと傷まりさが目を見開いたので、この方向で間違っていないことをまりちゃは、いや、かつてまりちゃだった
ものは確信した。
ものは確信した。
「まりちゃは・・・ゆっ。まりさは、まりさだよっ!」
「ゆーんっ!それでこそまりさがみこんだおちびなのぜっ!
ようこそ、まりさっ。まりさはこれで はれてまりさたちのクラン(CLAN)になったんだぜっ!!」
ようこそ、まりさっ。まりさはこれで はれてまりさたちのクラン(CLAN)になったんだぜっ!!」
CLAN ないし CLANNAD。一族、家族集団の意。餡庫、
略していうと庫、などにもその言葉は隠れ住んでいたりする。
略していうと庫、などにもその言葉は隠れ住んでいたりする。
まりちゃが大人集団、すなわちまりさたちに受け入れられるためには、まりちゃがまりさになる、すなわち成熟した
大人ゆっくりになる必要があったのだ。
大人ゆっくりになる必要があったのだ。
かつて、まりちゃは餡子で繋がった大切な存在を失った。父まりさを事故で失い、母れいむをお食べなさいで失った。
だが、まりちゃは、まりさには、直接餡子を分かち合ってこそいないが、まりさたちという同族集団が全国津々浦々に
たっくさんいるのだということに気づいた。どうしようもなく突然気づいてしまったのだ。だから、もう嘆き悲しむ
ことはない。
だが、まりちゃは、まりさには、直接餡子を分かち合ってこそいないが、まりさたちという同族集団が全国津々浦々に
たっくさんいるのだということに気づいた。どうしようもなく突然気づいてしまったのだ。だから、もう嘆き悲しむ
ことはない。
後日。人造の湖の畔に、ついこの間までまりちゃだったちびまりさが1ゆんでたたずんでいる。横にはもう傷まりさは
立っていない。傷まりさがひょっとして待っているのでは?とおちびは思い訪ねてみたが空振りだった。
立っていない。傷まりさがひょっとして待っているのでは?とおちびは思い訪ねてみたが空振りだった。
こころがいたいときにここにきてるのぜ、と傷まりさは言っていた。ならば、もうここに来なくて良くなった傷まりさは、
こころの傷が癒えたのかもしれない、とちびまりさは思った。
こころの傷が癒えたのかもしれない、とちびまりさは思った。
将来、自ゆんと同じ種類の苦しみを味わったゆっくりに寄り添ってはなしをよく聞き、共感してともに泣き、そのゆへと
こころの架け橋を上手く渡せたときにいつかきっとちびまりさのこころの傷も少しは癒されるのではないだろうか。
今はもう群れを去ってしまった傷まりさにそう教えられた気がした。
こころの架け橋を上手く渡せたときにいつかきっとちびまりさのこころの傷も少しは癒されるのではないだろうか。
今はもう群れを去ってしまった傷まりさにそう教えられた気がした。
了)
【あとがき・おまけ】
『白い蛇ねむる島』というおはなしもこの間書いていたのですが、どうやら本作の傷まりさの前日譚であるようなので、
おまけでくっつけてみました。独立したSSとして投下しようとも思いましたが、いろいろうるさい事を言う方もいるので。
それでは始まります。
『白い蛇ねむる島』というおはなしもこの間書いていたのですが、どうやら本作の傷まりさの前日譚であるようなので、
おまけでくっつけてみました。独立したSSとして投下しようとも思いましたが、いろいろうるさい事を言う方もいるので。
それでは始まります。
『白い蛇ねむる島』
「おぼうししゃん、ゆっくりはなれないでねっ。ゆふふっ、よくできまちたっ!」
ふぁさっとお辞儀をするように無二の親友、お帽子さんを優しく湖面に浮かべる。このとき
一番警戒すべきは、脱いだ勢いが強すぎてお帽子さんだけがそのまま意思を持ったかのように
水際からゆらりと離れていってしまうことだ。
一番警戒すべきは、脱いだ勢いが強すぎてお帽子さんだけがそのまま意思を持ったかのように
水際からゆらりと離れていってしまうことだ。
それをとどめるのは、思い込みかもしれないが、ゆっくりとお飾りとを繋ぐ赤い糸のごとき存在に
対する信頼、信仰のようなものである。お帽子さんとゆっくりとは かそけきホットラインのような
ものでつながっていて、言葉以前のような漠然としたメッセージをほのかに伝え合っている、
のかもしれない。
友の乗船を待つようにゆらゆらと漂って、乗り手を促すお帽子さんの声に誘われてぴょーんと
飛び移る。あつらえたかのようにすっぽりとお尻をつつみこむ安心感に身体のこわばりがほどけて
いくのが自ゆんでもわかる。うぉーたーべっどの上に身を投げ出すようにリラックスして身を
委ねるほど、波の上がり下がりに同化して舟を上手く操れている気がする。
対する信頼、信仰のようなものである。お帽子さんとゆっくりとは かそけきホットラインのような
ものでつながっていて、言葉以前のような漠然としたメッセージをほのかに伝え合っている、
のかもしれない。
友の乗船を待つようにゆらゆらと漂って、乗り手を促すお帽子さんの声に誘われてぴょーんと
飛び移る。あつらえたかのようにすっぽりとお尻をつつみこむ安心感に身体のこわばりがほどけて
いくのが自ゆんでもわかる。うぉーたーべっどの上に身を投げ出すようにリラックスして身を
委ねるほど、波の上がり下がりに同化して舟を上手く操れている気がする。
――なみまにゆられると、ほんちょにゆっきゅりできりゅのじぇ~。
原始共産状態のような無産状態を生きるゆっくり種にとって、お帽子さんなどのお飾りは唯一と
いってもいい個ゆんに属する私物である。また同時にゆん生の大半を共にする友といっていい
のかもしれない。
いってもいい個ゆんに属する私物である。また同時にゆん生の大半を共にする友といっていい
のかもしれない。
小船に揺られて器用に右へ左へ棹を操りまりちゃが向かうのは、離れ小島のように沖に浮かぶ中州
である。群れのゆっくりは誰1ゆんとして立ち入らないそのもりのなかへ、古いやしろの鎮座する森
へと子ゆは1ゆんで踏み入っていく。
である。群れのゆっくりは誰1ゆんとして立ち入らないそのもりのなかへ、古いやしろの鎮座する森
へと子ゆは1ゆんで踏み入っていく。
*
波に揺られながら、まりちゃが思い出すのは、最初に島を訪れたときに自ゆんを迎えたへびがみさま
との邂逅である。何度目かの上陸を試みて失敗した後、ようやくとりつき口を見つけて島の土を初めて
踏んだその日のことだった。
との邂逅である。何度目かの上陸を試みて失敗した後、ようやくとりつき口を見つけて島の土を初めて
踏んだその日のことだった。
四方は切り立った斜面や、ゆっくりには侵入不可な湿地状になっていてそれこそ取り付く島もない感じ
だったのだが、鳥居を正面に見据えて正々堂々と乗り込もうとしたときに初めて島のガードが緩むのを
直感した。そこからは踏み石が飛び石状に転々と配されていて、なだらかに地続きなようだった。
(あるいは湖の水位が旱魃で下がったときにだけ陸地とやしろとの回廊が開いて地続きになるのかも
しれない、そしてそこで雨乞いの儀式をするのが本来のやしろの機能だったのかもわからない。作者注)
だったのだが、鳥居を正面に見据えて正々堂々と乗り込もうとしたときに初めて島のガードが緩むのを
直感した。そこからは踏み石が飛び石状に転々と配されていて、なだらかに地続きなようだった。
(あるいは湖の水位が旱魃で下がったときにだけ陸地とやしろとの回廊が開いて地続きになるのかも
しれない、そしてそこで雨乞いの儀式をするのが本来のやしろの機能だったのかもわからない。作者注)
島に上陸すると、まりちゃはあたりをぐるりと眺めた。まりちゃたちの群れがある対岸を見ながら、湖を
眺めると背後の鳥居に怖ろしいまでの威圧感を覚える。ゆっくりれいむのけっかいっ!(笑)などとは
比べ物にならないくらいの神々しさ、霊圧を感じて、ゆっくりと振り返る。
眺めると背後の鳥居に怖ろしいまでの威圧感を覚える。ゆっくりれいむのけっかいっ!(笑)などとは
比べ物にならないくらいの神々しさ、霊圧を感じて、ゆっくりと振り返る。
まりちゃはとつぜん金縛りにあったようなフリーズ状態に襲われた。それが何によるものだったのか、
二つの金色のまなこに見据えられていることに気づいて、ようやくまりちゃは自ゆんが蛇に睨まれた
カエルのように身をすくませて動けないでいるということをゆっくりと理解した。
二つの金色のまなこに見据えられていることに気づいて、ようやくまりちゃは自ゆんが蛇に睨まれた
カエルのように身をすくませて動けないでいるということをゆっくりと理解した。
爬虫類特有の、何に対してもまったく思い入れをしない無機質な冷たい目線。そのふたつの目に射抜か
れるように睨まれているまりちゃだったが、その瞳の奥を覗き込んでいるうちにまりちゃの視界が不思議に
変容していく。気づくとまりちゃはまりちゃ自身を覗き込む謎の生き物の双眸と同化していた。
れるように睨まれているまりちゃだったが、その瞳の奥を覗き込んでいるうちにまりちゃの視界が不思議に
変容していく。気づくとまりちゃはまりちゃ自身を覗き込む謎の生き物の双眸と同化していた。
やがて、ゆるゆるとまりちゃの姿が小さくなっていく。いや、まりちゃが縮んでいるのではない、向こうが
遠ざかっているのだ。ゆっくりに興味を失ったのか、アルビノ(白子)と呼ばれる色素が抜けた白い全身を
くゆらせて、それでも鎌首はまったくこちらから目線を切らずに睨み続けているのは、さすがに野生に生きる
ものの知恵か。
なまっちろくぬらりとした白い姿はある美の極地に到達したかのようでもあり、その姿をまりちゃはいつまでも
いつまでも目を離すことができずに見送った。完全に姿を消したとき、まりちゃは今の今まで息もせずに
じっと硬直していたことに気づく。
遠ざかっているのだ。ゆっくりに興味を失ったのか、アルビノ(白子)と呼ばれる色素が抜けた白い全身を
くゆらせて、それでも鎌首はまったくこちらから目線を切らずに睨み続けているのは、さすがに野生に生きる
ものの知恵か。
なまっちろくぬらりとした白い姿はある美の極地に到達したかのようでもあり、その姿をまりちゃはいつまでも
いつまでも目を離すことができずに見送った。完全に姿を消したとき、まりちゃは今の今まで息もせずに
じっと硬直していたことに気づく。
「ぷっはぁー、ぜひぜひっ。いみゃ、じぇったいいっぺんちんだとおもったんだじぇー?」
まりちゃは確かに一度死を覚悟した。皮肉なことにその落ち着きと生に対する諦念とがまりちゃを救った
のかも知れなかった。下手に生を求めて無様にあがいていれば、たちまち丸呑みされていただろう。
あれはへびというのだ、まりちゃの餡子脳になにかがアクセスしていって、知らないもの・見たことのない
はずのものの名前を置いていく。
へびのかみさま、へびがみさま。まりちゃは神に限りなく近付いてしまったのだ。ぶるるっ。
のかも知れなかった。下手に生を求めて無様にあがいていれば、たちまち丸呑みされていただろう。
あれはへびというのだ、まりちゃの餡子脳になにかがアクセスしていって、知らないもの・見たことのない
はずのものの名前を置いていく。
へびのかみさま、へびがみさま。まりちゃは神に限りなく近付いてしまったのだ。ぶるるっ。
いまごろになってがくがくと身体中が震える。おこりの発作のように絶え間なくまりちゃの身を揺すぶる
振動はうっかり気を抜くと発情してしまいそうなほどぞくぞくっとまりちゃの心を刺激した。
ただそれが収まると子ゆっくりのとめどもない好奇心は生命の危険、死への恐怖をも軽く上回ってしまう。
振動はうっかり気を抜くと発情してしまいそうなほどぞくぞくっとまりちゃの心を刺激した。
ただそれが収まると子ゆっくりのとめどもない好奇心は生命の危険、死への恐怖をも軽く上回ってしまう。
まりちゃは、へびがみさまが立ち去った神聖なる結界の向こうを避けて、ぐるりと小1時間ほどもかけて島を
一周して回った。鬱蒼と生い茂る木々の奥にはどうやら社を中心に神社が位置しているようなのだが、正面
の鳥居を除けば周囲の結界はさほど厳しいようではない。その中への生きとし活けるものの侵入をはばむことが
生きた結界たるあのへびがみさまの役目なのだろう。周囲には生命の鼓動が感じられる。木々のはるか上で小鳥は
さえずり、四季の訪れを祝福する。小鳥がいるということは、そこには小鳥のエサとなる木の実がなるのだろうし、
そうしてとりさんが咀嚼し切れなかった種はふんにまぎれ、やがて少し離れた土地で新たな生命の息吹を芽吹かせる
のだろう。
一周して回った。鬱蒼と生い茂る木々の奥にはどうやら社を中心に神社が位置しているようなのだが、正面
の鳥居を除けば周囲の結界はさほど厳しいようではない。その中への生きとし活けるものの侵入をはばむことが
生きた結界たるあのへびがみさまの役目なのだろう。周囲には生命の鼓動が感じられる。木々のはるか上で小鳥は
さえずり、四季の訪れを祝福する。小鳥がいるということは、そこには小鳥のエサとなる木の実がなるのだろうし、
そうしてとりさんが咀嚼し切れなかった種はふんにまぎれ、やがて少し離れた土地で新たな生命の息吹を芽吹かせる
のだろう。
野ネズミの巣を発見したのは収穫だった。ゆっくりの巣とコンセプトは一緒である。か弱き存在が穴倉をほって、
自らの存在を蹂躙しようとする絶対的強者から身を隠す。深く細く狭い穴の中で息を潜めるように敵をやり過ごす。
だが、常日頃そのようにして生きているゆっくりにとっては、同じ目線を使えば容易くその出入り口の痕跡を
見出すことが出来た。
いや、実際のところ、まりちゃはこの島に生きているゆっくりはいないかと、同族を探していたのだった。
その際の偶然の発見である。猟犬のように鼻面を穴倉へつっこんでいくとみゅーみゅーとか弱い鳴き声が聞こえる。
まりちゃは今日の名残に枝さんを上から差し込んで、後日来た時のための目印とした。
自らの存在を蹂躙しようとする絶対的強者から身を隠す。深く細く狭い穴の中で息を潜めるように敵をやり過ごす。
だが、常日頃そのようにして生きているゆっくりにとっては、同じ目線を使えば容易くその出入り口の痕跡を
見出すことが出来た。
いや、実際のところ、まりちゃはこの島に生きているゆっくりはいないかと、同族を探していたのだった。
その際の偶然の発見である。猟犬のように鼻面を穴倉へつっこんでいくとみゅーみゅーとか弱い鳴き声が聞こえる。
まりちゃは今日の名残に枝さんを上から差し込んで、後日来た時のための目印とした。
それから何度目かの訪問になろうか、慎重に上から土を掘り進めていって、今日ついに巣穴の全貌を上から覗き見る
ことが出来るのだ。
残念なことに、侵襲の気配をいち早く察してか、とうの昔にネズミの親子は巣を放棄していた。あるいはネズミの
成長が予想以上で、もう巣立ちしたのかもしれない。だが、そこには生き物が暮らしていた名残はありありと
感じられた。
ことが出来るのだ。
残念なことに、侵襲の気配をいち早く察してか、とうの昔にネズミの親子は巣を放棄していた。あるいはネズミの
成長が予想以上で、もう巣立ちしたのかもしれない。だが、そこには生き物が暮らしていた名残はありありと
感じられた。
ゆっくりたちのとりさんベッドのようにふかふかとした、まるでしあわせ~をすくいとるための容器であるか
のようなねぐらを見て、まりさはとてもゆっくりできた。と同時に、めちゃめちゃになってしまえばいいのに
とも思ってしまうのだった。それは自ゆんが望んでも得られなかった家族のぬくもりというものを、たかが
ネズミごときが具現化していることへの苛立ちであったのかもしれない。せわしなく、抜け目なくちょろ
ちょろと動き続け、まったくゆっくりしていない下等な生き物のくせに、至高の存在、ゆっくりの正統な器たる
自ゆんよりもゆっくりを満たしていることに対する不満と憤り。
のようなねぐらを見て、まりさはとてもゆっくりできた。と同時に、めちゃめちゃになってしまえばいいのに
とも思ってしまうのだった。それは自ゆんが望んでも得られなかった家族のぬくもりというものを、たかが
ネズミごときが具現化していることへの苛立ちであったのかもしれない。せわしなく、抜け目なくちょろ
ちょろと動き続け、まったくゆっくりしていない下等な生き物のくせに、至高の存在、ゆっくりの正統な器たる
自ゆんよりもゆっくりを満たしていることに対する不満と憤り。
まりちゃはほの暗い願いを神に向けて祈る。へびがみさま、へびがみさま、どうかあのくしょねずみに
てんばつをあたえてやってほしいのじぇ?まんまとにげおおせたきになっちぇりゅあのネズミおやこを
ぺろりとたいらげてやってほしいのじぇ。
てんばつをあたえてやってほしいのじぇ?まんまとにげおおせたきになっちぇりゅあのネズミおやこを
ぺろりとたいらげてやってほしいのじぇ。
そこは群れの暗黙の了解で他ゆんが足を踏み入れない忌み島であった。
まりちゃはそこに住むいのちについて考えてみる。ことに神様について足りない餡子脳の全てで考えてみる。
陸の孤島のような場所に生れ落ちて、たった1匹で番も作らず孤独に死んでいく蛇の一生というものは
いったい、どんな種類の冷たさなのだろうか。まりちゃはうっすら想像しただけで身体の奥底から凍てつく
波動に侵されて、餡子が凍り付いてしまいそうになった。ぶるるっ。
ただ、その冷たい波動はまりちゃのこころとなかなかに精妙なシンクロをするのであった。
まりちゃはそこに住むいのちについて考えてみる。ことに神様について足りない餡子脳の全てで考えてみる。
陸の孤島のような場所に生れ落ちて、たった1匹で番も作らず孤独に死んでいく蛇の一生というものは
いったい、どんな種類の冷たさなのだろうか。まりちゃはうっすら想像しただけで身体の奥底から凍てつく
波動に侵されて、餡子が凍り付いてしまいそうになった。ぶるるっ。
ただ、その冷たい波動はまりちゃのこころとなかなかに精妙なシンクロをするのであった。
それからも、寂しいとき、話し相手がほしいときまりちゃは沖へ渡る。そうして、へびがみさまを
あてどなく探すのだった。見つかる日もあれば、会えない日の方が圧倒的に多かった。
あてどなく探すのだった。見つかる日もあれば、会えない日の方が圧倒的に多かった。
忌み島へ渡っていることを知られれば、どんなお咎めを受けるか知れたものではない。と同時に
そういう秘密を抱え込むことで内面に確かな壁ができたようで、その秘密を守っている限りまりちゃ
のこころは誰にも侵されない聖域を持ったように思えて、とてもおちつくことができた。
ひみちゅさんは、ゆっきゅりできるにぇ?!
そういう秘密を抱え込むことで内面に確かな壁ができたようで、その秘密を守っている限りまりちゃ
のこころは誰にも侵されない聖域を持ったように思えて、とてもおちつくことができた。
ひみちゅさんは、ゆっきゅりできるにぇ?!
いったい、へびがみさまって、どんな存在なのだろうか?好奇心に負けて、秘密を秘密として
保ちながらまりちゃはそれとなく周囲のゆに聞き込んでみた。
保ちながらまりちゃはそれとなく周囲のゆに聞き込んでみた。
「ゆふふふっ。まりちゃもとうとうそーいうことに
きょうみをもつおとしごろになっちゃったのかぜ。
このまりささまにきいてだいせいかいなんだぜ。
いいか、いちどしかいわないからみみのあなかっぽじって
よくきくのぜえぇー?(ごにょごにょ、耳打ち)
へびさんは・・・、ぺにぺにさんのしんぼるなんだぜっ!
あんざんのかみさまなんだぜ、ごりやくあらたか、
ぴんこびんっびん、ピン子勃ちなのぜえええええぇー?」
きょうみをもつおとしごろになっちゃったのかぜ。
このまりささまにきいてだいせいかいなんだぜ。
いいか、いちどしかいわないからみみのあなかっぽじって
よくきくのぜえぇー?(ごにょごにょ、耳打ち)
へびさんは・・・、ぺにぺにさんのしんぼるなんだぜっ!
あんざんのかみさまなんだぜ、ごりやくあらたか、
ぴんこびんっびん、ピン子勃ちなのぜえええええぇー?」
「いやだよぉー、まりさは、おおごえで。でいぶ はずかしいよっ。
こんばんはきたいしちゃっていいってことなんでしょおぉぉぉおぉ?
まったくいやらしいまりさだよっ」
こんばんはきたいしちゃっていいってことなんでしょおぉぉぉおぉ?
まったくいやらしいまりさだよっ」
「ゆひっ。ちがうのぜ。じちょーしてほしいんだぜっ。いまこの
じきにすっきりーなんてしたら、かくじつにえっとーしっぱいなんだぜ。
そこんところをよーっくかんがえてほしいんだぜっ?」
じきにすっきりーなんてしたら、かくじつにえっとーしっぱいなんだぜ。
そこんところをよーっくかんがえてほしいんだぜっ?」
「ゆあん?つべこべいわずに まりさはだまってこしだけふってればいいんだよっ!」
はいはい、ゆっくり、ゆっくり。勝手にやってればいいんだぜ。
別のぱちゅりーにも聞いてみた。
「むきゅ、へびさんはかみさまのおつかいだってきいたことがあるわね。
でも、かみさまにもいいのとわるいのがいるし、へびさんはやっぱり、ぱちぇ
ちょっとこわいのだわ。ぱちぇなら、けいしてとおざけるわね、むきゃきゃ」
でも、かみさまにもいいのとわるいのがいるし、へびさんはやっぱり、ぱちぇ
ちょっとこわいのだわ。ぱちぇなら、けいしてとおざけるわね、むきゃきゃ」
「それは、わるいおつげをもってくるかもしりぇにゃいってこちょ?」
「よいわるいのもんだいより、ふきつだとかんじたら そこから
みをとおざけるのが かしこいゆっくりだとおもうのだわ」
みをとおざけるのが かしこいゆっくりだとおもうのだわ」
「ふーん。ありがちょごじゃまちた」
「どーいたしまして(したったらずなかわいいまりちゃねっ!)」
都会派なありすお姉さんにも聞いてみた。
「ありすおねーしゃ、おねーしゃはへびさんをみちゃこちょありゅ?」
「ゆ。へびさんはゆっくりできないわ。めをあわせたことのあるいきたゆは
むれにはいないのじゃないのかしら?」
むれにはいないのじゃないのかしら?」
「どーちて?」
「だって、へびにみられたら、まるのみにされちゃうでしょー?へびと めをあわせて、
ぶじいきてかえってくるゆっくりはほとんどいないのよっ」
ぶじいきてかえってくるゆっくりはほとんどいないのよっ」
「ッ?!」
「とっても らっきーさんな ゆだけが、なかまがしょーかされているすきにとんずら
できたけど、それもおばぁさまのそのまたおばぁさまのだいのおはなしだわ」
できたけど、それもおばぁさまのそのまたおばぁさまのだいのおはなしだわ」
「・・・・(にゃんで、まりちゃはいきちぇるにょ?)」
今日もまりちゃは島へ向けて舟をこぐ。
うっとりと眼を輝かせてへびがみさまが生きたネズミを丸呑みして咀嚼する様子を見るまりちゃの
目には暗い炎が揺らめいている。
目には暗い炎が揺らめいている。
――やっぱり、へびがみさまはしゃいっこうなのじぇ。ゆっくりできりゅのじぇ~。
蛇は餌食を噛み砕いたり牙で割いたりはしない。強大な顎の力で致命傷となる圧をかけ、全身筋肉で
覆われた消化管のごとき内側を通すなかで緩やかに圧殺し、溶かし、体内に取り込むのだ。
管の始めではまだ外からも蛇の身体がネズミの姿に膨らんでみえて、影絵のようにシルエットで中の
様子を観客に窺わせる。
ミッキーさんの耳のシルエットのように、あるいは影絵犬のアニメーションのようにぴくぴくと動き
ながら下へ下へと送られていくその様はたった1ゆんの観客のイマジネーションを限りなく増幅させる。
まりちゃは暗い欲望にじりじりとその身を焦がす。
覆われた消化管のごとき内側を通すなかで緩やかに圧殺し、溶かし、体内に取り込むのだ。
管の始めではまだ外からも蛇の身体がネズミの姿に膨らんでみえて、影絵のようにシルエットで中の
様子を観客に窺わせる。
ミッキーさんの耳のシルエットのように、あるいは影絵犬のアニメーションのようにぴくぴくと動き
ながら下へ下へと送られていくその様はたった1ゆんの観客のイマジネーションを限りなく増幅させる。
まりちゃは暗い欲望にじりじりとその身を焦がす。
まりちゃも むくないのちをじゅーりんしたいんだじぇ~?
へびがみさまはいま、どんなきもちなんじゃろう?
ねぇ、いまどんなきもち?そう言いながらへびがみさまのまわりをぴょんぴょん跳ね回りたい気持ちに
まりちゃは駆られた。しないけどにぇ。そこまであんこのーじゃないんだじぇ?
へびがみさまはいま、どんなきもちなんじゃろう?
ねぇ、いまどんなきもち?そう言いながらへびがみさまのまわりをぴょんぴょん跳ね回りたい気持ちに
まりちゃは駆られた。しないけどにぇ。そこまであんこのーじゃないんだじぇ?
まりちゃは育ての親でもあり、今の群れの中ではもっとも知恵と知識にあふれている(と思われる)
ぱちゅりーにも質問してみた。
ぱちゅりーにも質問してみた。
「ぱちぇおかーしゃ。おかーしゃはにゃんでへびさんのこちょがきりゃいにゃの?」
「へびはれいけつっ!なのっ。むっきゅん。たいおんがひくいのよ。だからあんなれいっこく!な
まねをしても へいきなのだわ」
まねをしても へいきなのだわ」
長ぱちぇはせんせんせんだいの時代のおはなしを伝承として受け継ぐ数少ない知識ゆんだった。
白いへびがみさまが群れの多くのゆを飲み込む伝承を生ける知識として抱え込む貴重な証人である。
長は自分の知識を、とても大切な伝えるべき知識を伝えるために「さぁ、おたべなさい!」と
呪文を唱えてその身をふたつに割り次の長へと記憶もろともその餡を後代に伝えることがある。
たいていは同じ餡子すじの娘だったりするのだが彼女は涙をこらえて母の身体を、知識を伝承を喰らい
尽くすのだ。
白いへびがみさまが群れの多くのゆを飲み込む伝承を生ける知識として抱え込む貴重な証人である。
長は自分の知識を、とても大切な伝えるべき知識を伝えるために「さぁ、おたべなさい!」と
呪文を唱えてその身をふたつに割り次の長へと記憶もろともその餡を後代に伝えることがある。
たいていは同じ餡子すじの娘だったりするのだが彼女は涙をこらえて母の身体を、知識を伝承を喰らい
尽くすのだ。
湖畔でまりちゃは今日も1ゆん物思いにふける。
へびの目線を思い出していた。それはとても無機質で、冷たいものだった。どこかべつの場面で見た
ような記憶があるような。
ふと思い立って、みなもに近寄り自ゆんの姿を映し出す。そこにはとても冷たい眼差しをしたまりちゃの
自画像がゆらゆらと写しこまれていた。
へびの目線を思い出していた。それはとても無機質で、冷たいものだった。どこかべつの場面で見た
ような記憶があるような。
ふと思い立って、みなもに近寄り自ゆんの姿を映し出す。そこにはとても冷たい眼差しをしたまりちゃの
自画像がゆらゆらと写しこまれていた。
それはだれも愛していないものの視線だった。同時にみなしごになったまりちゃをひきとって育てて
くれている長ぱちぇがまりちゃに注ぐ眼と同じ種類のものだった。
くれている長ぱちぇがまりちゃに注ぐ眼と同じ種類のものだった。
「なんとなーくわかったのじぇ。へびがみさまはまりちゃのなかになかまをみたんだじぇ?だきゃら、
まりちゃはまるのみせじゅにみのがしたったのじぇ?」
まりちゃはまるのみせじゅにみのがしたったのじぇ?」
その日もまたまりちゃは島へと渡っていた。だがなにか様子が変だ。動物たちが騒がしい。鳥たちは
せっかくこさえた巣を放棄してどこかへ飛び去っていった。難破船からはネズミも逃げ出すというが、
島のネズミも泳げるものならとうに去っていただろう。
せっかくこさえた巣を放棄してどこかへ飛び去っていった。難破船からはネズミも逃げ出すというが、
島のネズミも泳げるものならとうに去っていただろう。
へびがみさまは?
混迷の中、まりちゃは自ゆんにとっての守り神ともいうべき存在を探した。それはまっすぐまりちゃへ
向かって来たかのように見えた。だが、しゅるしゅると音をたてながら蛇はまりちゃの横を通り過ぎる。
そしてちゅるりと湖水に潜り込むとそのまま身をくねらせて対岸へ向けてどんどん遠ざかっていく。
混迷の中、まりちゃは自ゆんにとっての守り神ともいうべき存在を探した。それはまっすぐまりちゃへ
向かって来たかのように見えた。だが、しゅるしゅると音をたてながら蛇はまりちゃの横を通り過ぎる。
そしてちゅるりと湖水に潜り込むとそのまま身をくねらせて対岸へ向けてどんどん遠ざかっていく。
――へびさんはおよげたのかじぇ?てっきり、このしまでうまれ、しんでいくものだとおもってたのじぇ。
だが、問題はそんなことではない。神を失ったおやしろはどうなるのか。神に見放されたこの地の将来は
大丈夫なのか。ここはもはやゆっくりできない場所だと? 安住の地、ゆっくりプレイスではなくなって
しまったということなのか。
大丈夫なのか。ここはもはやゆっくりできない場所だと? 安住の地、ゆっくりプレイスではなくなって
しまったということなのか。
「かみしゃまがぁ~、かみしゃまのおちゅかいしゃんがどこかへいってしまうのじぇ~?」
へびがみさまはあっというまに水の暗闇にまぎれて姿が見えなくなった。泳ぎ去ったのか。それとも
そんまま溺れじんで、湖底の肥やしになっていくのか。
そんまま溺れじんで、湖底の肥やしになっていくのか。
「ゆぅぅー、まっちぇねっ、まっちぇね?まりちゃもつれていっちぇほちーのじえええぇぇぇー?」
まりちゃの叫びは闇に吸い込まれてどこにも届かなかった。まりちゃは泣いて泣いて泣きつかれて、
そのまま島で眠り込んでしまった。ゆっくりふらんとれみりゃの集団に襲われ、群れのゆっくりたちが
全滅したのはその晩の出来事であった。
そのまま島で眠り込んでしまった。ゆっくりふらんとれみりゃの集団に襲われ、群れのゆっくりたちが
全滅したのはその晩の出来事であった。
*
昔のことを思い出してしまったのぜ。傷まりさは頬の十字傷をおさげさんでなぜるようにゆっくりと
さすった。
さすった。
「きずが・・・、ふるきずがじくじくいたむんだぜ。きっときょうはあらしになるのぜ」
終わり)