ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko4495 おいしゃさんありすとすっきりしたおみず
最終更新:
Bot(ページ名リンク)
-
view
『おいしゃさんありすとすっきりしたおみず』 15KB
愛で 観察 思いやり 希少種 愛護人間 2作目です。変わり者のありすのお話
愛で 観察 思いやり 希少種 愛護人間 2作目です。変わり者のありすのお話
☆登場するゆっくりが少しオーバースペックかもしれません。
☆ひたすら愛で・観察です。虐待ありません。
☆細かい設定などが決定的に間違っている可能性があります。
☆ネタかぶりがあったらすみません。
☆ひたすら愛で・観察です。虐待ありません。
☆細かい設定などが決定的に間違っている可能性があります。
☆ネタかぶりがあったらすみません。
「もうすこしだわ。」
庭の草たちが陽の光を受け顔を上げているのを見て、ありすは微笑んだ。もう少しで、またあの季節が来る。
庭の草たちが陽の光を受け顔を上げているのを見て、ありすは微笑んだ。もう少しで、またあの季節が来る。
おいしゃさんありすとすっきりしたおみず
成人し働き始めてもう十年経ってしまったらしい。よくわからない仕事内容に振り回されながらもなんとかしがみつき、ふと気付いたら、十年前の自分が思っていた「おじさん」になっていた。まあ、「おじさん」の中ではまだまだクソガキの部類だろう。残念ながら、おじさんになっていく過程はまだまだ長い。そんなことを考えて少し笑った。
「おにいさん、ゆっくりおかえりなさい。」
玄関の内鍵を閉め靴を脱いでいると、ありすがぴょんぴょんと元気に跳ねて僕を出迎えた。こんなことをするなんて珍しい。
玄関の内鍵を閉め靴を脱いでいると、ありすがぴょんぴょんと元気に跳ねて僕を出迎えた。こんなことをするなんて珍しい。
『珍しいな』おっと。思ったことをそのまま口に出してしまった。
「たまにはいいものよ」
「たまにはいいものよ」
…珍しい。
__________
このありすは銀バッジだ。
ゆっくりショップで銀バッジの相場より少し安い値段で買ったゆっくりで、一緒に暮らし始めてから結構経つ。
店員が言うに、銀バッジの中でもこのありすはかなりバッジ試験の成績が良いらしかった。
それでは何故他の銀バッジより安めなんだろう、と疑問に思ったが、それが顔に出ていたのかそれとも他の客にもよく尋ねられていたのかわからないが店員はすぐにその答えを提示した。
ゆっくりショップで銀バッジの相場より少し安い値段で買ったゆっくりで、一緒に暮らし始めてから結構経つ。
店員が言うに、銀バッジの中でもこのありすはかなりバッジ試験の成績が良いらしかった。
それでは何故他の銀バッジより安めなんだろう、と疑問に思ったが、それが顔に出ていたのかそれとも他の客にもよく尋ねられていたのかわからないが店員はすぐにその答えを提示した。
…このありす、懐かないんですよ。
バッジ試験は、一般常識の問題から、人間に対しての態度や考え方まで問われる。
入荷したての頃は、教育を施していく過程でこのどこか余所余所しい表情は変わっていくだろう、とブリーダーは思っていた。が、ありすが銅をあっさりと取り、銀バッジをかなりの高得点で合格したあたりでブリーダーは違和感を感じ始めた。
このありすはかなり能力が高い。
試験成績だけで見るとすぐに金バッジも取れるだろう。試験官への受け答えも、理想的な内容を理想的な態度をもって述べることが出来る。
銀バッジレベルまでしかまだ教えていないのもあるのかもしれないが、教えられた内容をほぼ完璧に遂行する。
このままきちんと教えれば、もしかしたら金バッジ試験でもかなりの成績で合格できるかもしれない。
入荷したての頃は、教育を施していく過程でこのどこか余所余所しい表情は変わっていくだろう、とブリーダーは思っていた。が、ありすが銅をあっさりと取り、銀バッジをかなりの高得点で合格したあたりでブリーダーは違和感を感じ始めた。
このありすはかなり能力が高い。
試験成績だけで見るとすぐに金バッジも取れるだろう。試験官への受け答えも、理想的な内容を理想的な態度をもって述べることが出来る。
銀バッジレベルまでしかまだ教えていないのもあるのかもしれないが、教えられた内容をほぼ完璧に遂行する。
このままきちんと教えれば、もしかしたら金バッジ試験でもかなりの成績で合格できるかもしれない。
しかし、試験の時以外の態度は以前とまったく同じだ。
銀になっても相変わらず余所余所しい、固い表情でブリーダーを見つめることがある。それは他のゆっくりたちに対しても同じだった。
話しかけられた時の言葉遣いや対応は人間から見てもゆっくりから見てもかなり「ゆっくりしていた」のだが、それらはどれも、どこか距離をおいた雰囲気を感じるものだった。
銀になっても相変わらず余所余所しい、固い表情でブリーダーを見つめることがある。それは他のゆっくりたちに対しても同じだった。
話しかけられた時の言葉遣いや対応は人間から見てもゆっくりから見てもかなり「ゆっくりしていた」のだが、それらはどれも、どこか距離をおいた雰囲気を感じるものだった。
もしかしたらこれは表面上は善良でも性格そのものはゲスの、いわゆる「金ゲス」の兆候なのかもしれない。そうブリーダーは考えた。見方によっては本質的に高慢であるともいえる、と。
本来ならばゆっくりショップに金ゲスの兆候が見られるゆっくりを卸すことなどもっての外だ。
このブリーダーはまだ若く、とにかく少しでも質の良いゆっくりを出来るだけ多くショップに卸さなければ生活が成り立たない。ありすの質そのものは一級品なのが、彼を更に迷わせた。
本来ならばゆっくりショップに金ゲスの兆候が見られるゆっくりを卸すことなどもっての外だ。
このブリーダーはまだ若く、とにかく少しでも質の良いゆっくりを出来るだけ多くショップに卸さなければ生活が成り立たない。ありすの質そのものは一級品なのが、彼を更に迷わせた。
ブリーダーはかなり悩んだが、得意先のよしみで店員に頼み込み、なんとかこのありすを銀バッジとして卸してもらうことにしたのだ。
そうしてショップのケージに入ることになったありすは、店員の話を訊く僕を興味無さげにぼぉっと見ていた。
隣のケージでは銀バッジをつけた子れいむがキラキラした目でこちらを見ていた。
そのまた隣では二匹の子まりさがすーりすーりしあっていて、ゆっくりしているように見えた。
ありすのケージにはありすの他にもう一匹、子ありすが寝床のタオルを広げたり畳んだりして「とかいはだわ!」と跳ねまわって喜んでいたりしている。
そのまた隣では二匹の子まりさがすーりすーりしあっていて、ゆっくりしているように見えた。
ありすのケージにはありすの他にもう一匹、子ありすが寝床のタオルを広げたり畳んだりして「とかいはだわ!」と跳ねまわって喜んでいたりしている。
それらを横目で見る僕を観察するありすの表情は、やはり「ゆっくり離れ」していた。
店員も困っていたようだった。愛玩用のゆっくりとしては致命的だ、と。
店員も困っていたようだった。愛玩用のゆっくりとしては致命的だ、と。
ひと通りの説明を聞き終えた僕がこのありすを飼い始めたのは「ほんの出来心」だとか「なんとなく気が向いた」とかそういった適当な理由だ。
ただなんとなく、興味を持っただけだった。
過度な干渉を嫌うありすになんとなく、距離感の一致を感じたからだ。
ただなんとなく、興味を持っただけだった。
過度な干渉を嫌うありすになんとなく、距離感の一致を感じたからだ。
家に来てからのありすはおおむね僕の予想通りだった。
しつけや作法はしっかりしていて、挨拶や感謝の言葉も絶対に欠かすことは無いが、過度に懐こうとする気配は感じられない。
僕自身べったりとした態度は好きではないし、ありすとは一定の距離を保った「良好な」関係を築けていると思っている。
たまに少し人恋しくなった時は話し相手になってくれるし、ありすもそういった風にたまに僕に話しかける。
しつけや作法はしっかりしていて、挨拶や感謝の言葉も絶対に欠かすことは無いが、過度に懐こうとする気配は感じられない。
僕自身べったりとした態度は好きではないし、ありすとは一定の距離を保った「良好な」関係を築けていると思っている。
たまに少し人恋しくなった時は話し相手になってくれるし、ありすもそういった風にたまに僕に話しかける。
高慢だとか金ゲスだとかそういうのではなく、生来生まれ持った性質として、ありすはこうなのだろう。
そしてそれが偶然、他人との距離感を過度に意識する僕の気質と似ていたというだけだ。
ただ少しだけ、「近すぎる」と思う距離が他人より長いだけだ。それが僕達の共通点だった。
ありすとは飼い主と飼いゆというよりは、家主と居候のような関係だ。
傍目にはとてもドライに見えるかもしれないが、これでもお互い満足できる。
勿論、運動不足だと思ったらありすを連れて公園に出かけたりもするし、たまにゆっくりフード以外のものを手作りして食べさせてやることくらいはしている。それに対してありすは小さいリアクションながらとても喜ぶ。
ただ、少しだけ心理的な距離感が遠いだけなのだ。僕はこの距離感をとても気に入っている。
そしてそれが偶然、他人との距離感を過度に意識する僕の気質と似ていたというだけだ。
ただ少しだけ、「近すぎる」と思う距離が他人より長いだけだ。それが僕達の共通点だった。
ありすとは飼い主と飼いゆというよりは、家主と居候のような関係だ。
傍目にはとてもドライに見えるかもしれないが、これでもお互い満足できる。
勿論、運動不足だと思ったらありすを連れて公園に出かけたりもするし、たまにゆっくりフード以外のものを手作りして食べさせてやることくらいはしている。それに対してありすは小さいリアクションながらとても喜ぶ。
ただ、少しだけ心理的な距離感が遠いだけなのだ。僕はこの距離感をとても気に入っている。
__________
帰宅早々、尻尾をブンブン振って飛びかかってくる元気な犬のような出迎えなんてありすにはありえない。
そのありすが、今日は犬ほどではないものの随分と元気だ。
居間の入り口で微笑んでいるありすに、何かあったのか、と訊こうとする前にありすは庭の方をちらりと見た。
ああ、そろそろか。
僕は居間に入るなり庭を見やり、ありすと同じように季節の巡りを考えていた。
そのありすが、今日は犬ほどではないものの随分と元気だ。
居間の入り口で微笑んでいるありすに、何かあったのか、と訊こうとする前にありすは庭の方をちらりと見た。
ああ、そろそろか。
僕は居間に入るなり庭を見やり、ありすと同じように季節の巡りを考えていた。
__________
事の発端、つまりきっかけは、初めてありすと公園に行った時のことだった。
ベンチに座っていた僕はどうしても気になって我慢できなかったので、文庫本を閉じありすに話しかけてみた。
『…おい。』
「ゆ?おにいさん、どうかしたの?」
『お前、他のゆっくりと遊ばないのか?他のゆっくりは…ほれ、追っかけっことかしてるだろ』
休日ということもあり、公園ではそこそこの数の飼いゆっくりが飼い主だとか他の飼いゆだとかとじゃれ合っていた。
お喋りをしているゆっくり、駆けっこをしているゆっくり、おやつをむーしゃむーしゃしているゆっくり。
ありすはそれをぼーっと眺めたり、珍しい形をした砂粒を見つけてはベンチに持ってきたり、葉っぱで福笑いのようなことをしたり、ひとゆあそびとても言うのだろうか。そういうことに興じていた。
それでもありすの表情はそこそこ楽しげで、それが更に周りのゆっくりとのギャップを際立たせていた。
「ありすはゆっくりしているわ。」
『ふーん。そうか…。』
「たしかに、たまにさみしくなることもあるわ。でもそのときはおにいさんとおはなしするからだいじょうぶよ」
『ふむ…』
模範解答のような答え。
しかし、大丈夫だと口では言っているが、やはり一匹狼のありすでもたまにゆっくりと話をしたくなる時はあるみたいだ。
仲良くなれとは言わずとも、せめて寂しい時だけでも話しかけられるようにはしたほうがいいのではないか。
僕に対しての態度は、僕が望んでいるのだからいいとしても、他のゆっくりに対しては良いものではない。
やはりゆっくりは、本能としてゆっくりとの交流が一番ゆっくりできるはずだ。
どんなに「にんげんさんはゆっくりできる」と教えられていても、だ。
事実、ありすは最近疲れているように見えていた。潜在的なストレスが、段々と表面に現れてきている。
『…おい。』
「ゆ?おにいさん、どうかしたの?」
『お前、他のゆっくりと遊ばないのか?他のゆっくりは…ほれ、追っかけっことかしてるだろ』
休日ということもあり、公園ではそこそこの数の飼いゆっくりが飼い主だとか他の飼いゆだとかとじゃれ合っていた。
お喋りをしているゆっくり、駆けっこをしているゆっくり、おやつをむーしゃむーしゃしているゆっくり。
ありすはそれをぼーっと眺めたり、珍しい形をした砂粒を見つけてはベンチに持ってきたり、葉っぱで福笑いのようなことをしたり、ひとゆあそびとても言うのだろうか。そういうことに興じていた。
それでもありすの表情はそこそこ楽しげで、それが更に周りのゆっくりとのギャップを際立たせていた。
「ありすはゆっくりしているわ。」
『ふーん。そうか…。』
「たしかに、たまにさみしくなることもあるわ。でもそのときはおにいさんとおはなしするからだいじょうぶよ」
『ふむ…』
模範解答のような答え。
しかし、大丈夫だと口では言っているが、やはり一匹狼のありすでもたまにゆっくりと話をしたくなる時はあるみたいだ。
仲良くなれとは言わずとも、せめて寂しい時だけでも話しかけられるようにはしたほうがいいのではないか。
僕に対しての態度は、僕が望んでいるのだからいいとしても、他のゆっくりに対しては良いものではない。
やはりゆっくりは、本能としてゆっくりとの交流が一番ゆっくりできるはずだ。
どんなに「にんげんさんはゆっくりできる」と教えられていても、だ。
事実、ありすは最近疲れているように見えていた。潜在的なストレスが、段々と表面に現れてきている。
もしかして単純に、どうやって話しかければいいのかわからないのだろうか?
どうにか、少しでもゆっくりと話ができるようにさせてやりたいが、距離を遠く置きたがるありすにはどういった方法が良いのだろう?
公園から帰り、ありすを風呂場で洗っている間そういうことを考えていた。
結局妙案は浮かばずその日は眠りについた。
どうにか、少しでもゆっくりと話ができるようにさせてやりたいが、距離を遠く置きたがるありすにはどういった方法が良いのだろう?
公園から帰り、ありすを風呂場で洗っている間そういうことを考えていた。
結局妙案は浮かばずその日は眠りについた。
「…さん!お…さ…!おにいさん!おきて!」
その翌日、いつものように僕を起こしに来たありすの様子が変だ。
その翌日、いつものように僕を起こしに来たありすの様子が変だ。
朝僕を起こす時は別人だから気をつけてくれ、と、ありすが家に来たての頃に教えていた。寝起きの僕は凄く機嫌が悪い。前に一度、起こしに来たありすをただ機嫌が悪いという理由でブン殴ったことがある。飼いゆとはいえその時は流石に理不尽だと思ったので謝った。
教えたことを忘れたのか?と内心激怒しながらむくりと起きると、ありすは僕の顔と庭を交互に見ていた。
のろのろとめがねをかけて庭に出ると、そこにはぼろぼろの子ゆうかが餡子を少し吐きながらうつ伏せに倒れていた。
のろのろとめがねをかけて庭に出ると、そこにはぼろぼろの子ゆうかが餡子を少し吐きながらうつ伏せに倒れていた。
体は餡子が露出するくらいの刺し傷や切り傷だらけだったし、それ以前に痩せこけていた。恐らく本来は亜成体くらいのサイズなのだろうが、結構な量の餡子を吐いたのだろう。二回りくらいしぼんでいる。
それを見るありすの顔面はゆうかと同じくらいに蒼白だった。
他ゆん(人にも)への興味がないことで忘れていたが、ありすも野良を経験したことのない温室育ちのゆっくりなのだ。こんな凄惨な場面に立ち会ったことなどあるはずがない。
『おい。生きてるか?返事しろ。』
それを見るありすの顔面はゆうかと同じくらいに蒼白だった。
他ゆん(人にも)への興味がないことで忘れていたが、ありすも野良を経験したことのない温室育ちのゆっくりなのだ。こんな凄惨な場面に立ち会ったことなどあるはずがない。
『おい。生きてるか?返事しろ。』
答えない。
「ね…ねえ。おにいさん…」
『ちょっと静かにしてろ。…おい。生きてるか?』
「ね…ねえ。おにいさん…」
『ちょっと静かにしてろ。…おい。生きてるか?』
『ゅ”…』
5秒ほどの静寂を破ったのはぼろぼろの子ゆうかの一言だった。
『おっ』
「…!!おにいさん!このこ、い、いきてるわ!」
『ん。…………。』
僕は閃いた。自分の事ながら、こんな時に本当に変なことを思いつく。
『ありすお前、こいつのこと、助けたいか?』
ありすは一瞬フリーズした。それなりに頭がいいからこそ迷った。もしかしたらお兄さんは、「お前は野良と関わろうとする、ゆっくりできないゆっくりなのか?」と遠まわしに訊いているのではないだろうか。もしそうなのであれば自分の一連の態度はまずい。でもこの傷だらけのゆうかの命がかかっている。しかし、でも、いや、しかし…
『はやく答えろ。助けたいか?』
「…た、たすけたいわ…」
何かを諦めたようにぽつりと呟いた。
『良し。台所に行くぞ。こいつの助け方を教えてやる。』
「え?」
5秒ほどの静寂を破ったのはぼろぼろの子ゆうかの一言だった。
『おっ』
「…!!おにいさん!このこ、い、いきてるわ!」
『ん。…………。』
僕は閃いた。自分の事ながら、こんな時に本当に変なことを思いつく。
『ありすお前、こいつのこと、助けたいか?』
ありすは一瞬フリーズした。それなりに頭がいいからこそ迷った。もしかしたらお兄さんは、「お前は野良と関わろうとする、ゆっくりできないゆっくりなのか?」と遠まわしに訊いているのではないだろうか。もしそうなのであれば自分の一連の態度はまずい。でもこの傷だらけのゆうかの命がかかっている。しかし、でも、いや、しかし…
『はやく答えろ。助けたいか?』
「…た、たすけたいわ…」
何かを諦めたようにぽつりと呟いた。
『良し。台所に行くぞ。こいつの助け方を教えてやる。』
「え?」
僕の思いついたことは酔狂もいいとこだろう。
ありすに医術を教えようと思ったのだ。
医術と言っても、生物学者に正面切って中指立てるレベルの構造をした不思議饅頭どもへの医術なんて大したものではない。
小麦粉を水で溶いたもので皮膚を再建させたり、ラムネを使った麻酔、オレンジジュースが使えない怪我、街なかの公園でも採れる薬草など、少しでもゆっくりを知っている人にとっては常識的なものだ。
「ゆっくりを治すおいしゃさんゆっくり」としてならありすもゆっくりと話す機会は増えるのではないか、と考えた。お医者さんと言ってもやはりゆっくりでは応急処置くらいの簡単な手当てしか出来ないだろうが、それでも十分だろう。
ありすに医術を教えようと思ったのだ。
医術と言っても、生物学者に正面切って中指立てるレベルの構造をした不思議饅頭どもへの医術なんて大したものではない。
小麦粉を水で溶いたもので皮膚を再建させたり、ラムネを使った麻酔、オレンジジュースが使えない怪我、街なかの公園でも採れる薬草など、少しでもゆっくりを知っている人にとっては常識的なものだ。
「ゆっくりを治すおいしゃさんゆっくり」としてならありすもゆっくりと話す機会は増えるのではないか、と考えた。お医者さんと言ってもやはりゆっくりでは応急処置くらいの簡単な手当てしか出来ないだろうが、それでも十分だろう。
子ゆうかは助かった。僕は子ゆうかの手当をしながら、ありすに僕が今何をしているのか一々説明してやった。
少しだけ元気を取り戻した子ゆうかは、親から独立して少し遠くの公園の花壇で暮らしていたが、ゲスの一家が花壇を荒らしに来たのをせいっさいして追い払ったという。そしたら次の日ゲス一家が所属していたらしい群れが押し寄せてきて、花壇を奪われ右も左もわからず逃げまわりここで気を失った、ということらしい。
『…そうか。しかしお前、これからどうするんだ?』
「…わからない。……にんげんさん、どうもありがとう。ゆうかはそろそろでていくわ。」
少し考えてからゆうかに提案した。
『まあ待て。今ほっぽり出して近くで死なれちゃ寝覚めが悪い。せめてお前が完全に成体になるくらいまで、ここで療養しないか。』
ゆうかは驚いたが、ありすも驚いた。
この待遇は、野良に対しては破格だ。
それでも迷っているゆうかにとどめを刺した。
『庭にあるプランターを貸してやる。その中だけなら花くらい好きにしていい』
少しだけ元気を取り戻した子ゆうかは、親から独立して少し遠くの公園の花壇で暮らしていたが、ゲスの一家が花壇を荒らしに来たのをせいっさいして追い払ったという。そしたら次の日ゲス一家が所属していたらしい群れが押し寄せてきて、花壇を奪われ右も左もわからず逃げまわりここで気を失った、ということらしい。
『…そうか。しかしお前、これからどうするんだ?』
「…わからない。……にんげんさん、どうもありがとう。ゆうかはそろそろでていくわ。」
少し考えてからゆうかに提案した。
『まあ待て。今ほっぽり出して近くで死なれちゃ寝覚めが悪い。せめてお前が完全に成体になるくらいまで、ここで療養しないか。』
ゆうかは驚いたが、ありすも驚いた。
この待遇は、野良に対しては破格だ。
それでも迷っているゆうかにとどめを刺した。
『庭にあるプランターを貸してやる。その中だけなら花くらい好きにしていい』
ゆうかは少しの間僕の家に住むこととなった。
看護を含めたゆうかの世話は全面的にありすに任せ、ありすからの質問にも丁寧に答えた。
傷が完全に癒えるとゆうかは早速花を育て始めた。
ゆうかが庭で土だ種だ水だと跳ね回っている間、ありすはお兄さんの「講義」を聞いていた。
たまに僕にバレないようにゆうかが庭からちらりと見ていたりすることもあったので、その時はありすを庭に出してゆうかと遊ばせてやった。とは言ってもお互い活発なタイプではないらしく、談笑する程度だったので全く気にはならなかったが。
なに、本来は金バッジレベルの力を持っているありすだ。ゆっくりの応急措置なんてすぐに覚える。
看護を含めたゆうかの世話は全面的にありすに任せ、ありすからの質問にも丁寧に答えた。
傷が完全に癒えるとゆうかは早速花を育て始めた。
ゆうかが庭で土だ種だ水だと跳ね回っている間、ありすはお兄さんの「講義」を聞いていた。
たまに僕にバレないようにゆうかが庭からちらりと見ていたりすることもあったので、その時はありすを庭に出してゆうかと遊ばせてやった。とは言ってもお互い活発なタイプではないらしく、談笑する程度だったので全く気にはならなかったが。
なに、本来は金バッジレベルの力を持っているありすだ。ゆっくりの応急措置なんてすぐに覚える。
と思っていた僕が甘かった。
多少頭が良かろうが、所詮はゆっくりで、しかも生まれて初めて教わるジャンルだ。覚え自体はとても悪い。
しかしもう一つ僕の予想と違ったのは、ありすがかなり一生懸命に勉強していることだ。
成り行き――というかただの思いつきなのだが――でこうなってしまったが、それを受け入れている。
ゆうかの傷だらけの姿が余程ショッキングだったのだろう。
ありすはゆっくりとだが着実に知識をつけた。
医術を通じて、ありすは少しだけだが他のゆっくりに興味を持ち始めることができていた。
それを感じられたのは、ありすが勉強を始めてからだいたい2ヶ月ほど経った頃だ。
多少頭が良かろうが、所詮はゆっくりで、しかも生まれて初めて教わるジャンルだ。覚え自体はとても悪い。
しかしもう一つ僕の予想と違ったのは、ありすがかなり一生懸命に勉強していることだ。
成り行き――というかただの思いつきなのだが――でこうなってしまったが、それを受け入れている。
ゆうかの傷だらけの姿が余程ショッキングだったのだろう。
ありすはゆっくりとだが着実に知識をつけた。
医術を通じて、ありすは少しだけだが他のゆっくりに興味を持ち始めることができていた。
それを感じられたのは、ありすが勉強を始めてからだいたい2ヶ月ほど経った頃だ。
「にんげんさん、ほんとうにありがとう。ゆうかはもうすっかりげんきよ」
『なに、最初こそ僕の処置だがあとは全てありすの仕事だ。礼ならありすに言うんだな』
「ありすもありがとう。いっしょにおはなしできてたのしかったわ!」
「ゆうか、げんきでね。けがしたら、またくるといいわ…」
『なに、最初こそ僕の処置だがあとは全てありすの仕事だ。礼ならありすに言うんだな』
「ありすもありがとう。いっしょにおはなしできてたのしかったわ!」
「ゆうか、げんきでね。けがしたら、またくるといいわ…」
一時期はゆうかに、飼いゆにならないかと打診したこともあるが固辞された。ありすもにんげんさんも大好きだが、やはり広い場所で好きなだけ花を育てていたいようだ。
ゆうかの性格上それは仕方のない事だし、何よりその理由の前向きさがとても好ましいものだったので僕はあっさりと諦めてしまった。
ゆうかの性格上それは仕方のない事だし、何よりその理由の前向きさがとても好ましいものだったので僕はあっさりと諦めてしまった。
『どこか、離れの山あたりが住みやすいのか?もし良ければそこまで連れて行ってやる。』
「ありがとうにんげんさん。でも、そこまであまえるわけにはいかないわ。ほうこうをおしえてくれれば、がんばってあるくわ」
…こいつも随分としっかりしているやつだ。こいつなら飼いゆっくりとしても十分やっていけるはずだが…
「ありがとうにんげんさん。でも、そこまであまえるわけにはいかないわ。ほうこうをおしえてくれれば、がんばってあるくわ」
…こいつも随分としっかりしているやつだ。こいつなら飼いゆっくりとしても十分やっていけるはずだが…
「そのかわり、ひとつだけおねがいがあるの」
…ん?
…ん?
__________
ありすは、名実ともに「おいしゃさんゆっくり」になった。
初めはまず患者を僕に見せ、ゲスかそうでないかを判断した後処置を許可していたが、元々は金バッジレベルのありすだ。それも必要なくなり、報告だけが来るようになった。
オレンジジュースや小麦粉などの「薬剤」も一々僕が許可を出してから渡していたが、少し小さめの密閉ビンをいくつか買ってやるとそれに入れて自分で管理するようになった。
一応、報告を受けた量と実際に使った量を確かめているが、違ったことは一度もない。
街の清掃をしている地域ゆっくりや、公園で知り合った飼いゆなどを中心に厚い信頼を受けている。
報酬として庭の雑草抜きやゴミ拾いをしたり、群れで集めた薬草とか偶然拾った小銭とかを持ってくる患者ゆっくりもいた。
「医者」と「患者」という距離感は、どうやらありすには丁度いいものだったようだ。
忙しいながらも楽しそうにやっている。
風の噂をききつけて、きめぇ丸が遠路はるばるやってきた時は驚いたが、治療してからは街なかで採れないような薬草を定期的に山から持ってきてくれるようになった。
今ではありすの良い仕事仲間だ。
オレンジジュースや小麦粉などの「薬剤」も一々僕が許可を出してから渡していたが、少し小さめの密閉ビンをいくつか買ってやるとそれに入れて自分で管理するようになった。
一応、報告を受けた量と実際に使った量を確かめているが、違ったことは一度もない。
街の清掃をしている地域ゆっくりや、公園で知り合った飼いゆなどを中心に厚い信頼を受けている。
報酬として庭の雑草抜きやゴミ拾いをしたり、群れで集めた薬草とか偶然拾った小銭とかを持ってくる患者ゆっくりもいた。
「医者」と「患者」という距離感は、どうやらありすには丁度いいものだったようだ。
忙しいながらも楽しそうにやっている。
風の噂をききつけて、きめぇ丸が遠路はるばるやってきた時は驚いたが、治療してからは街なかで採れないような薬草を定期的に山から持ってきてくれるようになった。
今ではありすの良い仕事仲間だ。
そんなありすが心待ちにしている季節がある。
__________
__________
『あ?なんだそりゃ?』
『…危ないもんじゃないだろうな?』
『…危ないもんじゃないだろうな?』
ゆうかは笑顔を崩さず答える。
『…わかった。いいぞ。』
「にんげんさん、ありがとう。それじゃあ、さようなら。」
__________
ありすと庭を眺めた日の次の朝、庭の片隅にはゆうかがいた。
今年も、ゆうかと過ごす季節がやってきた。
今年も、ゆうかと過ごす季節がやってきた。
「はるになったらここへきて、はーぶさんをそだててもいいかしら?」
ゆうかは毎年春になると山から、ミントを育てにここへやってくる。
「ゆうかがちいさいころ、おかあさんがおしえてくれたの。あついひにそれのはーぶさんをたべると、とってもゆっくりできるのよ。ありすとにんげんさんに、おれいをしたいの。」
ゆうかのために買い込んだプランターたちの上に乗るゆうかは、楽しそうにミントの種を撒いている。
今年の夏も、家に涼しい風が吹き抜けるのだろう。
今年の夏も、家に涼しい風が吹き抜けるのだろう。
たっぷりと茂る季節になると僕はゆうかの許可をもらいこれを少し摘んで、自家製モヒートなんかを作って飲んだりしている。
特に暑い時期には薬草を届けに来るきめぇ丸を呼び止め、ゆうか、きめぇ丸、ありす、それと僕のみんなで飲む。
酒を抜き、炭酸はほんの少しだけ、砂糖をがっつりと効かせた、ゆっくり専用だ。
それを飲むとありすは「とかいはね」とつぶやいて、冬にはなかなか見せないゆっくりらしい満面の笑顔を見せる。
今でも僕とありすの関係は変わらないし、それはゆうかもきめぇ丸も同じだろう。
家主と居候、医者と患者、仕事仲間。家族でも友人でもない、少しだけ離れた距離感。
それでも、遠くて心地良い距離の先にいるありすの笑顔は、本来のゆっくりを取り戻しているように見える。
溶けるような陽炎の中で楽しそうに話をする3匹のゆっくりを遠巻きに眺めていると、僕はもう少しだけラムが飲みたくなった。
特に暑い時期には薬草を届けに来るきめぇ丸を呼び止め、ゆうか、きめぇ丸、ありす、それと僕のみんなで飲む。
酒を抜き、炭酸はほんの少しだけ、砂糖をがっつりと効かせた、ゆっくり専用だ。
それを飲むとありすは「とかいはね」とつぶやいて、冬にはなかなか見せないゆっくりらしい満面の笑顔を見せる。
今でも僕とありすの関係は変わらないし、それはゆうかもきめぇ丸も同じだろう。
家主と居候、医者と患者、仕事仲間。家族でも友人でもない、少しだけ離れた距離感。
それでも、遠くて心地良い距離の先にいるありすの笑顔は、本来のゆっくりを取り戻しているように見える。
溶けるような陽炎の中で楽しそうに話をする3匹のゆっくりを遠巻きに眺めていると、僕はもう少しだけラムが飲みたくなった。
~おまけ~
「おにいさんはほかのにんげんさんとおはなししないの?」
『そういう質問は傷つくからやめろ』
『そういう質問は傷つくからやめろ』
おしまい
書いたもの
anko4491 鬼(き)ゆん
anko4491 鬼(き)ゆん
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2作目です。思いついたので書いてみました。
イマイチありすの態度がわからない、と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか…すみません。
距離は他ゆん以上に保ちたいけど、寂しい気持ちは他ゆん並にある大人しいありすのお話でした。
距離は他ゆん以上に保ちたいけど、寂しい気持ちは他ゆん並にある大人しいありすのお話でした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。