ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko1758 地べたの天国と天上の地獄
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ankoss
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ある群れで、あるゆっくりの姉妹が死んだ。
姉はれいむ種だった。
妹はまりさ種だった。
れいむは何者かに犯されたうえで大樹の梢に吊るされていた。
まりさは姉の真下であおむけになって事切れていた。
まるでお互いの変わり果てた姿を見て驚愕しているかのように、
あるいは醜い亡き骸を永遠に観察せよと強要されているかのように、
両者は死にながらにして凝然と見つめあっていた。
怪死であった。
抜けるような蒼天の下、山はむせかえりそうな初夏の匂いに満たされていた。
荒々しい緑の萌えるこの山には、一筋の川をもっている。
川幅はせまかったが流れは滝のようで、悠久の時の流れが左右に切りたつ岩壁を削り、
いまでは濁流は谷底を駆け抜けるようになっていた。
絶壁のふちには、固唾をのんでことの成りゆきを見守る二匹のゆっくりがいた。
れいむとまりさ。
姉妹は、固唾をのんで成りゆきを見守っていた。
眼下で吼える濁流の黒い水面には目もくれず、彼方にかかる吊り橋を注視している。
吊り橋の中ほどには人間が立っていて、いまにも飛びおりそうだ。
「……ごきゅりっ」
橋のまわりには人垣ができている。
衆人環視のなか、吊り橋のうえの人間はおもむろに膝を曲げて、濁流へと身を投げた。
「ゆゆぅぅぅぅぅぅ~~~~~~っ!」
姉妹は抱き合って悲鳴をあげた。
一方、投身をみまもっていた人々は湧きあがった。
人間が奈落へと落下する。
川に飲まれて死ぬだろう。
「ゆゆぅぅぅ!?」
ところが、人間はまるで魔法のように水面の直前で落下を止めた。
そして、上空へと引き戻されていく。
中空で止まり、また落下。
上昇、下降。
「ゆぅ~~~~……ゆぅ~~~~~……」
姉妹の眼は、人間の動きにあわせて上下しつづけた。
やがて人間の上下運動は止まり、吊り橋のうえに戻された。
観衆から万雷の拍手が送られる。
ゆっくりの姉妹は唖然とした。
「……ゆ、ゆゆぅっ。れーみゅっ、あれって なんなんだじぇ?」
「わかんないよ! でも おもしろちょー!」
姉妹の目撃した奇行は、人間の世では、バンジージャンプと呼ばれている。
「まりしゃ!」
「ゆん?」
「れーみゅも やりちゃい! ぶーりゃぶーりゃ しちゃい! なんとかしちぇね!」
「ゆゆー! まりしゃも! まりしゃも やりちゃいんだじぇ! ……どーやっちぇ?」
まりさは冷静至極に問い返した。
「ゆゆ~。……にんげんしゃんに きーちぇこよう!」
「みゅっ! れーみゅ! にんげんしゃんは ゆっきゅり できにゃいんだじぇ」
「ふーんだ。まりしゃは おびえてれば いーよ! れーみゅは いきゅ!」
そう言い放ち、れいむは妹を置き去りにして人間のもとへと走っていった。
「ゆ! まっちぇ! れーみゅ まっちぇ!
まりしゃ おいていっちゃ だみぇ なんだじぇ~。ゆんやーっ」
まりさは慌てて姉の背中に追いすがった。
結論から言えば、れいむの突撃は成功裏に終わった。
人間たちはすこぶる気さくに接してくれて、まりさの心配は杞憂だった。
「ぶーりゃぶーりゃ させてね! ゆっきゅり してないで はやくちてね! どれい!」
「まりしゃを ぶーりゃぶーりゃ させりゅんだじぇ、どれいっ!」
という接し方だったにもかかわらず、人間は慇懃に対応した。
ゆっくりがバンジージャンプを楽しめるようにと、釣り針をくくりつけたゴム紐を授けてくれた。
ぶーりゃぶーりゃの正式名称がバンジージャンプであることも教えてくれた。
姉妹は勇んで森に戻った。
姉妹の暮らす森、ゆっくりプレイスには、あつらえたようなバンジージャンプ台があった。
小高い丘の一角が天災かなにかで崩れ去っていて、崖のすぐそばに樹木がそびえている。
梢の何本かは丘のうえと接しているので、そこから樹木に乗り移ることができた。
荒々しい樹肌の梢を橋に見立てて、まりさとれいむはその上をすすむ。
やがて枝の中ほどに来た。
「ここで いーねっ」
「いーんだじぇ」
「ゆっきゅり じゅんび するねっ」
「ゆっきゅり じゅんび すりゅんだじぇ」
まりさが帽子の中からゴム紐を取りだす。
「じゃ、れーみゅが さきね!」
「ゆゆー。らじゃらじゃっ、なんだじぇ~」
まず、ゴム紐の片端に結ってあった釣り針を、れいむのお飾りにしっかりとくくりつけた。
「わーくわーく! わーくわーく!」
まりさはゴム紐をくくる場所を探した。
別の梢がふたりの眼前に伸びていた。
まりさは器用にも、この枝にゴムを結いつけた。
「はやくちてね! はやくちてね!」
れいむは泰然とたたずむばかりで、まったく作業を手伝おうとはしなかった。
準備は完了した。
姉妹は目をつむり、葉の屋根から垣間見える青空にむけて、朗々と宣した。
いや、宣しようとした。
「すーぴゃー! びゃん……」
言葉がとぎれて、宣言が中段される。
「ゆゆ……まりしゃ、なんだっきぇ? びゃん、びゃん……」
バンジージャンプ、と言おうとしている。
こんな長ったらしい単語は、ふたりの餡子脳の手に余る。
「ゆゆ~。わしゅれたんだじぇ……びゃん、びゃんっ……ぶーりゃぶーりゃ なんだじぇっ」
「しょれ! いもーちょは あたま いいねっ」
気を取りなおして姉妹が声をあわせた。
「すーぴゃー! ぶーりゃぶーりゃ! ちゃいむ!」
妥協した。
ともかく、あとは跳ぶだけだった。
れいむが地面を見下ろした。はるか下方には、柔らかな風にそよぐ緑豊かな草むらが見える。
「いっきゅよ~っ」
「いきゅんだじぇっ」
「いっきゅ~っ」
「いきゅんだじぇ」
「いっきゅよ~」
「いきゅんだじぇ……」
意気込みだけは勇ましい。だが、なかなか跳ぼうとはしなかった。
「いっきゅよ~……」
よく見ればあんよが震えている。
「……ね、ねえ、まりしゃ」
地面を見下ろしたまま、れいむが言った。
「なんなんだじぇ?」
「お、おしゃないでねっ」
震える声で厳命した。まりさはつとめて明るくふるまった。
「おしゃないんだじぇっ」
「おしゃないでねっ。ぜったい おしゃないでねっ」
「おしゃないんだじぇっ」
純真な笑顔で首肯する。
風が流れて、木々が騒いだ。
れいむはようやく決心がついたのか、すうっと息を吸いこんで、
「……お、おしゃないでねっ」
「はやく すりゅんだじぇっ」
しびれを切らした。まりさは反射的に背中を押してしまった。
「ゆぴぴっ」
れいむが落下した。
するするとゴム紐がその軌道を追った。
釣り針のつける位置が、すこし後頭部に寄っていたらしい。
れいむは顔面を真下に向けて、うつ伏せの姿勢をとった。
「おしょらとんでいりゅ~~……」
地面が急速に接近する。
「……ゆんっ♪」
地面に激突しようかという刹那、れいむの自由落下が止まった。
ひきのばされたゴムが収縮し、地面が遠のいてゆく。
「ゆゆぅぅぅぅぅぅっ」
れいむは歓喜の声を発した。
落下。上昇。
地面が近づいてくると思ったら、また遠のく。
浮遊する快感と、落下する愉悦とが、交互にやってきてとどまることを知らない。
「ゆんっ♪ ……………おしょら~…………………ゆんっ♪ ………おしょら~………ゆんっ♪ ……おしょら~……ゆんっ♪ ……ゅっ」
落下が止まったときに「ゆんっ」と楽しそうに発声し、
落下が始まったときに「おしょらとんでいりゅ~」と嬉しそうに言っていた。
その後ろ姿を、妹のまりさは羨ましそうに見つめていた。
やがて、上下運動が停止した。
同時に、れいむが全く動かなくなってしまった。
まりさからは姉の顔が死角となっていて、表情がうかがえない。
「れーみゅ?」
心配そうに声を投げかける。
すると、
「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛っ!」
吊るされたれいむは、痙攣した。
「ゆぴっ!」
梢のうえでまりさが軽く悲鳴をあげた。
じぶんが何かしてしまったのではないかと恐怖したのだ。
「ゆんやぁぁぁぁっ! ゆんやぁぁぁぁっ!」
泣きじゃくり、暴れはじめた。
ゴム紐が揺れている。
「れーみゅっ! どーちたんだじぇ!」
「しゅっきりじだいぃぃぃぃ! じゅっぎりじだいぃぃぃぃ!
じゅっぎゅりぃぃぃぃっ! じゅっぎゅり ざぜろぉぉぉぉっ!」
すっきり。
とは、ゆっくりの言葉で交尾をさす。
「ゆ……ゆゆ? しゅっきり?」
ゆっくりは振動を与えられると性的興奮を覚えてしまう。
それは子供であっても同じだったらしい。
落とされては引き戻される、という運動を加えられた結果、れいむは悶々とした性欲に見舞われたのだった。
「ゆ~~~」
まりさは懊悩した。
原因は分からなかったが、ともかく姉妹は性欲の解消を訴えている。
れいむは暴れまくって、小柄なまむまむから水滴をほとばしらせているが、
暴走する性欲のはけ口としてはまったくの役者不足だった。
なんとかして、解放させてあげたかった。
「ゆゆゆゆ……」
まりさは瞑想するように目を閉じて、梢の上で震えはじめた。
額に汗がしっとりとにじみでて、頬を染めた。
やがて腹からむにむにと突起が出現する。
ゆっくりの生殖器官である。
その先端から液体が沁みだしてきた。
そして、
「しゅっきりー!」
生殖器官の先っぽから、透明な精液が射出された。
水滴は青空に舞い、れいむの黒髪に着地した。
「ゆ゛ぅ゛ぅ゛っっっ!?」
精液が黒髪のあいだを流れ、皮膚に漂着し、しみこんだ。
黒髪を割って、れいむの頭から茎が伸びる。
しかし栄養不足のためだろう、ゆっくりの実は成らなかった。
「……れーみゅ?」
一転して死んだように制止してしまった姉妹を、まりさは再び心配そうに見つめた。
れいむはひとつ震えると、
「ゆぶぇぇ……」
餡子を嘔吐した。
命のかけらがこぼれ落ちてゆくさまが、
高みから姉を見下ろしていたまりさの目にもはっきりと見えた。
「ゆゆー! れーみゅ! あんこしゃん はいちゃ だみぇなんだじぇ!」
「ゆべぇ……」
まりさの叱咤もむなしく、草むらに黒い斑点ができる。
「れーみゅ! あんこしゃん もどしゅんだじぇ!」
嘔吐は続く。
「れーみゅ! あんこしゃん はくんじゃ ないんだじぇ!
しゃっしゃと もどしゅんだじぇっ。
……どーちて もどしゃにゃいの! ばかにゃの? ちぬの?」
「ゆぇ……」
「はくんじゃないって いっちぇりゅんだじぇっ。まりしゃの ゆーこちょ ききぇっ。
どーちて はくんだじぇっ。もどしゅんだじぇっ。しゃっしゃと しりょ、げしゅっ!」
「ゅ……」
「……ま……ま……まりしゃのこちょ むしすりゅなーっ。ゆんやーっ」
「……」
叱責はようやく通じた。
嘔吐が止まる。それどころか、動きそのものが止まった。
「れーみゅ! しょーがないんだじぇ! まりしゃが たしゅけて やりゅんだじぇ!
おかーしゃんを よんで くりゅんだじぇ! ゆっきゅり まっちぇちぇにぇ!」
「……」
返事はなかった。仕方ない奴だと思いつつ、まりさは梢から崖の上に渡る。
「ゆんっ、ゆんっ」
さらに高台からも下りて、樹木の麓に躍り出た。
そこでまりさは驚喜した。
「ゆゆぅぅぅぅっっっ!!??」
大木の足もとに餡子のかたまりを発見した。
「あみゃあみゃしゃんだ~~~っっっ!
がんばっちぇりゅ まりしゃに ごほーび にゃんだじぇ~~~」
まりさの頭上では、吊るされたれいむが風に吹かれて揺れていた。
目を開けたまま気絶している。
「ちゃいみゅ!」
すーぱーむーしゃむーしゃたいむと言おうとしたらしい。
が、嬉しさのあまり省略していた。
「むーちゃっ、むーちゃっ……」
れいむの揺れる影は、草の上にも映っている。
だが、まりさの意識は餡子に注がれていた。
れいむは気を失いながらも、
静かにしかし凝然と、幸せそうに吐瀉物を堪能する姉妹の頭を見つめている。
「むーちゃっ、むーちゃっ……ちあわちぇぇぇぇぇ!」
「……」
空は青い。
梢に宿る小鳥たちが啼いている。
緑の躍る草原は涼風になびいている。
爽やかな光景だった。
ただひとつ、樹木から一個の生命が吊るされているという一事を除けば。
「むーちゃっ、むーちゃっ……おいちぃぃぃぃぃぃっ」
「……」
まりさが幸せを噛みしめる。
「むーちゃっ、むーちゃっ……げふっ」
すべての餡子をたいらげてしまった。
れいむはまだ覚醒しない。
「まりしゃ たべしゅぎちゃったよっ」
幸福に震える声で、明朗に宣言した。
「なんだか ねむくなってきちゃよっ」
食べすぎたためである。
「まりしゃは すーやすーや すりゅよ!」
その言葉に嘘はなかった。
「おやちゅみ~~……」
目を閉じて、ころりと草むらにあおむけになり、寝入った。
寝転がるまえに目を閉じてしまったから、ついに宙ぶらりんのれいむには気づかなかった。
「……ゆぴぃぃ……すぴぃぃぃ……」
初夏の涼やかな大気に包まれた野山の一角。
まりさは木漏れ日を布団にして安らかに眠っている。
口もあにゃるも涎を垂らす。肛門は呼吸と同調して開閉をくりかえす。
興奮により伸びきったぺにぺには、いまや体内にひっこんでまむまむと変化していた。
一陣の風が吹きぬけた。
「……むにゃぁ……」
まりさは一瞬だけ顔をしかめたが、起きなかった。
「……ゅ……ゅゅ……?」
冷気が、れいむの意識を昏睡から引きずりあげた。
「……ゅ……ばり、じゃ、……ば、りじゃっ」
壊れた笛の音のような声が、死に臨みつつあるれいむの口からぼそりと漏れ垂れた。
「……ゅぴぃぃ……ゆぴぃぃぃ……」
まりさは大口を開けて寝こけている。幸せそうだ。
「だず、……げ、で、……ね゛ぇ」
餡子を吐き散らしてしまい、れいむの容姿は幽鬼のようにやつれ果てていた。
むりやりに妊娠させられた一事も、れいむの生命力を削ぎおとすのに役立っている。
「ばり、じゃ……」
「……ずぴぃぃ……ゆびぃぃぃ……ゅっ……」
まりさが顔をしかめて、わずかにふるえた。
あ、起きる。
そう思ったからこそ、れいむの黒瞳に希望が燻った。
しかしまもなく希望は儚くなった。
「……ゅっ、ゅっ……」
まりさのあにゃるから、ちょろちょろと透明な液体が漏れた。
おねしょをしただけだった。
「ゆぅ……」
安らかな寝顔が復活する。
残酷なまでに満ち足りた姿に、ひどく気分を害した。
れいむの頬っぺたが風船のようにふくらんだ。
「……ゆぶぇぇぇ」
餡子が落ちる。
いままでに吐き出されたそれを凌駕する量だった。
無防備に開けられた大口めがけて落下した。
べちゃり。
命のかたまりが、まりさの口に墜落した。
「……ゆん?」
衝撃がまりさを覚醒させた。
しかしまだ夢に半身をつっこんだ状態だった。
餡子は低きに流れ、喉に没入する。
恐るべき甘みが、まりさの舌を鞭打った。
「ゅ……ゆ……ゆゆぅぅぅぅっっ!?」
まりさは、叫んだ。
驚きのあまりに、目をあけた。
「……ゆ?」
奇妙なものが映りこんできた。
黒々と翼を広げる葉傘の一角に。
いびつな、痩せさらばえ、蒼ざめたゆっくりが宿っていた。
まりさを凝然と見下ろすその目は、憎悪に黒く燃えている。
その口からは漆黒の雫がぽたりぽたりと垂れている。
「……ゅっ、ゆっ」
れいむが。
無数の光の穴がうがたれた黒い海に。
幽霊のように。
ゆらゆらと。
幽玄と。
ゆれている。
「……ゆぴぃぃぃぃっ! で、で、でいびゅぅぅぅぅっ!」
金切り声が初夏を切りさく。
「ゆぶっ、ぼっ、ぶごっ」
間欠泉のように口から餡子を吐き出した。
口からだけではない。
穴という穴から、衝撃のあまりに体内物質が飛び出した。
餡子を腹に貯めこんでいたとはいえ、失った量はあきらかに致死量をこえていた。
「もっど……ゆっぎゅり……じだが……だっ……」
こうして、姉妹は見つめあったまま死に絶えた。
(おわり)
姉はれいむ種だった。
妹はまりさ種だった。
れいむは何者かに犯されたうえで大樹の梢に吊るされていた。
まりさは姉の真下であおむけになって事切れていた。
まるでお互いの変わり果てた姿を見て驚愕しているかのように、
あるいは醜い亡き骸を永遠に観察せよと強要されているかのように、
両者は死にながらにして凝然と見つめあっていた。
怪死であった。
抜けるような蒼天の下、山はむせかえりそうな初夏の匂いに満たされていた。
荒々しい緑の萌えるこの山には、一筋の川をもっている。
川幅はせまかったが流れは滝のようで、悠久の時の流れが左右に切りたつ岩壁を削り、
いまでは濁流は谷底を駆け抜けるようになっていた。
絶壁のふちには、固唾をのんでことの成りゆきを見守る二匹のゆっくりがいた。
れいむとまりさ。
姉妹は、固唾をのんで成りゆきを見守っていた。
眼下で吼える濁流の黒い水面には目もくれず、彼方にかかる吊り橋を注視している。
吊り橋の中ほどには人間が立っていて、いまにも飛びおりそうだ。
「……ごきゅりっ」
橋のまわりには人垣ができている。
衆人環視のなか、吊り橋のうえの人間はおもむろに膝を曲げて、濁流へと身を投げた。
「ゆゆぅぅぅぅぅぅ~~~~~~っ!」
姉妹は抱き合って悲鳴をあげた。
一方、投身をみまもっていた人々は湧きあがった。
人間が奈落へと落下する。
川に飲まれて死ぬだろう。
「ゆゆぅぅぅ!?」
ところが、人間はまるで魔法のように水面の直前で落下を止めた。
そして、上空へと引き戻されていく。
中空で止まり、また落下。
上昇、下降。
「ゆぅ~~~~……ゆぅ~~~~~……」
姉妹の眼は、人間の動きにあわせて上下しつづけた。
やがて人間の上下運動は止まり、吊り橋のうえに戻された。
観衆から万雷の拍手が送られる。
ゆっくりの姉妹は唖然とした。
「……ゆ、ゆゆぅっ。れーみゅっ、あれって なんなんだじぇ?」
「わかんないよ! でも おもしろちょー!」
姉妹の目撃した奇行は、人間の世では、バンジージャンプと呼ばれている。
「まりしゃ!」
「ゆん?」
「れーみゅも やりちゃい! ぶーりゃぶーりゃ しちゃい! なんとかしちぇね!」
「ゆゆー! まりしゃも! まりしゃも やりちゃいんだじぇ! ……どーやっちぇ?」
まりさは冷静至極に問い返した。
「ゆゆ~。……にんげんしゃんに きーちぇこよう!」
「みゅっ! れーみゅ! にんげんしゃんは ゆっきゅり できにゃいんだじぇ」
「ふーんだ。まりしゃは おびえてれば いーよ! れーみゅは いきゅ!」
そう言い放ち、れいむは妹を置き去りにして人間のもとへと走っていった。
「ゆ! まっちぇ! れーみゅ まっちぇ!
まりしゃ おいていっちゃ だみぇ なんだじぇ~。ゆんやーっ」
まりさは慌てて姉の背中に追いすがった。
結論から言えば、れいむの突撃は成功裏に終わった。
人間たちはすこぶる気さくに接してくれて、まりさの心配は杞憂だった。
「ぶーりゃぶーりゃ させてね! ゆっきゅり してないで はやくちてね! どれい!」
「まりしゃを ぶーりゃぶーりゃ させりゅんだじぇ、どれいっ!」
という接し方だったにもかかわらず、人間は慇懃に対応した。
ゆっくりがバンジージャンプを楽しめるようにと、釣り針をくくりつけたゴム紐を授けてくれた。
ぶーりゃぶーりゃの正式名称がバンジージャンプであることも教えてくれた。
姉妹は勇んで森に戻った。
姉妹の暮らす森、ゆっくりプレイスには、あつらえたようなバンジージャンプ台があった。
小高い丘の一角が天災かなにかで崩れ去っていて、崖のすぐそばに樹木がそびえている。
梢の何本かは丘のうえと接しているので、そこから樹木に乗り移ることができた。
荒々しい樹肌の梢を橋に見立てて、まりさとれいむはその上をすすむ。
やがて枝の中ほどに来た。
「ここで いーねっ」
「いーんだじぇ」
「ゆっきゅり じゅんび するねっ」
「ゆっきゅり じゅんび すりゅんだじぇ」
まりさが帽子の中からゴム紐を取りだす。
「じゃ、れーみゅが さきね!」
「ゆゆー。らじゃらじゃっ、なんだじぇ~」
まず、ゴム紐の片端に結ってあった釣り針を、れいむのお飾りにしっかりとくくりつけた。
「わーくわーく! わーくわーく!」
まりさはゴム紐をくくる場所を探した。
別の梢がふたりの眼前に伸びていた。
まりさは器用にも、この枝にゴムを結いつけた。
「はやくちてね! はやくちてね!」
れいむは泰然とたたずむばかりで、まったく作業を手伝おうとはしなかった。
準備は完了した。
姉妹は目をつむり、葉の屋根から垣間見える青空にむけて、朗々と宣した。
いや、宣しようとした。
「すーぴゃー! びゃん……」
言葉がとぎれて、宣言が中段される。
「ゆゆ……まりしゃ、なんだっきぇ? びゃん、びゃん……」
バンジージャンプ、と言おうとしている。
こんな長ったらしい単語は、ふたりの餡子脳の手に余る。
「ゆゆ~。わしゅれたんだじぇ……びゃん、びゃんっ……ぶーりゃぶーりゃ なんだじぇっ」
「しょれ! いもーちょは あたま いいねっ」
気を取りなおして姉妹が声をあわせた。
「すーぴゃー! ぶーりゃぶーりゃ! ちゃいむ!」
妥協した。
ともかく、あとは跳ぶだけだった。
れいむが地面を見下ろした。はるか下方には、柔らかな風にそよぐ緑豊かな草むらが見える。
「いっきゅよ~っ」
「いきゅんだじぇっ」
「いっきゅ~っ」
「いきゅんだじぇ」
「いっきゅよ~」
「いきゅんだじぇ……」
意気込みだけは勇ましい。だが、なかなか跳ぼうとはしなかった。
「いっきゅよ~……」
よく見ればあんよが震えている。
「……ね、ねえ、まりしゃ」
地面を見下ろしたまま、れいむが言った。
「なんなんだじぇ?」
「お、おしゃないでねっ」
震える声で厳命した。まりさはつとめて明るくふるまった。
「おしゃないんだじぇっ」
「おしゃないでねっ。ぜったい おしゃないでねっ」
「おしゃないんだじぇっ」
純真な笑顔で首肯する。
風が流れて、木々が騒いだ。
れいむはようやく決心がついたのか、すうっと息を吸いこんで、
「……お、おしゃないでねっ」
「はやく すりゅんだじぇっ」
しびれを切らした。まりさは反射的に背中を押してしまった。
「ゆぴぴっ」
れいむが落下した。
するするとゴム紐がその軌道を追った。
釣り針のつける位置が、すこし後頭部に寄っていたらしい。
れいむは顔面を真下に向けて、うつ伏せの姿勢をとった。
「おしょらとんでいりゅ~~……」
地面が急速に接近する。
「……ゆんっ♪」
地面に激突しようかという刹那、れいむの自由落下が止まった。
ひきのばされたゴムが収縮し、地面が遠のいてゆく。
「ゆゆぅぅぅぅぅぅっ」
れいむは歓喜の声を発した。
落下。上昇。
地面が近づいてくると思ったら、また遠のく。
浮遊する快感と、落下する愉悦とが、交互にやってきてとどまることを知らない。
「ゆんっ♪ ……………おしょら~…………………ゆんっ♪ ………おしょら~………ゆんっ♪ ……おしょら~……ゆんっ♪ ……ゅっ」
落下が止まったときに「ゆんっ」と楽しそうに発声し、
落下が始まったときに「おしょらとんでいりゅ~」と嬉しそうに言っていた。
その後ろ姿を、妹のまりさは羨ましそうに見つめていた。
やがて、上下運動が停止した。
同時に、れいむが全く動かなくなってしまった。
まりさからは姉の顔が死角となっていて、表情がうかがえない。
「れーみゅ?」
心配そうに声を投げかける。
すると、
「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛っ!」
吊るされたれいむは、痙攣した。
「ゆぴっ!」
梢のうえでまりさが軽く悲鳴をあげた。
じぶんが何かしてしまったのではないかと恐怖したのだ。
「ゆんやぁぁぁぁっ! ゆんやぁぁぁぁっ!」
泣きじゃくり、暴れはじめた。
ゴム紐が揺れている。
「れーみゅっ! どーちたんだじぇ!」
「しゅっきりじだいぃぃぃぃ! じゅっぎりじだいぃぃぃぃ!
じゅっぎゅりぃぃぃぃっ! じゅっぎゅり ざぜろぉぉぉぉっ!」
すっきり。
とは、ゆっくりの言葉で交尾をさす。
「ゆ……ゆゆ? しゅっきり?」
ゆっくりは振動を与えられると性的興奮を覚えてしまう。
それは子供であっても同じだったらしい。
落とされては引き戻される、という運動を加えられた結果、れいむは悶々とした性欲に見舞われたのだった。
「ゆ~~~」
まりさは懊悩した。
原因は分からなかったが、ともかく姉妹は性欲の解消を訴えている。
れいむは暴れまくって、小柄なまむまむから水滴をほとばしらせているが、
暴走する性欲のはけ口としてはまったくの役者不足だった。
なんとかして、解放させてあげたかった。
「ゆゆゆゆ……」
まりさは瞑想するように目を閉じて、梢の上で震えはじめた。
額に汗がしっとりとにじみでて、頬を染めた。
やがて腹からむにむにと突起が出現する。
ゆっくりの生殖器官である。
その先端から液体が沁みだしてきた。
そして、
「しゅっきりー!」
生殖器官の先っぽから、透明な精液が射出された。
水滴は青空に舞い、れいむの黒髪に着地した。
「ゆ゛ぅ゛ぅ゛っっっ!?」
精液が黒髪のあいだを流れ、皮膚に漂着し、しみこんだ。
黒髪を割って、れいむの頭から茎が伸びる。
しかし栄養不足のためだろう、ゆっくりの実は成らなかった。
「……れーみゅ?」
一転して死んだように制止してしまった姉妹を、まりさは再び心配そうに見つめた。
れいむはひとつ震えると、
「ゆぶぇぇ……」
餡子を嘔吐した。
命のかけらがこぼれ落ちてゆくさまが、
高みから姉を見下ろしていたまりさの目にもはっきりと見えた。
「ゆゆー! れーみゅ! あんこしゃん はいちゃ だみぇなんだじぇ!」
「ゆべぇ……」
まりさの叱咤もむなしく、草むらに黒い斑点ができる。
「れーみゅ! あんこしゃん もどしゅんだじぇ!」
嘔吐は続く。
「れーみゅ! あんこしゃん はくんじゃ ないんだじぇ!
しゃっしゃと もどしゅんだじぇっ。
……どーちて もどしゃにゃいの! ばかにゃの? ちぬの?」
「ゆぇ……」
「はくんじゃないって いっちぇりゅんだじぇっ。まりしゃの ゆーこちょ ききぇっ。
どーちて はくんだじぇっ。もどしゅんだじぇっ。しゃっしゃと しりょ、げしゅっ!」
「ゅ……」
「……ま……ま……まりしゃのこちょ むしすりゅなーっ。ゆんやーっ」
「……」
叱責はようやく通じた。
嘔吐が止まる。それどころか、動きそのものが止まった。
「れーみゅ! しょーがないんだじぇ! まりしゃが たしゅけて やりゅんだじぇ!
おかーしゃんを よんで くりゅんだじぇ! ゆっきゅり まっちぇちぇにぇ!」
「……」
返事はなかった。仕方ない奴だと思いつつ、まりさは梢から崖の上に渡る。
「ゆんっ、ゆんっ」
さらに高台からも下りて、樹木の麓に躍り出た。
そこでまりさは驚喜した。
「ゆゆぅぅぅぅっっっ!!??」
大木の足もとに餡子のかたまりを発見した。
「あみゃあみゃしゃんだ~~~っっっ!
がんばっちぇりゅ まりしゃに ごほーび にゃんだじぇ~~~」
まりさの頭上では、吊るされたれいむが風に吹かれて揺れていた。
目を開けたまま気絶している。
「ちゃいみゅ!」
すーぱーむーしゃむーしゃたいむと言おうとしたらしい。
が、嬉しさのあまり省略していた。
「むーちゃっ、むーちゃっ……」
れいむの揺れる影は、草の上にも映っている。
だが、まりさの意識は餡子に注がれていた。
れいむは気を失いながらも、
静かにしかし凝然と、幸せそうに吐瀉物を堪能する姉妹の頭を見つめている。
「むーちゃっ、むーちゃっ……ちあわちぇぇぇぇぇ!」
「……」
空は青い。
梢に宿る小鳥たちが啼いている。
緑の躍る草原は涼風になびいている。
爽やかな光景だった。
ただひとつ、樹木から一個の生命が吊るされているという一事を除けば。
「むーちゃっ、むーちゃっ……おいちぃぃぃぃぃぃっ」
「……」
まりさが幸せを噛みしめる。
「むーちゃっ、むーちゃっ……げふっ」
すべての餡子をたいらげてしまった。
れいむはまだ覚醒しない。
「まりしゃ たべしゅぎちゃったよっ」
幸福に震える声で、明朗に宣言した。
「なんだか ねむくなってきちゃよっ」
食べすぎたためである。
「まりしゃは すーやすーや すりゅよ!」
その言葉に嘘はなかった。
「おやちゅみ~~……」
目を閉じて、ころりと草むらにあおむけになり、寝入った。
寝転がるまえに目を閉じてしまったから、ついに宙ぶらりんのれいむには気づかなかった。
「……ゆぴぃぃ……すぴぃぃぃ……」
初夏の涼やかな大気に包まれた野山の一角。
まりさは木漏れ日を布団にして安らかに眠っている。
口もあにゃるも涎を垂らす。肛門は呼吸と同調して開閉をくりかえす。
興奮により伸びきったぺにぺには、いまや体内にひっこんでまむまむと変化していた。
一陣の風が吹きぬけた。
「……むにゃぁ……」
まりさは一瞬だけ顔をしかめたが、起きなかった。
「……ゅ……ゅゅ……?」
冷気が、れいむの意識を昏睡から引きずりあげた。
「……ゅ……ばり、じゃ、……ば、りじゃっ」
壊れた笛の音のような声が、死に臨みつつあるれいむの口からぼそりと漏れ垂れた。
「……ゅぴぃぃ……ゆぴぃぃぃ……」
まりさは大口を開けて寝こけている。幸せそうだ。
「だず、……げ、で、……ね゛ぇ」
餡子を吐き散らしてしまい、れいむの容姿は幽鬼のようにやつれ果てていた。
むりやりに妊娠させられた一事も、れいむの生命力を削ぎおとすのに役立っている。
「ばり、じゃ……」
「……ずぴぃぃ……ゆびぃぃぃ……ゅっ……」
まりさが顔をしかめて、わずかにふるえた。
あ、起きる。
そう思ったからこそ、れいむの黒瞳に希望が燻った。
しかしまもなく希望は儚くなった。
「……ゅっ、ゅっ……」
まりさのあにゃるから、ちょろちょろと透明な液体が漏れた。
おねしょをしただけだった。
「ゆぅ……」
安らかな寝顔が復活する。
残酷なまでに満ち足りた姿に、ひどく気分を害した。
れいむの頬っぺたが風船のようにふくらんだ。
「……ゆぶぇぇぇ」
餡子が落ちる。
いままでに吐き出されたそれを凌駕する量だった。
無防備に開けられた大口めがけて落下した。
べちゃり。
命のかたまりが、まりさの口に墜落した。
「……ゆん?」
衝撃がまりさを覚醒させた。
しかしまだ夢に半身をつっこんだ状態だった。
餡子は低きに流れ、喉に没入する。
恐るべき甘みが、まりさの舌を鞭打った。
「ゅ……ゆ……ゆゆぅぅぅぅっっ!?」
まりさは、叫んだ。
驚きのあまりに、目をあけた。
「……ゆ?」
奇妙なものが映りこんできた。
黒々と翼を広げる葉傘の一角に。
いびつな、痩せさらばえ、蒼ざめたゆっくりが宿っていた。
まりさを凝然と見下ろすその目は、憎悪に黒く燃えている。
その口からは漆黒の雫がぽたりぽたりと垂れている。
「……ゅっ、ゆっ」
れいむが。
無数の光の穴がうがたれた黒い海に。
幽霊のように。
ゆらゆらと。
幽玄と。
ゆれている。
「……ゆぴぃぃぃぃっ! で、で、でいびゅぅぅぅぅっ!」
金切り声が初夏を切りさく。
「ゆぶっ、ぼっ、ぶごっ」
間欠泉のように口から餡子を吐き出した。
口からだけではない。
穴という穴から、衝撃のあまりに体内物質が飛び出した。
餡子を腹に貯めこんでいたとはいえ、失った量はあきらかに致死量をこえていた。
「もっど……ゆっぎゅり……じだが……だっ……」
こうして、姉妹は見つめあったまま死に絶えた。
(おわり)