「『使い魔くん千年王国』 第二十七章 悪魔くん」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る
『使い魔くん千年王国』 第二十七章 悪魔くん - (2007/11/24 (土) 11:02:04) のソース
#center{&color(green){[[前のページへ>『使い魔くん千年王国』 第二十六章 審判の日 ]] / [[一覧へ戻る>使い魔くん千年王国]] / [[次のページへ>新約・使い魔くん千年王国 プロローグ クロムウェルの時代に ]]}} (カァカァ ギャアギャア ギャア ギャアギャア……) (カランコロン カランコロン カラン コロン) やあ、人間の皆さん、今晩は。松下一郎です。昨夜はテラカオスで失礼しました。 今宵も変わらずのご盛況、なにより乙でございます。 さて、『[[使い魔くん千年王国]]』第一部終了ということで、最終の投下に参りました。 思えば初投下が八月の下旬。時の過ぎるのは早いもので、彼岸花が満開ですよ。 ところで彼岸花って、有毒でお墓の周りに咲くから、『死人花』『地獄花』とも、言うんですねぇ……。 (ギャアギャア カァカァ ギャア ギャアギャア……) 「こ……これは、何事です!? 何が、ここで起きたのですか!?」 翌日の午後。アンリエッタ王女は、ユニコーンに跨り魔法衛士隊を率いて、ようやくタルブに到着した。 そこで彼女が見た物は、完全に焦土となったタルブの村であった。 その跡地にいくつか天幕が張られ、生き残った者たちが治療を受けていた。 キュルケが彼女の姿を見かけ、声をかける。 「あなたは、アンリエッタ王女! よくぞお出で下さいました!! あの、あちらで、ルイズたちが治療を受けています」 「ええっ、ルイズが!? な、なぜ、どうしたのですか!!?」 「彼女たちの活躍で、アルビオン艦隊は跡形もなく全滅したのですよ。 お見せしたかったといいますか、ご覧にならなくてよろしかったといいますか……」 あの光景を見たキュルケの顔は、なお蒼白だった。 王女は急いで馬を降り、教えられた天幕へ駆けつける。そこには、力尽きて昏睡しているルイズと松下がいた。 「あ、ああ……[[ルイズ!]]!! それに、使い魔さん!」 「いいえ、彼は『メシア』ですわ、王女様」 傍で看護している少女が、毅然とそう言った。 「あの……貴女は、どなた?」 「お初にお目見えいたします。トリステイン魔法学院の使用人、シエスタでございます」 王女は戸惑った顔を見せたが、魔法衛士隊や追って来た重臣たちを集めると、 アルビオンとの緒戦に勝利した事を力強く宣言する。 「我々は、彼女たちの活躍と始祖ブリミルの加護により、奇跡的に敵艦隊を『追い払う事』に成功しました。 とりあえず、今回の戦いで犠牲になられた方々に、黙祷と哀悼の意を捧げます」 丁重に王宮に運ばれたルイズと松下は、三日三晩昏睡状態にあった。 そして四日目の朝、二人は同時に目を覚ました。 「ふわぁぁあああああ、ああ、よく、寝た」 「ええ、よおおおく寝たわ。かつてなくバッチリの気分よ!」 付きっ切りで看護していたシエスタや『信者』、タルブの村人は、歓呼の声を挙げる。 「メシア! ああ、『我らのメシア』が復活されたわ!!」 「「メシア万歳!! 千年王国万歳!!」」 「「AMEN!! AMEN!! AMEN!!」」 「な、何? いきなり吃驚するじゃない、シエスタ」 「ああ、きみたちか。どうやらアルビオン艦隊は殲滅出来たようだね。 だがきみたち、今日のところは『トリステイン王国万歳』と唱えたまえ。 これでアルビオンも、しばらくこの国に手を出そうとは思わないだろうから」 騒ぎを聞きつけ、アンリエッタ王女もいそいそと駆けつけた。 「ああ、ルイズ! ミスタ・マツシタ! やっとお目覚めですね! 本当に……心より感謝いたします。 あなた方は、『救国の英雄』ですよ!!」 「姫様! わ、私……無我夢中で、何がなんだか、さっぱり」 「姫殿下、ご無事でなにより。今度の褒賞は、この国でもよろしいですか?」 松下は相変わらず、松下だ。 その翌朝。 論功行賞の結果、ラ・ロシェールの町の収入の十分の一がルイズに、タルブの村一帯の領地が松下に与えられた。 もっとも両方とも手ひどく破壊されたため、復興が急務である。 なにより国防最前線の軍港として、もっと大きくする必要もあった。松下は地図を貰い、シムシティ気分で大張り切りだ。 「早速、復興事業を始めよう。発注業者の入札制度はあるようだ。 ほとんどの家屋と森林が失われたから、かえって再建が早くなるな。貴族から絞り取った余剰資金を投入しよう。 住民は今回の件の難民に加えて、国内の商人やあぶれメイジや盗賊・傭兵などを掻き集め、 厳しい法律と教義で鍛えて、ぼくの私兵集団とする。税金はしばらく免除だ。 ラ・ロシェール空港のバックアップも行えるようにして、将来は国際的なハブ(主軸)空港としての役割を担わせる。 竜や『魔女のホウキ』の発着場も作っておこうか?」 お付きの文官連中を率い、8歳の領主さまは様々な青写真を描く。 「……役所をここに建てて、軍港にふさわしい施設と、銀行に病院に歓楽街。 ファウスト博士とムラシゲルの銅像も、地域の功労者として立派な物にしてやろう。 そうだ、今回の記念に、ぼくやルイズやシエスタ、ミスタ・コルバアルや火竜たち、 それに『地獄の門』の銅像も建てておくかな。慰霊碑と戦勝記念碑も必要だ。記念館もあとで建てよう」 「コルバアルって誰よ。コルベール先生でしょ」 つっこみどころはそこだけか、ルイズ。 「それで、結局何がどうなったの? そろそろ説明してよ」 「ぼくは『地獄の門』を呼び出し、きみと協力して悪魔の大群を召喚したのだ。 ちとやりすぎたかな。本来悪魔が十数体程度で良かったのだが、きみの潜在魔力は予想外のものだったよ。 やはりきみの系統は、失われた『虚無』だったのだ。ぼくを呼び出しただけのことはある。 流石にあれほどの大軍団は召喚できないだろうが、幾柱かの悪魔とはコンタクトが可能になった。 ……もっとも、いちいちタルブの山奥まで行かねばならないから、 もっとコンパクトな召喚方法はないか、と思っているがね。連れ歩くのも面倒だし」 数日後、タルブの村に復興の槌音が響き始めた。 松下が陣頭指揮を取り、ルイズが呆然と眺めている。王女も『前線基地』を視察に来た。 「やあ姫殿下、ご機嫌麗しゅう。時に今回、あつかましくももう一つお願いがあるのですが」 「まあ、何かしら? ご恩には報いなければなりませんが、この国は差し上げませんよ」 コロコロと王女が笑う。腹黒さではいい勝負かもしれない。この『ビッチ』め。 「ははは、流石にまだ早いですよ。戦争も始まったばかりですから。 そこでお願いなのですが、戦争に勝利したら『アルビオン全土』をぼくに下さい。 ぼくでダメなら、誰か高名で誠実な無能者をアルビオンに立てて頂けばよい。 不肖このぼくが、その者の黒幕としてかの地を支配しましょう。ルイズなどはどうです?」 腹黒王女も絶句する。ここまで図々しい『お願い』があるか。 「……ふふ、考えておきますわ。でも、アルビオンはそのうち王政復古をさせたいのです。 『レコン・キスタ』との戦争が終結すれば、その国内に貴族として封建するかも知れませんが、何年かかるやら」 「それでもよろしい、言質はとりましたぞ。あと、ぼくはトリステイン王国にではなく、 今のところは『ルイズに』仕えているという事を、お忘れなく」 互いに『にこやかに』笑い、会談は終了した。 「マツシタ! まさかあんたまた、姫様に変なお願いしたんじゃあないでしょうね!!」 ルイズが鋭く感づき、松下に詰め寄る。 「大体あんた、とうとう領地なんか貰って、これからどうする気?」 松下は、至極冷静に、今後の活動方針を語る。 「そうだなあ、手始めにアルビオン全土を掌握して、やがてはトリステインから正式に独立し」 「それから空軍力でガリアを辺境から蚕食するか、戦力が充実していれば直接王都を空襲して降伏させ」 「ガリアの有力貴族やゲルマニアは、賄賂や手紙やこの『魔酒』で結束を弱めておき」 「各地に諸侯を分立させ、国内がガタガタになるほど揺さぶった後」 「平民や下級貴族たちには、宣教と『白い粉』で革命に賛同させて、流言蜚語で上層部を混乱させ」 「そして『悪魔』の力で一気に無政府状態を作り、最小限の流血を以って、『汎大陸人民革命』を成就させる」 「ぼくは『メシア』となり、きみは『聖母』となるだろう!」 「なあ、ぼくの忠実なる『第一使徒・ルイズ』よ」 ルイズは、がっくりと崩れ落ち、頭を抱えた。 ああ……やっぱりこいつ…………『悪魔』だわ。 (第一部・完) #center{&color(green){[[前のページへ>『使い魔くん千年王国』 第二十六章 審判の日 ]] / [[一覧へ戻る>使い魔くん千年王国]] / [[次のページへ>新約・使い魔くん千年王国 プロローグ クロムウェルの時代に ]]}}