「入らせてもらってもいいかね? ミス・ヴァリエール。」
わたしの耳に、学院長の声が聞こえる。でも、口が震えて返事が出来ない。
「ヒゲ爺さん、何のつもりですか?」
ダネットの声が聞こえる。ヒゲ爺さんなんて失礼なことを言うダネットを注意しなきゃ。でも、注意すら出来ない。
「ミス・ヴァリエールに話がしたいと言われての。」
「その話に、なんでその剣が必要なんですか。さっさと持って帰りなさい。」
「その話に、なんでその剣が必要なんですか。さっさと持って帰りなさい。」
学院長とダネットのやり取りが聞こえるけれど、わたしには別の世界の言葉に聞こえる。
心にあるのはどろりとした黒い何か。この黒い何かは何なんだろう? なんだっけ? ああそうだ、これは殺
心にあるのはどろりとした黒い何か。この黒い何かは何なんだろう? なんだっけ? ああそうだ、これは殺
「ミス・ヴァリエール、大丈夫ですか?」
誰かがわたしの肩に手を置いた。この声はミスタ・コルベール?
「あ……、いえ。何でもありません。」
「そうですか。ああ、こんな時間に、しかも女子寮に来てしまい申し訳ありません。」
「そうですか。ああ、こんな時間に、しかも女子寮に来てしまい申し訳ありません。」
頭を下げるミスタ・コルベールの姿に我に返り、慌ててわたしも頭を下げる。
あれ? わたしさっき何を考えてたんだっけ? うーん……まあいっか。
あれ? わたしさっき何を考えてたんだっけ? うーん……まあいっか。
「い、いえ。それはいいんですが、学院長は話があるということですが、ミスタ・コルベールは何か御用でしょうか?」
「ええ。私は、そちらのミス・ダネットに少しお話がありまして。」
「私に何の用ですか?」
「ええ。私は、そちらのミス・ダネットに少しお話がありまして。」
「私に何の用ですか?」
学院長を睨み付けたままのダネットが、顔を向けずに返す。
「ダネット! 失礼でしょ!」
「いえ、構いません。このような時間に突然来てしまった訳ですし。」
「いえ、構いません。このような時間に突然来てしまった訳ですし。」
そう言って苦笑いをするミスタ・コルベール。
そして事態は、新しい来訪者によって更に面倒な方向へ進む。
そして事態は、新しい来訪者によって更に面倒な方向へ進む。
「学院長にミスタ・コルベール? ルイズ、あんた何したの?」
「修羅場。」
「え!? ちょっとルイズ!! あんたちょっと説明なさい!!」
「修羅場。」
「え!? ちょっとルイズ!! あんたちょっと説明なさい!!」
部屋に入ってきたキュルケとタバサに、わたしはどうしたものかと頭を抱えた。
「あの時の娘っ子達か。ちょーどいいや。そっちの娘っ子達にも聞いてもらうとしようぜ。」
聞きなれない声に、わたしやダネット、キュルケにタバサが周囲を見渡す。
「誰ですか! 姿を見せなさい!! 首根っこへし折りますよ!!」
「残念ながら、俺には首って無いんだよね。」
「残念ながら、俺には首って無いんだよね。」
謎の声に、苛立ちを隠せないダネット。あれ? 何故かタバサの顔色が悪いのは気のせいかしら?
「いいから姿を見せなさい!!」
「あー、こっちだこっち。」
「あー、こっちだこっち。」
声の先を辿ると、学院長の姿。でも、学院長ってこんな声だっけ?
「ヒゲ爺さん! 私をおちょくって面白いんですか!! ええい、この場で首根っこへし折ってやります!!」
「ぐふぉお! ま、待った! 私じゃなくて!! ごふぇっ!!」
「ちょっとやめなさいダネット!! 絞まってる! 学院長の喉完全に絞まってるから!」
「離しなさいお前! このヒゲ爺さんに引導を渡してやるのです!!」
「ぐふぉお! ま、待った! 私じゃなくて!! ごふぇっ!!」
「ちょっとやめなさいダネット!! 絞まってる! 学院長の喉完全に絞まってるから!」
「離しなさいお前! このヒゲ爺さんに引導を渡してやるのです!!」
必死に止めるわたしを払い、学院長の首をぐいぐい締め付けるダネット。あ、学院長の顔色が青から紫になってる。でも、何でちょっと幸せそうなのかしら?
「おーい、そっちの爺さんじゃなくてこっちこっち。」
のん気な声が聞こえ、ダネットが動きを止める。
確か今の声、学院長より下から聞こえたわね。
確か今の声、学院長より下から聞こえたわね。
「破壊の剣が喋ってる。おそらくインテリジェンスソード。」
タバサが土気色をした学院長の傍まで行き、手に持った剣を指差す。あれ? タバサの顔色が元に戻ってる?
インテリジェンスソードってあれよね、確かメイジが魔法で剣を喋れるようにしたってやつ。
インテリジェンスソードってあれよね、確かメイジが魔法で剣を喋れるようにしたってやつ。
「サビ剣が喋ってるんですか? でも、何でそんな声なんですか?」
「そんな声って言われても、俺は昔っからこんな声だぜ? つうかサビ剣って酷くね?」
「そんな声って言われても、俺は昔っからこんな声だぜ? つうかサビ剣って酷くね?」
汚いものを触るかのように、ダネットが短剣で破壊の剣をつんつん突っつく。っていうかダネット、それって一応は宝物庫に入れられてる品よ?
「サビ剣をサビ剣と言って何が悪いんですか。それともお前には名前があるっていうんですか。」
「俺さまにはデルフリンガーっつうカッコイイ名前がある。」
「でる……ええい! お前みたいな危ない剣はサビ剣で充分です!!」
「危なさとサビ剣って関係なくね!?」
「俺さまにはデルフリンガーっつうカッコイイ名前がある。」
「でる……ええい! お前みたいな危ない剣はサビ剣で充分です!!」
「危なさとサビ剣って関係なくね!?」
ダネットと自分をデルフリンガーと言った破壊の剣のコントで、話が全く進まないのに焦れたキュルケが口を挟む。
「それで、そのご大層な名前の破壊の剣が一体なんの用なの? こっちはこっちでダネットに話を聞きにきたんだから、手短に話して頂戴。」
「ああ、じゃあ短くね。えっとだな、そこの胸の小さな娘っ子。いや、青い髪の方じゃなくて桃色の方だ。」
「ダネットー、その剣捨ててきちゃっていいわよー。」
「異論は無い。」
「そうですね。こんな剣は無い方がいいです。お前もたまにはいいこと言いますね。」
「ああ、じゃあ短くね。えっとだな、そこの胸の小さな娘っ子。いや、青い髪の方じゃなくて桃色の方だ。」
「ダネットー、その剣捨ててきちゃっていいわよー。」
「異論は無い。」
「そうですね。こんな剣は無い方がいいです。お前もたまにはいいこと言いますね。」
わたしとタバサとダネットのコンビネーションによって、燃えないゴミの日にでも回収されそうになった破壊の剣が慌てて止める。
「ま、待った! 捨てないで!! 窓を開けないでくれ!!」
「っていうか、あんたってそんなに軽い奴……じゃなくて軽い剣だったっけ?」
「っていうか、あんたってそんなに軽い奴……じゃなくて軽い剣だったっけ?」
本気で窓から投げ捨てそうなダネットを仕方なく止め、さっきから不思議に思っていた事を聞いてみる。
あの時に聞こえていた声は、少なくともこんなに軽くも無く、もっと重圧的なものだったはず。
あの時に聞こえていた声は、少なくともこんなに軽くも無く、もっと重圧的なものだったはず。
「ああ、それなんだけどさ、まずは俺の役目から話す。つっても、ほとんど忘れちゃってるんだがな。」
「ダネットー」
「投げないで!! いや、だからってゴミ箱に入れて欲しい訳じゃなくて!! 思い出す!! 必死に思い出すから捨てないで!!」
「ダネットー」
「投げないで!! いや、だからってゴミ箱に入れて欲しい訳じゃなくて!! 思い出す!! 必死に思い出すから捨てないで!!」
デルフリンガーと名乗る破壊の剣は、大慌てで自分の役目を話し出した。
その内容とは、恐らくどの文献にも載っていないであろう恐ろしいもので、一度聞いていたという学院長やミスタ・コルベールでさえ顔色を悪くするものだった。
その内容とは、恐らくどの文献にも載っていないであろう恐ろしいもので、一度聞いていたという学院長やミスタ・コルベールでさえ顔色を悪くするものだった。
「じゃあ、あんたは世界を壊そうとした黒い剣を封じ込めてたってことなのね。」
「そういうこった。それが、どういう事かおめによって中途半端に封印が解けちまったって事。」
「そういうこった。それが、どういう事かおめによって中途半端に封印が解けちまったって事。」
デルフリンガー曰く、あの黒い剣は、始祖ブリミルの時代に突如現れたらしい。
目的は世界の破壊。とは言っても、剣の持ち主に聞いた訳じゃないから真実はわからない。何故なら、相対したものは全て帰ってこなかったから。
しかし、剣の持ち主はある日突然姿を消した。理由はデルフリンガーにも、その場にいた誰にもわからなかったらしい。
最後に破壊されたのは、現在サハラ砂漠と呼ばれる場所の中心で、今もそこは砂漠のまま。
その破壊され、一面の砂漠と化した場所であの黒い剣だけが発見され、数多くのメイジによって、魔力を吸収するという特性を持ったデルフリンガーの中に封印されたそうな。
それから時は流れ、人から人へ、様々な場所を経て学院の宝物庫に封印されることになり、それをフーケが盗み、わたしが見つけて中途半端に封印を解いてしまった。という事らしい。
目的は世界の破壊。とは言っても、剣の持ち主に聞いた訳じゃないから真実はわからない。何故なら、相対したものは全て帰ってこなかったから。
しかし、剣の持ち主はある日突然姿を消した。理由はデルフリンガーにも、その場にいた誰にもわからなかったらしい。
最後に破壊されたのは、現在サハラ砂漠と呼ばれる場所の中心で、今もそこは砂漠のまま。
その破壊され、一面の砂漠と化した場所であの黒い剣だけが発見され、数多くのメイジによって、魔力を吸収するという特性を持ったデルフリンガーの中に封印されたそうな。
それから時は流れ、人から人へ、様々な場所を経て学院の宝物庫に封印されることになり、それをフーケが盗み、わたしが見つけて中途半端に封印を解いてしまった。という事らしい。
「でも、中途半端にってどういう事よ?」
「それなんだけどな、あの剣、まだ俺の中にあるっぽいのよ」
「じゃあ封印解けてないじゃない。」
「まあ聞け。でな、こっからが本題だ。娘っ子、おめ自分の中に何かを感じねえか?」
「それなんだけどな、あの剣、まだ俺の中にあるっぽいのよ」
「じゃあ封印解けてないじゃない。」
「まあ聞け。でな、こっからが本題だ。娘っ子、おめ自分の中に何かを感じねえか?」
自分の中に何か? このフレーズ、どこかで聞いたことがあるような……。あ、確かダネットが前にわたしの中のわたしがどうのこうの言ってたような。
「魂の融合……ですか?」
搾り出すようなダネットの声が聞こえ、見てみると、今にも泣きそうな表情のダネットがいた。
「魂の融合? どういうことよダネット?」
「何か知らんが、こっからはそっちの娘っ子の方が詳しそうだな。」
「何か知らんが、こっからはそっちの娘っ子の方が詳しそうだな。」
話し手が剣からダネットへと移り、部屋の全員がダネットへと向き直る。
「その剣の使い手と剣の中の奴は、恐らく……私の知ってる奴です。」
驚くわたし達を見ながら、ダネットは自分の知っていることを話し出した。
それは以前、召喚されたときに話してくれた事よりももっと詳しく、そして悲しい話。
黒い剣を手にした青年と、剣に封じ込められていた世界を破壊しようとしていた者と、二人と一緒に旅をしたダネットや仲間の話。
だが、その話を最後まで聞いた後、疑問が残った。
それは以前、召喚されたときに話してくれた事よりももっと詳しく、そして悲しい話。
黒い剣を手にした青年と、剣に封じ込められていた世界を破壊しようとしていた者と、二人と一緒に旅をしたダネットや仲間の話。
だが、その話を最後まで聞いた後、疑問が残った。
「ねえダネット、その話の最後はめでたしめでたしで終わりじゃないの? 少なくともあたしにはそう聞こえたけど?」
そう。キュルケの言う通り、剣を持った青年と剣の中にいた者は世界を救い、剣の中にいたという者も人へと生まれ変わり、皆で幸せに暮らしていた。
そんな平和な暮らしをしていた中のダネットをわたしは呼び出してしまい、今に至る……というのが今の話だ。
正直、荒唐無稽も良い所で、信じられるようなものでもなかったが、真実だったとしてもハッピーエンドなはず。
これでは、デルフリンガーの話してくれた事とは食い違いが生じる。
そんな平和な暮らしをしていた中のダネットをわたしは呼び出してしまい、今に至る……というのが今の話だ。
正直、荒唐無稽も良い所で、信じられるようなものでもなかったが、真実だったとしてもハッピーエンドなはず。
これでは、デルフリンガーの話してくれた事とは食い違いが生じる。
「はい。そしてもう一つ、私が話していなかったことがあります。」
「もう一つ?」
「ええ。私自身もあやふやで、ただの気のせいだと思っていましたが、もしかするとそれは……本当にあったことなのかもしれません。」
「もう一つ?」
「ええ。私自身もあやふやで、ただの気のせいだと思っていましたが、もしかするとそれは……本当にあったことなのかもしれません。」
ダネットの話してくれたもう一つの話は、とても救いの無い話だった。
黒い剣を受け取り、自分の運命を聞いたとき、世界を恨み、人を呪い、生きているもの全てに殺意を抱いてしまった青年の話。
あったかもしれないもう一つの運命。もしもの世界。
ダネットはその記憶がはっきりしないらしく、色んな事があやふやで、説明するのが大変そうだった。
でも、わたしにはわかる。わかってしまう。何故ならわたしは見てしまったから。
黒い剣を受け取り、自分の運命を聞いたとき、世界を恨み、人を呪い、生きているもの全てに殺意を抱いてしまった青年の話。
あったかもしれないもう一つの運命。もしもの世界。
ダネットはその記憶がはっきりしないらしく、色んな事があやふやで、説明するのが大変そうだった。
でも、わたしにはわかる。わかってしまう。何故ならわたしは見てしまったから。
「以上です。お前、今まで黙っていてすいませんでした。」
「以上ってあんた、それ全然解決どころか終わってないじゃない。」
「以上ってあんた、それ全然解決どころか終わってないじゃない。」
話し終えたダネットに、キュルケが横槍を入れる。
ダネットの話の最後は、暴走して世界を破壊していた青年を何とかしばらく封印することに成功し、世界中の人が結託した後に封印を解き、青年と全面戦争を始めるという所で終わったからだ。
ダネットの話の最後は、暴走して世界を破壊していた青年を何とかしばらく封印することに成功し、世界中の人が結託した後に封印を解き、青年と全面戦争を始めるという所で終わったからだ。
「その剣の持ち主は封印されたわ。」
突然口を開いたわたしを、皆が驚きの表情で見る。
「お前……何故それがわかるんですか?」
できれば聞きたくないという顔をしたダネットがわたしに問う。
「わたしが三日間寝ている間、ずっとわたしは見てきたの。その剣の持ち主の全部をね。」
「じゃあ……お前は、やっぱり……」
「魂の融合だっけ? 多分、それもしてるんだと思う。自覚は無いんだけどね。あはは。」
「ちょ、ちょっと! 笑ってる場合じゃ無いでしょルイズ!? 第一、あたしにはさっぱりよ? 二人で納得してないで説明してちょうだい。」
「じゃあ……お前は、やっぱり……」
「魂の融合だっけ? 多分、それもしてるんだと思う。自覚は無いんだけどね。あはは。」
「ちょ、ちょっと! 笑ってる場合じゃ無いでしょルイズ!? 第一、あたしにはさっぱりよ? 二人で納得してないで説明してちょうだい。」
話がわからないキュルケが慌てて横から入る。
わたしが説明しようとすると、ダネットが先に話し出した。多分、ちょっとでもわたしの負担を減らしたいという所かしら。
わたしが説明しようとすると、ダネットが先に話し出した。多分、ちょっとでもわたしの負担を減らしたいという所かしら。
「あの黒い剣の中にいる奴は魂だけらしいんです。そして、持ち主は魂がゆっくりと同化していくのです。」
「待ってよ、それってルイズがいずれはああなっちゃうってこと!? 以前の持ち主ってああなっちゃったんでしょ!?」
「なってません!! ならなかったんです……そのはずなんです……」
「待ってよ、それってルイズがいずれはああなっちゃうってこと!? 以前の持ち主ってああなっちゃったんでしょ!?」
「なってません!! ならなかったんです……そのはずなんです……」
ダネットはキュルケに強く言い返した後、目に涙を浮かべうつむき、言葉を続けた。
「剣の中のあいつは、本当はいい奴だったんです。私をいっつもからかったりいじめたりしましたけど、いい奴だったんです!!」
「でも、今は違う。」
「でも、今は違う。」
タバサの言葉に、返す言葉が無いのか、ダネットはうつむいたまま涙を床に落とした。
「ダネット、もしわたしがそうなりそうだったら、止めてくれる?」
「……お前、その意味をわかって言ってるんですか?」
「……お前、その意味をわかって言ってるんですか?」
わたしの言葉に、涙をこぼしつつダネットが返す。
今の言葉の意味なんてわかってる。そして、ダネットが話してくれたハッピーエンドの話や、わたしが見たもう一つの話の中でのダネットを見たことで、ダネットの役目も何となくわかってる。
何よりも、わたしはダネットの知らないもう一つの話の結末も知っている。だからこそ、あんな結末にしてはいけないとわたしは思う。
それなら、そうなる前にわたしは。
今の言葉の意味なんてわかってる。そして、ダネットが話してくれたハッピーエンドの話や、わたしが見たもう一つの話の中でのダネットを見たことで、ダネットの役目も何となくわかってる。
何よりも、わたしはダネットの知らないもう一つの話の結末も知っている。だからこそ、あんな結末にしてはいけないとわたしは思う。
それなら、そうなる前にわたしは。
「ええ。ちょっと怖いけどね。」
「だからって何でお前がそんな目に会わなくちゃいけないんですか!!」
「だからって何でお前がそんな目に会わなくちゃいけないんですか!!」
ダネットは涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔を上げ、叫ぶように言った。
「確かに理不尽よね。でもね、もしかしたらダネットはそんな理不尽な目に会いそうなわたしを止めるために来たんじゃないかしら?」
「そんな事に呼ばれても嬉しくありません!」
「盛り上がってる所に悪いんだけど、一つ聞かせて。ルイズ、あんたもしかして今、どうしようも無い時はダネットに自分を殺せって言ったの?」
「そんな事に呼ばれても嬉しくありません!」
「盛り上がってる所に悪いんだけど、一つ聞かせて。ルイズ、あんたもしかして今、どうしようも無い時はダネットに自分を殺せって言ったの?」
キュルケの言葉に、わたしは曖昧な表情しか返せない。
「ふざけるんじゃないわよ!!」
目の前に星が見えた気がした。それほどの勢いでわたしはキュルケにひっぱたかれたようだ。
「痛いわね!! 何すんのよ!!」
「はあ!? わからないならもう一発お見舞いするわよ? あんた使い魔を何だと思ってんの!? 自殺の道具じゃ無いのよダネットは!!」
「はあ!? わからないならもう一発お見舞いするわよ? あんた使い魔を何だと思ってんの!? 自殺の道具じゃ無いのよダネットは!!」
キュルケの言うことは最もだ。だけど、わたしだって死にたい訳じゃない。そう簡単に死んでなんかやるもんか。だけど、アレの封印が完全に解けたら、わたしの魂が乗っ取られたら洒落じゃ済まないのだ。
「乳でかの言う通りです。私はお前を殺すなんてまっぴらごめんです」
興奮したキュルケを抑え、涙と鼻水を拭いたダネットが、わたしの目を見ながら言った。
「でも!」
「でももヘチマもホタポタもありません。私はきっとお前を守りに来たんです。お前を殺すために来たんじゃありません。絶対そうです。」
「守るってあんた、もしわたしがああなったら守りようがないじゃない!」
「させません。もしとかでもとか知ったこっちゃ無いです。決めました。お前を殺すなんて絶対に嫌です!!」
「じゃ、じゃあどうするって言うのよ!! どうやって魂の融合を止めるって言うのよ!!」
「わかりません。」
「なら無理じゃない! 何よ!! 結局はどうしようもないんじゃない!! 後で殺せないって言うんなら今殺しなさいよ!! そうよ! そうしなさいよ!!」
「でももヘチマもホタポタもありません。私はきっとお前を守りに来たんです。お前を殺すために来たんじゃありません。絶対そうです。」
「守るってあんた、もしわたしがああなったら守りようがないじゃない!」
「させません。もしとかでもとか知ったこっちゃ無いです。決めました。お前を殺すなんて絶対に嫌です!!」
「じゃ、じゃあどうするって言うのよ!! どうやって魂の融合を止めるって言うのよ!!」
「わかりません。」
「なら無理じゃない! 何よ!! 結局はどうしようもないんじゃない!! 後で殺せないって言うんなら今殺しなさいよ!! そうよ! そうしなさいよ!!」
言いながらわたしは泣いていた。
今まで頑張って泣かないようにしていたけれどもう無理だった。
不安で怖くて悲しくて。どうして自分がこんな目に会うのかと理不尽を呪って。
だからすがりたかった。いざと言う時はダネットに任せて安心したかった。
でもそれすらも拒絶された。わたしはどうしていいかわからなくなってしまった。
今まで頑張って泣かないようにしていたけれどもう無理だった。
不安で怖くて悲しくて。どうして自分がこんな目に会うのかと理不尽を呪って。
だからすがりたかった。いざと言う時はダネットに任せて安心したかった。
でもそれすらも拒絶された。わたしはどうしていいかわからなくなってしまった。
「お前は言いましたよね? きぞくは背を向けないって。逃げないって。今のお前は逃げてませんか? それがきぞくなんですか?」
逃げてる? わたしが?
「私はそんなお前は嫌いです。お前はワガママで贅沢ですぐ私を叩いたり怒ったりします。でも、私はそんなお前が好きでした。そんなだけれど優しくて強いお前が好きでした。」
「……あんた失礼よね。」
「知ったこっちゃありません。嫌いなお前に嫌われてもどうって事ないです。」
「上等よ。喧嘩売ってるのね。いいわよ。やってやるわよ!!」
「来なさい!! 首根っこへし折ってやります!!」
「……あんた失礼よね。」
「知ったこっちゃありません。嫌いなお前に嫌われてもどうって事ないです。」
「上等よ。喧嘩売ってるのね。いいわよ。やってやるわよ!!」
「来なさい!! 首根っこへし折ってやります!!」
言うが早いか、わたしは手元にあったデルフリンガーを投げつけた。
「え!? ちょっと待って!!」
「そんなサビ剣なんて当たりません!! 今度はこちらから行きます!!」
「ちょ、ちょっと!!」
「そんなサビ剣なんて当たりません!! 今度はこちらから行きます!!」
「ちょ、ちょっと!!」
ダネットは、わたし達の様子に呆気に取られてたキュルケを凄い怪力で持ち上げ、わたしに向かってぶん投げてきた。
「そんな胸に脂肪の塊を付けたもの当たるわけないでしょ!! 投げるならこっちよ!!」
「させない。」
「させない。」
掴まれる事を予測していたのか、タバサはいち早く反応し、エア・ハンマーで反撃してきた。
でも、手元が狂ったのかそれはわたしの横にいたミスタ・コルベールを直撃し吹き飛ばす。
でも、手元が狂ったのかそれはわたしの横にいたミスタ・コルベールを直撃し吹き飛ばす。
「ぐはぁっ!!」
「へーんだ!! タバサも捕まえられないお前なんて私に勝てるわけありません。今度はこれを食らいなさい!!」
「へーんだ!! タバサも捕まえられないお前なんて私に勝てるわけありません。今度はこれを食らいなさい!!」
ダネットはわたしの本棚から何冊か本を抜き出し、それを投げつけてきた。
だが甘い。わたしは最初にダネットに首を絞められ、今も足元で伸びていた学院長をぐいっと持ち上げ本を防ぐ。
だが甘い。わたしは最初にダネットに首を絞められ、今も足元で伸びていた学院長をぐいっと持ち上げ本を防ぐ。
「あいだぁっ!!」
「やりますねお前!! それでこそお前です!!」
「あんたもねダネット!! いくわよおお!!!!」
「いい加減にしなさい!!」
「やりますねお前!! それでこそお前です!!」
「あんたもねダネット!! いくわよおお!!!!」
「いい加減にしなさい!!」
投げられた拍子にぶつけたのか、腰をさするキュルケのげんこつがわたしの頭を直撃し、ダネットの方もタバサの杖の一撃がクリーンヒットしていた。
「なんでいっつもいっつも喧嘩になんのよあんた達は!!」
「だってそれはダネットが!!」
「私は悪くありません! お前が悪いんです!!」
「なんですってええええ!!」
「上等です!!」
「だからやめなさい!!」
「だってそれはダネットが!!」
「私は悪くありません! お前が悪いんです!!」
「なんですってええええ!!」
「上等です!!」
「だからやめなさい!!」
わたしとダネットは仲良く二発目を食らい、ちょっとだけ涙を浮かべた顔を見合わせた。
「ダネット、あんたちょっと鼻水出てるわよ。」
「お前だって出てます。」
「お前だって出てます。」
情けない顔を見合わせたまま、わたしとダネットはどちらとも無く笑い出す。
不思議とわたしの中にあった不安は消え、代わりに別の温かいものが宿る。
不思議とわたしの中にあった不安は消え、代わりに別の温かいものが宿る。
「ダネット、魂の融合なんて止めてやるわよ。方法なんかいくらでも見つけてやるわ。絶対にね。」
「ええ。方法を見つけるぐらいへのかっぱです。お前、頑張りますよ!」
「えっと、盛り上がってるのはいいんだけどよ、抜いてくんない?」
「ええ。方法を見つけるぐらいへのかっぱです。お前、頑張りますよ!」
「えっと、盛り上がってるのはいいんだけどよ、抜いてくんない?」
情けないデルフリンガーの声が聞こえ、声の方を見ると、わたしが投げた拍子に刺さったのか、ダネットのベッドの横に突き刺さっていた。
ダネットが抜いてやり、一安心した後、この錆びたボロ剣はわたしに無茶苦茶な事を言いやがった。
ダネットが抜いてやり、一安心した後、この錆びたボロ剣はわたしに無茶苦茶な事を言いやがった。
「そんで、これが本題なんだけどよ。娘っ子、てめ、俺を使え。」
部屋の中にわたし達(本の直撃を食らい、また気絶した学院長と、エア・ハンマーを食らって気絶したミスタ・コルベールを除く)の驚きの声がこだました。