タウゼンプレタ魔装工廠(まそうこうしょう)
フェルゼン公国に存在する国営の大規模軍需工場。
峻険な山岳地帯を切り拓いて築かれた、同国最大の工廠である。
国内各地から搬入される鉱石を一括精錬できる大型高炉を備え、
武器や兵器のみならず馬車や船舶部品、橋梁や軌条、可搬式のトーチカといった軍用物資や、
生産ラインを転用した農具、騎乗具、採掘用品といった民用品に至るまで、
ありとあらゆる金属加工を手掛けている。
無数の工場が連なり、さらに工業従事者の集合住居や食料・生活用品を供給する店舗が集まるその姿は、
工廠というよりひとつの『工業都市』と表現するのが近い。
実際、魔装工廠には当地の行政や治安維持を所掌する組織も存在する。
市長や王といった行政首長にあたるポストは『工場長』と呼ばれ、
現在の工場長は
ドワーフ族が務めている。
フェルゼン公国が乏しい資源を最大限利用する加工技術で成り立つ典型的な工業立国であることから、
主要産業の中枢である同工廠は事実上フェルゼンの心臓部と言えよう。
アルメリア王国における
穀倉都市デリンドブルクにあたる位置づけである。
特産品は言うに及ばず高品質な金属製品。
クリスタル等の魔力資源に恵まれなかった半面、高純度の
ミスリル鉱床や鉄鉱床を有し、
高度な選鉱、精錬、加工の技術で鍛え上げられた品は諸外国においても高く値が付く。
特に保有する技術の粋を凝らして設えられた武器・防具は『
鋼装(サーメット)』と呼ばれ重宝される。
一種のブランドでもある鋼装の品々は、
霊銀結社の魔法武器のように特別な機能を有しているわけではないが、
シンプルに性能が高い。
剣であれば折れず・曲がらず・よく斬れる比類なき名剣となり、
盾であれば飛竜のブレスが直撃しても煤ひとつ払えばその鉄壁に曇りはない。
付与武装や
古代遺物にも引けを取らない、人類の限界に迫る最上級の逸品揃いと言えよう。
加えて、武装の新規開発にも意欲的である。
クリスタルの規格落ち品である
マナシャードを撃発機構に用いた『シャードロック式滑空砲』に代表される、
魔法を用いずとも大火力を発揮できる兵器の数々は、
侵食現象によりクリスタルの枯渇が危ぶまれる昨今の世情においてはひとつの最適解と言えるかもしれない。
これら、タウゼンプレタ製の武具についてはフェルゼン正規軍だけでなく他国においても採用実績がある。
前述の「純粋に高性能」という特性は統一規格の武装を用いる軍隊にとって理想的なものと言える。
アルメリアは穀倉都市由来の潤沢な食糧と引き換えに同国から高品質な武具を買い付けている上得意先。
また、両国の陸側の国境である
橋梁都市アイアントラスの建設には、タウゼンプレタの高度な冶金技術が大いに活躍した。
同じ技術畑の機関として
霊銀結社が対の存在に挙げられるが、
結社が魔術と神秘における人間の到達点だとすれば、魔装工廠は純粋な工業技術の頂点であると言える。
ちなみに公式のフレーバーテキストでは『精霊ノームとサラマンダーの加護を受けた工房の町』といった説明書きがされているが、
ノームもサラマンダーもこの地で働いているというだけで特に神秘的な加護を齎しているわけではなく、
実情としては単なる出稼ぎ労働者である。
ノームは採掘、サラマンダーは高炉の温度管理において優れた適性を有し、当地の技術力の高さに一役買っている。
いかに
神代遺物を守護し、世界の根幹を支える四大精霊族と言えども、
現金収入を得るには人の世に出て就職し、タイムカードを押さねばならないという世知辛さが垣間見える。
最終更新:2021年09月15日 11:10