政宗は目を覚ました。
灯したままになっていたはずの灯りは消えているが、遠くで酒宴がまだ続いている音がしていた。
「……気がつかれましたか」
声がかかる。幸村の顔が近くにあった。
「どれくらい、寝てた?」
「さあ……半刻も経ってはおらぬかと」
「そうか」
布団を被り、並んで横になる。
背中に腕を回すと、幸村の腕が頭を包み込んだ。幸村の手が髢の乱れを直し、布団の外に出した。
「やっぱ、長い方がいいか?」
「お好きなように」
「じゃあ伸ばす」
胸に顔を押し当てた。とくとくと脈が打っていて心地いい。
「ああ、そうだ。伝えてなかった」
「何を?」
まどろんでいたら話しかけられ、政宗は顔を上げた。幸村は微笑みながら顔を寄せてくる。
「好きです」
直球の言葉に政宗は体を震わせた。首に腕を絡め、額を押しつけて笑う。
「捻りも何にもねぇのな。お前らしい」
「政宗殿こそ」
「……俺は、やっぱり「政宗」なのか?」
「? どういうことですか?」
政宗は体を持ち上げた。幸村は褥に寝転び、不思議そうに見上げる。
「竹中が……竹中半兵衛が、そうやって俺が「伊達政宗」を名乗れば名乗るほど、その名を貶めるって」
「そうでしょうか。……兄上殿は、とても、穏やかに逝かれたように思いました」
「兄上が? そう、見えたのか?」
幸村は微笑んで手を伸ばした。
「はい。志半ばにして不慮の死を遂げられたはずなのに、とても穏やかで、
政宗殿の体を借りられるときも、常に政宗殿の事を思っておられた。兄弟とは、よきものにござる」
「……そっか」
「政宗も、竜樹も、貴殿の名でござる」
「ああ、そうだな。……どうせ、これから「奥方」とか「お方様」とか「北の方」とか
「真田の正室」とか呼ばれるんだし、気にしてもしょうがねぇか」
政宗は褥に寝転んだ。幸村の腕を探し、指を絡めた。
「そういえば、さっき、人の気配を感じた」
「どちらから」
「……屋根、か? 殺気とかはなかったから、maybe、忍びが探り入れてるんだと思うぜ」
「……佐助……」
「え、なんて?」
「いや、なんでもない。明日も早いですぞ。お休みなさいませ」
「?? ああ、good night」
政宗は目を閉じた。
隣で幸村が考え事をしている。当分寝そうにない。夫に寝顔を見せないのが妻の務めというものらしいが、眠気には勝てない。
幸村の心の臓が脈を打つ音を数えながら眠りに落ちていった。
灯したままになっていたはずの灯りは消えているが、遠くで酒宴がまだ続いている音がしていた。
「……気がつかれましたか」
声がかかる。幸村の顔が近くにあった。
「どれくらい、寝てた?」
「さあ……半刻も経ってはおらぬかと」
「そうか」
布団を被り、並んで横になる。
背中に腕を回すと、幸村の腕が頭を包み込んだ。幸村の手が髢の乱れを直し、布団の外に出した。
「やっぱ、長い方がいいか?」
「お好きなように」
「じゃあ伸ばす」
胸に顔を押し当てた。とくとくと脈が打っていて心地いい。
「ああ、そうだ。伝えてなかった」
「何を?」
まどろんでいたら話しかけられ、政宗は顔を上げた。幸村は微笑みながら顔を寄せてくる。
「好きです」
直球の言葉に政宗は体を震わせた。首に腕を絡め、額を押しつけて笑う。
「捻りも何にもねぇのな。お前らしい」
「政宗殿こそ」
「……俺は、やっぱり「政宗」なのか?」
「? どういうことですか?」
政宗は体を持ち上げた。幸村は褥に寝転び、不思議そうに見上げる。
「竹中が……竹中半兵衛が、そうやって俺が「伊達政宗」を名乗れば名乗るほど、その名を貶めるって」
「そうでしょうか。……兄上殿は、とても、穏やかに逝かれたように思いました」
「兄上が? そう、見えたのか?」
幸村は微笑んで手を伸ばした。
「はい。志半ばにして不慮の死を遂げられたはずなのに、とても穏やかで、
政宗殿の体を借りられるときも、常に政宗殿の事を思っておられた。兄弟とは、よきものにござる」
「……そっか」
「政宗も、竜樹も、貴殿の名でござる」
「ああ、そうだな。……どうせ、これから「奥方」とか「お方様」とか「北の方」とか
「真田の正室」とか呼ばれるんだし、気にしてもしょうがねぇか」
政宗は褥に寝転んだ。幸村の腕を探し、指を絡めた。
「そういえば、さっき、人の気配を感じた」
「どちらから」
「……屋根、か? 殺気とかはなかったから、maybe、忍びが探り入れてるんだと思うぜ」
「……佐助……」
「え、なんて?」
「いや、なんでもない。明日も早いですぞ。お休みなさいませ」
「?? ああ、good night」
政宗は目を閉じた。
隣で幸村が考え事をしている。当分寝そうにない。夫に寝顔を見せないのが妻の務めというものらしいが、眠気には勝てない。
幸村の心の臓が脈を打つ音を数えながら眠りに落ちていった。




