佐助が歩み寄る。
無表情で繋がれている政宗の腕を取り、布で擦った。
幸村も離れ、そっと布で擦った。
胸は布で擦るたび形を変え、たゆたゆと揺れる。思わず念を入れて擦ると恥ずかしげに体が捩られる。
佐助が脇の下を擦りあげる。寄せられる眉根。
力を入れれば赤く痛々しい色に染まり、入れなければ政宗がくすぐったげにする。
折れそうに細い腹から、丸みを帯びた腰、伸びやかな両の脚は白く、形よく、持ち上げると淫靡な影が差す。
足指の合間を布で丁寧に擦った。ぴくりと膝に震えが走る。
政宗の顔が赤い。呼気が忙しない。
「政宗……」
心の中で殿、と付ける。
「なんだよ」
うっすらと笑っている。解っていると言いたげに。
全裸でつるし上げるなど犬畜生にも劣る行い、しかしこの方は何事もないように首をもたげ、
怒りに震えることなく屈辱に泣くこともなく冷静さをたもっている。
「やはり、ご立派なお方だと」
「止めな」
「うん止めてね旦那」
言葉と共に、政宗の体が引きずり上げられた。滑車がきしむ。
全身から水滴が飛び散って、ほのかな灯りにきらめく。
やはり足がつくか付かないかの高さで、佐助、と窘める声を出す前に、手のひらに小さな刃物を落とされた。
「毛ー剃り上げるよ、旦那ぁ、自分でやりたいでしょ?」
どこか残忍な声音にようやく佐助を見据える。
自分に向かいこんな声をかける男ではなかった。
「ひげを剃る?朝方確かに剃ったが」
「違うよ、蚤とか虱とかね、一度の湯浴みで撲滅できるもんじゃないし。
脇のしたも陰毛も全部剃る。それとも旦那、俺がやろっか?慣れてるしねー、剃刀の扱い」
佐助は言いながら脇に生えた毛をつまみ引き抜いた。
恥辱を極める物言いに、だが政宗は無表情だ、おっくうそうな視線で暴れ出しもしない。
「さすけ?」
「ホラ早く旦那。独眼竜の体は押さえてて上げる、腰掴んで、傷つけないようにして剃ってあげてよ」
胸の下に佐助の腕が回る。政宗は一本の棒のように身じろぎ一つしない。
歩み寄って、止まった。
裡から輝くように白い肌。黒々とした茂み。
「そーいや旦那、そこだけよく洗ってなかったんじゃない?可哀想だねー独眼竜、触りたくないってさ」
政宗はやっと目を動かした。感情のこもらない視線が覗き込む佐助のそれにかち合い、
どうしてか佐助の方がかっとした風に見えた。
そのまま政宗は目を伏せた。
じっと己の茂みを見下ろしている。
「政宗殿……」
呼ぶと僅か表情が戻る。
「好きにしな。幸村サマがやらなくてもコイツはやるさ、早いか遅いかの差だ」
加虐的な佐助を見やる。
「ならば佐助にさせるわけには行きませぬ。恨みなら、お受け致す」
「旦那、解ってるだろうけど刃は寝かせて、あんまり深い傷にならないようにね」
あんまり?
不思議に思った瞬間政宗の体が僅か震えた。押し当てた刃が肌を切りそうになる。
「ああ御免ね旦那、手元狂ったよ」
佐助は、手のひら全体で政宗の胸を揉みしだいていた。柔いそれが指の動きに連れて形を変える。
かっと脳裏に血が上る。
「離れろ佐助!」
「いやあやっぱ支えてなきゃねえ?大丈夫、旦那がきっちり腰捕まえてたら、だけど」
「佐助!」
佐助は白々とした目で政宗を見る。
「旦那が止めても俺はやるよ、お仕事だから」
「先ほど外すと言った」
「お館様からの仕事だもーん」
減らず口を!
叫ぶ直前に物憂げに伏せられていた政宗の目が開かれるのを見た。
「ha!それが下郎の料理の仕方ってヤツか、Coolじゃねぇか!いーだろう、やりな、受けて立ってやるぜ幸村サマ!」
「某は!」
「恨みやしねぇよ、それがオレの矜持だ。だが愛しもしねえ、come on Mother Facker,
拷問にかこつけてでも欲しいなら──来な!」
あまりにきらきらしい、誇り高い言挙げは幸村を圧倒した。それでも、
「愛おしい人を拷問するなど、」
「その位拷問じゃねえよ、playってヤツさ」
誇り高く輝く目。促す眼差し。
無表情で繋がれている政宗の腕を取り、布で擦った。
幸村も離れ、そっと布で擦った。
胸は布で擦るたび形を変え、たゆたゆと揺れる。思わず念を入れて擦ると恥ずかしげに体が捩られる。
佐助が脇の下を擦りあげる。寄せられる眉根。
力を入れれば赤く痛々しい色に染まり、入れなければ政宗がくすぐったげにする。
折れそうに細い腹から、丸みを帯びた腰、伸びやかな両の脚は白く、形よく、持ち上げると淫靡な影が差す。
足指の合間を布で丁寧に擦った。ぴくりと膝に震えが走る。
政宗の顔が赤い。呼気が忙しない。
「政宗……」
心の中で殿、と付ける。
「なんだよ」
うっすらと笑っている。解っていると言いたげに。
全裸でつるし上げるなど犬畜生にも劣る行い、しかしこの方は何事もないように首をもたげ、
怒りに震えることなく屈辱に泣くこともなく冷静さをたもっている。
「やはり、ご立派なお方だと」
「止めな」
「うん止めてね旦那」
言葉と共に、政宗の体が引きずり上げられた。滑車がきしむ。
全身から水滴が飛び散って、ほのかな灯りにきらめく。
やはり足がつくか付かないかの高さで、佐助、と窘める声を出す前に、手のひらに小さな刃物を落とされた。
「毛ー剃り上げるよ、旦那ぁ、自分でやりたいでしょ?」
どこか残忍な声音にようやく佐助を見据える。
自分に向かいこんな声をかける男ではなかった。
「ひげを剃る?朝方確かに剃ったが」
「違うよ、蚤とか虱とかね、一度の湯浴みで撲滅できるもんじゃないし。
脇のしたも陰毛も全部剃る。それとも旦那、俺がやろっか?慣れてるしねー、剃刀の扱い」
佐助は言いながら脇に生えた毛をつまみ引き抜いた。
恥辱を極める物言いに、だが政宗は無表情だ、おっくうそうな視線で暴れ出しもしない。
「さすけ?」
「ホラ早く旦那。独眼竜の体は押さえてて上げる、腰掴んで、傷つけないようにして剃ってあげてよ」
胸の下に佐助の腕が回る。政宗は一本の棒のように身じろぎ一つしない。
歩み寄って、止まった。
裡から輝くように白い肌。黒々とした茂み。
「そーいや旦那、そこだけよく洗ってなかったんじゃない?可哀想だねー独眼竜、触りたくないってさ」
政宗はやっと目を動かした。感情のこもらない視線が覗き込む佐助のそれにかち合い、
どうしてか佐助の方がかっとした風に見えた。
そのまま政宗は目を伏せた。
じっと己の茂みを見下ろしている。
「政宗殿……」
呼ぶと僅か表情が戻る。
「好きにしな。幸村サマがやらなくてもコイツはやるさ、早いか遅いかの差だ」
加虐的な佐助を見やる。
「ならば佐助にさせるわけには行きませぬ。恨みなら、お受け致す」
「旦那、解ってるだろうけど刃は寝かせて、あんまり深い傷にならないようにね」
あんまり?
不思議に思った瞬間政宗の体が僅か震えた。押し当てた刃が肌を切りそうになる。
「ああ御免ね旦那、手元狂ったよ」
佐助は、手のひら全体で政宗の胸を揉みしだいていた。柔いそれが指の動きに連れて形を変える。
かっと脳裏に血が上る。
「離れろ佐助!」
「いやあやっぱ支えてなきゃねえ?大丈夫、旦那がきっちり腰捕まえてたら、だけど」
「佐助!」
佐助は白々とした目で政宗を見る。
「旦那が止めても俺はやるよ、お仕事だから」
「先ほど外すと言った」
「お館様からの仕事だもーん」
減らず口を!
叫ぶ直前に物憂げに伏せられていた政宗の目が開かれるのを見た。
「ha!それが下郎の料理の仕方ってヤツか、Coolじゃねぇか!いーだろう、やりな、受けて立ってやるぜ幸村サマ!」
「某は!」
「恨みやしねぇよ、それがオレの矜持だ。だが愛しもしねえ、come on Mother Facker,
拷問にかこつけてでも欲しいなら──来な!」
あまりにきらきらしい、誇り高い言挙げは幸村を圧倒した。それでも、
「愛おしい人を拷問するなど、」
「その位拷問じゃねえよ、playってヤツさ」
誇り高く輝く目。促す眼差し。
佐助。お前、俺の目の前で、俺をも使って、弱音を吐けぬ政宗殿を追い詰めているのだな。
上田城の虜20
上田城の虜20