「――――」
「what?」
背後から何かが聞こえ振り返るが、其処には自分達の足跡しかなくて、
空耳かと思い、ついには幻聴まで聞こえ出した弱った自分を笑い、また前を向いた瞬間それはやって来た。
「―――待ちやがれえええぇーーああぁあああーッ!」
「……―――っ!??も、元親ッ?!」
気のせいだと思っていたのに、今己の耳に届くのは、紛れもなく聞き慣れた自分の大好きな女の声。
慌てて後ろを振り返ろうとすると、自分と馬の直ぐ横を通り過ぎて行ってしまうし、
通り過ぎた炎に驚いて乗っていた馬は暴れてしまい、間一髪で飛び降りた。
「おうぅらッ!ふぅ…いい波だったぜ!」
「……ぁ…あ」
逃げた馬を尻目に、地面に膝を着いたまま政宗は恐る恐る顔を上げていくと、
目の前で槍が纏っていた炎が徐々に消えて行き、乱れた髪を掻き揚げる女が一人。
日の光はそんなに無いのに、やけに眩しい。
「おいゴラァ…なーに一人で先に帰ってんだよぉー…ん?」
「……」
一瞬合った目を逸らし、政宗は無言で立ち上がり付着した雪を払いのけ、
そんな彼女に少しムッとして、元親は腕を組む。
「逃走の次はシカトか?ハッ…奥州筆頭が聞いて呆れるぜ」
「……何しに来たんだよ」
「テメェを追って来たに決まってんだろ」
「何で」
「何でってお前!自分がした事忘れた訳じゃねぇだろな!?」
「忘れる訳ッ!…ねぇだろ」
忘れるものか。
政宗にとって忘れられる訳が無い。
「俺にとっちゃ…最高にhappyなtimeだったんだ」
「…なら、ちゃんと話そうぜ」
「―――!!」
先程の声色とは違う元親の優しい声に政宗は眉を寄せ、その場から走り出した。
本当なら元親から殴らせろとか、自分から気が済むまで殴れとか言うべきだろうに、
話そうと優しく持ちかけてくる元親が凄く怖く感じる。
最初から分かっている筈なのに、改めて彼女の口から全てを拒絶する言葉を紡がれるのが嫌だ。
「――って言ってる傍から逃げんな!!四縛ッ!!」
「うおッ!?」
元親の得意技・四縛の網に絡み取られ、政宗は身体を逆さ状態で宙に連れて行かれる。
「洟垂れのガキじゃねえんだから…って、何てシケた面してんだ…」
「……だっ………ッ!!?」
今にもあの時のように泣きそうな政宗の表情に、胸が苦しくなり、元親は彼女を解放した。
「馬鹿野郎。謝る位ならハナっからすんなってんだ」
途端地面に転げて雪塗れになった政宗は、ゆっくり体を起こしても、ぺたりと腰を据えて座り込んだまま動かない。
元親はそんな彼女の前に自分も腰を下ろし、じっと見つめる。
暫くして政宗は肩を揺らし始め、時折しゃくり始めたので、また涙を我慢しているのだと分かり、
普段の政宗は意地でも泣きはしないのに、今は本当に苦しんでいるのだと居た堪れなくなった。
「すまねぇ」
「…!」
腕を思いっきり伸ばして、元親は政宗の体を抱き締める。
朝の冷たい空気で冷えた頬を政宗の頭に添えて、強く強く抱き締めた。
暫くして肩に手を置いたままゆっくり身体を離してやると、
そこにはとても驚いて、訳が分からず呆けてしまっている政宗が居る。
泡姫の恋24
「what?」
背後から何かが聞こえ振り返るが、其処には自分達の足跡しかなくて、
空耳かと思い、ついには幻聴まで聞こえ出した弱った自分を笑い、また前を向いた瞬間それはやって来た。
「―――待ちやがれえええぇーーああぁあああーッ!」
「……―――っ!??も、元親ッ?!」
気のせいだと思っていたのに、今己の耳に届くのは、紛れもなく聞き慣れた自分の大好きな女の声。
慌てて後ろを振り返ろうとすると、自分と馬の直ぐ横を通り過ぎて行ってしまうし、
通り過ぎた炎に驚いて乗っていた馬は暴れてしまい、間一髪で飛び降りた。
「おうぅらッ!ふぅ…いい波だったぜ!」
「……ぁ…あ」
逃げた馬を尻目に、地面に膝を着いたまま政宗は恐る恐る顔を上げていくと、
目の前で槍が纏っていた炎が徐々に消えて行き、乱れた髪を掻き揚げる女が一人。
日の光はそんなに無いのに、やけに眩しい。
「おいゴラァ…なーに一人で先に帰ってんだよぉー…ん?」
「……」
一瞬合った目を逸らし、政宗は無言で立ち上がり付着した雪を払いのけ、
そんな彼女に少しムッとして、元親は腕を組む。
「逃走の次はシカトか?ハッ…奥州筆頭が聞いて呆れるぜ」
「……何しに来たんだよ」
「テメェを追って来たに決まってんだろ」
「何で」
「何でってお前!自分がした事忘れた訳じゃねぇだろな!?」
「忘れる訳ッ!…ねぇだろ」
忘れるものか。
政宗にとって忘れられる訳が無い。
「俺にとっちゃ…最高にhappyなtimeだったんだ」
「…なら、ちゃんと話そうぜ」
「―――!!」
先程の声色とは違う元親の優しい声に政宗は眉を寄せ、その場から走り出した。
本当なら元親から殴らせろとか、自分から気が済むまで殴れとか言うべきだろうに、
話そうと優しく持ちかけてくる元親が凄く怖く感じる。
最初から分かっている筈なのに、改めて彼女の口から全てを拒絶する言葉を紡がれるのが嫌だ。
「――って言ってる傍から逃げんな!!四縛ッ!!」
「うおッ!?」
元親の得意技・四縛の網に絡み取られ、政宗は身体を逆さ状態で宙に連れて行かれる。
「洟垂れのガキじゃねえんだから…って、何てシケた面してんだ…」
「……だっ………ッ!!?」
今にもあの時のように泣きそうな政宗の表情に、胸が苦しくなり、元親は彼女を解放した。
「馬鹿野郎。謝る位ならハナっからすんなってんだ」
途端地面に転げて雪塗れになった政宗は、ゆっくり体を起こしても、ぺたりと腰を据えて座り込んだまま動かない。
元親はそんな彼女の前に自分も腰を下ろし、じっと見つめる。
暫くして政宗は肩を揺らし始め、時折しゃくり始めたので、また涙を我慢しているのだと分かり、
普段の政宗は意地でも泣きはしないのに、今は本当に苦しんでいるのだと居た堪れなくなった。
「すまねぇ」
「…!」
腕を思いっきり伸ばして、元親は政宗の体を抱き締める。
朝の冷たい空気で冷えた頬を政宗の頭に添えて、強く強く抱き締めた。
暫くして肩に手を置いたままゆっくり身体を離してやると、
そこにはとても驚いて、訳が分からず呆けてしまっている政宗が居る。
泡姫の恋24




