「おう、儂だ。徳川十万の兵は救出作戦になれておる、何しろ儂が始終攫われているからな!ははは!」
どっかりとあぐらをかいた家康は、なぜか胸を張って笑った。
辺りを見回せば、やけにでかい鎧。草原の陣中。ああ、前と鎧変えたのか、本多。相変わらずスゲエ角だな。
家紋を大きく染め抜いた陣幕のはるか向こう側で、沢山の人間が立ち働く気配。
そして、小十郎。……お前も窶れたな。生きてりゃいいなんて、嘘だな。
お前には、苦労をかけ通しだが、それでもあのころは窶れちゃいなかったな……
「………?……………!」
「はは!もう攫われん!心配するな忠勝ぅ!」
家康が硬い装甲をこつんと叩く。
「政宗様も……もう、心配をかけさせますな」
押さえた口調に、色々な感情が抑えがたく滲んでいる。
「ああ。……ああ、小十郎。悪かった。これからはずっとオレの側にいろ、離れるな」
「仰せの通りに」
平伏する小十郎の髪に、白いものがちらほら混じっていた。そんな年じゃない。
オレが薄ぼんやりと過ごしている間、お前は……!
済まない小十郎。
「おい、そりゃ駄目だ、合戦を起こしてまで政宗を助けた儂の事を忘れるなよ。
忠勝を説き伏せるのも大変だったんだぞ」
むくれる家康に向き直る。
「合戦?……確かに陣中のようだが、上田の景色じゃないな。ここは……」
「関ヶ原だ。幸村の兄信之、その妻を知っているか?」
視線を戻すと、いくらか機嫌を直した様子で家康は片膝を行儀悪く立てた。
それはたしか、本多忠勝の娘……面識はないが。
「ああ……小松姫、そうか。手引きして貰ったか」
にやりと笑う、その悪戯小僧めいた憎めなさ。
「おうよ!すぐにバレてなあ、おかげで信之には妻まで巻き込むとは何事かってな、滅茶苦茶に叱られちまったぞ!
これで振られとったらいい笑いもんだが、信之はともかく、信長公にまで笑われるのは御免だ。
だから、責任とって儂のとこに来い!」
信長、と小さく繰り返すと真剣な面持ちになって肯きが帰る。
「甲斐の騎馬軍は舐められたモンじゃないからな。忠勝も馬は苦手だと言うし、
無理矢理口説き落として長篠の陽動戦に鉄砲隊を引っ張り出させた。
ま、その後家中がちっとごたついて、ここには来ていないがな。
……関ヶ原は遮るものがない平野だ。武田の騎馬軍は自在に動ける。だから政宗、戦えるようなら儂と来い!」
ふつふつと気力がわき上がる。家康、そんなこと言って自信満々だろ。
野戦得意じゃねえかよ、家康は。
「ああ、暫く刀握っちゃいないが、やるだけやらせて貰う。千、いや五百でいい。
馬と兵、それに銃を借りられるか?」
「勿論だ。政宗、お前ンとこの兵や民な、離散した時に結構うちの所に流れて来た奴がいるんだ。
おかげで奥州馬も楽に手に入れられるようになったぞ。ちゃんと部隊として纏めてあるから、気兼ねなく使うといい。
……政宗が来なきゃ、奥州部隊の将は成実にしとったぞ?」
いたずらっぽい笑み。成実は、落ち延びていたか。家康、お前が拾ってくれたのか。
上田城の虜41/因果の墓場3
どっかりとあぐらをかいた家康は、なぜか胸を張って笑った。
辺りを見回せば、やけにでかい鎧。草原の陣中。ああ、前と鎧変えたのか、本多。相変わらずスゲエ角だな。
家紋を大きく染め抜いた陣幕のはるか向こう側で、沢山の人間が立ち働く気配。
そして、小十郎。……お前も窶れたな。生きてりゃいいなんて、嘘だな。
お前には、苦労をかけ通しだが、それでもあのころは窶れちゃいなかったな……
「………?……………!」
「はは!もう攫われん!心配するな忠勝ぅ!」
家康が硬い装甲をこつんと叩く。
「政宗様も……もう、心配をかけさせますな」
押さえた口調に、色々な感情が抑えがたく滲んでいる。
「ああ。……ああ、小十郎。悪かった。これからはずっとオレの側にいろ、離れるな」
「仰せの通りに」
平伏する小十郎の髪に、白いものがちらほら混じっていた。そんな年じゃない。
オレが薄ぼんやりと過ごしている間、お前は……!
済まない小十郎。
「おい、そりゃ駄目だ、合戦を起こしてまで政宗を助けた儂の事を忘れるなよ。
忠勝を説き伏せるのも大変だったんだぞ」
むくれる家康に向き直る。
「合戦?……確かに陣中のようだが、上田の景色じゃないな。ここは……」
「関ヶ原だ。幸村の兄信之、その妻を知っているか?」
視線を戻すと、いくらか機嫌を直した様子で家康は片膝を行儀悪く立てた。
それはたしか、本多忠勝の娘……面識はないが。
「ああ……小松姫、そうか。手引きして貰ったか」
にやりと笑う、その悪戯小僧めいた憎めなさ。
「おうよ!すぐにバレてなあ、おかげで信之には妻まで巻き込むとは何事かってな、滅茶苦茶に叱られちまったぞ!
これで振られとったらいい笑いもんだが、信之はともかく、信長公にまで笑われるのは御免だ。
だから、責任とって儂のとこに来い!」
信長、と小さく繰り返すと真剣な面持ちになって肯きが帰る。
「甲斐の騎馬軍は舐められたモンじゃないからな。忠勝も馬は苦手だと言うし、
無理矢理口説き落として長篠の陽動戦に鉄砲隊を引っ張り出させた。
ま、その後家中がちっとごたついて、ここには来ていないがな。
……関ヶ原は遮るものがない平野だ。武田の騎馬軍は自在に動ける。だから政宗、戦えるようなら儂と来い!」
ふつふつと気力がわき上がる。家康、そんなこと言って自信満々だろ。
野戦得意じゃねえかよ、家康は。
「ああ、暫く刀握っちゃいないが、やるだけやらせて貰う。千、いや五百でいい。
馬と兵、それに銃を借りられるか?」
「勿論だ。政宗、お前ンとこの兵や民な、離散した時に結構うちの所に流れて来た奴がいるんだ。
おかげで奥州馬も楽に手に入れられるようになったぞ。ちゃんと部隊として纏めてあるから、気兼ねなく使うといい。
……政宗が来なきゃ、奥州部隊の将は成実にしとったぞ?」
いたずらっぽい笑み。成実は、落ち延びていたか。家康、お前が拾ってくれたのか。
上田城の虜41/因果の墓場3




