旦那は一晩まるまる苦しんだ。
血止めして化膿しないように消毒して縫わなきゃ、きっとしばらくの苦しみですんだはずだった。
ここに来た理由は、それだけで十分だった。
血止めして化膿しないように消毒して縫わなきゃ、きっとしばらくの苦しみですんだはずだった。
ここに来た理由は、それだけで十分だった。
もうずっと思考は凍っていた。
倒れた独眼竜を見てもやはり何の感情も動かなかった。結構綺麗な死に顔だった。
ああ、じゃあ死姦でもしようか、ふと思い立って、くないでその鎧と衣服を切り裂いた。
真っ白な体から血の気が抜けている。生気がない、弾力がない。勃たない。
白い細い腹。孕んでたかなと今更のように思う。
旦那は毎夜、独眼竜を抱き締め貪っていた。可能性ならあるだろう。
だとしても、つわりさえ出る以前の腹を切り裂こうが、子は形さえ成していない。
大体この女は、生まれた子は伊達のものと言い切った。見たくもない。
鬱陶しくなって政宗だった体の腹を蹴った。
死体なんか見慣れている。女の体も。もういい、終わった。
蹴り飛ばした体がごろりと転げ、ちゃり、と音がして、佐助はふとその場所を見つめた。
倒れた独眼竜を見てもやはり何の感情も動かなかった。結構綺麗な死に顔だった。
ああ、じゃあ死姦でもしようか、ふと思い立って、くないでその鎧と衣服を切り裂いた。
真っ白な体から血の気が抜けている。生気がない、弾力がない。勃たない。
白い細い腹。孕んでたかなと今更のように思う。
旦那は毎夜、独眼竜を抱き締め貪っていた。可能性ならあるだろう。
だとしても、つわりさえ出る以前の腹を切り裂こうが、子は形さえ成していない。
大体この女は、生まれた子は伊達のものと言い切った。見たくもない。
鬱陶しくなって政宗だった体の腹を蹴った。
死体なんか見慣れている。女の体も。もういい、終わった。
蹴り飛ばした体がごろりと転げ、ちゃり、と音がして、佐助はふとその場所を見つめた。
小銭と、綺麗に纏められた、茶色い毛束。
止まっていた感情と思考が戻る。
記憶が佐助を飲み込む。
記憶が佐助を飲み込む。
旦那は腹と足から沢山の血を流しながら、凧で空を飛ぶ中俺の手を握った。
初恋は叶うものだぞ。佐助。
つまんないこと言って、笑いたかったんだろうけど苦しそうにしか見えなかった。
そのまんま手を離すの忘れてたみたいだった。
時たま大将に話しかけ、時たま攫われてった妻に声かけた。
意識なんか、ずっとずっとぼやけていた。
戻ってきてくれ。慕わしい、政宗以上に慕わしい者などおらんのだ。愛おしいのだ。
申し訳もございませぬお館様。お先に上洛を、どうか上洛を。お待ち召されるな。
情けのない某をお叱りになるのはその後に、すぐに追いつきます故。
なんで謝ってばっかりなの旦那。怒ればいいじゃない、夢の中でくらい。
佐助。すまない。
初恋は叶うものだぞ。佐助。
つまんないこと言って、笑いたかったんだろうけど苦しそうにしか見えなかった。
そのまんま手を離すの忘れてたみたいだった。
時たま大将に話しかけ、時たま攫われてった妻に声かけた。
意識なんか、ずっとずっとぼやけていた。
戻ってきてくれ。慕わしい、政宗以上に慕わしい者などおらんのだ。愛おしいのだ。
申し訳もございませぬお館様。お先に上洛を、どうか上洛を。お待ち召されるな。
情けのない某をお叱りになるのはその後に、すぐに追いつきます故。
なんで謝ってばっかりなの旦那。怒ればいいじゃない、夢の中でくらい。
佐助。すまない。
謝って謝って、旦那はゆるゆると譫言を口にする頻度が減っていった。
耳元で呼んでも、駄目だった。
旦那の空っぽの部屋思い出した。
肩ならべて座って、息が細い独眼竜を二人で看病してた。
五日くらいで回復して、大将のトコに送り出したね。
戻ってきた時には嫁だったね。
旦那がもの凄く喜んでて、独眼竜はとても静かだった。
拷問の時のぴりぴりした沈黙じゃなくって、ただ静かだった。
でも、俺は旦那につられて祝い事を言ったんだと思う。良く覚えてないけど、なんかこう、定型句っぽい何かをさ。
独眼竜の言葉は良く覚えてる。
静かな声で、しんしんとした眼差しで真っ直ぐ俺を見た。
白い衣装がよく似合ってた。穢れのない、雪の姫君みたいだった。片眼だけど綺麗だった。
耳元で呼んでも、駄目だった。
旦那の空っぽの部屋思い出した。
肩ならべて座って、息が細い独眼竜を二人で看病してた。
五日くらいで回復して、大将のトコに送り出したね。
戻ってきた時には嫁だったね。
旦那がもの凄く喜んでて、独眼竜はとても静かだった。
拷問の時のぴりぴりした沈黙じゃなくって、ただ静かだった。
でも、俺は旦那につられて祝い事を言ったんだと思う。良く覚えてないけど、なんかこう、定型句っぽい何かをさ。
独眼竜の言葉は良く覚えてる。
静かな声で、しんしんとした眼差しで真っ直ぐ俺を見た。
白い衣装がよく似合ってた。穢れのない、雪の姫君みたいだった。片眼だけど綺麗だった。
「お前はわかってるだろう」
祝いの言に返された言葉はあんまりにも浮いててヘンで、でも凄くよく解って、俺は頷いてすぐにさがった。
あれは俺のためにかけられた、いたわり深くてそのくせ同情の欠片もない声だった。
うん、解ってるよ。独眼竜。
上田城の虜50/因果の墓場12
あれは俺のためにかけられた、いたわり深くてそのくせ同情の欠片もない声だった。
うん、解ってるよ。独眼竜。
上田城の虜50/因果の墓場12




