「これ…お兄様が送ってくれたのよ」
手に持っているのは綺麗な細工の施された硝子の小瓶である。
四隅に設けられた灯りを受けて宝石のように煌くそれを、長政は潤んだ眼で睨み付けた。
南蛮渡来の秘薬だと、添えられた手紙には書かれていた。
それが一体何を指すのかは分からなかったが、どうやら飲むものらしい。
怪しいからといって義兄から贈られた品を無碍に突き返す訳にもいかず思い悩んだ長政だが、市は前にも試した事があるようだったので心を決めて口にした。
毒、ではないだろう。
そんな事を考えながら、杯へと移された液体を一口飲んだ。
癖がなく飲みやすい酒のようだが、ほんのりと甘く花のような香りがする。
如何にも市が好みそうな味だ、と長政は考えた。
だが、その後からが妙な事になった。
頭がふらふらとして、視界が眩んできたのだ。
「な、んだ…これは…」
「うふふ」
長政の剣呑な物言いにも動じず、市は嫣然と笑みを浮べた。
「長政さま、美味しい?」
けぶる睫毛を伏せ、黒目がちな市の瞳がじっと長政の顔を見詰めた。
「ねえ…」
白い手が上がり、短く刈られた長政の後ろ髪へ触れた。
そのまま下へと動き、さわさわと緩慢な動きで白い項を撫で上げる。
ふっくらとした市の唇が近付き、真一文字に結ばれた長政の唇へ押し付けられる。
「ふっ…んん…」
項を撫でる方とは逆の手は長政の胸元を彷徨っていた。
いつの間にか白い小袖はだらしなく前を開けられ、小振りながら見事な形を誇る胸が覗いている。
市は既に着物を脱ぎ捨て、その辺に置きっぱなしだ。
「…良い気持ちになるでしょう?」
長政の唇が空気を求めてほんの僅かに開いた隙に、市は舌をにゅるりと滑り込ませた。
ぴちゃぴちゃと口腔を妻の舌に犯されながら、長政は力が抜けていくのを感じた。
「だって長政さま、最近とても難しい顔をされていたから…」
楽しい事をすれば気も紛れる、と市なりに気を遣った結果らしい。
その心遣いは嬉しいのだが、こういうことではなくて別の事を考えてくれれば、と思ったのだが、それも後の祭。
「い、市…もっと普通に…」
「黙って市に身をまかせて、ね?」
幼女のごとき純真さと妖婦のごとき艶を滲ませ、市は長政の帯を解いた。
女にしては長身ながら、柔らかな曲線を描く腰とそれに続く細い脚は白く透き通って見える。
市のような豊満な肉体とは異なる、鍛え上げられた獣のようなしなやかさを持つ女体。
普段は凛とした勇ましさを感じさせる精悍な顔に、今は頬を紅潮させて妻の手管に喘ぐ淫乱さを見せていた。
「…ふふ、可愛い…」
舌と指で丹念に長政の全身を愛撫していく市は、時折強く吸い付いて紅い痕を残した。
「やめよ…」
己自身が蕩けて無くなってしまうのではないかという摩訶不思議な感覚に襲われながらも、僅かな精神力を振り絞って妻を諌める。
「嘘吐きはいけないことだって…長政さまはいつもおっしゃっているわ」
とろりと歓喜の蜜を滴らせてひくついている女陰へ、市は数本の指を差し込んだ。
薬の影響か、よく解れているそこは、きゅうっと吸い付くように指を締め上げた。
ぐちゅりと中でかき回しながら、良い所を探り当て、長政の身体が反応した所を執拗に責め続ける。
「はぁっ…あ、あ…あぁーっ」
いつもより敏感になったそこにドクドクと血が集まっているような錯覚を感じる。
身体のあちこちを撫で回す闇の手は市が召喚したものらしい。
「一緒に…ね?」
漆黒の筋となって長政だけではなく市の身体も複数の手が犯していた。
荒い呼吸と言葉にならない声と互いの汗に塗れながら、二人は同時に達した。
くたり、と瞼を開けるのさえも鬱陶しい疲労感に身を任せ、そのまま泥のような眠りに落ちていった。
手に持っているのは綺麗な細工の施された硝子の小瓶である。
四隅に設けられた灯りを受けて宝石のように煌くそれを、長政は潤んだ眼で睨み付けた。
南蛮渡来の秘薬だと、添えられた手紙には書かれていた。
それが一体何を指すのかは分からなかったが、どうやら飲むものらしい。
怪しいからといって義兄から贈られた品を無碍に突き返す訳にもいかず思い悩んだ長政だが、市は前にも試した事があるようだったので心を決めて口にした。
毒、ではないだろう。
そんな事を考えながら、杯へと移された液体を一口飲んだ。
癖がなく飲みやすい酒のようだが、ほんのりと甘く花のような香りがする。
如何にも市が好みそうな味だ、と長政は考えた。
だが、その後からが妙な事になった。
頭がふらふらとして、視界が眩んできたのだ。
「な、んだ…これは…」
「うふふ」
長政の剣呑な物言いにも動じず、市は嫣然と笑みを浮べた。
「長政さま、美味しい?」
けぶる睫毛を伏せ、黒目がちな市の瞳がじっと長政の顔を見詰めた。
「ねえ…」
白い手が上がり、短く刈られた長政の後ろ髪へ触れた。
そのまま下へと動き、さわさわと緩慢な動きで白い項を撫で上げる。
ふっくらとした市の唇が近付き、真一文字に結ばれた長政の唇へ押し付けられる。
「ふっ…んん…」
項を撫でる方とは逆の手は長政の胸元を彷徨っていた。
いつの間にか白い小袖はだらしなく前を開けられ、小振りながら見事な形を誇る胸が覗いている。
市は既に着物を脱ぎ捨て、その辺に置きっぱなしだ。
「…良い気持ちになるでしょう?」
長政の唇が空気を求めてほんの僅かに開いた隙に、市は舌をにゅるりと滑り込ませた。
ぴちゃぴちゃと口腔を妻の舌に犯されながら、長政は力が抜けていくのを感じた。
「だって長政さま、最近とても難しい顔をされていたから…」
楽しい事をすれば気も紛れる、と市なりに気を遣った結果らしい。
その心遣いは嬉しいのだが、こういうことではなくて別の事を考えてくれれば、と思ったのだが、それも後の祭。
「い、市…もっと普通に…」
「黙って市に身をまかせて、ね?」
幼女のごとき純真さと妖婦のごとき艶を滲ませ、市は長政の帯を解いた。
女にしては長身ながら、柔らかな曲線を描く腰とそれに続く細い脚は白く透き通って見える。
市のような豊満な肉体とは異なる、鍛え上げられた獣のようなしなやかさを持つ女体。
普段は凛とした勇ましさを感じさせる精悍な顔に、今は頬を紅潮させて妻の手管に喘ぐ淫乱さを見せていた。
「…ふふ、可愛い…」
舌と指で丹念に長政の全身を愛撫していく市は、時折強く吸い付いて紅い痕を残した。
「やめよ…」
己自身が蕩けて無くなってしまうのではないかという摩訶不思議な感覚に襲われながらも、僅かな精神力を振り絞って妻を諌める。
「嘘吐きはいけないことだって…長政さまはいつもおっしゃっているわ」
とろりと歓喜の蜜を滴らせてひくついている女陰へ、市は数本の指を差し込んだ。
薬の影響か、よく解れているそこは、きゅうっと吸い付くように指を締め上げた。
ぐちゅりと中でかき回しながら、良い所を探り当て、長政の身体が反応した所を執拗に責め続ける。
「はぁっ…あ、あ…あぁーっ」
いつもより敏感になったそこにドクドクと血が集まっているような錯覚を感じる。
身体のあちこちを撫で回す闇の手は市が召喚したものらしい。
「一緒に…ね?」
漆黒の筋となって長政だけではなく市の身体も複数の手が犯していた。
荒い呼吸と言葉にならない声と互いの汗に塗れながら、二人は同時に達した。
くたり、と瞼を開けるのさえも鬱陶しい疲労感に身を任せ、そのまま泥のような眠りに落ちていった。
「ねえ、長政さま…?」
それ以来、市の持ってくる物は不用意に口にしないと誓った長政であった。