恋っていったい
「あんまり旦那を甘く見てると後悔するよ?」
やんわりと窘められて慶次は目を丸く見張ってみせた。
華やかな顔立ちの慶次のそんな表情は憎めない子供のようだが、中身はそんな可愛いものではないと佐助は知っていた。
「旦那はさ、確かに馬鹿だし奥手だけど」
あの真田一族なんだよ?と流れにさらしていた布を引き上げながら佐助は言葉を継いだ。
そんな佐助の隣で一連の作業を見守っていた慶次は、ぶすりと刺された特大の釘に気付かないふりをする。
あるいは、無視をする。
お騒がせな風来坊が薄桃の花びらと共にこの上田に来てどのくらい経ったか。
その間に起きた騒動を思えば佐助は考えたくもない。
派手な成りの小猿を連れた女はある日突然上田城に殴りこんできて(比喩ではなくほんとに素手だった)、無駄に暑苦しい真田の兵たちをちぎっては投げちぎっては投げ、佐助はかなりの怪力で殴られ華麗に宙を舞い、挙げ句に幸村の昼食の蕎麦を平らげて悠々と城を出ていった。
それだけなら良かったのに、なぜかすぐに舞い戻って来て怒りに燃える幸村と激しい、激しすぎる殴り合いを演じたのだ。
結果はやはり女の慶次は男の幸村に負けた。
その腹癒せなのかただ単に幸村をからかいがいのある男と踏んだのか、「こんなにいい拳をしてるのに恋の一つもしてないのかい?」などと幸村に絡み出したのだ。
当然幸村は「破廉恥でござる!!」と絶叫のち逃亡。
風来坊は何のおとがめもなしである。
「いやいやさっちゃん誤解だってば。たださ、俺は恋の素晴らしさってやつを幸村に教えてあげたいだけなんだってば」
「いやいや慶ちゃん。そういうのは他人に教えてもらうものじゃないと思うんだけどなー」
ぎゅうっと布を絞り、桶に入れる。
慶次は佐助の手際の良さを懐かしげに見つめている。
大方、良妻賢母と評判の前田まつでも思い出しているのだろう。
やんわりと窘められて慶次は目を丸く見張ってみせた。
華やかな顔立ちの慶次のそんな表情は憎めない子供のようだが、中身はそんな可愛いものではないと佐助は知っていた。
「旦那はさ、確かに馬鹿だし奥手だけど」
あの真田一族なんだよ?と流れにさらしていた布を引き上げながら佐助は言葉を継いだ。
そんな佐助の隣で一連の作業を見守っていた慶次は、ぶすりと刺された特大の釘に気付かないふりをする。
あるいは、無視をする。
お騒がせな風来坊が薄桃の花びらと共にこの上田に来てどのくらい経ったか。
その間に起きた騒動を思えば佐助は考えたくもない。
派手な成りの小猿を連れた女はある日突然上田城に殴りこんできて(比喩ではなくほんとに素手だった)、無駄に暑苦しい真田の兵たちをちぎっては投げちぎっては投げ、佐助はかなりの怪力で殴られ華麗に宙を舞い、挙げ句に幸村の昼食の蕎麦を平らげて悠々と城を出ていった。
それだけなら良かったのに、なぜかすぐに舞い戻って来て怒りに燃える幸村と激しい、激しすぎる殴り合いを演じたのだ。
結果はやはり女の慶次は男の幸村に負けた。
その腹癒せなのかただ単に幸村をからかいがいのある男と踏んだのか、「こんなにいい拳をしてるのに恋の一つもしてないのかい?」などと幸村に絡み出したのだ。
当然幸村は「破廉恥でござる!!」と絶叫のち逃亡。
風来坊は何のおとがめもなしである。
「いやいやさっちゃん誤解だってば。たださ、俺は恋の素晴らしさってやつを幸村に教えてあげたいだけなんだってば」
「いやいや慶ちゃん。そういうのは他人に教えてもらうものじゃないと思うんだけどなー」
ぎゅうっと布を絞り、桶に入れる。
慶次は佐助の手際の良さを懐かしげに見つめている。
大方、良妻賢母と評判の前田まつでも思い出しているのだろう。




