厳島神社の朱塗りの柱に、元就の纏う緑の着物が映えた。
かりかりと硬い音を立ててせっせとかりんとうを食べる姿は、なんとなくリスを連想させる。
「何を見ておる。貴様も食わぬか」
皿の上に広げられたせんべいのようなものを一つ取り、元就は元親に投げた。
「あ、てめ」
「奥州のかりんとうは珍妙な形をしていると聞いたが、まことであったようだな」
「……それが確かめたかっただけか?」
「他に何の理由が必要だ」
髪を潮風に流し、元就は腹に手をやった。
元親の目にも、膨れているのが分かる。
「……父親は?」
「駒よ。我の策の駒となり、我を求めてくる、妙な駒よ」
元就は無表情のまま答えると、次のかりんとうに手をつける。
元親は一口かじり、海に目をやった。
「祝言はどうしたんだよ」
「父の名を毛利の系図に載せぬために、行わぬ。今更白無垢など、我には不要ぞ」
「……まぁ、お前らがいいんなら、俺がどうこう言ってもしょうがねぇけどよ」
「貴様こそ、奥州とはどうなっておる。あれは血に縛られし竜ぞ。鬼とあらば、攫ってみせい」
切れ長の怜悧な目が、元親を見た。
かりんとうを飲み込み、指についた砂糖を舐める。
「ああ……まぁ、な。政宗は嫁ぐつもりはない。俺も婿に入るつもりはない。……いいんだよ」
「情婦のように扱うのか」
「違う。こうするのが一番なんだよ」
ぎ、と元就の視線がきつくなった。
「奪ってみせるくらいの気概を見せればよかろう。腑抜けが」
そう言われてもしょうがないだろうな、と目を伏せる。
かりかりと硬い音を立ててせっせとかりんとうを食べる姿は、なんとなくリスを連想させる。
「何を見ておる。貴様も食わぬか」
皿の上に広げられたせんべいのようなものを一つ取り、元就は元親に投げた。
「あ、てめ」
「奥州のかりんとうは珍妙な形をしていると聞いたが、まことであったようだな」
「……それが確かめたかっただけか?」
「他に何の理由が必要だ」
髪を潮風に流し、元就は腹に手をやった。
元親の目にも、膨れているのが分かる。
「……父親は?」
「駒よ。我の策の駒となり、我を求めてくる、妙な駒よ」
元就は無表情のまま答えると、次のかりんとうに手をつける。
元親は一口かじり、海に目をやった。
「祝言はどうしたんだよ」
「父の名を毛利の系図に載せぬために、行わぬ。今更白無垢など、我には不要ぞ」
「……まぁ、お前らがいいんなら、俺がどうこう言ってもしょうがねぇけどよ」
「貴様こそ、奥州とはどうなっておる。あれは血に縛られし竜ぞ。鬼とあらば、攫ってみせい」
切れ長の怜悧な目が、元親を見た。
かりんとうを飲み込み、指についた砂糖を舐める。
「ああ……まぁ、な。政宗は嫁ぐつもりはない。俺も婿に入るつもりはない。……いいんだよ」
「情婦のように扱うのか」
「違う。こうするのが一番なんだよ」
ぎ、と元就の視線がきつくなった。
「奪ってみせるくらいの気概を見せればよかろう。腑抜けが」
そう言われてもしょうがないだろうな、と目を伏せる。
心は手に入っても、目に見えるものではない。体が側にいない。
変わらねばならない。お互いに。
「そういえば……」
以前から疑問だった。
元親は顔を上げ、焙じた茶を飲んでいる元就に顔を向けた。
怜悧、という言葉が一番似合う顔立ち。一重の切れ長の目。薄く紅を差した唇。緑の着物。
母となろうというのに、柔らかさの乏しい体。
元親の知っている元就は、いつもこんな格好だ。
変わらねばならない。お互いに。
「そういえば……」
以前から疑問だった。
元親は顔を上げ、焙じた茶を飲んでいる元就に顔を向けた。
怜悧、という言葉が一番似合う顔立ち。一重の切れ長の目。薄く紅を差した唇。緑の着物。
母となろうというのに、柔らかさの乏しい体。
元親の知っている元就は、いつもこんな格好だ。
「おまえ、いくつなんだよ」
返答の代わりに、湯飲みが元親の顔にヒットした。
以上。
東北地方のかりんとうはせんべいみたいな形が一般的だと聞いてびっくりした。
東北地方のかりんとうはせんべいみたいな形が一般的だと聞いてびっくりした。




