「半兵衛は赤が似合うよなぁ」
「何だい、急に」
「何だい、急に」
唐突に、目の前の少女はそう言った。
この少女の急な発言や行動はいつものことだ。
そして、それに振り回されるのも。
この日も、早朝から訪ねてきて、あげく朝飯を強請る始末。ちゃっかり大福まで平らげたのだから、もう呆れるを通り越して感心する。
‥‥‥彼女の叔父上と叔母上の苦労はそれなりに理解しているつもりだ。
この少女の急な発言や行動はいつものことだ。
そして、それに振り回されるのも。
この日も、早朝から訪ねてきて、あげく朝飯を強請る始末。ちゃっかり大福まで平らげたのだから、もう呆れるを通り越して感心する。
‥‥‥彼女の叔父上と叔母上の苦労はそれなりに理解しているつもりだ。
「うーん、だってさぁ」
昨夜降った雪は思いのほか降り積もり、町に、山に、田に、白銀の化粧を施していった。
我が家もその例外ではない。今まで二人並んで座っていた庭に面した縁側から下り、白の絨毯の上を、少女は裸足のまま歩いた。
我が家もその例外ではない。今まで二人並んで座っていた庭に面した縁側から下り、白の絨毯の上を、少女は裸足のまま歩いた。
あぁ、足の裏がしもやけになるじゃないか。
後で後悔するのは君なんだぞ。
なにも考えないで行動して、いつも最後は僕に泣きついてくるくせに。
後で後悔するのは君なんだぞ。
なにも考えないで行動して、いつも最後は僕に泣きついてくるくせに。
呆れて止めようとすれば、少女は満面の笑みでこちらに戻ってきた。
その手には―――――
その手には―――――
「ほら!やっぱり似合う」
「あのね、君・・・・・・」
「あのね、君・・・・・・」
先週咲いたばかりの寒椿だった。紅白が交互に植えられているそれを、赤だけ選んで、二・三摘み、僕の髪に挿したのだ。
きゃいきゃいとはしゃぐ少女に、今日何回目か分らない溜息をつく。
きゃいきゃいとはしゃぐ少女に、今日何回目か分らない溜息をつく。
「あのね、僕は男だ。花が似合ったって嬉しくもなんともないよ」
「違うって!花が似合うんじゃなくて、赤が似合うの!」
「違うって!花が似合うんじゃなくて、赤が似合うの!」
そのまま手に持っていた赤椿を、ぷすぷすと挿してゆく。
「半兵衛は髪の毛も、肌も、真っ白だろ。だから、赤がよく映える。――――おし、できた」
満足そうに微笑む少女は、どうやら僕を飾り終えたようだった。
「・・・・・・」
「わー!わー!取ろうとすんな!せっかく綺麗なのに!」
「だから、何度も言わせないでくれ。男が花なんかつけてても嬉しくもなんともない」
「そっちこそ何度も言わせんじゃねーよ!花じゃなくて赤いのが似合うんだってば!」
「わー!わー!取ろうとすんな!せっかく綺麗なのに!」
「だから、何度も言わせないでくれ。男が花なんかつけてても嬉しくもなんともない」
「そっちこそ何度も言わせんじゃねーよ!花じゃなくて赤いのが似合うんだってば!」
忙しいやつだ。
さっきまでにこにこしていたくせに、今は頬を膨らませてこちらを威嚇する。
全然、効果なんかないのに。
むしろ、逆なのに。
さっきまでにこにこしていたくせに、今は頬を膨らませてこちらを威嚇する。
全然、効果なんかないのに。
むしろ、逆なのに。
「・・・・・・そうだね。ちょっと待ってなよ」
僕は草履を履き、庭に出た。そのまま、少女が先ほどとってきた椿とは対をなす、純白の前に立つ。
雪に隠れ、存在感をなくしていた白椿を一つだけ摘み、縁側に戻った。
雪に隠れ、存在感をなくしていた白椿を一つだけ摘み、縁側に戻った。
「何?」
まだ、拗ねている少女は、こちらを上目使いで睨みあげてきた。
僕は少し屈んで、少女の豊かに波打つ赤毛に、大輪の白椿をそっと添えた。
あぁ、やはり思った通りだ。
僕は少し屈んで、少女の豊かに波打つ赤毛に、大輪の白椿をそっと添えた。
あぁ、やはり思った通りだ。
「僕に赤が似合うというなら、君は逆だね。白が似合う」
少女は驚いたように、丸い瞳をさらに丸くした。