あれはうららかな陽気に包まれた、ある春の午後。
夜通しの任務から帰還した俺様…猿飛佐助は、
枝振りのいい樹の上にあるお気に入りの場所で
優雅に昼寝を楽しんでいた。…が、
夜通しの任務から帰還した俺様…猿飛佐助は、
枝振りのいい樹の上にあるお気に入りの場所で
優雅に昼寝を楽しんでいた。…が、
「佐助ー!佐助はおらぬかー!」
木の下から響き渡る伸びやかな大声に折角の眠気が吹き飛ばされた。
はいはい、なんですかもう。
声の主は甲斐の若き虎の異名を持つ武将にして、
現在の俺のご主人、真田幸村その人だ。
はいはい、なんですかもう。
声の主は甲斐の若き虎の異名を持つ武将にして、
現在の俺のご主人、真田幸村その人だ。
「はーい。佐助はここですよ。」
「おお!佐助!!」
俺の姿を見つけるなり、くりくりした目を輝かせて
走り寄って来る旦那は、柴犬か何かのようで
ハッキリ言って可愛い。
でも元気に上下するやけにたわわな胸は、男の俺にはちょっと目に毒かなぁ…。
走り寄って来る旦那は、柴犬か何かのようで
ハッキリ言って可愛い。
でも元気に上下するやけにたわわな胸は、男の俺にはちょっと目に毒かなぁ…。
そう。俺のご主人はうら若い女の子なのだ。
…とは言っても、こっちが心配になるくらい色気が無いんだけどねー。
…とは言っても、こっちが心配になるくらい色気が無いんだけどねー。
「どーしました?何か火急の用事でも?」
「聞いてくれ佐助!それがし、初めて月のものが来たのでござるぁ!!」
「ふーん…って、えぇぇー?!」
旦那の口から嬉しそうに放たれた言葉は、
二重の意味でショックだった。
そんなデリケートな話題、女の子がおおっぴらに言っちゃダメー!!
…それにその、旦那は確か17だったよね?
…まだだったの?
二重の意味でショックだった。
そんなデリケートな話題、女の子がおおっぴらに言っちゃダメー!!
…それにその、旦那は確か17だったよね?
…まだだったの?
「うむ。普通より遅いらしいので少し気にはしていたが、
これでそれがしお館様の御子を産めるでござる!
嬉しいでござるー!」
これでそれがしお館様の御子を産めるでござる!
嬉しいでござるー!」
わーい!と無邪気に喜ぶ旦那を前にして、クールな俺様らしくなく
ポカンと口を開けるしかなかった。
ポカンと口を開けるしかなかった。
旦那が恐ろしいまでに真っ直ぐお館様…武田信玄公の事を
敬愛してるのは武田軍の誰もが知ってる事だけど、
まさかその子供を産みたいとまで思ってたとは…。
敬愛してるのは武田軍の誰もが知ってる事だけど、
まさかその子供を産みたいとまで思ってたとは…。
「旦那、お館様のご側室にでもなるつもり?」
「いいや?それがしはいち武将として
お館様の為に生涯力を尽くす所存でござる!」
お館様の為に生涯力を尽くす所存でござる!」
「でもお館様の御子を産むんでしょ?」
「周囲にはお館様の御子とは明かさず、
それがしの子として育てるでござる。
男子ならば真田の跡目を継がせるつもりだ!」
それがしの子として育てるでござる。
男子ならば真田の跡目を継がせるつもりだ!」
そう旦那は言い切るけど…
それはなかなか厳しいんじゃないかなー…。
それはなかなか厳しいんじゃないかなー…。