佐助は頭をかき、牢の床に座り込む盗賊を見た。
忍びとはもう呼べないだろう。人を襲い、殺し、村を焼いて食べ物を奪うものは、盗賊だ。
風魔小太郎、というのが目の前の盗賊の通称だ。
(その名前で呼んでいいもんかねぇ)
風魔衆といえば、忍びの中でももっとも謎に包まれ、もっとも恐ろしい集団だ。
真田忍びは何度も煮え湯を飲まされ、佐助自身も傷を負わされたことがあった。
それが、北条が滅んだ途端これだ。
近隣の、例えば三河や伊達辺りに仕官すれば、それなりの待遇と仕事が得られただろうに。
分からないなぁ、と佐助はため息をついた。
風魔の忍びが優秀なのは知っているから、できれば自分の配下か、武田忍びに加わって
欲しいのが佐助の率直な願いだ。
もっとも、あそこまで派手に暴れ回った忍びだから、助命嘆願をしたところで処刑は免れないだろう。
何より、助命を願う義理がない。
「何か言えよ」
言葉を知らないとは聞いている。
だが、いくらなんでも何も知らない訳がないだろう。
佐助は顎に手を伸ばした。今度は払われない。
細い顎をしている。
小太郎を捕らえたのは佐助だった。普通の兵士や忍びでは太刀打ちできず、
真田忍びの長である佐助が出ることになった。
何日もかけて追いつめ、何人もの忍びの命を使って捕らえた。
風魔が一人で、武田の土地で多くの味方を使うという、自分たちにかなり有利な条件でも、
そんな状態だった。
胸のうちに怒りが湧くのも無理はない。
ぱん、と無造作に頬を張った。小太郎はどさりと石の床に倒れ込む。
――ふ、と。
気づいた。
「あんた……女?」
小太郎は体を起こし、頷いた。
佐助は軽く目を見張った。
音に聞こえた風魔衆の頭領は、「小太郎」を名乗る。故に、男だと思っていた。
捕らえるために対峙した時、恐ろしい大男に思えた。用意した縄が意外と余って、
ようやく小柄なことに気づいたくらいだ。
体の線を隠し、顔を隠し、荒々しい忍びの術と体術を使うため、女だと考えることすらなかった。
「……へぇ」
むくむくと、嗜虐心が沸き起こる。
舌で唇を湿らせ、ゆっくりと小太郎に近づいた。
四肢を捕らえ、石の床に押し付けた。
「……分かるよね。俺が、何をしようとしているか」
女が敵に捕らえられれば、されることは一つしかない。
身分ある武将ならともかく、佐助や小太郎のような最下層の「草」と呼ばれるような
身分の者が、それから逃れる事など、万に一つもないだろう。
衣服を裂くと、引き締まった体が現れた。意外と胸は大きい。着やせする体型のようだ。
小太郎は抵抗しない。胸に手をやればぴくりと跳ねるが、悲鳴すら零さない。
「――何? 何にも言わないの?」
言葉を知らないとは聞いているが、智恵に遅れがあるとは聞いていないし、初潮も
迎えていない幼子でもあるまい。
「分かってんでしょ? 俺、あんたを犯そうとしてるんだよ」
小太郎は頷いた。好きにしろ、といわんばかりに体から力を抜いている。
ぽかん、と口を開けた。まじまじと小太郎を見る。
体を屈め、唇を奪って舌を差し込んだ。応える気配はない。
胸を揉んでも、首を振るがそれ以上の反応はない。
嗜虐心が、音を立ててしぼんだ。
抵抗するなら、無理やりにでも犯して楽しんだのだが。
「――なんかもう、いいや」
体をずらし、小太郎の体を起こした。豊かな胸が呼吸に合わせて動く様子は、
目の保養に十分すぎるが、それ以上の感情は湧かない。
破いた服を脱がせ、自分の着物を脱ぐ。仕込んでいた武器や薬を全部外し、小太郎に着せた。
「……逃げるつもり、ある?」
首を振る。
「うちに雇われてみる?」
首を傾げる。
雇うとは何だ、と言いたげだった。
「……まぁいいや。大将があんたを許すとは思えないけどね」
いくつも村を潰し、人を殺し、食べ物を奪った。小太郎を許せば、大抵の盗賊が許されてしまう。
とはいえ、逃げるつもりもないものを、ここまで厳重に捕らえていても意味がなさそうだ。
破いた着物をくるくる丸めると、佐助は立ち上がった。
「どうせあんたは処刑されるんだ。――最期くらい、いい生活させてあげるよ」
それが、佐助にできる精一杯の思いやりだった。
忍びとはもう呼べないだろう。人を襲い、殺し、村を焼いて食べ物を奪うものは、盗賊だ。
風魔小太郎、というのが目の前の盗賊の通称だ。
(その名前で呼んでいいもんかねぇ)
風魔衆といえば、忍びの中でももっとも謎に包まれ、もっとも恐ろしい集団だ。
真田忍びは何度も煮え湯を飲まされ、佐助自身も傷を負わされたことがあった。
それが、北条が滅んだ途端これだ。
近隣の、例えば三河や伊達辺りに仕官すれば、それなりの待遇と仕事が得られただろうに。
分からないなぁ、と佐助はため息をついた。
風魔の忍びが優秀なのは知っているから、できれば自分の配下か、武田忍びに加わって
欲しいのが佐助の率直な願いだ。
もっとも、あそこまで派手に暴れ回った忍びだから、助命嘆願をしたところで処刑は免れないだろう。
何より、助命を願う義理がない。
「何か言えよ」
言葉を知らないとは聞いている。
だが、いくらなんでも何も知らない訳がないだろう。
佐助は顎に手を伸ばした。今度は払われない。
細い顎をしている。
小太郎を捕らえたのは佐助だった。普通の兵士や忍びでは太刀打ちできず、
真田忍びの長である佐助が出ることになった。
何日もかけて追いつめ、何人もの忍びの命を使って捕らえた。
風魔が一人で、武田の土地で多くの味方を使うという、自分たちにかなり有利な条件でも、
そんな状態だった。
胸のうちに怒りが湧くのも無理はない。
ぱん、と無造作に頬を張った。小太郎はどさりと石の床に倒れ込む。
――ふ、と。
気づいた。
「あんた……女?」
小太郎は体を起こし、頷いた。
佐助は軽く目を見張った。
音に聞こえた風魔衆の頭領は、「小太郎」を名乗る。故に、男だと思っていた。
捕らえるために対峙した時、恐ろしい大男に思えた。用意した縄が意外と余って、
ようやく小柄なことに気づいたくらいだ。
体の線を隠し、顔を隠し、荒々しい忍びの術と体術を使うため、女だと考えることすらなかった。
「……へぇ」
むくむくと、嗜虐心が沸き起こる。
舌で唇を湿らせ、ゆっくりと小太郎に近づいた。
四肢を捕らえ、石の床に押し付けた。
「……分かるよね。俺が、何をしようとしているか」
女が敵に捕らえられれば、されることは一つしかない。
身分ある武将ならともかく、佐助や小太郎のような最下層の「草」と呼ばれるような
身分の者が、それから逃れる事など、万に一つもないだろう。
衣服を裂くと、引き締まった体が現れた。意外と胸は大きい。着やせする体型のようだ。
小太郎は抵抗しない。胸に手をやればぴくりと跳ねるが、悲鳴すら零さない。
「――何? 何にも言わないの?」
言葉を知らないとは聞いているが、智恵に遅れがあるとは聞いていないし、初潮も
迎えていない幼子でもあるまい。
「分かってんでしょ? 俺、あんたを犯そうとしてるんだよ」
小太郎は頷いた。好きにしろ、といわんばかりに体から力を抜いている。
ぽかん、と口を開けた。まじまじと小太郎を見る。
体を屈め、唇を奪って舌を差し込んだ。応える気配はない。
胸を揉んでも、首を振るがそれ以上の反応はない。
嗜虐心が、音を立ててしぼんだ。
抵抗するなら、無理やりにでも犯して楽しんだのだが。
「――なんかもう、いいや」
体をずらし、小太郎の体を起こした。豊かな胸が呼吸に合わせて動く様子は、
目の保養に十分すぎるが、それ以上の感情は湧かない。
破いた服を脱がせ、自分の着物を脱ぐ。仕込んでいた武器や薬を全部外し、小太郎に着せた。
「……逃げるつもり、ある?」
首を振る。
「うちに雇われてみる?」
首を傾げる。
雇うとは何だ、と言いたげだった。
「……まぁいいや。大将があんたを許すとは思えないけどね」
いくつも村を潰し、人を殺し、食べ物を奪った。小太郎を許せば、大抵の盗賊が許されてしまう。
とはいえ、逃げるつもりもないものを、ここまで厳重に捕らえていても意味がなさそうだ。
破いた着物をくるくる丸めると、佐助は立ち上がった。
「どうせあんたは処刑されるんだ。――最期くらい、いい生活させてあげるよ」
それが、佐助にできる精一杯の思いやりだった。




