戦国BASARA/エロパロ保管庫

炎の微笑15

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bsr_e

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一つの予感があった。躑躅が崎に出仕するのに必要のないものを、幸村は持ってきていた。
知らないふりをしていたが、やはり咎めるべきだったと後悔する。
「申してみよ」
「真田家の家督を叔父上にお譲りし、それがし、真田を出とうございます」
ざわ、と家臣団がざわめいた。いくつか言葉が飛び交うが、信玄が扇を閉じるとそれも途切れた。
「……理由を、問うぞ」
「それがしは女子にございます。元々家督を継ぐ立場ではなく、叔父上が継ぐのが順当にござる」
「家督はそうであるのう。――じゃがのう、出奔はせずともよかろう。敵方に囚われたことは、
恥じることではあるが、そこまでのものではないぞ?」
「いえ、これ以上ない恥にござる。それがしが家督を継いだが故に、家名に泥を塗って
しまいました。――願わくば真田の名を捨て、上田の地をお館様に返上致しとう存じます」
佐助は歯軋りをした。
信玄はどこに行くかは問わない。そうか、と言って脇息に置いた腕に顎を乗せた。
扇を手持ち無沙汰に開いては閉じ、黙考する。
幸村は女の格好にふさわしくない潔さで頭を下げ、ひたすら小さくなっている。
「――確かに、幸村の言うことに一理はある」
佐助は思わず顔を上げた。下座にいた家臣が咎めるような視線を送るが、気にしてなどいられない。
命より大事な主君が武田を飛び出そうとしているときに、礼儀など気にできない。
「なれど、家名を捨てる必要はあるまい。いずれ、必要となろう」
「いえ、どうか、それがしをお捨てください」
「ならぬ。それだけはならんぞ幸村」
信玄は近習を呼んだ。近習は心得たように一度下がり、箱を持ってきた。

箱には白い打掛が入っていた。
金糸銀糸で華麗な刺繍が施され、さりげなく真田の家紋と武田の家紋が入ったそれは、誰の目にも嫁入り装束に見えた。
「お館様……これは……」
打掛を持った幸村は、呆然と信玄を見た。
「儂には、それを用意してやるのが精一杯であったわ」
「お館様……」
「幸村ぁ! 真田の名に恥じぬ、立派な女子となれ!」
「お館様ああぁぁ!!」
わっと家臣は耳を塞いだ。女の格好をしようと、雰囲気が変わろうと、根本はまったく変わっていない。
二人の気の済むまで、至近距離で大声を出し合う呼びかけは続いた。

佐助はそれを、遠い世界の絵巻物を見るような目で見ていた。


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