そんなこんなで今回は
- 慶次と女はんべ編
- 幸村ついに水揚げ編
の二本立てですドゾー
お館様が鷹波屋にいらっしゃったのは、それから数日のことだった。
年の瀬ともなると花魁は右へ左へ大忙し。
上得意のお館様のお相手も疎かになる程で。
灯りを運びに部屋へ入ると、既に褥で横になるお館様に、俺は呼び止められた。
呼び止められるのはこれが初めてじゃない。
なんやかんやと気に入ってもらってるようで、友人のように気さくに話しかけてくれるお館様に、俺も親近感を覚えていた。
「さすがの花魁も忙しいようじゃのぉ、慶次?」
「さぁて、お館様のところに来たくてうずうずしてるんじゃないですかね」
もちろんホントのところはどうか知らないけれど、これも廓の常套句。
それも知っていてお館様は、ワハハと豪快に笑い飛ばした。
「ところで幸村の水揚げの準備は進んでおるんじゃろうな」
来た。気付いているのかいないのか、お館様は佐助のいないところでは何かと幸村の事を聞きたがるのを俺は知っていた。
「えぇ、何とかって坊さんが、大金積むとかって話を聞きましたね」
あまり細かい事を外の人に教える訳にはいかないけれど、それだけ聞いてお館様はフッと笑みをこぼした。
「大金とはのぅ…それ程あの幸村が気に入っておるのか」
蓼食う虫も好き好きじゃな、とお館様はどこか楽しそうに嘲弄した。
「お館様もその蓼が好きな方だと思ってましたが」
水揚げの話に一介の雇われ人が口を出すのは反則だけど、お館様が名乗りを上げないのはやはり気になるんだ。
「うむぅ…それなんじゃがの、ここに来て迷っておるんじゃ」
起き上がって腕を組み、お館様はむむぅと首を捻った。
その仕草があまりにも無邪気で、お館様に似合わなすぎて、おかしかった。
「儂はどうすれば良い」
その目を見れば、それが本心だと知れる。
豪胆で知られるお館様が悩むなんて珍しい。しかも他人に相談なんて。
しかし何と言われても、俺が言える事は一つだ。
「抱きたければ抱けば良いし、抱きたくなければ抱かなければ良いじゃないですか」
さらっと言ってのけた俺の言葉に、お館様は呆気に取られたようだった。
「男なんてそんなもんでしょ」
と、目配せをすれば、お館様は吹っ切れたように大口を開けて「確かにな」と笑った。
これが今後どのような影響をもたらすのかは想像もつかないけれど、おかげで俺も聞きたかった事を聞く気になった。
「ねぇお館様、一つ聞いても良いですか」
お館様の返事を待たずして、言葉を続ける。
「本当は、幸村を前からご存知なんじゃないですか?」
年の瀬ともなると花魁は右へ左へ大忙し。
上得意のお館様のお相手も疎かになる程で。
灯りを運びに部屋へ入ると、既に褥で横になるお館様に、俺は呼び止められた。
呼び止められるのはこれが初めてじゃない。
なんやかんやと気に入ってもらってるようで、友人のように気さくに話しかけてくれるお館様に、俺も親近感を覚えていた。
「さすがの花魁も忙しいようじゃのぉ、慶次?」
「さぁて、お館様のところに来たくてうずうずしてるんじゃないですかね」
もちろんホントのところはどうか知らないけれど、これも廓の常套句。
それも知っていてお館様は、ワハハと豪快に笑い飛ばした。
「ところで幸村の水揚げの準備は進んでおるんじゃろうな」
来た。気付いているのかいないのか、お館様は佐助のいないところでは何かと幸村の事を聞きたがるのを俺は知っていた。
「えぇ、何とかって坊さんが、大金積むとかって話を聞きましたね」
あまり細かい事を外の人に教える訳にはいかないけれど、それだけ聞いてお館様はフッと笑みをこぼした。
「大金とはのぅ…それ程あの幸村が気に入っておるのか」
蓼食う虫も好き好きじゃな、とお館様はどこか楽しそうに嘲弄した。
「お館様もその蓼が好きな方だと思ってましたが」
水揚げの話に一介の雇われ人が口を出すのは反則だけど、お館様が名乗りを上げないのはやはり気になるんだ。
「うむぅ…それなんじゃがの、ここに来て迷っておるんじゃ」
起き上がって腕を組み、お館様はむむぅと首を捻った。
その仕草があまりにも無邪気で、お館様に似合わなすぎて、おかしかった。
「儂はどうすれば良い」
その目を見れば、それが本心だと知れる。
豪胆で知られるお館様が悩むなんて珍しい。しかも他人に相談なんて。
しかし何と言われても、俺が言える事は一つだ。
「抱きたければ抱けば良いし、抱きたくなければ抱かなければ良いじゃないですか」
さらっと言ってのけた俺の言葉に、お館様は呆気に取られたようだった。
「男なんてそんなもんでしょ」
と、目配せをすれば、お館様は吹っ切れたように大口を開けて「確かにな」と笑った。
これが今後どのような影響をもたらすのかは想像もつかないけれど、おかげで俺も聞きたかった事を聞く気になった。
「ねぇお館様、一つ聞いても良いですか」
お館様の返事を待たずして、言葉を続ける。
「本当は、幸村を前からご存知なんじゃないですか?」




