するりと鎧から抜かれた手を見て、そんなことを考えたがそういう生き方は諦めてしまった。
それに、今のままで十分だった。
波乱万丈だが優しい人々に恵まれたこの人生も、悪くはないのだから。
それに、今のままで十分だった。
波乱万丈だが優しい人々に恵まれたこの人生も、悪くはないのだから。
「手癖の悪いお元気な奴だな。そういうのは帰ってからにしろ」
苦笑を一つ零すと、頭を覆っていた兜を脱いで、軽くなった頭を振った。
「代わりにこれで我慢しろ、忠勝」
膝立ちになって背筋を伸ばすと、金色の兜を手にしたまま黒鉄の兜に腕を回した。
全身鋼鉄に包まれて顔さえほとんど面に覆われているこの男であるが、
わずかに露出している肌の部分―――柔らかい唇に自身のそれを押し付けると、
少しだけではあるけれど、彼の人の唇がぴくりと動いたのが伝わって、してやったりと微笑んだ。
全身鋼鉄に包まれて顔さえほとんど面に覆われているこの男であるが、
わずかに露出している肌の部分―――柔らかい唇に自身のそれを押し付けると、
少しだけではあるけれど、彼の人の唇がぴくりと動いたのが伝わって、してやったりと微笑んだ。
…これだから、様子を見に来るものは無い。
馬より恐ろしいものに、誰が蹴られたいだろうか。
馬より恐ろしいものに、誰が蹴られたいだろうか。
おしまい
続編冬の夜長(21禁)