「おや、目覚めたのかね」
粘っこい声がした。低く、穏やかで、しかしその実相手を嘲り嬲るような、金属の摩擦音などよりもよっぽど耳障りな、声だった。
そんな声の主を、小十郎は一人だけ、知っている。
顔を上げる。ゆらり、と佐助の背後で影が揺れ、やがてそれは蝋燭の灯に照らされて、人の形になった。
見下げてくるその視線を真っ向から睨めつけて、小十郎は、今に噛み付かん勢いで叫んだ。
そんな声の主を、小十郎は一人だけ、知っている。
顔を上げる。ゆらり、と佐助の背後で影が揺れ、やがてそれは蝋燭の灯に照らされて、人の形になった。
見下げてくるその視線を真っ向から睨めつけて、小十郎は、今に噛み付かん勢いで叫んだ。
「……松永ァアッ!!」
松永久秀。
主たる政宗を傷つけ、六の刀を奪った挙句に、今また、己の宝を奪っていった張本人。
そんな相手を前にして、小十郎が冷静でいられようはずもなかった。
何より、あられもない姿でさらされた、目前の忍のことを思えば、尚の事。
だが、小十郎から放たれる怒気と殺気に、松永はかえって機嫌を良くしたようであった。
さも愉快と言わんばかりに、薄く笑う。
主たる政宗を傷つけ、六の刀を奪った挙句に、今また、己の宝を奪っていった張本人。
そんな相手を前にして、小十郎が冷静でいられようはずもなかった。
何より、あられもない姿でさらされた、目前の忍のことを思えば、尚の事。
だが、小十郎から放たれる怒気と殺気に、松永はかえって機嫌を良くしたようであった。
さも愉快と言わんばかりに、薄く笑う。
「随分と威勢の良いことだ。いや、しかし、面白い、卿ともあろう者が、一人のくのいちの為にここまで来るとは」
卿がその身を投げ打つのは、ただ主君の為だけだと思ったのだがね。
そう言うと松永は、手にしていた鎖……佐助の手首を戒める枷と繋がっている……を引いた。
少しでも小十郎の傍に寄ろうと檻に縋り付く佐助の体は、後ろに傾いで松永の腕にいかにも優しげに抱きとめられる。
その乾いた手が白い体に触れた瞬間、頭の端で、ちりりと火花が弾けたのを、小十郎は確かに感じた。
そう言うと松永は、手にしていた鎖……佐助の手首を戒める枷と繋がっている……を引いた。
少しでも小十郎の傍に寄ろうと檻に縋り付く佐助の体は、後ろに傾いで松永の腕にいかにも優しげに抱きとめられる。
その乾いた手が白い体に触れた瞬間、頭の端で、ちりりと火花が弾けたのを、小十郎は確かに感じた。
「そいつに触れんな!!」
鋭く叫ぶ。
「触れんじゃねェ……!!」
ずきり、頭が痛む、だが構っていられるか。構ってなどいられるものか。
この胸の、焼かれるような痛みの方が、よっぽどきつい。
だが松永は、小十郎の心情を見透かした上で、それを嘲笑うように、薄く肉の付いた佐助の胸を片手で鷲掴みにして見せた。佐助の口から、言葉にならない、なんとも言えず甘い悲鳴があがる。
その響きが気に入ったらしい、松永の手は執拗に、佐助の小さな胸を捏ね回した。
かっと頭に血が上る、怒りで小十郎の全身は細かく震えた。
この胸の、焼かれるような痛みの方が、よっぽどきつい。
だが松永は、小十郎の心情を見透かした上で、それを嘲笑うように、薄く肉の付いた佐助の胸を片手で鷲掴みにして見せた。佐助の口から、言葉にならない、なんとも言えず甘い悲鳴があがる。
その響きが気に入ったらしい、松永の手は執拗に、佐助の小さな胸を捏ね回した。
かっと頭に血が上る、怒りで小十郎の全身は細かく震えた。
「テ、メェ……ッッ!!」
「ほう、まさかと思ったが、竜の右目はたかが草風情に骨抜きにされたか」
「ほう、まさかと思ったが、竜の右目はたかが草風情に骨抜きにされたか」
愉しげに笑いながら、しかし松永は「いや、」と続けた。