「草風情、というのは失礼か。このくのいちの具合は実に素晴らしい、これほどの名器は、なかなか無いだろうな、そうは思わんかね」
言いながらも、茶器を愛で撫でるような手つきで、脇腹から腰の線を辿り、その蜜壷に指を埋め込んだ。
甘く、水音をたてて、そこは男の指を二本、三本と柔軟に受け入れる。声にならぬ声をあげて、佐助は背を反らせた。
松永の手によって達したのだ。
そう理解したら、腹の底から湧き上がる怒りに、噛み締めた奥歯から血が滲むほどだったが、だが、同時に小十郎はふと疑問を抱いた。
これはおかしい、どうして佐助はこうもされるがままにされている、本気になれば逃げ出すこととて出来ように。
それに、いくら感度が良いと言っても、あの程度で達するとは……・。
甘く、水音をたてて、そこは男の指を二本、三本と柔軟に受け入れる。声にならぬ声をあげて、佐助は背を反らせた。
松永の手によって達したのだ。
そう理解したら、腹の底から湧き上がる怒りに、噛み締めた奥歯から血が滲むほどだったが、だが、同時に小十郎はふと疑問を抱いた。
これはおかしい、どうして佐助はこうもされるがままにされている、本気になれば逃げ出すこととて出来ように。
それに、いくら感度が良いと言っても、あの程度で達するとは……・。
まさか。
「……テメェ……そいつに、何を」
「ん? ああ、気が付いたか。なに、ちょっとした薬を盛らせてもらっただけでね」
「ん? ああ、気が付いたか。なに、ちょっとした薬を盛らせてもらっただけでね」
――――いや、この場合は、毒、と言った方が相応しいか。
脱力したらしい細い体を、片手で軽々と支え、もう片方の手で気まぐれに佐助の古傷をなぞりながら、松永は嗤った。
触れられるたびに、佐助はびくりびくりと震える。ゆるゆると首を振り、涙の粒を散らす。
その唇が、息も絶え絶えに、「かたくらさん」と動くのが、見えた。
――――催淫剤だ。知らず、小十郎の眉間に刻まれた皺が、更に深くなった。
脱力したらしい細い体を、片手で軽々と支え、もう片方の手で気まぐれに佐助の古傷をなぞりながら、松永は嗤った。
触れられるたびに、佐助はびくりびくりと震える。ゆるゆると首を振り、涙の粒を散らす。
その唇が、息も絶え絶えに、「かたくらさん」と動くのが、見えた。
――――催淫剤だ。知らず、小十郎の眉間に刻まれた皺が、更に深くなった。
「これでもなかなか苦労したのだよ、薬に耐性があったのかなかなか効かなくてね……
倍以上投与してようやく効いた。まあ、少々効き過ぎているようだが」
倍以上投与してようやく効いた。まあ、少々効き過ぎているようだが」
佐助の目は、ただただ小十郎に向けられていた、だが、その焦点はどうにも合っていない。
「それにしても、卿は随分とよく躾けたようだな。どこの手の者かと問うても答えない、
代わりに卿の名をずっと呼んでいた。辛かろうに、頑なに卿に操を立てようとしていたよ。
どうだね、愛いだろう?」
代わりに卿の名をずっと呼んでいた。辛かろうに、頑なに卿に操を立てようとしていたよ。
どうだね、愛いだろう?」
あああ、と悲鳴のような嬌声が、松永の言葉に被さって狭い牢獄に響いた。
腸が煮える、臓腑が焼ける。
怒りとは、これほどに激しいものだったろうかと、小十郎の内の僅かに残った冷静な部分が呟いた。
だがしかし松永は、小十郎の激しい怒りになど動じやしない。
阿修羅の如き形相を浮かべても、満ち満ちた憎悪を視線に乗せてねめつけても、
奴は怯むどころか、それが愉快だとばかりに嗤うのだ。
ああ、この、忌々しい枷さえ無いならば! 鎖を引きちぎる事さえ出来たならば!
小十郎は、手首に血が滲むほどに暴れ、もがいたが、それはやはり無駄な足掻きでしかなかった。
頑丈に組まれた鎖は、びくともしない。
腸が煮える、臓腑が焼ける。
怒りとは、これほどに激しいものだったろうかと、小十郎の内の僅かに残った冷静な部分が呟いた。
だがしかし松永は、小十郎の激しい怒りになど動じやしない。
阿修羅の如き形相を浮かべても、満ち満ちた憎悪を視線に乗せてねめつけても、
奴は怯むどころか、それが愉快だとばかりに嗤うのだ。
ああ、この、忌々しい枷さえ無いならば! 鎖を引きちぎる事さえ出来たならば!
小十郎は、手首に血が滲むほどに暴れ、もがいたが、それはやはり無駄な足掻きでしかなかった。
頑丈に組まれた鎖は、びくともしない。
「松永ァ……ッ!!」
「おお、怖い、まるで手負いの獣だな」
「おお、怖い、まるで手負いの獣だな」