「……佐助」
そっと、その名を呼びかける。
何はともあれ、まずはこの手枷を外してもらわなければ、行動を起こすことはできないのだ。
だが、佐助はびくりと肩を震わせただけで、起き上がらない。
やはり、薬の効果が辛いのか、それとも精神的によっぽど堪えたのか――。
小十郎自身、この忍がひどい辱めを受けたのだと考えるだに腸が煮え繰り返って仕方がなかったが。
もう一度、声を掛ける。
何はともあれ、まずはこの手枷を外してもらわなければ、行動を起こすことはできないのだ。
だが、佐助はびくりと肩を震わせただけで、起き上がらない。
やはり、薬の効果が辛いのか、それとも精神的によっぽど堪えたのか――。
小十郎自身、この忍がひどい辱めを受けたのだと考えるだに腸が煮え繰り返って仕方がなかったが。
もう一度、声を掛ける。
「平気か、佐助」
「……ん、ッ……」
「……ん、ッ……」
返ってきたのは僅かな呻きのみだった。
だが、根気強く待っていると、やがて佐助は、ふらりとその身をを起こした。
それに小十郎は、この状況下においてでも少しばかり安堵して、
――だが、直後に、戦慄を覚えた。
だが、根気強く待っていると、やがて佐助は、ふらりとその身をを起こした。
それに小十郎は、この状況下においてでも少しばかり安堵して、
――だが、直後に、戦慄を覚えた。
「かたくら、さん」
顔を上げた佐助は、とてもとても幸せそうに、愛しげに、その名を呼んで、微笑んだ。
凄艶に、それは、淫靡に。
ぞくり。小十郎の背に走った怖気は、恐怖だったのか、それとも。
よろり。佐助は獣のような四つん這いで、のろのろゆっくりと、だが着実に小十郎との距離を詰める。
やがて間隔は零になり、その掌が、小十郎の膝を撫でた。そろり、そろり。
息を呑みながら、間近に迫る橙の髪の毛を見つめれば、佐助はその視線に気が付いてゆっくりと小十郎を見上げた。
そして、今に蕩けてしまいそうに微笑んで。
凄艶に、それは、淫靡に。
ぞくり。小十郎の背に走った怖気は、恐怖だったのか、それとも。
よろり。佐助は獣のような四つん這いで、のろのろゆっくりと、だが着実に小十郎との距離を詰める。
やがて間隔は零になり、その掌が、小十郎の膝を撫でた。そろり、そろり。
息を呑みながら、間近に迫る橙の髪の毛を見つめれば、佐助はその視線に気が付いてゆっくりと小十郎を見上げた。
そして、今に蕩けてしまいそうに微笑んで。
「かたくらさん……」
酔いしれたような甘い甘い声音で、また小十郎の名を呼んだ。
……何だ、これは。
「さす、」
呼ぼうとした名前は、口付けに吸い取られて、声にならずに消えた。
啄ばむような口吸い、時折、赤い舌で擽るように唇を舐められる。
はふ、と熱い息を漏らしながら、佐助は何度も何度も繰り返し口付けてきた。
さわさわ、と細い指が頬を撫でて、小十郎の整えられた髪の毛に差し入れられた。
体と心を、同時にじわじわと侵食されるような感触に、口吸いに、ざわりと肌が粟立った。
ちゅ、ちゅるり、息継ぎの合間に唇の隙間から舌を差し込まれる。小さいが熱い舌は、
隅々まで感じたいのだとばかりに小十郎の舌に絡み、口内を舐ってきた。
余りにも激しく性急な求めに、小十郎でさえ応じきれずに僅かに翻弄される。
やがて名残惜しげに唇が離れたかと思えば、再び、もっと深く。
最早小十郎は、息を乱さぬように意識することしか出来ない。
合間合間で、咎めるようにその名を呼んでも、名を呼ばれること自体が嬉しいのか、佐助はうっとりと目を細めるだけだった。
……これは、完全に正気を失っている、止めなければ。
分かっているのに、自由を奪われた身の小十郎には、為す術など何一つ無い。
ようやっと濃厚な口付けが終わる。
低く低く、佐助、と呼びかければ、当の忍は少し首を傾げて、いっそ無邪気なほど艶やかに笑った。
啄ばむような口吸い、時折、赤い舌で擽るように唇を舐められる。
はふ、と熱い息を漏らしながら、佐助は何度も何度も繰り返し口付けてきた。
さわさわ、と細い指が頬を撫でて、小十郎の整えられた髪の毛に差し入れられた。
体と心を、同時にじわじわと侵食されるような感触に、口吸いに、ざわりと肌が粟立った。
ちゅ、ちゅるり、息継ぎの合間に唇の隙間から舌を差し込まれる。小さいが熱い舌は、
隅々まで感じたいのだとばかりに小十郎の舌に絡み、口内を舐ってきた。
余りにも激しく性急な求めに、小十郎でさえ応じきれずに僅かに翻弄される。
やがて名残惜しげに唇が離れたかと思えば、再び、もっと深く。
最早小十郎は、息を乱さぬように意識することしか出来ない。
合間合間で、咎めるようにその名を呼んでも、名を呼ばれること自体が嬉しいのか、佐助はうっとりと目を細めるだけだった。
……これは、完全に正気を失っている、止めなければ。
分かっているのに、自由を奪われた身の小十郎には、為す術など何一つ無い。
ようやっと濃厚な口付けが終わる。
低く低く、佐助、と呼びかければ、当の忍は少し首を傾げて、いっそ無邪気なほど艶やかに笑った。




