「欲望のままに書けばいいのだ……どうせ人はすぐに死ぬ」
そんな事を呟きながら、松永久秀は書をしたため終えて筆を置いた。こきり、と軽く肩を鳴らす。
それを合図に、背後に控えていた三好三人衆が、墨の乾いた項から手に取り、読みながら誤字脱字の確認をし始める。
それを合図に、背後に控えていた三好三人衆が、墨の乾いた項から手に取り、読みながら誤字脱字の確認をし始める。
「ふむ、今回はなかなかの出来だな。どうだね」
「素晴らしい出来栄えです」
「素晴らしく破廉恥です」
「忍萌えです」
「そうか、では兵への今度の褒章はこれで良いな」
「素晴らしい出来栄えです」
「素晴らしく破廉恥です」
「忍萌えです」
「そうか、では兵への今度の褒章はこれで良いな」
松永は上機嫌に笑いながら、すっと立ち上がり、書斎を見渡した。
びっしりと棚に収められた春本の数々は、皆彼が著したものだ。相当数ある。
今まで生み出してきた作品の数々を眺めながら、松永はしみじみと呟いた。
びっしりと棚に収められた春本の数々は、皆彼が著したものだ。相当数ある。
今まで生み出してきた作品の数々を眺めながら、松永はしみじみと呟いた。
「己の欲を満たし、著した書は兵たちへの褒章になり、且つ、余りを売りに出せば軍資金になる。
……まさに一石三鳥。これほど良い仕事は他にないな。いや、愉快、愉快」
……まさに一石三鳥。これほど良い仕事は他にないな。いや、愉快、愉快」
普段の悪人面が、この時ばかりは爽やかであった。
……後日、片倉小十郎と猿飛佐助の両名は、大仏殿に殴り込みを仕掛けて、けしからん春本の販売中止を要求したのだが、
「いや、卿らの本ならば即日完売だったが」
そんな事実を知らされて、結果、某前田夫妻よろしく、春本回収の為の全国行脚に赴くことになる。
了