「こいつはお返しだ」
そう言って長曾我部元親が差し出した包みを毛利元就は反射的に受け取った。
しまった、と思ったが、出来るだけ平静を装って視線を外すと、手にした包みへと移す。
淡い花柄の綺麗な包みからは甘い匂いがする。
おそらく食べ物だと思われる。
彼女が甘味に目が無いことを知っているのだろうか。
「…何ぞ?」
毒でも入っているのではないかと、訝しげに包みを睨む元就の顔に彼は苦笑した。
「今日はこの前の何とかって日のお返しをする日らしいからな」
貰いっぱなしというのも気分が落ち着かねぇ、と言いながら、ばりばりと髪を掻いた。
「貴様にやったのは義理だというのに、律儀なことよ」
本命は別だと言いながらも、元就の顔は少し赤くなっていた。
「要らねえってか?」
「ふん…今更返せと言うか」
じろりと下から睨んでくる琥珀の瞳に、素直じゃねぇな、と呟きながら、元親は軽く溜め息をついた。
「政宗が珍しい南蛮菓子の作り方を教えてくれたついでに作った奴だ」
初めて作ったから味は保障しないぜ、と肩を竦めた。
「我を実験体にする気か、貴様!」
「じゃあここで開けて一緒に食うか?」
柳眉を吊り上げて声を上げる元就の肩へと手を置くと、少し身を屈めて視線を合わせる。
急に近くなった元親の顔に、ぎょっとしたように元就は顔をそらした。
「…うむ」
ならば構わん、と言い、丁寧に包装された箱を開けた。
狐色に焼かれた菓子は掌にのる程度の大きさで綺麗に並べられていた。
元親はその一枚を取ると、元就の口元へと持っていく。
「我に毒見をさせる気か」
むすっと眉を顰めて唸る元就の目線がきつくなる。
「わかった、俺も一緒に食うからそこの一枚取ってくれ」
顎で箱の中身を指すと、元就も渋々ではあるが一枚取り、元親の口元へと突きつけた。
「一緒に食うからな」
こくりと素直に頷いた元就の仕草に、元親は隻眼を瞬かせた。
…黙っていりゃあ可愛いのにな
心の中でぼそりと呟く。
「臆したか?」
「…いや、何でもねぇよ」
よし、行くぞ、と同時に双方の口が菓子を齧る。
少々零れ落ちたのは仕方ないが、口腔に広がる甘味とその柔らかさに驚いた。
「……美味い」
あっという間に一枚を平らげ、元就は満足そうに表情を緩めた。
「そりゃあ腕が良いからな」
「いや、伊達の教え方が上手なのであろう」
あっさりと元就に否定されたものの、嬉しそうに菓子を頬張る姿を見て、
俺もこいつに甘いなぁと思いつつ元親は天を仰いだ。
そう言って長曾我部元親が差し出した包みを毛利元就は反射的に受け取った。
しまった、と思ったが、出来るだけ平静を装って視線を外すと、手にした包みへと移す。
淡い花柄の綺麗な包みからは甘い匂いがする。
おそらく食べ物だと思われる。
彼女が甘味に目が無いことを知っているのだろうか。
「…何ぞ?」
毒でも入っているのではないかと、訝しげに包みを睨む元就の顔に彼は苦笑した。
「今日はこの前の何とかって日のお返しをする日らしいからな」
貰いっぱなしというのも気分が落ち着かねぇ、と言いながら、ばりばりと髪を掻いた。
「貴様にやったのは義理だというのに、律儀なことよ」
本命は別だと言いながらも、元就の顔は少し赤くなっていた。
「要らねえってか?」
「ふん…今更返せと言うか」
じろりと下から睨んでくる琥珀の瞳に、素直じゃねぇな、と呟きながら、元親は軽く溜め息をついた。
「政宗が珍しい南蛮菓子の作り方を教えてくれたついでに作った奴だ」
初めて作ったから味は保障しないぜ、と肩を竦めた。
「我を実験体にする気か、貴様!」
「じゃあここで開けて一緒に食うか?」
柳眉を吊り上げて声を上げる元就の肩へと手を置くと、少し身を屈めて視線を合わせる。
急に近くなった元親の顔に、ぎょっとしたように元就は顔をそらした。
「…うむ」
ならば構わん、と言い、丁寧に包装された箱を開けた。
狐色に焼かれた菓子は掌にのる程度の大きさで綺麗に並べられていた。
元親はその一枚を取ると、元就の口元へと持っていく。
「我に毒見をさせる気か」
むすっと眉を顰めて唸る元就の目線がきつくなる。
「わかった、俺も一緒に食うからそこの一枚取ってくれ」
顎で箱の中身を指すと、元就も渋々ではあるが一枚取り、元親の口元へと突きつけた。
「一緒に食うからな」
こくりと素直に頷いた元就の仕草に、元親は隻眼を瞬かせた。
…黙っていりゃあ可愛いのにな
心の中でぼそりと呟く。
「臆したか?」
「…いや、何でもねぇよ」
よし、行くぞ、と同時に双方の口が菓子を齧る。
少々零れ落ちたのは仕方ないが、口腔に広がる甘味とその柔らかさに驚いた。
「……美味い」
あっという間に一枚を平らげ、元就は満足そうに表情を緩めた。
「そりゃあ腕が良いからな」
「いや、伊達の教え方が上手なのであろう」
あっさりと元就に否定されたものの、嬉しそうに菓子を頬張る姿を見て、
俺もこいつに甘いなぁと思いつつ元親は天を仰いだ。
(終)