戦国BASARA/エロパロ保管庫

ハナシノブ2

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bsr_e

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結局簪は手元に残されたが、武家や大名の姫君で無いかすがには過分な代物だった。
私服を着た時、一度だけ隠れる様に自室で挿してみた事がある。
長持から取り出した青銅の手鏡に油を引いて恐る恐る覗き込むと、
そこには髪に深い翠色を乗せた見知らぬ女が映っていた。
かすがは目を瞬かせ、食い入る様に鏡を凝視した。
これが本当に自分なのかとても信じられない。
――綺麗だ
突然男の言葉が思い出され、あの屈託の無い柔らかい眼と簪が添えられた時
微かに触れた指先の感触が甦る。
何故見られたり言葉を交すと居心地が悪くなるのか、やっとかすがは理解した。
敵で無く忍でも無く、戦場ですら彼から女として扱われる事に苛立ちを覚えていたのだ。
――今度私服の時着けて見せてくれよな
こんな自分の姿を誰かに晒すなどかすがにとって恥辱に等しい。
誰かに見られてはと急いで簪を引抜き鏡を伏せる。
紅潮した頬と喩えようもない胸の疼きに狼狽え、暫く動悸が治まらなかった。
どうせあの言葉や仕草も喜車の術で自分をからかっていただけだという思いと、
心のどこかで本気にしてしまう自分が居て歯がゆい。
(馬鹿馬鹿しい。忍を市井の女の様に飾り立ててどうだと言うんだ)
八つ当たりめいた怒りを覚え、かすがは以後絶対身に着けまいと臍を曲げた。
それきり玉の簪は鏡と共に長持の奥底に仕舞い込まれたままだ。



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