さ、と音がして庭先に急に雨が降り出す。
「『きつねのよめいり』か……。」
「……美しいものであるな。」
木々の隙間から見える青空と陽光。
キラキラと光の粒が降り注いでいるようにも見える。
「『きつねのよめいり』か……。」
「……美しいものであるな。」
木々の隙間から見える青空と陽光。
キラキラと光の粒が降り注いでいるようにも見える。
暫くその美しさに見惚れているとぱちりと音がした。
振り返ると久秀が立ち上がっていた。
「ふむ、なるほどのう。」
次の手が難しい下手を打てば負けることは目に見えていた。
身支度を整え戻るのだと分る。
振り返ると久秀が立ち上がっていた。
「ふむ、なるほどのう。」
次の手が難しい下手を打てば負けることは目に見えていた。
身支度を整え戻るのだと分る。
「次まで考えておけ。」
「成る程、勝負はお預けでおじゃるか。」
ほっとして足を崩すと久秀は口元を歪ませた。
これは長考が必要だ。じっくりと考えるとしよう。
「成る程、勝負はお預けでおじゃるか。」
ほっとして足を崩すと久秀は口元を歪ませた。
これは長考が必要だ。じっくりと考えるとしよう。
「さて……。」
久秀がからりと戸を開く、見送りはしない。
何時も勝手に来て勝手に帰っていくだけの勝手な男なのだから。
「そうそう一つ聞き忘れていた。」
閉めかけた戸を止め久秀が振り返る。
久秀がからりと戸を開く、見送りはしない。
何時も勝手に来て勝手に帰っていくだけの勝手な男なのだから。
「そうそう一つ聞き忘れていた。」
閉めかけた戸を止め久秀が振り返る。
「なんでおじゃ?」
「そんな風に着飾っているとは珍しい。何かあったのかね。」
「ああ……そのようなことか。」
今日はおしろいをつけては居なかった。
「麻呂は今日は一人で過ごす予定であったのでの。それに……気にするようなそなたではなかろ?」
どうせこの男には何を隠しても無駄な事。
予定外に現れたからと時間のかかるあの顔を作りあげる気にはならなかった。
「く、全く持ってその通りだな。では失礼するよ。」
「気をつけて戻るがよい。雨でぬかるんでいるかも知れぬのでな。」
にやりと笑って久秀は今度こそ帰っていった。
「そんな風に着飾っているとは珍しい。何かあったのかね。」
「ああ……そのようなことか。」
今日はおしろいをつけては居なかった。
「麻呂は今日は一人で過ごす予定であったのでの。それに……気にするようなそなたではなかろ?」
どうせこの男には何を隠しても無駄な事。
予定外に現れたからと時間のかかるあの顔を作りあげる気にはならなかった。
「く、全く持ってその通りだな。では失礼するよ。」
「気をつけて戻るがよい。雨でぬかるんでいるかも知れぬのでな。」
にやりと笑って久秀は今度こそ帰っていった。
その笑顔が普段とは違うような気がして義元は足音が聞こえなくなるまで扉を眺めていた。
「はて……。」
気のせいであったろうか。
だが戸に隠れていたし、もはや確認もできはしない。考えても無駄な事だ。
義元は考える事をあっさりやめると振り返り庭を見る。
雨は既にあがり、葉に滴るしずくが日の光を浴び、まるで珠のようだった。
「はて……。」
気のせいであったろうか。
だが戸に隠れていたし、もはや確認もできはしない。考えても無駄な事だ。
義元は考える事をあっさりやめると振り返り庭を見る。
雨は既にあがり、葉に滴るしずくが日の光を浴び、まるで珠のようだった。
「白玉か何ぞと人の問ひし時つゆと答へて消えなましものを」
思わず口ずさむ。
「まことにもったいない女よのう。あの歳になるまで、この水滴の一粒でさえ愛でられると知らずにいたとはの。」
知ってはいても自らには愛を語り合うような男は居はしないのだけど。
「まことにもったいない女よのう。あの歳になるまで、この水滴の一粒でさえ愛でられると知らずにいたとはの。」
知ってはいても自らには愛を語り合うような男は居はしないのだけど。
「さて。」
義元は碁盤の前に座り直した。
目下の問題はこの盤上にある。
最良の手を見つけ出しあの済ました不遜な笑みを崩してやろう。
義元は久しぶりに次に客が訪れる事を楽しみに思ったのだった。
義元は碁盤の前に座り直した。
目下の問題はこの盤上にある。
最良の手を見つけ出しあの済ました不遜な笑みを崩してやろう。
義元は久しぶりに次に客が訪れる事を楽しみに思ったのだった。




