娘の笑顔を見て佐助も笑うが、眉尻を下げた笑顔は今までの笑い方と全く異なる。
「やっと笑ったな」
途端に娘は申し訳ない気持ちで一杯になった。
ここに連れて来たのも、他愛の無い話をしたのも、庭の裏で独り泣いて居た自分を
慰めようとしたからだ。
それも察せず一々理由を考えた己が恥ずかしい。
「あの、私――」
謝ろうとすると佐助が遮った。
「別に良いって。気にすんなよ」
一時柔らかく微笑んだ琥珀はまた暗い色に沈み、固く膝を抱え込んでしまう。
「じゃあさ、代りに一つ我侭聞いて貰える?」
琥珀が佐助を映して瞬いた。
「やっと笑ったな」
途端に娘は申し訳ない気持ちで一杯になった。
ここに連れて来たのも、他愛の無い話をしたのも、庭の裏で独り泣いて居た自分を
慰めようとしたからだ。
それも察せず一々理由を考えた己が恥ずかしい。
「あの、私――」
謝ろうとすると佐助が遮った。
「別に良いって。気にすんなよ」
一時柔らかく微笑んだ琥珀はまた暗い色に沈み、固く膝を抱え込んでしまう。
「じゃあさ、代りに一つ我侭聞いて貰える?」
琥珀が佐助を映して瞬いた。
「こらちょっと待てって。そんなに急いで一体何処に行くってんだ」
あまり強く引っ張られて佐助は戸惑った。
「良いから来い」
相手は構わず行く先も告げないで乱暴に佐助の腕を引っ張り先を急ぐ。
「全くお前は…」
相変わらず気紛れな奴だな、と溜め息を吐いた。
あの日と真逆だ。
――何処に行くんですか?
手を引いている相手が尋ねると笑いながら佐助は答えた。
――良いから付いて来なって
そしてためらう相手を引っ張ってここにやって来た。
遠くに山々を望み、一本の古ぼけたスダジイの樹が立つ少し開けた場所。
秋風が吹く中、二人は立ち止まった。
あれから少しだけ時が流れ自分達は随分変ってしまったが、このありふれた景色は変らない。
草木が野原を渡る風に戦ぐ音も、スダジイの木漏れ日も、皆あの日のままだ。
あまり強く引っ張られて佐助は戸惑った。
「良いから来い」
相手は構わず行く先も告げないで乱暴に佐助の腕を引っ張り先を急ぐ。
「全くお前は…」
相変わらず気紛れな奴だな、と溜め息を吐いた。
あの日と真逆だ。
――何処に行くんですか?
手を引いている相手が尋ねると笑いながら佐助は答えた。
――良いから付いて来なって
そしてためらう相手を引っ張ってここにやって来た。
遠くに山々を望み、一本の古ぼけたスダジイの樹が立つ少し開けた場所。
秋風が吹く中、二人は立ち止まった。
あれから少しだけ時が流れ自分達は随分変ってしまったが、このありふれた景色は変らない。
草木が野原を渡る風に戦ぐ音も、スダジイの木漏れ日も、皆あの日のままだ。