何度目になるか分からない溜め息を吐いて頭を抱えた。
今夜ほど自分の性分を呪った事は無い。
憎からず思う相手が目の前に居ながら、何故男女のこと抜きで
清く過ごしてしまうのか。
橙色の葛藤を知る由もない歌姫の安らかな寝息が聞こえて来る。
さっき覆い被さる事が出来たのは一生分の幸運が一度に重なったからかもしれない。
脳裏に焼き付いた歌姫の白い足や下着がチラついた。
あの布の向う側が切実に見てみたい。
流された後に待ち受けるのは全身打撲だろうか。
思考だけが纏まり無く頭の中で堂々巡りして目が冴えて眠れない。
寝返りを打った歌姫がこちらに向いた。
普段は眉根に皺を寄せていて想像つかないが、案外あどけない寝顔をしている。
金の髪に触れてみたい。
マフラーから覗かせていた鼻先や柔らかそうな頬を突っ突いてみたい。
桜色の唇を啄んだら起きてしまうだろうか。
肚を決め、なけなしの勇気を振り絞ってベッドの傍らまで行き、
震える掌を布団に乗せた。
後はベッドの中に入ってしまえば良い。簡単な事だ。
彼女の腕っ節が強かろうがそれがどうした。
白い乳房に顔を埋めて殴られれば本望ではないか。
こんなチャンスはもう二度と巡って来ない。
落ち着け、落ち着け、落ち着け――跳ねる心臓を鎮める為に深呼吸する。
布団を掴む手に力が入った。
そのまま慎重に布団をずらす。
「ん……?」
歌姫の目が薄く開いた。
(げっ、冗談!?)
臆病風に吹かれた橙色は慌てて布団を掛け直し、元の場所に戻る。
そして再び何度目になるか分からない溜め息を吐いて頭を抱えた。
(もー何やってんだよ俺…)
今夜ほど自分の性分を呪った事は無い。
憎からず思う相手が目の前に居ながら、何故男女のこと抜きで
清く過ごしてしまうのか。
橙色の葛藤を知る由もない歌姫の安らかな寝息が聞こえて来る。
さっき覆い被さる事が出来たのは一生分の幸運が一度に重なったからかもしれない。
脳裏に焼き付いた歌姫の白い足や下着がチラついた。
あの布の向う側が切実に見てみたい。
流された後に待ち受けるのは全身打撲だろうか。
思考だけが纏まり無く頭の中で堂々巡りして目が冴えて眠れない。
寝返りを打った歌姫がこちらに向いた。
普段は眉根に皺を寄せていて想像つかないが、案外あどけない寝顔をしている。
金の髪に触れてみたい。
マフラーから覗かせていた鼻先や柔らかそうな頬を突っ突いてみたい。
桜色の唇を啄んだら起きてしまうだろうか。
肚を決め、なけなしの勇気を振り絞ってベッドの傍らまで行き、
震える掌を布団に乗せた。
後はベッドの中に入ってしまえば良い。簡単な事だ。
彼女の腕っ節が強かろうがそれがどうした。
白い乳房に顔を埋めて殴られれば本望ではないか。
こんなチャンスはもう二度と巡って来ない。
落ち着け、落ち着け、落ち着け――跳ねる心臓を鎮める為に深呼吸する。
布団を掴む手に力が入った。
そのまま慎重に布団をずらす。
「ん……?」
歌姫の目が薄く開いた。
(げっ、冗談!?)
臆病風に吹かれた橙色は慌てて布団を掛け直し、元の場所に戻る。
そして再び何度目になるか分からない溜め息を吐いて頭を抱えた。
(もー何やってんだよ俺…)




