戦国BASARA/エロパロ保管庫

潮の花67

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bsr_e

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引き攣れた音が元親の耳に届いて、見れば先の袴が一層深く裂けていた。
両脇に腕を差し込み、痩せた背を抱え込んだ。密着した体から逃れようと、元就が叱責しながら手足をばたつかせる。
だが、次の刹那には元就の体はふわりと浮きあがる。抱え起こした元親が、彼女の過剰に慌てる様が面白くて笑っていた。
怒りと恥ずかしさで元就は眼を背けた。
座り込んだ二人の傍に、元親の愛鳥が飛び跳ねて寄ってくる。
甲高い鳴き声に二人の名前を混ぜて呼んでいる。
気がそれて、少し冷静さを取り戻した元就が、破けた布地を掻き合わせて押さえる。
皮肉にも幼い少女のような座り方になって、元親がまた笑った。なんて可愛い。
「そなたといると、服がいくらあっても足りぬ」
「俺のだろうが、コレ」
反論しようとした。が、鳥が元就を呼ぶ。そして、顔を向けた彼女に『ダイジョウブ』と繰り返しさえずった。
ほう、と元就が息をつく。
鳥のあまりに無邪気な姿に動転する自分が滑稽で仕方なく思えたのだ。大丈夫。大丈夫だから。
ちー、と鳥を呼ぶと、鮮やかな羽を羽ばたかせて元就の肩に乗ってきた。
「あっちいけよ」
と邪険に扱う元親をたしなめる。
「言うてやるな。……いいから、早くせぬか」
疑問を目に浮かべた元親に、顔を伏せて、それでも砂地に着いた手を重ね合わせて答える。
「ここではならぬと言うたではないか」
長い睫毛が震えて、間接的にだが男を受け入れる決心の言葉を吐いた。
元親の胸に激しい歓喜が湧き出す。
性欲と言い換えて間違いはないだろう。しかしそれは、生理的な欲求を主としたものとは違うもっと別の次元の何か。
庇護欲と独占欲とがない交ぜになった強い感情だ。惚れた女と、体のみならず心まで欲した女と結ばれたいという欲求。
今まで経験した性交とは根本的に違っている。発散ではなく、結合。
ありきたりな言葉だが、それ以上は言い表せない衝動と歓喜――ひとつになりたい。
「いくらなんでも、んなトコでしねえよ。もったいない」
ふざけた口調から一変、耳許に口を寄せて低く囁く。
ちゃんと抱きてえからな、ゆっくり。
俯いたままの元就の耳が赤く染まっている。
照れた表情で何か呟こうとしてはやめる事を繰り返す彼女が最終的に発した言葉は、
「砂まみれだ。馬鹿者」と、見当外れの叱責だった。
両の二の腕をつかんで立ち上がらせると、元親は彼女の言葉を受けて
「そうだな。いっぺん脱いじまったほうが早いな」と言う。
そして、破けた箇所も直さないと、と。
では屋敷に戻らねばという元就を制して、元親は提案する。
近くに漁の時につかう物置小屋がある。
物置と言っても漁の合間の休憩にも使うので、寝具なども備えつけてあると言うのだ。
「網とか直すから裁縫道具もあるし。俺が縫うから、駄々こねないでちゃんと脱げよ?」
「長曾我部殿が?」
朝の潮風に短髪を弄らせたまま、元就が瞬いた。
答える元親は口元を――元就はそうとは気付いていないのだが、好色そうに歪ませる。
「そ。上手いぜ?」
ふむ、と考え込む女の口に添えられた指に筆まめ。
それを認めた元親は、さすがは智将、と口の中で笑う。
もちろん、その指ごと彼女のすべてを飲み込んでしまうつもりでいる。
元就がふん、と軽く笑って言う。
「さすが、姫若子といったところか」
不意の言葉に元親は喉を詰まらせた。
「なっ……、え、お前、ああ!?」
「何だ、知らぬと思うていたのか。めでたい事よの。
安芸にいてもよく聞こえておったわ」
土佐の後継ぎは覇気が無くて、日がな一日ぼんやり一人で釣りをしているか、部屋に閉じこもって何やらごそごそ書き連ねているか。
男のくせにという軽蔑と、その裏にある嫉妬から決して好ましく思えるはずもなかったはずなのに。
体格だけは立派に育ったから、だから良い後継ぎが作れて、あわよくば属国にしてやろうと考えていたのに。
「……計算してないぞ」
ぽそりと言う元就の顔が、やけにしおらしくなったのを見て、元親はその手を取った。
あっちだと手を引いて歩きだす。
いまや二人の傍から離れた海鳥の群れは、新たな餌を求めて海上を飛び回るばかり。
男の愛鳥も、どこかに行ってしまった。――女の肩に、緋色の羽毛を一つ残して。


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