戦国BASARA/エロパロ保管庫

落英6

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「殿は…!」
埃まみれの伝令は、片倉小十郎の前に跪いた。

「は。殿は、小田原攻を取りやめ、ただいま米沢へと帰陣途上でございます」
「…撤退、なさったのか。政宗さまが……」
小十郎は、意外と思いつつも、妥当とも思った。

「殿の口上を伝えさせていただきます。侵攻中、北条はすでに武田の手に落ちたとの報を知
り、豊臣と平走してこれを攻めても埒が無い。豊臣も退くというゆえ、一旦戻る。小十郎も
米沢へと退け、とのことでございました。方々に散った軍勢にも同様に伝令済み。落ち合う
先は、三春とのこと」
一気に口上を述べ、伝令はようやく安堵したように深く息を吐いた。

(…彼奴め………!)
小十郎は、唇を噛んだ。
竹中半兵衛は、豊臣が小田原を陥したと言った。
それを事実だと信じて、自分は見事に踊らされたのだ。

政宗が何処へ進むか、半兵衛が知る由もない。
半兵衛は、秀吉が小田原から遠ざかればそれでいいと思っていただけだったのだ。
圧倒的優位に立つ武田とも、破竹の勢いの伊達ともやりあわずに、穏便に。

武田が先に北条を落城させ、甲斐の虎と真田幸村らが小田原目当てに攻めて来る敵を、満を
持してあの難攻不落の城にて待ち構えているのを、半兵衛は知っていたのだ。
そして、伊達政宗を煽り立て、秀吉の目をひきつけさせる餌のようにして、今度は自分の主
を撤退させる策の道具とした。

秀吉は、半兵衛の退却案に頷かなかったのだろう。

やむなく半兵衛は、誘い込んだ伊達と先行争いをする振りをして、豊臣、伊達双方犠牲があ
まり出ない形で、しかも武田に尻尾を巻いたという形を気取られないように退却を演出した。

政宗は興を殺がれると、戦陣を引くことが多い。
気分屋ではあるが、兵たちを無闇に犠牲にすることはない。
そこを読んでの半兵衛の豊臣撤退策であったなら、人が悪いどころではない。
伊達と豊臣が周囲をうろついていると知れば、武田もむざと手出しはしまい。

小十郎は、翌朝に三春経由で米沢へ帰ることを兵に伝え、敵襲が無いか斥候と警戒を怠らな
いように命じ、伝令にも休息を命じた。

小十郎が小屋へ戻ると、半兵衛は小十郎が出て行ったときのままの姿で横たわっていた。

両腕の縛めのために脱がせられない白の戦装束と、小十郎の陣羽織の濃い桧皮色が、白い裸
身を際立たせていた。
地に落ちた白い花のようだ、と、小十郎は、思った。
椿、いや、牡丹。
ふと、そんなことを思ってしまった。

「政宗君は、無事だったようだね」
顔を上げもしないで、低い声が言った。
「なぜ、わかる」
小十郎が、返事の代わりに尋ねた。
「…出て行くときは、殺気に満ちていたけど、今度は怒りに満ちている」
半兵衛が、仮面を外されたままの白い顔を上げた。
瞳はまだ、潤んでいた。


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