書き物台を寄せてとりあえず、と政宗を座らせた。下を向いたまま政宗は黙っている。いつもと違う様子に少し戸惑ったが、小十郎はなるべくそっと、先程と同じように話し掛けてみた。
「政宗様。どうなさったのですか」
「…明かりが見えたから。こんな時間まで書き物をしていたのか?」
政宗は顔こそ上げたが、小十郎と目は合わせずにそっぽを向いた。こんな時間まで何故起きていたのだろうか?
書き物もしているような時間でなかったのだが、自分のことは棚に上げて小十郎はそう思った。
「ええ。ですがもう終わりましたので」
ちょうど片付けて床に就こうとしていた所だと説明する。
「それより。このような時間に、政宗様が小十郎のような臣下の室に来られるのは問題がありますぞ」
何か訳があってわざわざ訪ねて来たことは分かっていた。が、守役としては注意せざるをえない。
小十郎はあまり強くならない程度に諫めて、政宗の様子を窺った。
「政宗様。どうなさったのですか」
「…明かりが見えたから。こんな時間まで書き物をしていたのか?」
政宗は顔こそ上げたが、小十郎と目は合わせずにそっぽを向いた。こんな時間まで何故起きていたのだろうか?
書き物もしているような時間でなかったのだが、自分のことは棚に上げて小十郎はそう思った。
「ええ。ですがもう終わりましたので」
ちょうど片付けて床に就こうとしていた所だと説明する。
「それより。このような時間に、政宗様が小十郎のような臣下の室に来られるのは問題がありますぞ」
何か訳があってわざわざ訪ねて来たことは分かっていた。が、守役としては注意せざるをえない。
小十郎はあまり強くならない程度に諫めて、政宗の様子を窺った。
「んなこたぁ分かってるよ、」
政宗はなるべく強気で返した。諫められることぐらい分かっていたのだ。だが、今の政宗の気持ちを挫くのには十分だった。
小十郎に言いたいことがあって来たのだ。今しか機会はない。そう考えて心に決めてから、何度言う言葉を考えただろう。繰り返し想像しただろう。もう3回ほど夜も見送り今日が最後だ、と思い自分を奮い立たせて小十郎の室に足を運んだのだった。
それなのに。あの決心はどこへ行ってしまったのだろう?縁側で様子を窺っている間に無くしてしまったのだろうか。
いざ小十郎を前にすると、やけに喉が渇いて政宗は口から言葉が出なくなってしまった。
政宗はなるべく強気で返した。諫められることぐらい分かっていたのだ。だが、今の政宗の気持ちを挫くのには十分だった。
小十郎に言いたいことがあって来たのだ。今しか機会はない。そう考えて心に決めてから、何度言う言葉を考えただろう。繰り返し想像しただろう。もう3回ほど夜も見送り今日が最後だ、と思い自分を奮い立たせて小十郎の室に足を運んだのだった。
それなのに。あの決心はどこへ行ってしまったのだろう?縁側で様子を窺っている間に無くしてしまったのだろうか。
いざ小十郎を前にすると、やけに喉が渇いて政宗は口から言葉が出なくなってしまった。




