小十郎は身じろぎもせず姿勢を正したまま、政宗の後ろ姿をただ見つめていた。
政宗の守役。大名である伊達家とは比べられない身分の自分がこんな大任を仰せられ、政宗に仕えられたことは奇跡に近い。
政宗は立派な武将として大名として、奥州を治めるために、天下をとるために。そのために生まれてきた御方なのだ。
一生仕えると、心に誓った。この方のためなら何でもしようと。決して泣かせたり哀しませないように守る、と。
政宗の守役。大名である伊達家とは比べられない身分の自分がこんな大任を仰せられ、政宗に仕えられたことは奇跡に近い。
政宗は立派な武将として大名として、奥州を治めるために、天下をとるために。そのために生まれてきた御方なのだ。
一生仕えると、心に誓った。この方のためなら何でもしようと。決して泣かせたり哀しませないように守る、と。
政宗は後ろを向いたまま、振り返りもしない。
今の自分は何という体たらくだ。誰のせいで政宗様はあんな想いをされているのかと。誰が苦しめているのかと。
小十郎は憤りを感じた。同じ気持ちなのに立場を考えねばならない自分に。身分が、家に名が、あれば。
自分にはどうしようもできないことだから、余計にだった。
その背中を抱き締めて、重すぎる荷を軽くしてやりたい。自分もあなたが好きだ、という気持ちを伝えたい。
だが、戦国のこの時代には許されないことなのだ。女である以上、いずれ政宗も後継ぎのため子をもうけるだろう。政略のために、結婚するだろう。自分ではない身分ある誰かと。
だから今、互いに想い合っていたとしても。一夜限りで愛し合ったところで、後に政宗を苦しませ辛くさせるだけではないだろうか。
今の自分は何という体たらくだ。誰のせいで政宗様はあんな想いをされているのかと。誰が苦しめているのかと。
小十郎は憤りを感じた。同じ気持ちなのに立場を考えねばならない自分に。身分が、家に名が、あれば。
自分にはどうしようもできないことだから、余計にだった。
その背中を抱き締めて、重すぎる荷を軽くしてやりたい。自分もあなたが好きだ、という気持ちを伝えたい。
だが、戦国のこの時代には許されないことなのだ。女である以上、いずれ政宗も後継ぎのため子をもうけるだろう。政略のために、結婚するだろう。自分ではない身分ある誰かと。
だから今、互いに想い合っていたとしても。一夜限りで愛し合ったところで、後に政宗を苦しませ辛くさせるだけではないだろうか。
こっちを見ない背中を見つつ、しばらく考え込んでからいや、と小十郎は笑った。今は、今がいつまで続くのかいつ果てるのかさえもわからない戦国乱世なのだ。
大事なのは何だ。伊達の血か、奥州か?もちろんそれも大事だ。だが今一番大事なのは愛している、そこにいる自分の君主なのだ。
不意に光が、見えた気がした。
好きだという気持ち以外に何が必要だったというのだろうか。素直な気持ちに応えるのが、主のため、自分のためになるではないか。
今ここで想いを堪えて傷ついて、誰が得をするというのだろう。
小十郎は政宗に近寄り、抱き寄せた。
大事なのは何だ。伊達の血か、奥州か?もちろんそれも大事だ。だが今一番大事なのは愛している、そこにいる自分の君主なのだ。
不意に光が、見えた気がした。
好きだという気持ち以外に何が必要だったというのだろうか。素直な気持ちに応えるのが、主のため、自分のためになるではないか。
今ここで想いを堪えて傷ついて、誰が得をするというのだろう。
小十郎は政宗に近寄り、抱き寄せた。




