ケータイ投稿失礼。
- 真田×かすが
- 出てこないのにやたら可哀相な佐助
上杉軍の忍、かすがは山中を駆けていた。
木々の葉が色づき始め、稲が頭を垂れて、収穫されるのを待ち望んでいる。
つい先日までは、酉の刻でも夕日が大地や空を橙に染めていたというのに、今ではその時分、随分暗い。
空気も朝と夕、凛と澄んでいてやや肌寒くなった。辛い冬の前触れだ。
つい先日までは、酉の刻でも夕日が大地や空を橙に染めていたというのに、今ではその時分、随分暗い。
空気も朝と夕、凛と澄んでいてやや肌寒くなった。辛い冬の前触れだ。
反面、秋は嬉しい季節でもある。
華やかに彩る木々は目を愉しませてくれ、甘酸っぱい果実を実らせる。
春先より丹精込めて育てた作物の収穫時期であり、無事育てさせてくれた神への感謝を表す祭では皆の笑顔が眩しい。
華やかに彩る木々は目を愉しませてくれ、甘酸っぱい果実を実らせる。
春先より丹精込めて育てた作物の収穫時期であり、無事育てさせてくれた神への感謝を表す祭では皆の笑顔が眩しい。
今回はそんな季節ならではの任務。
『かいのとら が ぜっさんするという かんみどころ が あるらしいのです。うつくしきつるぎよ、 ひとつ たのまれては くれませんか ?』
『勿論です。武田へ向かえばいいのでしょうか?』
『えぇ。たのしみに していますよ。もどったら ともに しょくして みましょうか』
『ああぁ…謙信様。なんと勿体ないお言葉…!このかすが、必ずや』
『勿論です。武田へ向かえばいいのでしょうか?』
『えぇ。たのしみに していますよ。もどったら ともに しょくして みましょうか』
『ああぁ…謙信様。なんと勿体ないお言葉…!このかすが、必ずや』
主君とのやり取りを思い出し、思わず顔が綻ぶ。
謙信にとっては何気ない誘いだったのだろうが、かすがにとってはこの上ないことだ。
密偵や情報収集といった、危険を伴うものでもないので今回の件は任務というよりもちょっと遠出のお使い気分である。しかも褒美は極上ときた。張り切らないわけがない。
謙信にとっては何気ない誘いだったのだろうが、かすがにとってはこの上ないことだ。
密偵や情報収集といった、危険を伴うものでもないので今回の件は任務というよりもちょっと遠出のお使い気分である。しかも褒美は極上ときた。張り切らないわけがない。
気持ちが高揚していたせいか、あっという間に町のそばまで来た。
かすがの恰好は疾走していた先程の忍装束とは違い、年頃の娘が着る小袖を身に纏っている。
町中を歩くには流石にあの恰好は目立ちすぎるのだ。
かすがの恰好は疾走していた先程の忍装束とは違い、年頃の娘が着る小袖を身に纏っている。
町中を歩くには流石にあの恰好は目立ちすぎるのだ。
「(今回は手早く、迅速に、無駄なことをしない、だからな。それに武田の者には会いたくないし…)」
かすが自身は小袖といった類のものは、動きづらく窮屈なので出来る限り着たくない。だが、彼女にとって今回ばかりはそんなことは些細なことである。
周りに馴染むし、もし武田の者と町中ですれ違っても目をくらませられる。
周りに馴染むし、もし武田の者と町中ですれ違っても目をくらませられる。
主君のもとに帰ったあとのことを考えながら、足を進める。普段の戦場での彼女からは想像出来ないほど、顔がにやけていた。
◇
「…ここか」
目的地に辿り着いた。
繁盛しているらしく、中からは賑やかな声。
子ども達が出て来るところから、庶民にも愛されているのだろう。
繁盛しているらしく、中からは賑やかな声。
子ども達が出て来るところから、庶民にも愛されているのだろう。
さぁ、あとはパパッと買ってタタッと帰るだけ。愛しいあのお方との素敵なひとときはすぐそこ。
かすがの表情が更に緩む。
中に入ろうとした刹那、
中に入ろうとした刹那、
「…かすが殿?」
次の瞬間、かすがの表情は一変して、眉間に皺を寄せて声の主を睨んでいた。
それとは対称的に朗らかな笑顔を浮かべる藍の和装の男。
それとは対称的に朗らかな笑顔を浮かべる藍の和装の男。