帰ってきてからというのも信玄は落ち着かなかった
あの場はうまく謙信が丸め込んでくれたものの彼の中で未だに心の整理が出来ていなかった
今まで雌雄を争い、競ってきた相手が女だという事に。無論、女の大名でも問題は無い。
だが、男と信じていただけに衝撃が大きく、どう彼女に対応していいか分からなかった
そんな、もやもやを抱えたまま時間だけが過ぎていく…
あの場はうまく謙信が丸め込んでくれたものの彼の中で未だに心の整理が出来ていなかった
今まで雌雄を争い、競ってきた相手が女だという事に。無論、女の大名でも問題は無い。
だが、男と信じていただけに衝撃が大きく、どう彼女に対応していいか分からなかった
そんな、もやもやを抱えたまま時間だけが過ぎていく…
「武田の旦那、例の方をお連れしましたよ」
謙信を迎えに行っていた佐助がやってきた
(とうとう来てしまったか)
襖を開けて現れた赤い着物の女性は温泉で会った時よりも一層艶やかさを増していた
「…お、おお、入ってよいぞ」
信玄はややそっけなく答えた
「では、しつれいする」
彼女が前に進み出ると佐助は「ごゆっくり」と軽い口調で言いつつ襖を閉めた
入るなり謙信は懐から刀を出すとそれを脇へ置いた
「信用されて無いようじゃな」
信玄は思わず苦笑した
「いえ、これをもたないと"かじん"のものがしんぱいするので」
「そうか……なら、一緒に飲むか」
信玄は杯を差し出した
「これはこれは。えんりょなくいただこう」
謙信はそれを受け取ると一口に飲み干した
…………………………………。
あの時と同じ沈黙。二人は無言でひたすら酒を飲んでいた
どこかぎこちない空気の中で互いに目を合わせては、うつむく事を繰り返した
「…しんげんこうよ。おちつきがないようだが、いかがなされた?」
しばらくして謙信が口を開いた
「うっ、いや…大した事で無い」
図星を付かれた信玄は杯を零しそうになった
「まさかおなごとせっしたことがあるわけでなかろうに。たいしょうがそれではこまりますぞ」
謙信は微笑した
「なっ、な…うるさいわ!」
(おぬしが女で無ければこんなに動揺せんわ)
信玄はぐいと酒を飲み干した。その様子を楽しげに謙信は見つめていた
星合の空12
謙信を迎えに行っていた佐助がやってきた
(とうとう来てしまったか)
襖を開けて現れた赤い着物の女性は温泉で会った時よりも一層艶やかさを増していた
「…お、おお、入ってよいぞ」
信玄はややそっけなく答えた
「では、しつれいする」
彼女が前に進み出ると佐助は「ごゆっくり」と軽い口調で言いつつ襖を閉めた
入るなり謙信は懐から刀を出すとそれを脇へ置いた
「信用されて無いようじゃな」
信玄は思わず苦笑した
「いえ、これをもたないと"かじん"のものがしんぱいするので」
「そうか……なら、一緒に飲むか」
信玄は杯を差し出した
「これはこれは。えんりょなくいただこう」
謙信はそれを受け取ると一口に飲み干した
…………………………………。
あの時と同じ沈黙。二人は無言でひたすら酒を飲んでいた
どこかぎこちない空気の中で互いに目を合わせては、うつむく事を繰り返した
「…しんげんこうよ。おちつきがないようだが、いかがなされた?」
しばらくして謙信が口を開いた
「うっ、いや…大した事で無い」
図星を付かれた信玄は杯を零しそうになった
「まさかおなごとせっしたことがあるわけでなかろうに。たいしょうがそれではこまりますぞ」
謙信は微笑した
「なっ、な…うるさいわ!」
(おぬしが女で無ければこんなに動揺せんわ)
信玄はぐいと酒を飲み干した。その様子を楽しげに謙信は見つめていた
星合の空12




