「動くな、元親!動いてはならぬ!」
その時。思いもよらぬ男の大声に阻まれた元親は、びくりと身を竦ませた。
振り返ると、その声の主が、物凄い勢いで自分の傍へ走り寄ってきたのだ。
「このような重いものなど持つな!何故、黙っていたのだ!」
「え?ええと…俺…じゃない、私も今気が付いて……」
碇槍を砂浜へ放り投げられた元親は、呆気に取られながらも、慌てふためく元就
の顔を、物珍しそうに見つめ返す。
「貴様らも、こやつの傍に付いていながら、今まで何をしていた!ええい!」
「うわぁっ!?」
周囲に喚き散らした後で、元就は有無を言わさず元親の身体を抱き上げた。
毛利家当主のうろたえぶりと、その奥方の様子に、事態を察知した長曾我部と毛
利の兵や家臣たちから、歓声とどよめきが沸き起こる。
「お、下ろして元就!危ないから!」
「危ないのは、どちらだ!いいから暴れるな!歩き難くてかなわん!」
「だから、頭脳派の人間が無理するなって、いつも言ってんだろーっ!」
自分を抱えたまま屋敷へと急ぐ元就を、元親は慌てて止めようとするも、ずんず
んと歩き続ける元就には、まるで効き目がない。
「お、お待ち下され元就様ー!そのような歩き方では、かえって元親様のお身体
に負担が……!」
「誰か、医者呼んで来い医者!早くあのオクラの暴走を止めやがれ!お嬢ーっ!」
暫し様々な言葉が周囲を飛び交っていたが、やがて大きな笑い声が、高く高く空
へと吸い込まれていった。
振り返ると、その声の主が、物凄い勢いで自分の傍へ走り寄ってきたのだ。
「このような重いものなど持つな!何故、黙っていたのだ!」
「え?ええと…俺…じゃない、私も今気が付いて……」
碇槍を砂浜へ放り投げられた元親は、呆気に取られながらも、慌てふためく元就
の顔を、物珍しそうに見つめ返す。
「貴様らも、こやつの傍に付いていながら、今まで何をしていた!ええい!」
「うわぁっ!?」
周囲に喚き散らした後で、元就は有無を言わさず元親の身体を抱き上げた。
毛利家当主のうろたえぶりと、その奥方の様子に、事態を察知した長曾我部と毛
利の兵や家臣たちから、歓声とどよめきが沸き起こる。
「お、下ろして元就!危ないから!」
「危ないのは、どちらだ!いいから暴れるな!歩き難くてかなわん!」
「だから、頭脳派の人間が無理するなって、いつも言ってんだろーっ!」
自分を抱えたまま屋敷へと急ぐ元就を、元親は慌てて止めようとするも、ずんず
んと歩き続ける元就には、まるで効き目がない。
「お、お待ち下され元就様ー!そのような歩き方では、かえって元親様のお身体
に負担が……!」
「誰か、医者呼んで来い医者!早くあのオクラの暴走を止めやがれ!お嬢ーっ!」
暫し様々な言葉が周囲を飛び交っていたが、やがて大きな笑い声が、高く高く空
へと吸い込まれていった。
瀬戸内には、日輪の恩恵を受けた男と、海と風に愛された女がいる。
交わる筈のなかったふたりは、ひょんなとこから邂逅し、やがて互いに惹かれ合
い、そして結ばれた。
そんなふたりの間に芽生えた新しい命の行方は未だ定まっていないが、おそらく
幸多きものであるに違いない。
まるでそれを暗示しているかのように、彼らに降り注ぐ陽光と、彼らを取り巻く
海風は、何処までも優しく、そして穏やかだった。
交わる筈のなかったふたりは、ひょんなとこから邂逅し、やがて互いに惹かれ合
い、そして結ばれた。
そんなふたりの間に芽生えた新しい命の行方は未だ定まっていないが、おそらく
幸多きものであるに違いない。
まるでそれを暗示しているかのように、彼らに降り注ぐ陽光と、彼らを取り巻く
海風は、何処までも優しく、そして穏やかだった。
─了─
【追記】
その後。
元親は、元気な男児を出産したのを皮切りに、総勢8人もの子宝に恵まれた。
その子供達は、毛利や長曾我部をはじめとする瀬戸内諸大名の絆を、更に強いも
のへと結びつける偉業を成し遂げていくのである。
……もっともそうなる前に、親の遺伝子を受け継ぎ過ぎた、妙に新し物好きの息
子が、未だ九州に潜伏する宗教団体に、危うく『美少年教祖』として祀り上げら
れそうになったり、これまた親の遺伝子を色濃く受け継いでしまったが故に、毛
利家の父娘の間で、壮絶な内乱(という名の親子喧嘩)が勃発したりもするのだ
が、それはまた別の物語である。
――――――――――
その後。
元親は、元気な男児を出産したのを皮切りに、総勢8人もの子宝に恵まれた。
その子供達は、毛利や長曾我部をはじめとする瀬戸内諸大名の絆を、更に強いも
のへと結びつける偉業を成し遂げていくのである。
……もっともそうなる前に、親の遺伝子を受け継ぎ過ぎた、妙に新し物好きの息
子が、未だ九州に潜伏する宗教団体に、危うく『美少年教祖』として祀り上げら
れそうになったり、これまた親の遺伝子を色濃く受け継いでしまったが故に、毛
利家の父娘の間で、壮絶な内乱(という名の親子喧嘩)が勃発したりもするのだ
が、それはまた別の物語である。
――――――――――
漸く終わりでございます。ここまでお付き合い頂き、本当に有難うございまし
た。(無駄に長い文で申し訳ございません)
タイトルの元ネタはアンデルセンの某童話の主人公達の名前ですが、その童話
作家が生まれたのは戦国時代どころか19世紀じゃねぇか、などという突っ込み
は、どうかなしでお願い致します。
またいつかお目にかかれる事を密かに願いつつ、今後は他の職人の皆様による
秀作・良作をワッフルしたいと思います。
ワッフルワッフルワッフル∞ー!
た。(無駄に長い文で申し訳ございません)
タイトルの元ネタはアンデルセンの某童話の主人公達の名前ですが、その童話
作家が生まれたのは戦国時代どころか19世紀じゃねぇか、などという突っ込み
は、どうかなしでお願い致します。
またいつかお目にかかれる事を密かに願いつつ、今後は他の職人の皆様による
秀作・良作をワッフルしたいと思います。
ワッフルワッフルワッフル∞ー!




