大きくてよく熟れた柿は、確かに俺好みに実がしまっていて、かじったらカリカリと音がしそうなほど
硬かった。
振り返った目線の先の柿狩人は、濃くなった夕日にくしゃくしゃの髪を染めながら、けろりとした顔で
自分用の柿を選んでいた。
硬かった。
振り返った目線の先の柿狩人は、濃くなった夕日にくしゃくしゃの髪を染めながら、けろりとした顔で
自分用の柿を選んでいた。
ふいに胸の奥から、苦しいような、怖いような、何かひどくいたたまれない気持ちが湧き上がった。
目の前の人に気づかれないよう、手の中の柿を強くつかんで押さえ込む。
目の前の人に気づかれないよう、手の中の柿を強くつかんで押さえ込む。
だが、そんな俺のしみじみ気分を吹き飛ばすような主の次の行動に、俺は持っていた柿を振り上げて
またしても怒鳴り声を上げることになった。
「旦那!落ちてたもん洗いもしないで丸かじりしない!」
「なにを言う!柿は丸かじりが一番うまいのだぞ!」
欠片を飛ばしながら叫ぶ旦那の口元を手ぬぐいで押さえつけ、かじりかけの柿を取り上げる。
一口で半分いっちゃうなんて、どんな口してんだこの人。
「だからって皮くらい剥きなさい!行儀悪いにも程があるよ!ああまったく、庭で大声は上げるし槍は
振り回すし、戦でもないのにまた男衣装着てるし!」
「ひゃにをふうう!」
「もー、わかってんの?あんた女の子でしょうが!」
一日一度は出る俺の小言に、旦那の顔がまるで渋柿でもかじったかのようにしかめられる。
顔しかめたいのはこっちだよ、と思いながら、俺はため息をついてその場に座り込んだ。
またしても怒鳴り声を上げることになった。
「旦那!落ちてたもん洗いもしないで丸かじりしない!」
「なにを言う!柿は丸かじりが一番うまいのだぞ!」
欠片を飛ばしながら叫ぶ旦那の口元を手ぬぐいで押さえつけ、かじりかけの柿を取り上げる。
一口で半分いっちゃうなんて、どんな口してんだこの人。
「だからって皮くらい剥きなさい!行儀悪いにも程があるよ!ああまったく、庭で大声は上げるし槍は
振り回すし、戦でもないのにまた男衣装着てるし!」
「ひゃにをふうう!」
「もー、わかってんの?あんた女の子でしょうが!」
一日一度は出る俺の小言に、旦那の顔がまるで渋柿でもかじったかのようにしかめられる。
顔しかめたいのはこっちだよ、と思いながら、俺はため息をついてその場に座り込んだ。