「世話になったお前には悪いが」
はっきりと佐助の目を見て言う。いつかと同じ透きとおった硝子細工のような瞳は、
純粋なかすがをそのまま表していて、それを向けられた佐助は少し悲しくなり、視線を
横にそらした。
「私には甲斐の虎を倒す道しかない」
「だから、私にはもう構うな」
そう、と佐助は無表情に答えた。それは無理だと内心思ったが、顔には出さなかった。
かすがの決意は想定の範囲内だった。
「でも、傷が治るまでは面倒見るよ」
拾った責任があるから、と佐助は言い、食事の準備のために立ち上がる。
「……お前は馬鹿だな」
部屋を出て行く佐助の背中に向かって、悲しそうにかすがが小さく呟く。その声は佐
助にも聞こえていたが、聞かなかった事にして、かまどがある外に向かった。
その日から、かすがは自分から食事を摂るようになった。佐助はその事が嬉しくもあ
ったが、苦しくもあった。いつまで彼女はあれにとらわれ続けなければいけないのだろう。
時間が経てば忘れるのだろうか、と考えて佐助は首を横に振った。同じ様に自分だっ
て幸村に囚われている部分があるという自覚は佐助にもある。だから時間が解決して
くれるというのは望みが薄いことも分かっていた。回復すれば、かすがは目的を果たそ
うとするだろう。武田の人間として、それは防がなくてはならない。災いの芽は早めに摘
み取らなければならない。しかし、だからといって佐助はかすがを手放す気にもなれない
でいた。
かすがは見る見るうちに回復していき、簡単な身の回りの事が出来るようにまでなっ
た。時間が迫っている。何か手を打たなければいけないと思っていた矢先の出来事だ
った。
はっきりと佐助の目を見て言う。いつかと同じ透きとおった硝子細工のような瞳は、
純粋なかすがをそのまま表していて、それを向けられた佐助は少し悲しくなり、視線を
横にそらした。
「私には甲斐の虎を倒す道しかない」
「だから、私にはもう構うな」
そう、と佐助は無表情に答えた。それは無理だと内心思ったが、顔には出さなかった。
かすがの決意は想定の範囲内だった。
「でも、傷が治るまでは面倒見るよ」
拾った責任があるから、と佐助は言い、食事の準備のために立ち上がる。
「……お前は馬鹿だな」
部屋を出て行く佐助の背中に向かって、悲しそうにかすがが小さく呟く。その声は佐
助にも聞こえていたが、聞かなかった事にして、かまどがある外に向かった。
その日から、かすがは自分から食事を摂るようになった。佐助はその事が嬉しくもあ
ったが、苦しくもあった。いつまで彼女はあれにとらわれ続けなければいけないのだろう。
時間が経てば忘れるのだろうか、と考えて佐助は首を横に振った。同じ様に自分だっ
て幸村に囚われている部分があるという自覚は佐助にもある。だから時間が解決して
くれるというのは望みが薄いことも分かっていた。回復すれば、かすがは目的を果たそ
うとするだろう。武田の人間として、それは防がなくてはならない。災いの芽は早めに摘
み取らなければならない。しかし、だからといって佐助はかすがを手放す気にもなれない
でいた。
かすがは見る見るうちに回復していき、簡単な身の回りの事が出来るようにまでなっ
た。時間が迫っている。何か手を打たなければいけないと思っていた矢先の出来事だ
った。




