うすぐらい闇の中でも、謙信が顔色を変えたのが判った。
それは不犯の聖将と言われる謙信の反応ならば、別段おかしいとも思わないが、かすがは夜に慣れた目で、謙信の青ざめた表情を見る。
いつになく余裕の無い表情で、謙信が緩慢ではあるが小さく首を振った。
「かすが、そなたの願いなら、できるならば聞いてやりたいと思っています。けれど」
小さな声。
「それは、かすがが汚らわしいからなのですか? 」
謙信が違う、と首を振る。かすがに遮られいてた謙信の手が、かすがの手首を掴み返した。
「そなたに、そなたに黙っていたことは悪く思いますが、わたくしは…」
緩慢に動くその手に無意識に力がこもる。視線を逸らして目を伏せていた謙信が次の言葉を話そうと意を決して口を開いた。
「存じております」
それをまた、かすがが遮った。
「何を」
「謙信様が女人であることは、かすがは存じております」
謙信は口をぽかんと開けたまま呆然とかすがを見ている。
かすがの片方の手が、ゆっくり謙信の黒い髪を掻き分ける。できるだけそっと、壊れ物を扱うように謙信の額に口付けた。いつもは謙信がそうしてくれるような、優しい、甘い額への口付け。それでも、謙信が身震いしたのが判った。
「なぜ」
謙信の手が、髪を弄ぶかすがの手に伸びてくる。何故、と呟いた声は、小さく低く、唇がわずかに動いたようにしか感じられなかった。
かすがは、もう一度額に口付ける。
「謙信様、かすがにはわかります」
香のくどい程の香りとは違う、謙信の甘やかな香りがした。
かすが×謙信(女)3
それは不犯の聖将と言われる謙信の反応ならば、別段おかしいとも思わないが、かすがは夜に慣れた目で、謙信の青ざめた表情を見る。
いつになく余裕の無い表情で、謙信が緩慢ではあるが小さく首を振った。
「かすが、そなたの願いなら、できるならば聞いてやりたいと思っています。けれど」
小さな声。
「それは、かすがが汚らわしいからなのですか? 」
謙信が違う、と首を振る。かすがに遮られいてた謙信の手が、かすがの手首を掴み返した。
「そなたに、そなたに黙っていたことは悪く思いますが、わたくしは…」
緩慢に動くその手に無意識に力がこもる。視線を逸らして目を伏せていた謙信が次の言葉を話そうと意を決して口を開いた。
「存じております」
それをまた、かすがが遮った。
「何を」
「謙信様が女人であることは、かすがは存じております」
謙信は口をぽかんと開けたまま呆然とかすがを見ている。
かすがの片方の手が、ゆっくり謙信の黒い髪を掻き分ける。できるだけそっと、壊れ物を扱うように謙信の額に口付けた。いつもは謙信がそうしてくれるような、優しい、甘い額への口付け。それでも、謙信が身震いしたのが判った。
「なぜ」
謙信の手が、髪を弄ぶかすがの手に伸びてくる。何故、と呟いた声は、小さく低く、唇がわずかに動いたようにしか感じられなかった。
かすがは、もう一度額に口付ける。
「謙信様、かすがにはわかります」
香のくどい程の香りとは違う、謙信の甘やかな香りがした。
かすが×謙信(女)3