「う、ああ……ああぁ、いや、いやァ!」
濃姫はその場にしゃがみ込むと、膣内の精液を掻き出すように指を突っ込み、何度も出し入れを
繰り返した。
ぐちゃぐちゃと淫らな音が牢内に響く。
仰ぐように首を反らせ、瞳の中に屈辱感と絶望を宿して泣き叫んだ。流れ落ちる涙が、青ざめた
頬の色をことさら青く見せた。
「ふぁあっ……ああん、いやよっ、いや!」
じめじめとして黴臭く、暗く狭い牢獄で慟哭する女の姿は、青白い肌に凄絶な美しさをたたえてい、
肩を流れる黒い髪がそれを引き立たせる。
地面に突き刺さったままの簪の飾りが、持ち主の悲運を嘆くように風に揺れて音を立てた。
これ以上の追い討ちをかける気など、初めからなかった。
濃姫のわめく声に辟易としながら、信玄は静かに目を閉じた。
濃姫はその場にしゃがみ込むと、膣内の精液を掻き出すように指を突っ込み、何度も出し入れを
繰り返した。
ぐちゃぐちゃと淫らな音が牢内に響く。
仰ぐように首を反らせ、瞳の中に屈辱感と絶望を宿して泣き叫んだ。流れ落ちる涙が、青ざめた
頬の色をことさら青く見せた。
「ふぁあっ……ああん、いやよっ、いや!」
じめじめとして黴臭く、暗く狭い牢獄で慟哭する女の姿は、青白い肌に凄絶な美しさをたたえてい、
肩を流れる黒い髪がそれを引き立たせる。
地面に突き刺さったままの簪の飾りが、持ち主の悲運を嘆くように風に揺れて音を立てた。
これ以上の追い討ちをかける気など、初めからなかった。
濃姫のわめく声に辟易としながら、信玄は静かに目を閉じた。
まぶたの裏に風景が浮かぶ。
懐かしい甲斐の景色だった。
四方を囲む山々と、豊かな川。愛馬の背で見た、空の高さ。
思い浮かぶ景色のひとつひとつがもう二度と帰れない場所だと思うと、いっそう郷愁の念が
湧き上がった。
鮮やかな色彩で浮かび上がる風景は、五感のすべてを刺激する。
とりわけ嗅覚が冴えてき、脳を強く揺さぶった。
風景はやがて背景となり、信玄は見知った者の懐かしい顔を次々と思い出していた。
そして、気づいた。
体力も気力も尽きそうな、ある意味瀕死の状態ともいえる信玄の体に、じわじわと時間をかけて
満ちてくるものがあった。
名状しがたい力が、魂を揺さぶる炎の色を放って湧き上がる。
ドクンドクンという心臓の鼓動が、体内を通って耳に届いていた。
不可思議な活力が心身に満ちて、飽和し始めた。
懐かしい甲斐の景色だった。
四方を囲む山々と、豊かな川。愛馬の背で見た、空の高さ。
思い浮かぶ景色のひとつひとつがもう二度と帰れない場所だと思うと、いっそう郷愁の念が
湧き上がった。
鮮やかな色彩で浮かび上がる風景は、五感のすべてを刺激する。
とりわけ嗅覚が冴えてき、脳を強く揺さぶった。
風景はやがて背景となり、信玄は見知った者の懐かしい顔を次々と思い出していた。
そして、気づいた。
体力も気力も尽きそうな、ある意味瀕死の状態ともいえる信玄の体に、じわじわと時間をかけて
満ちてくるものがあった。
名状しがたい力が、魂を揺さぶる炎の色を放って湧き上がる。
ドクンドクンという心臓の鼓動が、体内を通って耳に届いていた。
不可思議な活力が心身に満ちて、飽和し始めた。




