2009年8月28日 14時01分
「底を打った」という政府の景気判断とは裏腹に、悪化を続ける雇用情勢。各党のマニフェストには失業や非正規労働者対策が並ぶが、過労死やサービス残業、賃金カットといった正社員の労働条件の問題は、争点としてかすみがちだ。サラリーマンの街といわれる東京都港区新橋の公園で、過酷な労働に苦しむ正社員に政治に望む声を聞いた。 (橋本誠)
「いつ倒れてもおかしくない。本当に大丈夫じゃないんですよ」
猛暑の熱気が残る午後八時、公園の砂場で夕飯のコンビニ弁当を食べていた三十代男性=千葉県=が真顔でつぶやいた。十年ほど前、サービス業の会社に入社。いまは人手不足で残業が百時間を超えている。
「今日は上司に『帰れ』と言われて退社したが、仕事は山積み。自分がうつ病じゃないかと思うときもある。北欧のように休みを増やしてほしい。でなければ、スムーズに転職できる環境をつくってほしい」
公園の花壇に座っていた横浜市の男性(35)が勤める金融会社は昨年秋の「リーマン・ショック」後、約二十人いた派遣や嘱託社員の大半が解雇された。そのため仕事量は「二、三割増えた」。本給は3~5%カットされ、夏のボーナスも一カ月分だけ。「給料を上げて、というより維持してほしい」と望む。
公園は昼間でも子どもより大人が多い。高速道路のメンテナンス会社に勤める男性(60)は「バブル崩壊と(旧日本道路公団の)民営化で、給料が二、三割減った」と嘆く。
会社は十年ほど新規採用なし。「この年でも泊まり勤務がある。深夜に故障があったら、現場に行く。気力、体力の限界」。各党とも長時間労働や過労死防止をマニフェストに盛り込むが、一部の政党を除いて具体性に乏しい。「働ける人の政策は二の次でしょ。収入減でも職があるだけましだよ」とあきらめ顔だ。
◆『解雇恐れ無理重ねる』
完全失業率が過去最悪を更新する中で、正社員の苦境は、労働組合の調査などにも表れている。特定非営利活動法人(NPO法人)労働相談センター(東京都葛飾区)への今年一~七月の相談は、前年同期より19%増加したが、“非正規切り”の進行を背景に、正社員の相談が一割増え、全体の七割を占めた。「長時間労働やサービス残業の相談が増えている」(全国一般東京東部労組の菅野存書記長)という。
首都圏青年ユニオンの山田真吾書記次長は「『派遣社員が二人雇える給料を払っているのだから、二人分働いて当然』と言う経営者もいる」と話す。
弁護士らによる六月の「過労死110番」にも「月二百時間以上残業し、うつ病を発症」(市役所職員)といった声が相次いだ。玉木一成弁護士は「正社員は解雇されないために、耐えられる限り無理をする。中高年は脳や心臓の疾患を、若い人はうつ病などを発症する」と説明する。東京管理職ユニオンが七月に行った「正社員切りホットライン」でも、退職強要やパワハラなどの相談が多く寄せられた。同ユニオンの鈴木剛さんは「今回の選挙で出ている正社員の救済策は弱い。安易に解雇されないよう、解雇の条件を法律で定めるべきだ」と注文する。
(東京新聞)
ソース:東京新聞(TOKYO Web) http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2009082890140123.html