労働者「規制は当然だ」 業界「存亡にかかわる」
民主党が政権公約(マニフェスト)に盛り込んだ、製造現場への派遣や登録型派遣の原則禁止は、社民党、国民新党との3党合意にも盛り込まれた。業界団体は「派遣会社の存亡にかかわる」と警戒する一方、派遣で働く人からは「あまりに不安定な働き方で規制は当然」との声が上がる。(久場俊子)
5000人以上のスタッフが登録する派遣会社(大阪市)の担当者は、深いため息をつく。マニフェストが実現すればスタッフを社員として採用、仕事がない時も給料を払う必要がある。しかし派遣先が人員削減を進める中、「実稼働は登録者の1割程度」という。
業界団体「日本人材派遣協会」(東京)は、規制強化反対を訴える署名を展開、約57万筆を新内閣の厚生労働相に提出する考えだ。また、関西経済連合会も、2日に発表した意見書で、「製造業の海外シフトによる国内空洞化を招き、結果として雇用機会の喪失につながる」と訴えた。
強まる派遣会社や経済界の反発に、労働組合は危機感を抱く。衆院選前に派遣制度について、近畿の主な立候補予定者にアンケートした支援団体「派遣労働ネットワーク・関西」(大阪市)の中村研事務局次長は、「規制を巡っては民主党の候補間でも温度差があった。スピード感をもって法改正を進めないと頓挫する恐れもある」と指摘する。
派遣業界が年間6兆円を超える売り上げを記録する一方、働く者の待遇は改善されず、「ワーキングプア」の温床、とも指摘されてきた。契約解除も横行し、昨年10月~今年9月、職を失ったか、失う派遣労働者は製造業を中心に14万人に及ぶ。昨秋に派遣切りに遭い、住んでいた寮を追い出されて一時、野宿生活を送った大阪市西区の男性(23)は「自分の努力の及ばないところで、ある日突然、仕事と住まいを奪われる。職場での人間関係も希薄で身に着く技術もない。人間らしい働き方とは、とても思えない」と言う。
帝国データバンクによると、2008年の派遣会社の倒産件数は前年の1・5倍の49社、今年は7月末ですでに35社。同社は「業界は『淘汰(とうた)の時代』を迎えている。今は、零細の業者ばかり倒産しているが、規制が強化されれば影響はさらに広がる」とみている。
違法な契約解除、労災隠し、社会保険の未加入……。
派遣が原則自由化された1999年以降、次々と発覚する業界の闇は深い。派遣会社から、「育児や介護を抱える人たちにも職を提供してきた。まじめな会社と悪質業者を一緒にしないでほしい」との主張をよく聞く。もちろん、法令順守に努める派遣会社はたくさんある。派遣で働き続けたい人もいるだろう。
だが、派遣労働者を取材してきて思うのは、「雇用者(派遣会社)と使用者(派遣先)」が別という派遣独特のシステムの負の側面だ。問題が起きても、派遣先は「うちの社員ではない」と責任を逃れ、派遣会社の中には元々、解決する力がないところもある。その結果、泣き寝入りする労働者を数多く見てきた。今後、制度の在り方を巡って派遣先、派遣会社を巻き込んでの議論が起こるだろう。その時、働く者の声を十分に反映してほしい。失われた働くことへの信頼を再び、取り戻すために。
(2009年9月16日 読売新聞)
(2009年9月16日 読売新聞)
ソース:YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/osaka/news/20090916-OYT8T00078.htm