9月25日22時19分配信 毎日新聞
JR福知山線脱線事故を巡る国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(08年10月に運輸安全委に改組)の最終報告書案が漏えいしていたという前代未聞の不祥事。漏えいを働きかけたJR西日本の山崎正夫前社長は25日、記者会見し、顔をこわばらせたまま「多くの方々に心から深くおわびしたい」と謝罪した。ただ、同社取締役の辞任はせず、引き続き被害者対応などにあたる意向を強調した。【鳴海崇、久木田照子、衛藤達生、山田奈緒】
大阪市北区のJR西本社で記者会見に臨んだ山崎前社長は終始伏し目がち。時折ため息を漏らし、手にしたペンを指でさするなど落ち着かない様子で、「情報を知りたいという一念でやったことだが、不適切で軽率だった」と話した。
「ATS(自動列車停止装置)があれば事故は回避できた」などの記述の修正を求めた理由については、「会社として現場が危険だという認識が薄かったため、(ATSがあれば回避できたとの主張が)引っかかった」と説明。他に、日勤教育やダイヤ編成に関しても修正を要求したことを明らかにし、「会社として事故調に提出した意見と同じ内容」と釈明した。「悪いという認識より、早く情報を知りたい気持ちが優先した。守秘義務違反との認識は薄かった」という。
事故被害者からの批判に対しては「ただただ、おわび申し上げたい」と繰り返し、頭を下げた。その上で「企業風土の改革など、今までやってきたことを、(今後も)進めていきたい」と述べ、取締役の辞任など自らの進退にはつながらない考えを示した。
こうした対応について、次女が重傷を負った「負傷者と家族等の会」のメンバー、三井ハルコさん(53)=兵庫県川西市=は「山崎さんが裁判で、問題点を洗いざらい公表することがあるべき責任の取り方だと思う」と話した。次男を亡くした上田弘志さん(55)=神戸市北区=は「山崎さんには『あなたは一生懸命やっている』と言葉をかけたばかりだったのに。裏切られた」。2両目に乗って負傷した小椋聡さん(40)=兵庫県西宮市=は「『軽率でした』で済む問題ではない」と話した。
◇前社長一問一答
記者会見での山崎前社長の主な一問一答は次の通り。
--事故調の山口浩一元委員への働きかけは。
最終報告書ができるまでの段階で、素案的なものを手に入れ、対応を検討した。早く情報を入手し、早く対応したい一念だったが不適切だった。
--接待や土産の意味は。
もてなしや供応のイメージはない。
--渡したものは。
菓子折りと、500系新幹線の模型。
--遺族には「裏切られた」という声がある。
深くおわびしたい。公式に組織間で修正を求めるのは認められているが、個人同士は不適切だった。
--進退は。
ただただ申し訳ないと深く反省し、おわび申し上げたい。今までやってきたことを進めていきたい。
◇「守秘義務違反と認識」山口元委員が釈明
事故調の山口浩一元委員は25日、東京都文京区の自宅前で取材に応じ、山崎前社長への報告書案漏えいを認め、「報告内容を変えられるとは思っていなかった。山崎さんを励ます意味だった」と釈明。山崎前社長から「早く情報がほしい」と相談を持ちかけられて接触し、JR西日本東京本部近くの飲食店で「4~5回会った」と認めた。
前社長は旧国鉄時代からの後輩で「長い付き合い」といい、「山崎さんは事故の後に突然社長となり、社内に味方がいない状態。彼の立場を強め、会社を良くしたかった」と説明。ただし、秘密保持義務違反については「認識はあったし、やってはいけないと思っていた」と話した。
事故調で報告書の修正を求めたことについては「発言が取り上げられる雰囲気ではなく、すぐに言うのをやめた」と釈明した。
事故の遺族には「気持ちを逆なでしたというのであれば、申し訳ない」と謝罪した。【前谷宏】