涙は藍より出でて藍より涙し 過去ログ②

~某住宅街~


謎の少女「茅弦」の行方不明となった父親を捜すべく、エドガーたちは彼女から教えられた自宅の住所を頼りに住宅街に赴いていた。
正午を過ぎていながらもどこか不気味と閑散とした空気感が流れており、住宅に反比例して住人の姿は少ない。そんな中で、彼らはついに目的の場所へと辿り着くのだった。
しかし―――――




白服集団『―――――(とある一軒家。エドガーたちが向かうべき目的の家の前に、数十人の白尽くめの男たちが立ち並んでいた。人は内側を、もう一人は外側を見渡している。その様は張り込みというよりも、過度なほどに誰かの帰りを全力で迎え入れようとしている、いわば不審者そのものであった)』 」

エドガー「……。下校時刻ぐらいにはなってるだろ……(さながらゴーストタウン。人気のない一帯をぐるりと見渡し、空間を支配するやかましいまでの静寂に警戒を強めつつ歩を進め) \ジカンピッッッタッッッッ ブチ/ うるせーなこのアプリ(緑を基調としたUIのナビアプリをスマホの画面ごと閉じ、眼の前の住宅を見上げる。再びスマホを開き、マップアプリの画像と照らし合わせ再度該当の住所であることを確認。当然、それらの人影を視認し) こういうのは予定通りっていうのが世も末だよ(悪態をついた) 」

白服集団『………(エドガーたちの存在に気づいた集団が一斉に見やる。寧ろ、今この場には自分たち以外の余計な人物は存在しない。全員が一点集中するようにその視線を浴びせる。無言且つ無の表情で。だが、彼らが目的のものでないと知った時、全員の眼差しから一斉にハイライトが消失した―――)』

スキンヘッドの男「―――― どうした。(その時、その一軒家から一人の男がゆっくりと飛び出てくる。彼らと同じ白尽くめの衣装を身に纏う褐色肌の男性。無機質な取り巻きの男たちとは異なり、"穏やかな表情"をしているその男は、道を開ける男たちを通り過ぎて彼らの前にその姿を曝け出す。)…………この『ご家庭』の親戚か、はたまたお知り合いかな。(首を微かに傾げながら問いかける) 」

エドガー「――――(下手なごまかしが通用しない相手だな……。それ以前にまた表情の違和感……)ニッコリ(こちらも穏やかな笑みと会釈で返す) いえ、こちらの"先生"から物品の委託を請け負っている業者の者です。そちらは? 」

シャニ「てめーーーらーーーこそなんだあ゛ーーーーー???答えによっちゃやっつけちゃうぜ?このオニーサンがよ(ほぼ体重を感じさせない状態でエドガーの肩の上に乗っかり、そう言って指を指す) 」

スキンヘッドの男「………「先生」……?ああ、そうか…『博士』の…(なるほど、と顎元を摩る)……いやぁ、失敬。道を遮ってしまってすまない。(シャニの野次にも"穏やかな表情"で応える)…我々は『博士』が属している『機関』の人間でね。悪いが、今『博士』は"留守"にしている。預かりものなら、この私が受取代行人になろう。(と、エドガーの言葉を信じているのかどうかは定かではないが、手を差し出した) 」

エドガー「(想定内の解答。ここで事を荒立てる理由は互いに無い) 留守?そうですか、それは困りましたね。(顎に手を当てデジタル伝票を確認するような動作で端末に一瞥をやる) 品質管理の観点からご本人様に玄関口でお渡しするのが弊社の規約でして。ああでもそっか……同業者と理解れば融通は効くし……うーーーん……(腕を組んで若手の、いい加減な社員を演じ) ああそうだ、もしよろしければ社員証か何か、身分証明書を確認できますか? 同僚の方であれば商品の保管方法もご存知でしょうから(ニッコリ) 」

ヒロ「………こいつら、只者ではないな(ヌッと現れる) 」

シャニ「(チイッ オレの野次じゃ動じもしねぇよぉ オレ考えるのとか苦手だし 任せるかこの……江戸川?みたいな名前のオニーサンに) 」

スキンヘッドの男「………………(だがここで、この男もまた閉口。穏やかさを保っている表情…しかし、その不気味な"表情"に敏感なエドガーが気づく点があった。男の「目」が、笑っていない。否…それはあたかも"憤り"を孕んでいるかのように――――)――――ああ、すまないね。生憎だが今、身分を証明するものを持ち合わせていないのだ。ならば致し方ない。また後日改めて来てくれ。(そう言って彼らを突き返そうとする) 」

エドガー「(ヒロ、ステイ、ステイ……)(内心がっつり冷や汗をかいている)…………(表情筋の抑制、か?感情まで何かの影響を受けている訳じゃないのはあの子も同じだったか……) ――――そうですか、お手数をおかけしました。先生には私から直接未受取の件でご連絡させていただきます。それでは   カツン (深々と一礼した拍子に、端末をスキンヘッドの男の爪先へ"落とす" 画面には茅弦の描いた物を"模写"し、自身の筆跡に描き変えた『目』の絵が表示されていた。 それを散漫な動作で拾い上げようとし) ああっ!すみません!!いやぁ不注意で…… ねっ(上目遣い。笑顔だが、喉笛に食いかからんばかりの狼の目を向け) 」

ウェルド「(一行の先頭に踊りだし、後ろにやった面々を軽く片手で抑えながら)ああ、どうも……身分を証明しているものはお持ちでない、と……であれば、そうですね……直接細かくお話をお伺いしたいのですが……少し時間を頂いても?(男の感情にまるで気付いて居ないかのように、へらへらとした営業スマイルを浮かべ) 」

スキンヘッドの男「――――――!?(油断していた―――踵を返そうとするエドガーが滑り落とした映り込んだ『それ』に、保たれていた穏やかさが驚愕に崩れる。『それ』が何を意味するのか、一目で理解したかのように…)……………ああ、いや…お気になさらず。………だが、申し訳ない。悪いが貴方がたには個人的に大事な要件ができた。(両腕を背後に組み直し、上半身を前のめりに傾けて表情を隠す。そして、再び顔を上げた頃には――――) 」

スキンヘッドの男「―――――― お前たちを生きて返すわけにはいかなくなった ("憤怒"の眼光が、表に出た――――) 」

白服集団『 バッ   ババッ  バッ    バッ   (男の一変した声と共に十数名の男たちが本性を表し、一斉に長袖から飛び出したナイフを手に取ると、先頭のエドガーを過ぎ去り、その背後にいたヒロやシャニ、ウェルドたちに襲い掛かったのだった)』 」

スキンヘッドの男「……『我々』の存在を何処で嗅ぎつけたかは知らないが…真相の一片を握っているであろうお前たちには消えてもらう。(エドガーに向かって悠然とした足取りで歩み寄っていく。握り込めた拳に、殺意を込めて――――)」

スキンヘッドの男 → マッド「 "藍"に身を染める者―――― "怒"(エルガー)の『 マッド・ロドル 』 押して参る  」


――― Vs. 【 藍の機関 】 マッド ―――




シャニ「へっ、それはそれで分かりやすいじゃん。こっちには江戸川とヒロトとあとなんかおまわりさんがいるんだぜ(エドガーの肩から座ったままの姿勢で飛び上がり、猛回転しながら地面へ着地、空を撫でるように動作を起こすと)来いよ、てめ゛ーら!!”八極”を見せてやるぜ(”震脚”。地面を踏み砕くような力強い踏み込みと共に、その特徴的な目をぎょろりと向けて構える) 」

エドガー「 黒に沈んでもらう、色を残せるほど炎はユーモアがないんでな  ボ ウッ (徐ろに手袋を後方へ接ぎ捨て、露になった鉄拳に蒼炎を灯す。後方へ向かった集団には一瞥をやらず、マッド一点へ的を絞り) コツ   コツ   コ  ツ  (ゼロ距離、僅かでも前進すれば身体同士がぶつかり合う距離まで詰め、炎を宿した眼光を正面からぶつけ無言の布告を返す) ヒュ  ッ  (第一関節を曲げ、"肩で放つジャブ"を脇腹目掛け撃ちに掛かった) 」

白服の男A「 ヒ ュ バ ァ ッ ! (まずは一人目―――シャニに向かってナイフを突き出した男。無の表情保ちながらも無駄のない洗練されたステップを踏み込みながらシャニを翻弄しつつ、確実に死角から突き刺そうとその凶刃を振るう) 」

マッド「  ゴ ォ゛ ッ゛ ! (エドガーの放つジャブ、それが脇腹に目掛けてくるのを予測し左手でがっちりと受け止めにかかる)―――― ン゛ ゥ゛ ッ゛ ! ! (そして空いた右腕を後ろへと振り抜き、無骨ながらも覇気を込めた剛拳のストレートを打ち込んで反撃に出る) 」

白服の男B&C『 シ ュ バ ッ! / バ バ ッ ! ! (二人の男がウェルドを挟み撃ちする。一方は蹴りを、もう片方は拳で殴りかかってくる)』

エドガー「  ヅ ァ" ッ  !!  (3フレーム遅れながらも同じく右の鉄拳を振りかぶり、同モーションの右ストレートを放つ。貯め時間、腕力、骨格の差。威力は此方が劣るのが自明の理、しかし……) ゴ ガギィンッッ  (拳と拳がかち合い拮抗する。ストレートとは読んで字の如く直線上の突き。そこには必ず力の"軸"が存在し、それを抑えるようにして的確に力をぶつければ) ギ ギギギギ……ッッ(技術で腕力の差を凌駕し得る) 」

ウェルド「残念です、結局こうやって荒事になってしまうとは……エドガーさん!腕が立つようですね、そちらは任せますよ……!!(蹴りを繰り出してくる白服Bに向かって踏み込み、間一髪で片割れの拳を回避しながら白服Bの蹴りを抱える様にして止め……)よい……っしょ!(男の首に手刀を叩き込み、その勢いでもう一人に向けて投げ飛ばす) 」

マッド「ギ ギギ ギギ…ッ―――――ッ!?(確実に、時間をかけて力を込めたエドガーについに拳と拳の穿ち合いにまかされ、後方へと退くように殴り飛ばされる) フ ォ ン ッ … ―――― ド ッ ギ ン ッ ! (その場で右拳を振り払うと、その拳から右腕の関節までが黒く変色し、硬質化する。“アンビション”である) ン゛ ェ゛ ァ゛ ッ゛ ! ! ( ッ ボ ゴ ォ ァ ァ ア ン ! ! ! )(漢の威勢ある叫びと共に振り抜かれた拳がアスファルトの地盤へと炸裂し、そこから生じた亀裂がエドガーに迫る) 」

白服の男B&C → D&E『グハァ…! / チィ…ッ!!(ウェルドに一蹴された二人と入れ替わるように、更にもう二人組が襲来。今度は両者の手にはナイフが握りしめられ、息の合ったコンビネーションで同士討ちにならないようにウェルドへの連続斬撃をしかけながら進撃する)』

ヒロ「……(あたりを見据える)…そこだ!(迫りくる白服に土弾を連射) 」

エドガー「!!(またあの技術か。被ダメージ軽減も軽快するべきだな……) 滅茶苦茶やりやがって……!(サイドステップを踏み亀裂とそれに伴う衝撃波を回避。住宅2階バルコニーの手すりを足場に駆け抜け、飛び降りると同時にカーブミラーの支柱に掴み掛かり)ーーーラァッ!!(それを軸に二度、三度と回転、遠心力を乗せた踵蹴りマッドの首目掛け振るう) 」

シャニ「いぃーいこと教えてやるぜ……八極拳はな……(その外見の印象から信じられないほど、踏み込みから緩やか、滑らかに、”理合”に満ちた動きへと移行する。その異様なまでの身体能力を、的確な所作で振り回す。固められた拳が背を向けながら振りかぶられ)ず あ゛ああ゛ッ!!!(空を殴り砕く。死角へと回り込んだ男に向けて、”八極”の如き拳が叩き込まれる。たったそれだけの一撃で、爆薬が炸裂した時のような爆音を、置き去りにされた空気が掻き鳴らす。たった一撃。されど、それだけで充分な八極、大爆発であった) 」

マッド「―――― ズ ッ ガ ア ア ァ ン ッ ! !(頭上から襲来するエドガーの踵お年が首元へ見事に直撃。ここで苦悶の表情を浮かべるはずだが――――)――――― なかなか、やるな。一体『誰』の差し金だ?(―――表情は依然としてあの違和感のある穏やかさを表現。一時的に空中停止したエドガー、自身の首元にかけられた彼の脚を鷲掴むと――)――― ン゛ ン゛ ン゛ ッ゛ ! ! (後方へと豪快に投げ飛ばした) 」

白服の男A「 ぐ ゥ゛ ッ゛ ? ? ! ( ズ ガ ァ゛ ア゛ ン゛ ッ゛ ! ! )(死角から迫ったにもかかわらず、その不意討ちを意に介さないシャニの拳が顔面にめり込むように炸裂。音を置き去りながら一直線上に凄まじい速度で大気を貫きながら、その果てに遭ったコンクリート壁へと直撃。貫きながら瓦礫となったそれらと共に崩れ落ちた―――) 」

白服の男F「キィンッ、カァンッ!(ヒロの土弾をナイフでいとも容易く切り捨てると…) シュバァッ!! (反撃の横薙ぎを繰り出して蹴散らす) 」

白服の男G&H『 ヒ ュ ハ ゙ ァ ッ ! ! (今度は二人がかりでシャニを急襲。ひとりはスライディングによる牽制、もう一人がその隙を突くかのような飛び膝蹴りをシャニへと繰り出そうとする)』

エドガー「(痛覚抑制……いや、単純に手応えが浅いーーーーーッ)  ダ     ァ ン   ッッ ッ  (殆ど叩きつけるに等しい投げ。全体重、速度、相手の腕力、それらが乗算されコンクリへ激突。通常骨の二三本では済まないダメージが通るが) ダンッッッ(後頭部に腕を回し咄嗟に受け身を取り、後転して間合いを計り直し再度ボクシングの構えを釣る)……(一瞬、視界がぼやけ平衡感覚が崩れた。殆ど衝撃は潰したがそれでも軽視できないダメージに目を細める) 聞き出してみな――――  シッッッ(間合いが離れているにも関わらずその場でジャブを数発放つ。拳の先端の空間が歪み…… ) 」


ヴォッッッ(刹那的閃光。直線上に伸び即消する衝撃波と"押し出された空間"が不可視の弾丸となって、マッドの上半身へ機関銃のように襲いかかる)


ウェルド「ヒュッ―――ガギィン!!!ガン!!ガン!!(居合抜きの様に特殊警棒を抜き放ち、白服の男たちのナイフを弾き、二人の連続攻撃を事も無げにいなし続け……)光物まで出して来て、随分やる気を出してくれているようですが……!!ビュゥッ! !! (一瞬の隙を付き、"気"を込めた回し蹴りを放ち、男達の脇腹をえぐりにかかる) 」

マッド「―――! ( ”焦走(ヴィント)” )―――― シ ュ オ ン ッ ! (前方から押し寄せる重圧の如き衝撃波を前に危機感を咄嗟に感知すると、宛ら瞬間移動と見紛うほどの敏速で姿を消すことで回避) ギ ュ オ ン ッ ―――― グ ル ン グ ル ン グ ル ン グ ル ン … … ギ ュ ゥ ウ ッ … ! (再び姿を荒すと同時に、自身の手元に転送された白い刃を持つ戦斧、それを片手で華麗に振り回しながら握りしめる)――― ン゛ ゥ゛ ッ゛ ! ! ! ( ズ ォ オ ン ッ ! ! )(勇猛な構えから勢いよく獲物をエドガーへと振りかぶった) 」

白服の男D&E『 ン ギ ィ゛ … ッ゛ ! ! ?(ウェルドの回し蹴りが脇腹に痛烈な一撃となって炸裂。苦悶の表情を浮かべながらも、すぐに態勢を整え直す)……ッ! / ……ッハ! (ナイフを逆手に持ち直した状態で繰り出すアクロバティックな白兵戦に躍り出て、今度はフェイクを交えたコンビネーションアタックを仕掛けていく)』

エドガー「(上体を海老反りに、顎から上をすっ飛ばされる斬線ギリギリを回避、前髪の破片が舞う。) シ ッ !!(そのまま全身を地に接触する寸前に浮遊させサマーソルトキックを繰り出し、マッドの獲物を蹴り上げる) ト  ン  ヒュ   オッ(着地後硬直なしに鋭利な残光の円を残す回し蹴りをマッドの鳩尾目掛け振りかぶる) 」

シャニ「学習ーーー、しねえ゛なーーーー……(スライディングと飛び膝蹴り。下段と上段の、隙を無理矢理作りだすようなコンビネーションにも一切動じない。それが薬で抑制された感情ゆえか、それとも、達人の如き明鏡止水か)ずあ゛ッ!!!!(震脚。脚を崩そうとするスライディングをその予備動作だけでストンピング。相手の足を上から叩き折る。同時にそれはただの”予備動作”でしかない。強烈な踏み込みはそのまま、飛び膝蹴りを放つ相手への反撃の布石と化した。ボディチェック。踏み込みにより全身が空を押し出しながら飛び膝蹴りを放った男へと躍り掛かる。背中を使ったコンパクトな体当たり。即ち、八極の鉄山靠) 」

マッド「 ズ ガ ァ゛ ア゛ ン゛ ッ゛ ! ! ! (斧を上空へと蹴り飛ばされた挙句、鳩尾に強烈な回し蹴りが直撃する。今度こそ崩れるかと思われたが、やはり、びくともしていない。腕に纏ったアンビションのようなものは纏っていないにもかかわらず、だ――――)―――― “弓虚(プファイル)”   」


フ ォ ン フ ォ ン フ ォ ン … キ ュ ガ ァ ァ ァ ア ア ア … ッ ! !(エドガーに蹴り飛ばされたマッドの戦斧が回転しながら宙を舞う。だが―――) ヒ ュ ド ド ド ド ド ド ド ァ ッ ! ! ! (―――男の口上と共に、空へと舞い上がった戦斧が眩く発光。太陽の如き輝きを帯びたそこから、光の礫が四方八方へと飛散するかのように降り注がれた。光の礫は地盤を抉り削る程の破壊力を有し、まともに直撃すれば一たまりもない威力を物語っていた―――)


白服の男G&H『ぐぎゃあぁッ…!? / がァ…ッ!!(シャニによる得体の知れない体術を前に二人同時に成す術もなくあしらわれ、悲鳴を上げながらそれぞれ倒れ伏していく―――)』 」

ヒロ「………よっと(横薙ぎを土の刀で弾く)そらっ!(もう一度至近距離から打ち込む) 」

ウェルド「(大きな脅威となる程ではない、が……少なくとも素人ではない、それなりに動ける……こちらの動きを見て、戦い方を変えられる程度に)痛いんじゃないですか?無理しなくていいと思いますが、ね……(フェイクを交えてのコンビネーションには付き合わず、後方へのステップを繰り返して後ろへと避け続け……)じゃあ、ギアを一つ上げていきましょうか(後ろへと下がり続ける動きから、一瞬で前方への踏み込みに変化。相手のフェイントの間隙を一瞬で狙い澄まし……)錬気…一閃(特殊警棒に気を込め、気の刃を以てリーチを伸ばすと共に、一瞬で全身を加速。文字通り超高速の一閃で、フェイントを強引に速度でねじ伏せに掛かる) 」

白服の男D&E『んなッ――――うごぁあッ…!?(フェイクなどと言った小細工さえも押しのけるウェルドの気迫のこもった猛進の前にねじ伏せれていくのだった)』 」

白服の男F「ぐふッ……!?(至近距離から撃ち込まれた土弾によって転がるように吹き飛んだ) 」

エドガー「こいつ――――(今度は手応えを感じた、にも関わらず微塵も怯まないマッドの堂々たる姿に僅かに瞳孔が開く) ヅッ!!(反応が僅かに遅れサイドステップを踏むも太腿を僅かに熱線の余波が抉る。コンクリが溶解する熱量に目を見張るも、痛覚を介して戦意を奮い立たせる)(貼り続けろ……今見るべきは、前だけだ) 」

エドガー「 ヒュ  ッ  シィィィィ……ッ!!  ガガガガッッ ガガガガガンンッッッ (右スウェイ→左スウェイ→後スウェイ→ 1秒間の安全圏を見出し、その場にエドガーの残像が何人も重なり、ガンカタのようにして拳による衝撃波を飛ばす。1秒経過後、再びスウェイによる3度の回避、1秒間の安全圏を見出し、打撃による衝撃波。 これを繰り返し円を描くようにして多方面からマッドを"削り"に掛かる) 」

シャニ「ちぇっ、骨もねえ奴らだぜ(首をポキポキ鳴らしながらエドガーの方を見やり)へっ、江戸川のヤツ燃えてんじゃねえかよお゛。たのしそ。水を差してやるのもカワイソーだし、割り込むのもむずかしそ。んじゃ観戦すっかあ゛(愉し気に目を揺らしながら、エドガーとマッドの闘いを見つめる。震脚で踏み砕いた白服を粗雑にどかして、寛ぐスペースを確保しながら) 」

ウェルド「よいしょ、っと……この程度で助かったというべきか……とはいえ、向こうは見た目以上にやる様ですね……困ったな(倒した男達に手錠を掛けて回っていたが、此方にも飛来した光の蝶を横っ飛びで回避。その後やれやれ、と言わんばかりに立ち上がり……)大丈夫でしょうが、念のため…ね(手は出さずとも、直ぐに援護に入れるようマッドの後方へと位置取り) 」

マッド「ほぅ…―――― ズ ッ   ガ ガ ガ ッ   ドッ ガガッ  ドゥンッッッ (周囲を描きながら打撃を加え込んでいくエドガーに対し、真っ向から肉弾戦による衝突を繰り返していく。攻撃速度は相手のエドガーが一枚上手であるためか、幾つかの攻撃は被弾する。当然、それら一切の攻撃には動じないが―――)――――  チ  ッ゛  (ある瞬間…それこそ、"自身の拳とすれ違った時"、エドガーの打撃の一つが右肩に被弾した時、初めて眉間に皺を寄せた) 」

マッド「ズザザァー…ッ…! 他の連中もなかなかの手練れのようだ… 機関員、負傷者を連れて撤退せよ。(エドガーと衝突から離れると健在の白尽くめの男たちにそう命じ、彼らが慌ててその命を実行して姿を消すのを見届けると…)… ッ スゥ ー … … ――――(―――深く、息を吸う)   “勇揮(グランツ)”   (  ボ  ォ  オ  ン  ッ  !  !  )(呟くような口上を吐き捨てた次の瞬間、自身の体躯が一回りパンプアップし、筋骨隆々な肉体が披露された) 」

マッド「先の攻撃は見事だった。並大抵の者であれば一撃のもとに下されていたことだろう。しかし、私は一味違う。外部から受けたあらゆる衝撃を自らのエネルギーに変換・蓄積する。つまり、一切の攻撃は私には効かず、その上に力を与えることとなる。こう言うのを、『無敵』というのだろう。これが私の権能…――― "怒の矛先"(エルガー)だ。我が怒り、その身で味わうといい。(穏やかな声音に孕むは、自らへの攻撃によって蓄積された"憤怒"という感情。それを体現した恐るべき一撃が、今、エドガーたちに繰り出されようとしていたが―――――) 」


シ ュ ボ ッ … ―――― ボ オ オ ォ ォ オ … ッ … ! ! (その刹那、アスファルトを駆け抜ける一陣の風。その影が伸ばした「腕」が発火し、高熱を帯びていく。大きく振りかぶられた拳が紅蓮を描き、空気を焼き尽くした――――)


隻眼の英雄「――――――― “ 赤黒覚醒(クリムゾンドライブ) ” ッ ! ! ! (  ズ  ガ  ァ゛  ァ゛  ア゛  ア゛  ア゛  ア゛  ン゛  ッ゛  !  !  !  )(紅蓮を描く影が日の元に照らされてその姿が明るみになった頃には、緩慢化した世界の中で高速度の速さで一同を、エドガーを横切り…その果てにいたマッドの巨大な体躯に目掛けて、燃え盛る拳を勢いよく炸裂させたのだった) 」

マッド「  ッ゛ !  !  ?  ?   (  ボ  ッ゛  ガ  ァ゛  ァ゛  ァ゛  ア゛  ア゛  ア゛  ン゛  ッ゛  !  !  !  )(エドガーに怒りの鉄槌を繰り出さんとしたその瞬間、突如として現れた影の戦士の目撃に意識が削がれ、気づいた頃には想像遥か絶する激痛を、それを意味する吐血を吐き出しながら爆撃に見舞われた) 」

マッド「…ゴ……ッ゛……ア゛………ッ……――――!!?(激痛走る腹部を咄嗟に片手で押さえつけながら片膝をつく。完全に油断していたが、ここまでの痛手を与えるものなど、そうそういるはずがない。「まさか」―――と、何かを察して頭を上げ、その影の正体を見破った) 」

マッド「 お前は…ッ…―――――『 隻眼の英雄 』…ッ…!!? (見覚えがあるのだろう。自身に決定打となるダメージを負わせた張本人を前に、穏やかな表情が崩れかけた) 」

隻眼の英雄 → モララー「 バ サ バ サ バ サ ァ … ッ … ――――――(エドガーたちの前に現れたのは、ボロボロのおマフラーを巻いた二足歩行の猫。閉ざされた右目、その隻眼の戦士は、背中にて歴戦の猛者たる風格を醸し出していた―――)―――― よお、久しぶりだな (因縁の相手なのか、態勢を崩したマッドとは対極的なまでに悠然と佇んでいた) 」




ヒロ「……!?(モララーを見て)あ、あれは…! 」

エドガー「(種明かしか。タイミング的には"今"か――――) ス……(ボクシングにしては足幅を大きく開き、拳の位置を高く頭上へ。戦闘スタイルを変える動作を取った頃―――)―――――。ああ、"先客"がいたのか…… 」

ウェルド「(片腕で顔を覆う様に、衝撃波から身を守る体制を取っていたが…現れた猫の姿に目を見開き)……おおっと、そう来ましたか………これは随分とビッグネームが 」

モララー「……いいか、こっちの攻撃はすべてアイツの力として返還される。その間は「無敵」ってことだ。だがな…変換した力を開放して攻撃に手順を変えた瞬間…"奴の蓄積は一時的に停止"する。つまり、"カウンターを狙え"。そうすればダメージは入る。何度も殴り合った果てに得た攻略法だ。(エドガーたちへ静かに説く) 」

マッド「 ヌ ウ ゥ … …いい加減に、しつこい男だ… しかし、『我々』の正体を知る者は須く排除する…!( ド ォ ゥ ン ッ ! ! )(復帰するように立ち上がると、その巨体からは想像もつかぬ砲弾の如き猛スピードでエドガーたちに迫る) ン゛ オ゛ オ゛ ォ゛ ッ゛ ! ! ! ( ズ ド ド ド ド ド ァ゛ ッ゛ ! ! ! )(繰り出されるは残像が出来上がる程の殴打によるラッシュ。一つ一つが激しい速度と破壊力を有し、猛烈な攻撃となって迫る) 」

エドガー「コツを掴む手間が省けた。どうもな(といっても"フェアじゃない手前"気が引けるな……)【水地<アメツチ>】 パンッッ(拳は手刀へ、剛拳は柔へ。ムチのように撓る流麗な奇跡を無数に描き、手の甲をマッドの腕に押し当て……) グ ル  ン ("流す"。相手にダメージを与えることなく、ただ後方へ受け流し続け、淡々と攻撃の初動を観察し……)ここか。(【火天<ヒデン>】。 鉄のように硬質化した筋骨による抉るようなアッパーカットを密着状態から、拳を振りかぶった瞬間を狙いマッドの脇目掛け振るう) 」

マッド「(この攻撃を潜り抜けるか…しかし、その程度では――――)―――― ヌ゛ ゥ゛ … ッ゛ ? ? ! (受け身に徹していたエドガーに対し容赦なく拳を振り抜けていたところに感じた鋭い違和感。脇腹に高熱のマグマが当てられたような激しい激痛が骨身を砕く様に。その一撃によって態勢が大きく崩されたのだった) これしき…ッ…!!( ド ッ ギ ン ッ ! ! )(今度は両腕に“アンビション”を纏い、両手の付け根を合わせた掌底を――突き出されると同時に前方を抉り飛ばすような衝撃が迸る程の――繰り出す) 」

シャニ「おいおい、だぁれだよアイツ……ちょっとかっこいいじゃねーか!!……へへへ、なるほどな。おいおい、江戸川にヒントなんか与えちまったらもうラクショーじゃねーか。こりゃ勝負は見えたな(余裕たっぷりに、モララー、エドガー、そしてマッドを見る。薬で狂い果てたその精神とは裏腹に、的確にその戦況を分析する) 」

ヒロ「これは…決まったな(モララーとエドガーを見て) 」

ウェルド「……ええ、あの分析は恐らく当たっています。そして……エドガー・アルクィン、彼の技量ならば、それは"難しい対策ではない"。一対一でさえそんな状態なのに、もう一人増援が来たとなれば…… 」

エドガー「(厄介なのは手数が通用しない事だ。立て直しをされる前に畳むーーー) 【水地:霞走】 (散漫と敏捷、緩急自在な足運びで残影を残しつつ緩やかに連続で振るわれる剛拳の射程範囲から大きく外れ……)ーーーー【火天:龍角滅砕】ッッ!!!!(一気に距離を離してからの、助走と加速を乗せ、一気に萎縮した筋肉を開放し、それをバネにしてゼロ距離で放つ"ジョルトブロー"を、マッドの胸板に向かって突き穿つ) 」

マッド「 ゴ ォ゛ ッ゛ ―――――― ッ゛ ウ゛ ゥ゛ ァ゛  !  !  ?  (  ッ゛  ッ゛  ッ゛  ッ゛  ッ゛  ゴ  ォ゛  オ゛  !  !  !  )(自身の剛腕が空ぶると同時に、一瞬にして懐に潜り込まれたエドガーからの渾身の反撃が大きな胸板にへと盛大に炸裂。爆ぜるような衝撃と共に吐血を撒き散らして、増強された全身の筋肉が萎縮してパンプアップした体躯が元に戻っていく)……ングゥ…ッ……!(グラリと崩れ、エドガーから後ろ歩きで退いていくが、その果てに片膝をついて蹲る)……よもや……ここまで、とは…ッ……――――― 」

乏毛の女性「 ス ―――――― (そこに、何者かが颯爽と、戦いを制止するように両者の間に割って出る。マッドと同じく髪毛が無い白装飾の淑女。その表情は"笑みを浮かべながらも、何処か憂いを帯びた瞳"をしていた―――)……「アナタ」、ここは退きましょう。それ以上の「エーテル」の摂取は危険よ…(慈愛を含んだ声で背後のマッドへ一瞥を与える) 」

マッド「……! 『 カルナ 』か……すまない……(片膝を地面につきながらその女性を見上げる) 」

乏毛の女性 → カルナ「 行きましょう…… ( ト ン … ―――――― )(エドガーたちには視線を向けることなく、初めから握られていた白い杖、その先端部を地面で小突くと、二人の男女…「夫婦」が…無音のままに転送されるように消え去った――――) 」

モララー「…………(撤退していく二人組を他所目に、首元のマフラーに手をかけて口元が見える程に緩ませた)………やるな。(エドガーたちへせせら笑い、その白い歯を見せる) 」

エドガー「(去っていく夫婦。恐らくはマッドを御する程度に何かしらの"力"を持つのであろう女性の参戦に、足を止め始終を見届け)ーーーー取り損ねたけどな(バツが悪そうに頭髪を乱してかきモララーへそう返す) 元はと言えば、本命はこっちだ……んだが(家。ポールの自宅であろう建造物を見上げ肩を落とし溜息を零す) 」

モララー「……入ってみりゃあいいじゃねえか。その為に来たんだろ。(既にその家に何があるのか理解しているのか、玄関前の壁に背中を合わせて自分は「待機」をするようにその場に居座った) 」

エドガー「ゾンビが出てきたら街に溢れる前に消し飛ばしてくれるか(半分冗談、半分は何が起きるかわからないというある種の化学への不信感から引きつった笑みを浮かべ)ーーーーーーガチ ャ  (ドアノブに手をかけ、気配や息遣いを確認してから、ゆっくりと戸を開けた) 」




茅弦の自宅へと踏み込んだ一同。一般的な二階建て一軒家の内装のそれと変わらず、どの部屋を覗いてみても目ぼしいものはない。ただ、目を引くものがあるとすれば…それはリビングに飾られたいくつかの家族写真。夫婦と女児の三人家族。並ぶ写真立ては左から右へとその成長記録を表しているかのように並んでいる。 」

少女の小学校入学式の写真。しかし、そこには初めに見た妻らしき女性の姿がない。父親は笑っており、娘は無の表情。中学校の入学式もまた同様に、しかし二人の目は徐々にハイライトを失っているようにも見えた。そしてそれ以降の記録を写した写真は無い――― 」

シャニ「う~い、なんかあるかな、うん?(ポケットから懐中電灯を取り出し、刑事ものの真似をするようにそれを目の近くに持っていき、家族写真を照らす)……はぁ~、なるほどなァ……オレ家族とかよくわかんねーけど……おかしいよな、これ(まともな人間としての記憶もない。精神もほぼ崩壊している。そんな彼が、「幸せな普通の家庭」の写真を見やる。その表現は正しくないだろうか。そんな彼でさえ、気付いてしまう違和感のある、少し不気味な写真……) 」

ヒロ「……(家族写真を見てふと目を逸らす)(家族写真…か。今となっちゃ…) 」


エドガー「……。(母親は7~12歳の間に離別、或いは死別か。この年じゃ肉親との別れは非日常だ、その後立ち直れるかどうかでその後の人格形成に影響がある。どう終わったかによっては感情の欠落も珍しいことじゃない。だが……)ーーーーー父親は科学者、笑顔……それに(あの穏やかな男)……。もしかしたら、父親の方が重症だったのかもしれない。 」


写真が並べられている棚には、他にも書物がぎっしりと並べられていた。そのどれもが「感情」にまつわる論文集や書籍などで溢れている。素人目から見れば無視されるようなものばかりだが、その中でエドガーは書籍の間の影に挟まれた異質な表紙の本を手に取った。開けばそれは日記帳だった。そこに日記があるのは違和感があるが、恐らく金庫や机の中ではなく、あえて目に視える位置に忍ばせることで何かから日記の存在を隠そうとしていたのだろう。彼は頁を捲り、目ぼしい内容を記した日付を口にした―――


2008年8月10日 : ついにやり遂げた。私は長年の悲願を達成した。『 罪剣 』による"負の感情の抑制"が成功した。私の身体自らを実験体として行い続けてきたこの数年間に渡る実験が、ようやく実った。お陰で"笑いが止まらない"。感情が一気に溢れ出してくるが、とにかく"笑いが止まらない"。しかし私は完璧主義者だ。確実な実証が取れるまで、上にはまだ未完成と報告しておく。

2008年8月21日 : 同じ研究員の『 千晴 』との交際生活も長かったが、『 罪剣計画 』の成就を前に私たちは正式に結婚することとなった。思えば彼女の存在は私にとってあまりにも大きく、挫折ばかりの日々から今日まで支えてくれた彼女には感謝しても仕切れない。だが今、私たちはその苦難を乗り越えた。心から笑い合える日がやっと来た。

2008年10月9日 : 事件が起きた。この日、『 機関 』の施設に侵入してきた何者かの手により、『 罪剣「クロリアー」 』が奪われてしまった。由々しき事態だが、こんなこともあろうかと私は『 罪剣 』から『 因子 』を大量に抽出していた。これだけの量があれば、『 クロリアー 』本体がなくとも十分な実験が続行できる。『 罪剣 』の奪還は精鋭部隊に任せ、我々研究班は目の前の課題に集中することとした。

2009年2月11日 : 実験が成功し、妻とも良好な関係を築き、更には子宝にも恵まれた。願っていた子どもが生まれたのだ。名は『 茅弦 』。女の子だ。彼女に似てとても可愛らしい。きっと、これからもっと幸せな日々が続くだろう。"笑いが止まらない"。

2009年6月5日 : 相変わらず、去年度から"笑いが止まらない"。不祥事を起こした部下への叱責も、妻と見た感動的な映画も、穏やかな休息の日に浴びる日光浴も、いつだって、"笑いが止まらない"。最初は表情筋の辛さをひしひしと感じたが、ようやく慣れてきた。それに、笑う門には福来るという。これが『 機関 』の、そして私自身が望んだことだ。きっと、幸福は招かれる。

2009年9月3日 : かつて『 クロリアー 』を手にしたことがあるという男に話を伺う機会ができた。彼の証言によれば、『 罪剣 』を手にした者は剣に秘められた強大な力が持ち主の精神に流れ込み、特別な能力を顕現するという。その力は精神を蝕み、本人の"感情"さえも歪める程の影響力を孕んでいる。しかし、不屈の精神を持つ者ならば、『 クロリアー 』による力の影響をある程度撥ね退けることが可能らしい。つまり、強い精神を持たない者が手にすれば……

2013年9月16日 : "負の感情の抑制"に成功してから数年が経った。副作用を懸念して長く秘密にしていたが、ようやく上にも実験の完成報告を上げようとしたところで、私はある異変に気付いた。成長し、言葉も理解し、ようやく理性を得た『 茅弦 』の表情だ。子どもは大人よりも感情表現が豊かであるものだ。よく笑い、よく怒り、よく泣き、よく楽しむ。だが思い返せば、『 茅弦 』からそんな喜怒哀楽の顔を見た事がなかった。そもそも、あの子が生まれた時も…"泣いてはいなかった"…

2014年3月24日 : 妻の容態が悪化している。事が起きたのは今に始まったことではない。彼女が『 茅弦 』を産んでから半年が経った後、今まで健康体だった彼女が体調を崩す時がたびたび見られた。年数を重ねるごとに体調不良を訴えることは多くなり、彼女は『 機関 』を辞退し、自宅で『 茅弦 』の世話をしながら療養に励んでいた。しかし……

2014年3月25日 : 過去何度も、様々な病院に診てもらったが、インフルエンザでも癌でもなく、難病の可能性は考慮されなかった。しかし依然として妻の容態は日に日に悪化している。居たたまれなくなった私は、数年前にお会いしたあの男、かつて『 クロリアー 』を手にしたことがある者が医師をしていることを思い出し、彼に直接診てもらうことにした。

2014年3月26日 : 例の医師から驚くべき診断結果が出た。妻は、私の体に投与された『 罪の因子 』を含んだスペルマを受け入れた時からすでに寿命が崩落していたという。かつて『 罪剣 』を手にした彼の証言は確かなもので、私と妻の両方に『 因子 』があることを看破した上でそう告げた。『 因子 』の耐性がない彼女の心身は毒されていたのだ…

2015年2月9日 : 妻が先立ってしまった。恐れていたことが現実になってしまった。治療法がないまま受け入れるしかなかった彼女は、最後まで私を責めることなく「娘を頼む」と言い残して息を引き取った。彼女の最後を見届けた『 茅弦 』は"泣かなかった"。私は、"笑いが止まらなかった"。

2015年3月16日 : 長期休息を貰い『 機関 』から離れていたが、もはや私は自暴自棄になっていた。妻が逝ったのも、『 茅弦 』の感情表現が乏しいのも、すべては『 罪の因子 』を取り入れた私のせいだ。『 機関 』や私が望んだ"負の感情の抑制"は、人間が本来持ちうる豊かな感情を喪失させる。感情を失うことがこれほど人間の精神を苦しめることになるとは、あの頃の私は思ってもいなかったのだろう。私は…愚かだ。人間として、研究員として、父親として…この研究もなにもかもが失敗だった。もう、取り返しのつかないところまで来てしまった。"笑いが止まらない"。

2015年3月20日 : この日、6才となる『 茅弦 』の小学校の入学式であった。妻と三人で迎えるはずだった晴れ舞台を、愚かな父と二人で過ごすことになってしまい、本当に申し訳ない。そう謝っても、『 茅弦 』は怒りもしなければ泣くこともなく、ただ私を慰めてくれた。感情こそは表れないが、『 茅弦 』の"心"を感じた。救われたような気持ちにさせられた。"笑いが止まらない"。

2017年3月20日 : 妻が先立ち、『 茅弦 』と二人で過ごしたこの数年間、私は決断した。8年前に成功した『罪剣計画』の感情抑制実験は「実現が不可能」と上に報告し、その責任を咎められ、私は『 藍の機関 』を辞職した。愛しい愛娘『 茅弦 』のお陰で目が覚めた。たとえ"負の感情"が忌むべきものだとしても、人間に与えられたすべての感情にはちゃんと意味があるのだと、そう確信したい。

2024年4月2日 : 今もなお機関に所属している私の後輩から連絡が入った。支部に残していた『 罪の因子 』を使った新たな実験の完成、そして『 因子 』の枯渇という課題を解決するべく、外部から派遣された科学者の提案により私の身柄が拘束されることが方針で決まったという。いつかはこうなる日が来るだろうと予測はしていた。しかし、娘を巻き込むわけにはいかない。『 茅弦 』にも、私と同じ『 罪の因子 』が流れているのだから…

2024年5月8日 : 私たちは『 機関 』から逃れる為に、西から東へと遠い地方へ引っ越し、身を潜めながら生活していた。しかし、こんな生活を続けていては『 茅弦 』の学業や人生も狂わせてしまう。しかし頼れる宛は無い。覚悟を決めた私は、『 機関 』に直接連絡し、一定期間だけ協力することにした。万が一に備えて、娘にはその間家を出てもらう必要がある。こんな愚かな父親を憎んでくれてもいい。だがどうか、『 茅弦 』だけでも幸せになってほしい。その為に、少しだけの辛抱してもらう。本当に、すまない―――


日記は、ここで途絶えている―――――


ウェルド「……色々と気になる単語が並んでいましたが……まあともかく、立派な父親じゃあないですか(エドガーの後ろからいつの間にやら日記を覗き込んでいた)……しかし、素晴らしい勘ですねエドガーさん。一発でこんなものを見付けるとは……どうです?警察の仕事興味ありません? 」

エドガー「――――――素晴らしい、父親?(日記を閉ざし、天井を仰ぎ見る。頭髪が目元を覆い表情こそう伺いしれなかったが、表紙に添えられた手は小刻みに震えていた。それこそ、封じられるであろう対象の感情が決壊するのを押し止めるダムのように) 」


" 帰ってこない お父さん "


……………… 明日……探しに、いく。


エドガー「(日記の表紙に蜘蛛の巣状の皺が刻まれる。卓上に置いたそれに添えられたては強張ばり、目元を手で覆って剥き出しの感情を吐露していた)―――――子供を独りにして、親の迷子探しなんて恥晒して……立派な父親なんて口が避けても言えるわけないだろ……ッ(閉口。他にも幾つか罵詈雑言が並ぶ。自分が彼の子供だったら、そんな意味もない想定と、似たような境遇下にあった頃の自身の本音が複雑に混ざり、思考を整理できずにいた) ……。連中の研究室、宛は出来たな…… 」

ウェルド「方法の是非は置いておいて、この日記の通りの思考ならば、少なくとも一人娘を心底案じた結果です。罪の意識に本人也に向き合いつつ、ね…職業柄、もっと酷い親は随分見て来ましたので……ええ、まあ……西、ですか 」

モララー「(ちょうど日記を読み終えたであろうタイミングで部屋へ入り込んでくる)―――― 『 藍の機関 』。数十年も前からこの世界の影に巣食う謎の組織。罪剣『クロリアー』を使った何らかの計画を推し進めているが…その本部は12年前に俺の『 親友《 ダチ 》 』が壊滅に追い込んだ。が…今もその残党共が水面下でこそこそと動いている。 」

モララー「一時期、『 刀剣武祭 』なるものが世間で大々的に公表されたことはあったのは知っているな?あの年の優勝景品が、まさに本物の『 クロリアー 』だった。当然、そいつを喉から手が出るほど欲している『機関』の連中も大会会場に忍び込んでいたが…その時は俺が一人で食い止めて退けた。さっきの男ともその当時に戦った。 」

モララー「俺が時間を稼いでいる間に大会に出場していた歴戦の剣士たちが『 クロリアー 』を鎮め、結果的に『 罪剣 』は完全に消滅。流石の奴らも手を引いていった……だが、ないものねだりをする連中の執着心が、今回の一件を引き起こした。俺は…親友《 ダチ 》の不始末を付けるために、組織を徹底的に壊滅に追いやるつもりだ。お前らが乗り込むというのなら、俺も同行させてもらう。 」

モララー「………だが、組織の現在の力は未知数だ。万全な状態で臨むのが得策。警察官がいるのならなおの事本部からの突撃命令も必要になるだろう。一度、諸々の整理も兼ねて日を改めるべきだな。 」

シャニ「………………江戸川……(エドガーの表情を見る。自分には分からない。普通の家庭の記憶などないのだから。彼女が、この家庭が、不幸かなのかなど分からない。自分も大概なのだから)……よっし、行こうぜ。アテが出来たんならここで足踏みしてる暇ねえよお゛(瞳孔の小さい瞳を細めて、皴のような口を吊り上げて言う。壊れた距離感で肩に手を置きながら。何もわからない、何も知らない彼は、目の前の一人から「普通」を自分のできる最大限読み取って、何故か、笑った) 」

エドガー「それはそれだ、一つ言ってやらなきゃ気がすまない事ができた(ようやく感情の整理をつけ、日記を元の位置に戻す。両手を卓について深呼吸を終えると、ようやく顔を上げ、一人頷いた) セミの抜け殻より始末が悪いな……碧の機関ともなれば自明の理か。クロリア―があそこの支柱だったわけだからな(ある程度の概要を把握しているのか、モララーの言葉には一通り同意の意を示し頷く) だな、長距離の移動になる。それなりに日も要するだろうし、一度娘の方にも……こう……(顎に拳を当て、割と最悪なパターンばかりが想起されデフォ顔で青ざめた)……納得できる説明を要しないとな、真実かはさておいて…… 」

ウェルド「当たっていれば面倒だと思っていた予想が的中して、実にコメントしづらい気分ですよ………おまけに結局、『クロリアー』も健在と来ているとは……(思わず顔を手で押さえ)……まあ、良いでしょう。乗り込むならばそれなりに準備は要りますし……折角です、頼りになりそうな民間の伝手があります。彼らを巻き込んでみるとしましょうか……うん。それと、彼女を保護するなら警察とは別のラインが良いでしょうね。十中八九マークされていますし、何より彼女は被害者……警察関係の場所は委縮させてしまうでしょう 」

モララー「わかった。そっちの「事情」は、そっちに任せる。決戦の日が来るまで本部の道中でお前たちを待つ。(それだけを言い残すと颯爽と踵を返した) 」

エドガー「民間、別ライン……あっ ホワンホワンホワーン(頭上の吹き出しに伝染るデフォ三等親森おじ。あまり羽振りがよくなさそうな絵面に、思わずデフォ半目になってしまう)……。(タダっていうのもなぁ……ちょっと報酬調達してくるか、リズのへそくりでも没収すればいいだろ……) ハッ、一人で全部始末しても構わねえぞ(無理をするな、普段ならそういうところだがこの日ばかりは"相手の力量の「下限」"を知っているような口ぶりで、口端を吊り上げた) 」

ヒロ「……なるほど(日記を見て)『機関』… 」

ウェルド「あー……まあ、そういえばご存知でしたっけ、彼らは多分丁度良いと思いますよ。それに……『藍の機関』なんて、すっかり資料の中で記録だけになっているべき存在です。厄介な仕事になりますが、この際にしっかり片付けておきませんとね……まあ、お互い無理はしないように頑張りましょう(傍から戦闘を見ていただけに、やや怪訝な顔で去って行くモララーを眺め) 」

薬師寺九龍「いや~すまないすまない。途中でチンピラに絡まれて…………いやはやまったく(襟のところにポップコーンのかすをつけながら)…………お、日記か。つまりそこに色々書いてあったわけだな。大体わかった(ディケイド並)…………パラ、パラ…………(日記をめくって情報共有)嫌な気配はしてたけど、やっぱりこういうのが絡むんだな。しかも『クロリアー事件』か……あぁ、ウチの課じゃそういう風に言ってんの。刀剣がどうだの哲学的なことはまったくわかんねえから。俺も読む程度に知ってるくらいしかなぁ。 」

ヒロ「…『クロリアー』…?(日記を読みながら) 」

エドガー「い"や"……なにかと丁度いいのは否定しないけど……タダで仕事振るのも筋違いっていうか……。あの、依頼するのが既定路線だったらこっちで報酬は用意しておくよ……(共感できる事柄が多すぎる故か青ざめながら) ああ、忙しい中……(ここで頭上に疑問符が浮かぶ。ポップコーンがやたらピックアップされるが、気の所為だと判断し見なかったことにした)そう、か。一応公になっちゃってるんだなあの特級呪物……(薬師寺と日記を再度確認しながら頷き) あー……こう、成果がぼちぼちだったから反省文書いてくるわ。あの年の子に反省文書くっていうのも、なんかあれだけどな……(心做しかおぼつかない足取りでその場を後にする) 」

シャニ「よっと(床を跳ね回りながら離れ)はーーーよくわがんね。まあいいや……なんかこー、話に進展があったら呼んでくれよお゛。いっちょ噛みしたいんだぜオレも 」

バナナ猫「(いつ出発する?私も同行すると言いたげそうな顔でスタンバってる) 」

杉下右京「想像が及ばないのならば…黙っていろッッッッ!!!!!!(バナナ猫を叱責) 」

バナナ猫「イィ~~~~~イィ~~~~~~~😭 」



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最終更新:2024年09月27日 15:39