ライラックの追想 過去ログ③

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リラ「――――――(夕景。開かれたゴシック調の日傘をクルクルと回しながら、店を畳み始める商店街のど真ん中を優雅に歩く。落ち行く太陽に、傾く影。濃く長く伸びていくその影は憂いを帯びたように、どこか小さく震えるように揺れていた)

リラ「…………(ふと後ろを振り返る。ガラガラと音を立ててシャッターを閉める店。帰路に就く者たち。少しずつ、人の数がその姿を消そうとしている。ありふれた日常だ。見飽きたほどに。けれど、心の何処かでずっと続いてほしいと願う情景―――) 」

リラ「………(その平和なひとときをを実現させてきたものを知っている。日常とは、そうして誰かに守り続けられてきたものであると。そして大半の人はその事実を知らず、ただ自分の生活を今日も繰り返す。日常とは、そういうものである。知る由もなければ、知る必要もない。それでも自分は…自分だけは、知られることのないその事実を忘れずにいよう。噛み締めるように、愁いを帯びた瞳を閉ざして胸元に手を添えた) 」

テツヤ「今日は運よく激安セールにあり付けたな。卵にトマト、それにシャケの切り身………?(スーパーの袋を腕からぶら下げて商店街を歩いている中、帰路に就く者たちの中でひときわ目立つ令嬢の姿に目を凝らす。その既視感に、いつか寄宿舎で邂逅したリラだと気づく)……(ちょうど向かい側から来た彼女と目が合い、「よっ」と気さくに手を上げる) 」

リラ「…………!(呆然と歩いていたところにテツヤと遭遇。手を上げる彼に思わず静かに会釈を送る) 」

テツヤ「最近はこの辺でよく見かけるようになったな。今日も、例の「恩人」の行方を捜していた…のか?(少しずつ距離を詰めるように歩み寄る) 」

リラ「……ええ、まあ…(以前のような熱弁に燃やしていた様子とは一転し、どことなくぎこちない、あるいは委縮したような様子で目を逸らしてしまう) 」

テツヤ「………(令嬢の余所余所しさに微かに傾げその真意に思わず目を向けてしまう)……………腹、減ってないか? 」

リラ「……ぇ……? 」


― 寄宿舎・共有キッチン 食事スペース ―


テツヤ「――――― さぁ、できたぞ。(食卓に並べられるは白米、お味噌汁、焼鮭、卵焼き、ほうれん草のお浸しなどといった一汁三菜。質素ではあるが出来立ての手料理からは食欲をそそらせる風味が室内を満たしていた) 」

稔「テツヤさんがタダメシを振舞ってくれると聞いて飛び出してきました。本当にいいんですか?ダメと言っても遠慮なくいただきますが。 」

リラ「………!(高貴な貴族の出自である自分には珍しい食事メニューなのだろう。まるで興味をそそられるように目の前に広がる一汁三菜のひとつひとつを眺めていた) 」

テツヤ「ああ、まあ…いいよ。こいつは俺の気まぐれだからな。共有キッチンを借りるのに料金が発生するのを俺のメシでチャラにしてくれんなら安いもんだ。あまりにも安かったもんでちょっと一人では食べきれんかもしれなかったしな。遠慮なく食べてくれ。………アンタは、こういうのは初めてか?お嬢様に貧相な飯を振舞うのは恐縮が過ぎるものだが、こんなのでよかったら食べてってくれよ。まあこれでも、料理にも多少なりに自信はある。見た目は素朴だが、ちゃんと食材の味を生かしたつもりだ。口に合うといいが。(麦茶をコップに注ぎながら食卓に座る者たちへ配膳する) 」

はらぺこあおむし「(キッチンでハロウィンのアルバイトをしている) 」

アーニャ「アーニャ、やさいきらい。カリカリベーコンたべたい。 」

杉下右京「そんなものはなァい!!!!!!!!!!!(ガシャーンッ!!!!!)(ちゃぶ台(※自前)をひっくり返しアーニャを叱責)精一杯…食べなさいッッッッッッ!!!!!!!!!!!!(アーニャの口にこれでもかというくらいバナナ猫をぶちこみまくる) 」

アーニャ&バナナ猫『イィ~~~~~イィ~~~~~~~😭😭😭』

ヒロ「(ラーメンを啜っている) 」

ネモ(LoR)「ちょっと、稔さん!!!ネモネモ専用超出力バッテリー充電高調装置が使えないんですが!!!!私の事務所(部屋)の電力供給を断ちましたね!?!?!?!?(長閑な雰囲気をぶち壊す全身義体がヅカヅカと足音と関節の軋む音を奏でながら、二階からロビーに繋がる階段をけたたましく降りる) 」

ネモ(LoR)「貴方のような小娘にこうしてせがむのは私のプライドに反していますが…… 」

ネモ(LoR)「背に腹は代えられません!!!今すぐ電源復旧してください!!!あのクソ陰湿管理人の姿も何処にもないので、貴方にしかできません!!! 」

稔「そうですか!わかりました!ではではいただきます!(GOサインが出たので食べ始める)ハムッハムッ…ハフハフッ…… できたてのおごはん…タダメシ…美味しいです…♪(頬いっぱいに食べ進めていたが…)なんですか!食事中ですよ!まだいたんですか貴方!食事中ですよ!あたりまえでしょーが!電気代、水道代、ガス代…諸々込みで1週間分の宿泊費の支払い日時を越えても1銭たりとも払ってくれていないからでしょう!食事中ですよ!電源復旧はおろか宿泊滞在を延長されるのであれば宿泊費+延滞料金をきっちり払ってくださいね!食事中ですよ!(お茶碗とお箸両手にご飯粒をまき散らしながらネモにまくしたてる) 」

リラ「………――――― ァ ム (テツヤが振舞ってくれた料理を前に、ようやく箸を掴んでまずは白米を口にする。静かなる咀嚼。ことライスとしては口にすることはあったが、その白米はふっくらとあたたかく、これまで口にしてきたパサついたお米とは違う、米本来の旨味を舌先ではじめて感じ入る)…… パ ク (ムニエルなどで食べたことのあるサーモンではなく、塩だけで味付けされた焼き鮭も然り。塩だけの単純な調味料で味付けされたものであるにもかかわらず、鮭本来の肉厚から滲み出る味は、ムニエルとはまた違った美味しさがあったことを生まれて初めて体験する) 」

テツヤ「相変わらず苦労してるなぁ…(根本成美のやり取りを傍目に、そこにいたヒロにおかずの品々を提供する)ラーメンばっかだと身体によくねえぞ。よかったら食べなよ。 ………美味いか?(吟味するリラの横顔に、微かに吊り上がった口辺を浮かべる) 」

ネモ(LoR)「私が?宿泊費を?払っていない?はっはっは!!!何言っているんですか稔さん!!!私は寄宿舎に住まおうとする新たな顧客共の契約履行の仲介を担っているではありませんか!この都市の星に値する事件を幾つも伏せてきたこの私が!!!労働力を提供しているのですよ!?むしろお釣りが来ても可笑しくありませんがね!!! 」

ネモ(LoR)「まぁ良いでしょう。現状1週間分の電力保持は出来ています。今日でなくても電力復旧はしておいてください(がめつい) 」

ネモ(LoR)「しっかし随分と庶民派な香りが身をくすぐらせるではありませんか!私、義体になってから嗅覚遮断による欲求可否を仕入れていましたが、それを貫通する程の料理が今目の前にある訳ですね!食えませんけど!!! 」

ペンギン「あんまり偏食するとパンダかシャチに食われるぞ?(野菜類を食しつつアーニャを睨み) 」

テツヤ「あ!!!(ネモの発言で素っ頓狂な声を上げて思い出す)忘れてた!!!そういえばそういえばアンタ(ネモ)のツケは俺が請け負うことになってたよなァ!?つーことはだ…?延滞料金も上乗せされて……俺の借金はみるみる膨れ上がって…?ウ、ウ、ウァァァァァ……(ちいかわみたく泣き出す) 」

稔「テツヤさん、流石の私でもあんな口約束を真に受けるわけないじゃないですか。宿泊しているのはこのガラクタ人形さんなのできっちりこの方に払っていただきますからご安心ください。それと!労働力の提供っていいますけども?そもそもまだ正式な契約すら結んでおりませんが??それとも私のいないところでヴォイドさんから許可が下りたとでも??電力の復旧は致しませんからね!今すぐ荷物をまとめて出ていくかお支払いをするか死ぬか選んでください!(子犬のように吠えまくる) 」

リラ「………はい。義母様から聞いたことはありました…これが、日本食というものですね…?食べる機会はありませんでしたので、初めてではありますが……苦手ではないですね。寧ろ……美味しい、です…。(口元に指先を添えながら) 」

テツヤ「安心した…これで借金生活はなくなった。今日から飯が美味くなるな。(安心したように自分も席について食事を始める)……そうか。それなら、よかった。日本食…とりわけこういう和食は俺の好物でもあるんだ。脂っこいものやおしゃれな料理に疎いわけではないが…俺はやっぱり、食材本来の味を生かしたこういう素朴な料理が好きらしい。じっちゃんの名残かもしれないが。 」

テツヤ「けどな、じっちゃんはこう言ってたんだ。「人は腹が空くと気分が沈む。だから毎日たらふくご飯を食べろ。いつまでも笑っていられるように」ってな。………さっきのアンタの顔を見た時、何か…気分がすぐれないように見えた。前に別れた時の直後もそうだった。俺の勘違いだったらいいんだが。まあ、事情を聴きだすつもりはないよ。俺から言えんのは…まあ、まずは飯でも食べなって事くらいだ。腹が満たされれば、大抵の悪いことは忘れられるからな。 」

リラ「…………素敵なことをおっしゃるんですね、テツヤさんのお爺様は。 」

テツヤ「ああ。俺にとっては「恩人」で、ただ一人の「家族」だったからな。………まあ、今は後生だが。多分、きっと、今でも"あっち"で笑って飯を食ってるだろうな。そうだと思いたい。 」

リラ「……すみません、そうとは知らずに… 」

テツヤ「いいんだ。じっちゃんは満足して逝ったんだ。大事な店を俺に遺してな。だから俺も、質素で素朴ながらも、それでも今ある人生をほそぼそと、時に面白おかしく笑いながら過ごしているからな。こうして誰かとメシを食ってるだけでも、俺は楽しいよ。 」

テツヤ「………アンタが前に話してくれたこと、興味がないわけじゃないんだ。いや、あんなに楽しそうに熱く語っている姿を見たらさ、自然と興味を抱いてしまうもんだよ。だから…気が向いたら、また話を聞かせてくれよ。アンタが、リラさんが"笑っていられる"話をさ。 」

ネモ(LoR)「ヴォイド……(韓国語ボイス)あのクソ陰湿色男、稔さんの肩を持つばかりで一向に話になりません。譲歩して1カ月家賃補助をしてくれるといったものの、私の電力で全て使い果たしてしまいます 」

ネモ(LoR)「なのでテツヤさんの言葉を借りて私の腹も満たしてくれませんか稔さん!!!私が寄宿舎に居れば笑いも絶えないでしょう!!!!! 」

ネモ(LoR)「あぁテツヤさん。今、貴方の言葉を拝借させていただいたので拝借料を請求します。稔さんに私の使用する電力料金を払っておいてくださいお願いします(謎) 」

ペンギン「(ネモを見て)お前上司以上だな完全に・・・(あきれ返りつつも、大量の書類を捌き切る) 」

テツヤ「なんで???????(なんで????????) 」

ペンギン「アンタ(ネモ)の充電に必要な電力は2MWでな、現在の価格から換算すると合計15億となる。そんなの一般家庭じゃ支払えない額で代わりに風力発電用の風車二基と太陽光パネルを屋根に張り巡らせている。 」

稔「滞納者であるアナタが消え去れば私の笑いも絶えないでしょうね!あっはっは!(※作り笑い) 働かざる者…いえ、金払わぬ者食うべからず!!!ここでの金銭管理はヴォイドさんよりも私がその実権を握っていますので反論の余地はありませんよ! 」

リラ「………―――――― フ ッ ♪ (テツヤをはじめ、彼を取り巻く寄宿舎の住人たちのなにげない「日常」を見て思わず噴き出す。きっと、特別意識なんかしなくてもいい。この日常を守ってくれた誰かは、人々から感謝されるために身を乗り出したわけじゃない。その「誰か」もまた、このありふれた「日常」が愛おしいからこそ守ろうとしてきたんだと気づいたから――――) 」

ネモ(LoR)「反論もなにももうすでに使い果たしてるんですよ!!!だから電力復旧してくださいってお願いしにきてるんです!!! 」

ネモ(LoR)「そこのゆるキャラみたいな体たらくなペンギンですら代替案があるというのに…… 」

ネモ(LoR)「お願いです貴女も言ってやってくれませんか。私の面子が崩れ去る前にどうにかしてこの頑固小娘に情を与えてください(ついにリラに懇願し始める) 」

ペンギン「ま、金のありがたみすら分からん無駄飯食いの自称コンピュータは上司にこき使われてくれ。(新たな書類に目を通す) 」


リラ「――――――― ス (泣き縋るネモに、令嬢は何かを華麗に取り出した。「ブラックカード」である)……なんだか頗る気分がよくなりました。そこのお嬢さん、こちらの方の滞納費に加え、これから三か月分の宿泊費を「こちら」で落としてくださってよろしいですよ。(そう言って稔に自身のカードをそっと手渡す) 」

稔「ファーーーーーーーーーーーーーーー♪(ブラックカード。成金至上主義の自分には望んでも手に入らない幻のカードの実物に触れてとんでもない高音を叫んでしまう)う、うらやまし…じゃなかった…!(ブンブン)ふ、ふんっ!命拾いしましたね!これからはそこのリラさんに足を向けて寝られないですよ!(カードを読み込んで料金を引き落とす為に一旦キッチンを後にした) 」

テツヤ「(噴き出し、ようやく笑みを見せたリラの横顔を見て嬉しそうに目元を綻ばせる) マジかよすげえな。よかったなアンタ。お陰で俺も命拾いした気がする。 」

アーデルハイト「預金残高は充分、しかし宿泊を拒否されるカード。これなーーーーーーーーーーんだーーーーーーーー(都市主要施設が燃えてそうなダンスをしながら横スライド移動でフェードインしてくる) 」

ヨハン・アンデルセン「潜水艦だ!! 」

アーデルハイト「  レッドカード(赤大文字)   」

ネモ(LoR)「感謝します!!!タイムリミット付きとはいえど私の家賃が解消されたのは幸運極まりないですね!恩返しの為に準備しましょう!!!!! 」

シヴァンコ「(ほえる) 」

アーデルハイト「ヴィナミス(オリジナル)しか勝たねえ!!!!!!(ふっ飛ばされる寸前ドア枠にしがみついて入口に関連する部品とか備品とかエシディシを道連れにする) 」

エシディシ「あんまんだァァァァァァ~~~~~~~ッ!!!!! 」

ペンギン「家賃どころか溜まった書類片付けるだけで余生を過ごせそうなほどなんだけどな・・・(大量の書類を片付けつつも、余興でゲームの企画書を書き上げる) 」

リラ「フフ…これくらいわけなんてありません。大事なことに気づかせてくれた…そのお礼です。 」

テツヤ「……? 」

リラ「気にしないでください。それにしても…そうですか……!なれば、そこまでおっしゃるのであれば私も語らねばなりませんね…!『晴天様』の武勇伝は、まだはじまったばかりなのですから…♪(次第に声音が高まる少女は、その瞳に嬉々とした輝きを灯し始める―――) 」


そう例えば…あれは去年のこと―――――――


― 1年前・22:30・旧エッグマン本拠地


リラ「 コツン、コツン、コツン…―――――(野晒しにされた廃墟地は雨風によっていくつか錆びついた鋼の地面をコツコツと掻き鳴らしながら歩いていた)………数年前、ここで『晴天様』が戦闘していたという情報を聞きつけました。当時の目撃者の証言を聞くよりも、周辺の監視カメラを解析すれば一目瞭然でしょう。ということで……よろしく頼みましたよ。 」

C「 シ ュ コ ォ … ――――― (令嬢の背後、猫背姿勢で後を付けるのは蓄光ラインを輝かせる黒いフードに身を纏ったダウナー気質の少女。防塵マスクの内側より呼吸音を静かに鳴らし、今にも眠たそうな表情で僅かに項垂れている様子だった)ねェ……もうちょっとさァ…遅い時間に起こしてくれるぅ……?言ったじゃん、なんか用があったら「0時以降で」ってぇ…この時間に叩き起こされるのはきっついんだけど……(ふらふらとした千鳥足でようやく彼女に追いつく) 」


"天才ハッカー"  ―――――― コードネーム『 C 』


リラ「22時も0時も同じ深夜なのです!私は0時前に帰りたいのでなるだけ早めにお願いしますよ!さあ、さあ!(Cの背後へ回りその丸みを帯びた背中をぐいぐい押し出す) 」

C「んなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~(間抜けな声を出して「く」の字姿勢で押し出されていく) 」





C「――――――― カ タ カ タ カ タ カ タ … … (廃墟内部。メインコンピューターと思わしき大きなディスプレイを前にそのコンソールを指先で叩き、時折そのデバイスに接続した自身の改造タブレットと比べ見て操作を続行する)……なんとか電源の復旧には至ったけど、こっからどんだけ前の監視データを遡ればいいわけ…? 」

リラ「……確か…『晴天様』がここで目撃されたのは15年前の12月27日…目撃者はそう仰っていたのです。 」

C「ん、おけ。えーっと…つーことは2009年の……えー…………あ、あったあった。(コンソールを操作。ディスプレイに表示された年月日から特定の日付をクローズアップする) どうする?併せて録画データもコピーしとく? 」

リラ「無論です!!!(ずいっ) 」

C「圧やば。わーったわーった… じゃあ再生と同時に録画データもコピっとくから…(フードのポケットからUSBメモリを抜き取りメインコンピューターのデバイスに差し込むと該当記録映像の再生を行った) 」

リラ「わくわく、どきどき……♪ 」


ディスプレイに表示されたのは今より15年も前の映像でした。猥雑な砂嵐が徐々に晴れ、監視カメラが映した映像が徐々に鮮明に映し出されて…そこに、私が求めていた運命の人…『アオ』様が確かに映っておりました。ですが――――


メタルアオ「   すべての生物が我が前に跪く時が来た    」


――――――――― そこには、驚くべきことに『 もう一人のアオ 』様がいたのです


カ ッ ―――――― ズ ガ ア ア ア ァ ァ ァ ァ ァ ァ ア ア ア ン ッ ! ! ! ! (当時を映す記録映像にて、顕在していた本拠地の最高地点にあたる鉄塔の先端に人型の機械人形が佇んでいた。瓜二つの姿をしたその者を睨みつけるように見上げるのは、まだ英雄として名を馳せたばかりの『アオ』であった。そんな時、鉄塔に稲妻が落ち、残骸が爆ぜるように吹き飛んだ――――)


ガ チ ャ コ ン ガ チ ャ ガ チ ャ ガ チ ャ ゴ ォ ン ―――――――――――― ッ ! ! ! (落雷に直撃した機械人形は健在。その影を中心に発生した嵐が竜巻を生み出し、散乱した残骸を逆再生するように引き寄せていく。機械人形に次々と覆い被さる様に合体していく幾重の残骸。本来の姿の面影などを消失させ、歪な形状を形作られ…完成されたのは――――)




メタルアオ → メタルオーバーロード「  グ ォ ォ ォ ォ ォ オ オ ア ア ア ア ア ア ッ ! ! !   (獰猛な爪と翼を生やした巨大殺戮兵器。「アオ」の名を監視ながらその面影も片鱗すらも失くした機械の怪物が、曇天に咆哮を上げ、世界の覇者として君臨するが如くその上空で衝撃を走らせる) 」

アオ「くッ……!? 残骸を取り込んで…巨大化した…!?いや、それだけじゃない…あれは……なんだ……ッ……? 」

Dr.エッグマン「ぐぬぬ…ッ…!よもや、ワシが造ったメタルアオがあそこまでの自我を持ち、そして暴走するなど…ッ…!こりゃあいかん…ッ……!おい、小僧!もはやメタルはワシの制御を受け付けん!このまま奴を野放しにしていれば世界中が未曽有の大被害を受けるじゃろう…!『これ』を使うのじゃ…! 」

アオ「……!これは…『カオスエメラルド』……!?どうして、貴方が……! 」

Dr.エッグマン「フン…!お前さんのことを知らんわけではあるまい!ワシはな、先日の戦いでお前さんたちがソラリスに挑むのを見た…!その時、お前さんの力を利用してやろうと…あのメタルを作ったわけじゃが…おのれダークマスターめ…奴がワシの製造したメタルの制御を奪ってしまったのじゃ…!じゃが、完成した奴に取り込もうと密かに集めていたこの7つの『カオスエメラルド』があれば…なんとか奴に対抗できるやもしれん…!この力を使いこなせるのは、無論…お前さんじゃ…!頼む…ワシに代わって…メタルを食い止めてくれ…! 」

アオ「……わかった。貴方がしてきたことを見逃すつもりはないけど…今は目を瞑ろう… (意を決したように頷くと七つのカオスエメラルドを周囲に取り巻く) 」

DMトゥーン「……決着をつけに行くんだね、アオ。だったら…今回は君の戦いを見守ることにするよ。必ず勝ってこい…! 」

ナナ「アオ君…っ…… ……必ず、帰ってきてね…っ……! 」

アオ「トゥーンさん…ナナちゃん……… ああ、約束する。必ず、勝って、帰ってくる。トゥーンさん、ナナちゃんを頼むよ。(視線を交わした二人から目を伏せ、両腕を広げて七色の宝石に手を伸ばす。高速回転するエメラルドから金色(こんじき)の粒子が自身に流れ込んでいき―――――) 」

アオ → スーパーアオ「   ギ  ュ  オ  ン  ッ  !  !  !  (かつて世界を覆った闇を振り払った聖なる金光をその身に纏い、頭上に君臨する怪物へまっすぐに飛び出したのだった) 」




『英雄』としてその名を届かせた英傑に誰もが憧憬を抱く。私自身がそうであるように。
しかしある者はその力に魅入られ、妬み、「自分が本物になり替わろう」と画策する愚者も必ず現れるのが世の常。
『晴天様』の姿と名前を偽るその機械傀儡は、これまで幾度となくご本人様に戦いを挑み続けてきたのです。
すべては「本物に代わり、自分こそが本物になるため」だと豪語して―――


メタルオーバーロード「 ドシュンッ、ドシュンッ、ドシュンッ――――――!!!(強風吹き荒れる曇天の中を泳ぐように飛翔する巨大兵器。その咥内より結晶体の弾丸が連続射出され、己を追跡する小さな光を撃ち落とさんとする) 」

スーパーアオ「ッ――――――!(この当時においての先日。世界を闇に包み込もうとした究極生命体『ソラリス』との熾烈な戦闘で発揮してから間もないカオスエメラルドによるスーパー化。その不可思議な力に慣れるののに時間は要さなかった。螺旋を描くように全身を捻り、すれすれまで引き寄せた結晶弾丸を紙一重で受け流して空中戦に躍り出る) 」

メタルオーバーロード「アオ…オレはオマエに勝つタメだケに生み出された兵器だ…ッ!だがオレは、一度たりトもオマエに勝つコトは出来ナかった…だカラオレは…自分でジブンの体ヲ徹底改造しタ…!見るがイイ…この姿ヲ…ッ……!オレは…真の『アオ』になった…!真の究極生命体になったのダッ!!(グゥォンッ――――ザギィィイインッ!!!)(巨大にして獰猛な爪で引き裂かんと接近を仕掛ける) 」

スーパーアオ「――――― ッ゛ ! (――― ギ ュ ル ン゛ ッ゛ ! ! )(もはや叩き落とすような勢いで振り下ろされた切り裂きに対し、爪の合間を瞬時に見極めて勢いよく飛び込むことで直撃を免れ、反撃の一手として金色の粒子を纏うナイフをもって擦れ違いざまに右肩へ斬撃を刻み込む)…そんな化け物の姿に成り下がってまで、勝ちたかったのか…っ…?恐ろしい執念だな……! 」

メタルオーバーロード「(ザギィィィイイン――――ッ!!)(反撃に切り裂かれた右肩に破損が生じる。しかし…)ガチャゴォンッ…!(周囲を漂う残骸が傷口を塞ぐように覆い被さり、瞬時に装甲の一部として"再生"されたのだった)…フン…ソレも今となッテは過去のコト… キサマなド、今ノ俺にハ塵にも等シい存在ダ…!圧倒的な力…不滅ノ体……!俺はモハヤ、何者ヲも恐れナイ…!!俺こそガ…驕り高ブル者すべてヲ見下ろシ…誇り高キ人類全ての上に君臨スル―――― 「万物の王」だッ!! 」

スーパーアオ「―――――!?(破損した身体が…!周囲の残骸を取り込んで…"再生"しているのか…!?) はぁぁぁあああーーーッ!! (厄介な能力、その片鱗を見せた怪物に眉を潜めつつ旋回飛行。今度は助走をつけるように遠距離から加速してナイフを突き立てて突撃するが――――) 」

メタルオーバーロード「 グ ゥ ォ オ ン ッ ――――― (アオの攻撃の予測したかのように一段高く跳び上がる。ちょうどその突撃を飛び越えるように眼下にアオの姿を捉えると―――――)――――――  落 ち ろ ォ ァ ッ ! ! ( ズ ガ ァ ァ ァ ア ア ア ア ア ン ッ ! ! ! )(片翼で叩き潰す様に勢い良く振り下ろし、アオに致命的な一撃を叩き込んだ) 」

スーパーアオ「 な ッ ――――― ! ! ? (しまった…ッ!躱され―――――)(加速の勢いをつけた突撃を飛び越えられ、大きな隙を曝け出してしまったところに――――)―――― ぐ あ゛  ぁ゛  ッ゛   !  !  (頭上から押し寄せる強大な力に圧され、凄まじい速度で垂直に地上へと墜落してしていく) 」


―――――――  ズ  ガ ァ ァ   ァ   ア     ア      ア        ン        ッ       !     !     !    (叩き落とされた小さな閃光が彗星の如く墜落し、崩れかけた鉄塔を貫いて地上へ落下。煙を上げて瓦解する鉄塔。振動で揺れる機械の施設。天候は更に悪化し、雨風が吹き荒れ始めた―――)


ナナ「アオくんッ―――――!!(墜落した彼のもとへ息を切らして駆け寄っていく) 」

シルバー「なんだ…ッ…!?すごい音を聞きつけてきてみれば…あれは…アオか…!?大丈夫か…ッ!?くそッ……ここは俺も――――――(アオを叩き落とした機械の怪物を睨み上げ、今まさに飛び出そうとするが―――) 」

DMトゥーン「 ガ シ ッ ―――― (戦いへ加勢しようとするシルバーの腕を咄嗟に掴み取り、否定するように首を振るった)……これは…『彼』の大事な"決着"なんだ。どうか、わかってあげてほしい… 」

シルバー「……!そう…だったのか…… くッ……アオ………(歯がゆい気持ちを堪えて拳を震わせる) 」




スーパーアオ「う゛…ッ゛……ゲホッ、ガッ……!(陥没した鋼の床の上に横たわり、吐血する口元を咄嗟に右手で押さえつけながらゆっくりと上半身を起こす)……ナナ、ちゃん……ダメ、だ…ここは危険だ… 君まで巻き込んでしま――― ぐぁ、ほァ……ッ…!(しかし勢いは止むことを知らず、ドボドボと鮮血が滝のように溢れ出す) 」

ナナ「無理しないで…っ…!これ以上無茶したら…アオ君の体が……っ…! 」

スーパーアオ「…ゼェ…ゼェ……―――――(―――ああ、そうか……自分が……)……自分が、弱いから……アイツに、勝てないのか……っ…… 今までは…仲間たちと一緒に戦ってきて…なんとかなってきたけれど……俺一人の力じゃ、結局…こんなものなのか……ハ、ハハ……(戦意の喪失。その弱気な意思に、全身を覆っていた光が消えかかろうとしていた) 」

ナナ「…………弱くなんか……弱くなんか、無いよ…っ……!(項垂れるアオの両肩に手を伸ばし、倒れかかろうとしていた彼の体を強く支えた) 本当に弱いなら…自分一人でどうにかしようなんて言わなかった……!仲間に頼ることも…自分だけでやろうとすることも…弱さなんかじゃない…っ… アオ君は、いつだって何かを「守ろう」という気持ちが先行していたでしょ…!?それは…ほんとに弱い人が思いつくことなんかじゃない……! 」

スーパーアオ「……ナナちゃん……っ…… 」

ナナ「私は…私たちは、信じてる。アオ君が本当は強い心を持っているってこと…!アオ君なら…絶対やれる…!守りたいものを守り抜ける…!私のことを助けてくれたように…きっと、これからもたくさんの人たちのことも、救えるよ…! 」

シルバー「そうだぜ、アオ。弱気になるなんてらしくねえぜ。お前はそのくらいでへこたれやしねえ…!そうだろう!? 」

DMトゥーン「自分も…ずっとその強さを傍で見てきた。だから君一人に託した。君だけを、信じた。立てるさ、ここから。アオは、「君一人」だけしかいないんだから! 」

ナナ「……――――― ス (懐から小瓶を取り出す。その中には淡い桃色の液体が密閉され、液体の中を雪の様な光が美しく輝いていた)……とっておきの秘蔵の薬品… 大事にとっておいたけれど、きっと使うなら今だと思って… これで傷は治る。私たちも、ずっと見守っているよ。 」

スーパーアオ「……みんな……―――――  グ ビ ッ (一人一人が、信じてくれている。こんな自分のことを。こんなにも、新r内を寄せてくれている。その嬉しさに思わず口の端を拭い、七から受け取った子瓶の蓋を開けてぐいっと飲み込む。咥内を満たす血と意思の弱さをまるごと薬品で流し込むように飲み干すことで、徐々に心臓の鼓動が落ち着いていくのをすぐに感じた――――) 」


一時的なゲリラ豪雨が鎮まり、曇天にまだら模様を描くように青い模様が次々と映し出される。そう、いつだって雲の上は『青空』なのだから――――――




スーパーアオ「――――― ギ ュ オ ン ッ ! (ゆっくりと起き上がる度に強まっていく戦意。その意思に呼応するかのように…見に纏う金色の光が輝きを取り戻し…否、かつてない程の眩さを放ち始めたのだった) 」

スーパーアオ「そうだ…俺は……『 俺 』しかいないんだ。ならその弱さも強さも受け入れなきゃ、自分を見失うじゃないか。ありがとう。大事なこと、気づかせてくれて。もう、負けない。偽物にも…俺自身にも ―――――― ! (そして、『英雄』は蘇る。黄金の不死鳥として、あの青空に向かって飛び出した) 」

リラ「――――――――――――(『英雄』の再起。奇跡を目のあたりにしたその透明感のある瞳は熱望に潤んでいた。不可能など、限界など、そんなものはないと訴えかけるような強い意思こそが、彼を『英雄』たらしめる由縁なのだと改めて思い知る。そして少女はこの奇跡を記録を見た翌年、この時のアオを彷彿とさせるような、ある英雄を描いた小説に出会うこととなる。そのタイトルは―――――) 」


『 Endless Possibility 』 ――――――― "終わりなき可能性"と


スーパーアオ「――――― ゥ ゥ ォ ォ オ オ オ ア ア ア ッ ! ! ! (地上から空へ、雲さえも突き抜けん勢いで巨大兵器を押し出す様に驀進していく) 」

メタルオーバーロード「ヌグゥォァアアアッ……!?(再起動を果たしたアオの光の速さ。それが先程よりも更なる加速を帯びていたことで反応が遅れてしまい、そのまま雲を突き抜けながら押し出されていく)バカナ…ッ……!あれ程のダメージを負ってイナがラ……ッ…!何故…ナゼ…貴様はマダ倒れナイ…ッ……!! 」

スーパーアオ「信じてくれているからだ、自分のことを!だから俺も…『俺自身』を信じることに決めたんだッ!!俺が…他の誰でもない――――――― 『 清辿蒼 』だってッ!!! 」


ボ フ ゥ ン ッ ―――――― ! ! ! (曇天を突き抜け、小さな彗星に押し出された巨大兵器が青天白日のもとにその醜悪な体を曝け出す。金色(こんじき)の彗星は蒼天に白い軌跡を描き、太陽を背後に黒点の様に映し出された)


メタルオーバーロード「ウグァ゛…ッ……!!違、ウ……ッ…!オレが……このオレが…―――――『アオ』となるのだァッ!!!(今度こそ仕留める。その確固たる殺意を露わに、鋭く長く伸び出した爪を突き立てて頭上に浮かぶ人影に迫るが―――) 」

スーパーアオ「―――――(メタルアオ…お前は確かに俺の「偽物」だったかもしれない… だけど、そんな姿になってまで「俺」であろうとしたのは…間違いなく『お前自身』だったんだ。そうだ、初めから……本物も、偽物も、いなかったんだ。俺は『俺』で、お前は『お前』だった。だから、お互いに決着をつけよう―――)―――――― この『 自分 』との戦いをッ!!(  ヒ  ュ  バ  ァ  ァ  ツ  !  ! )(爪を突き立て浮上する機械兵器、その胸部のコアに向けてナイフを思いきり投擲した) 」

メタルオーバーロード「 ズ ド ォ ン ッ ―――――― ウ゛ グ ォ゛ ァ゛ … ッ゛ … ! ! ? (コアにナイフが突き刺さったことで攻撃の勢いを完全に殺されてしまう) 」

スーパーアオ「 ぅ ぅ ぅ ぅ ぉ ぉ ぉ ぉ お お お あ あ あ あ あ あ あ ッ゛ !  !    !   (  ┣¨  オ   ォ   ゥ   ン   ッ   !   !   !   )(蒼天の後光をその背に受けて流星が如く飛び抜け、機械兵器のコアに突き刺さったナイフの持ち手先端へ勢いよく踏み抜き、再び雲を貫いて共に盛大に地上へと落下していく) 」

メタルオーバーロード「 ゴ…ッ゛ (ベギィンッ――) オ゛ ァ゛ (バギィンッ―――)  ガ ァ゛ ァ゛ ッ゛ (メギィイッ―――)(胸部のコアに突き刺さったナイフを強く踏み抜かれたことでその衝撃が全身へ迸り、亀裂が枝分かれのように広がっていく。一部分の破損であれば再生は間に合う。しかし、その中心を突かれてしまえば再生はもはや機能しない。徐々に高度を落とされる最中、全身に備わる武装兵器が綻びを見せて少しずつ瓦解しはじめていく) 」

メタルオーバーロード「 グ ォ゛ ォ゛ オ゛ オ゛ オ゛ オ゛ オ゛ ッ゛ … ! ? ナゼだ…ッ゛……ナゼダァ゛ッ゛!!?ナゼ、キサマに勝てナイ゛ィ゛ィ゛……ッ゛!?オレは…すベテを手に入れたハズダァ…ッ゛……!!オレは万物ノ王…『メタルアオ』…ッ゛…!オレこそガ…ホンモノの『アオ』ダァ゛……ッ゛……!! ウ゛ ゴ  ア゛  ア゛    ア゛     ア゛       ア゛         ッ゛      !   !      !      !      」

ボ ッ グ ァ  ァ ァ ァ ァ ァ ァ ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ン ッ ! ! ! !  」


青空が微かに覗き込む曇天に、大きな花火が爆ぜた。黒煙は風に吹かれて消え去り、地上を暗く染めていた曇り空はいつの間にか何処かへ消え去って、『晴天』が広がる―――――


ナナ&DMトゥーン&シルバー『(広がる青空、そして…その空に浮かぶたった一つの人影の輝きを見上げ、満面の笑みを浮かべていた)』

スーパーアオ「―――――――――――――(自分自身との戦いに勝ち抜いた『英雄』は、晴天を見上げて微かにほくそ笑んだ―――――) 」


―――――――――――――― ブ ツ ン ッ (奇跡の瞬間を映しとった映像は、そこで途絶えてしまった――――)


C「――――……あらま。途中で止まったっぽい…?もうずいぶん放置された施設だから、以降の記録はまともに残されていな……?リラ……? 」

リラ「(プルプルプルプル…)――――――――― が ぁ っ ご い い ぃ ぃ … っ … ❤❤❤ (ブワッッッッッッ) 」

リラ「これが…15年前の『アオ』様…っ……!「あの時」見た時と変わらぬお姿…っ…❤なのにますますかっこよくなられて…あ゛ぁ゛あ゛っ…❤ヤバババババ……ヤバいのです…っ…!❤みみみみ見ましたかッ!?『晴天様』のご活躍ぶり!!なんて…神゛々゛じい゛…っ……!!❤まさに…『神』…なのです…っ❤それが、生きている…!『神』は死んでなどいなかったのです!実在しているのです!これは崇拝…ッ!!!!!圧倒的、崇拝ッッッッ!!!!!!!神!!!!!!!!!き゜ゃ゜っ゜❤❤❤ 」

リラ「人気者になれば当然それを真似する偽物という輩も現れるのが世の常…ですがッッッッ!!!!!!『あの方』はその存在を邪見することなく!対等な相手として1対1の決着に臨んだのです…ッ!偽物だと否定せず…かの敵を合わせ鏡の様に相対し、「自分自身」との戦いに見立てたような…!あぁぁぁ~~~~っ❤流石…『アオ』様…❤その寛容な心持…他(た)の英雄にはない『あの方』だけの考え方…素敵です…❤ 」

リラ「そして…なによりも…!自分や仲間を「信じる」ことの大切さに気付いたあの…!『アオ』様ご自身の多大なる成長の一歩、その素晴らしい瞬間を目撃できて感無量なのです…!「信じる」限り、可能性が潰えることはない…だから『晴天様』は何度だって立ち上がるのです…!これぞまさに…"終わりなき可能性"と呼べるもの…!私に文章力というものが備わっていれば、晴天様の武勇伝を描いた長編小説を書き上げてみせるのに…!あぁぁぁ~~~…❤だけど今は…この感動をずっと抱いていたい…❤帰ったら寝る前にもう一度映像を見返すのです…❤C!貴女もご視聴するのです!今夜は寝かさないのです! 」

C「勘弁しちくり……あんたのそういうところまぁじムリなんだって……(げんなり) 」

リラ「そうと決まれば今すぐ行くのです!(聞いてない)茶菓子も用意しますので!!今宵は『晴天様』の大視聴会なのですー!!!(Cの腕を強引に引っ張って施設を飛び出していく) 」

C「んなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~――――――――― 」



リラ「(そんな思い出話を嬉々とした赴きで語り明かしていた頃、いつの間にかテツヤが振舞ってくれた夕ご飯を丁寧に平らげていた)―――……私の知らないところで、『晴天様』…『アオ』様は…またこの世界を御救いくださったのです。世間には大々的に公にされることのなかったものだとしても…「日常」とは、そうやって私たちの与り知らぬところで誰かに守られていたのです。その事実が賞賛されないものだとしても、私は…私だけは…ずっと、忘れずに後世に伝えようと思います。『英雄』が教えてくれた、「信じる」ことの強さを…(満足げに語り終えたその表情には余韻に耽る綻びが、確かにあった) 」

テツヤ「………"いいな"。(リラが語り明かす『英雄』のサクセスストーリーに真摯に頷いてみせる)あんたが語る『その人』も、『その人』のことを語るあんた自身も… 自分以外の誰かを想うことが、とても素敵なことだと思う。「信じる」、か……俺はそんな大層なことを口にしたことはないが、なんだか良い響きだな。(リラの完食を見届けて「おっ」とどこか嬉しそうに目元を綻ばせる) 」

リラ「……私は所詮『あの方』の追っかけに過ぎません。一生気付かれず、或いは出会うことがないのだとしても…それでも、一生涯をかけて『あの方』を追いかけ続けます。命を救われただけじゃなく、私にはなかった大切なことをたくさん教えてくれたのですから……(ふと壁にかかっている時計の時刻を見やる)……結構語り尽くしてしまいましたね。ですが、まだまだこんなものではございませんよ。今夜はもう夜も遅いですし、御夕食の御片付けを手伝いましたらお暇させていただきます。 」

リラ「…テツヤさん……美味しい夕食を、そして…私なんかの話につきあってくださって、ありがとうございました。 本当は…嬉しかったのです。あんな風に言ってくださったのは…―――――― 」


――――― 気が向いたら、また話を聞かせてくれよ。アンタが、リラさんが"笑っていられる"話をさ。


リラ「……今度は、時間を見つけたら私の方からテツヤさんのお店にお伺いいたしますね。確か、リサイクルショップを営んでいるとおっしゃっておりましたよね…?とうことは…もしかしたら…!『アオ』様が所有されていたものも見つかる可能性も否めません!幸いなことに、どうやら私には『アオ』様に由来する事柄が迷い込んでくる幸運に恵まれているみたいですので!偶然…かもしれませんが…いえ!これは必然!そう信じてやみません! 」

テツヤ「ははは…ああ、いつでもどうぞ。『その人』が愛着を注いでいた品があるかどうかは俺も定かではないが…見つかるといいな。 」

テツヤ「………(「信じる」ことか…)……フッ……"いいな"。いつか俺も、そういう強い気持ちが芽生えるといいな。(そんな独り言をぼやきつつ、キッチンで談笑していた面々たちと片付けの作業に入るのだった―――) 」



― 人工島「エーテルパラダイス」 ―




プレッシャー「―――……これが約束の『ブツ』だ。(広大な海に浮かぶ人口島。真っ白な建造物の中の何処かにある一室にて、ある者にアンプルを手渡した) 」

ヴォルブ「(巨漢の男から手渡されたアンプルを静かに受け取り、その中で揺れる奇妙な液体の色味を目視で伺う)………確かに受け取りました。しかし、想定していたよりあまりにも量が少ないように見受けられます。本当にこれっぽちの量しか採取できなかったのです?(白いスーツを着こなした男は、丁寧な物腰でありながらもどこか得体の知れない素性を孕んだ表情で巨漢へと振り返る) 」


[[エーテル財団X]] "支部長" ――――― 『 ヴォルブ・ガーダイン 』


プレッシャー「……邪魔が入った。そのせいで回収にてこずってしまった。 」

ヴォルブ「ホゥ……まあいいでしょう。いずれにしても、これだけあれば後は解析して複製することもできましょう。(アンプルをデスク上に横たわらせた小型のアタッシュケースに入れて閉ざす)約束通り、報酬は明日お渡しいたします。そういえば…我々が提供した武装「バニッシャー」の調子はいかがでしょうか?先日のメンテナンスの日程にお越しいただけなかったそうですが…不調などはございませんでしたか? 」

プレッシャー「………(先日の採掘場で起きた苦い経験がフラッシュバックする)………問題はない。無茶をしただけだ。 報酬を貰うついでに改造を希望したい。 」

ヴォルブ「いいでしょう、わかりました。では明日、そのようにスケジュールを組み込んでおきます。貴方は我々『財団』にとって大事なビジネスパートナーですからね。(張りぼての様な笑みを浮かべる)……ところで、傭兵家業の方は上手く行っていますでしょうか?今は背後で『我々』が支援しておりますが、貴方様お一人では今回のようなアクシデントに見舞われた時に対処が難しいでしょう。そこで、「提案」がございます。 」

プレッシャー「………なんだ…? 」

ヴォルブ「今回貴方に回収していただいたエーテル物質…通称『 ガヴリエル 』を主体とした人体実験の成功者たちで構成された新たな『組織』との契約が正式に結ばれることとなりました。今後我々『財団』は、『彼ら』と共に世界各所に点在する『 ガヴリエル 』の回収を行い、事業及び組織の拡大を図る所存です。財団は、新たな投資対象としてその活動に惜しみない支援援助を行う予定です。ですが、新規で設立された組織…人材の確保に少々時間を要しております。我々はあくまで研究団体。人材派遣は可能ですが、『彼ら』のような"超人"の枠には収まりません。そこで、私から貴方を、その『組織』の新メンバーとして推薦をしたいと考えています。 」

プレッシャー「………なるほど。確かに、これまで俺は孤高に活動を続けていた。窃盗、殺人、破壊…時には戦争に加担など、非合法な依頼を請け負ってきた。だが…あまりにも俺の名が広がり過ぎたことで、サツの連中もいよいようっとおしい程に様々な対策を折り込んできた。この間の採掘場襲撃時も、すぐに現れやがった。あの時のような思わぬ事態の遭遇もある。そろそろ…何処かの旗の下に入ることも検討していたところだが… しかし、あの『サンプル』はなんだ?『ガヴリエル』とは?それを利用する『組織』とは、なんだ? 」

ヴォルブ「詳しいことはすべて『彼ら』に聞くのが一番いいでしょう。『彼ら』は、"予言"に従い、この世界に真の"混沌"を齎す者たち。世界政府により秩序たる統一が行われようとするこの世界における"救世主"なのです。その『組織』の名こそ―――― 」


―――――――――――― 『  バックドラフト  』




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最終更新:2025年05月05日 00:20