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『 LAST RESORT 』
#6:天に祈り秤は傾く
― 地下鉄国《アンダーホーム》・中層 ―
――――― ガギィッン ギャリィ イ ンッ ガッ ギィイインッ ! ! ! (深層へと続く薄明りの地下空間。暗雲を微かに照らすのは刹那の内に走る幾つもの火花。鋼の残響が延々と何度も木霊するこの場所で―――――二人の青年が互いに刃を振り合っていた)
ライオット「――――― ズ ガ ガ ガ ガ ガ ッ ! ! ! (正面より繰り出された一撃を斜め45度に構えた光槍で受け止めた反動を押し殺すように、滑走後退する)……ッ……!(僅かに顔を上げ、相対する相手の顔面を睨みつける。張りぼてのような笑顔を振りまく、人の姿をした異形へ―――) 」
ヴァニタス「どしたどしたァ!斬れよぉ、ほら、きーれーよー!今なら首が50ッッパァセントオフゥ!!お得ゥ!なんだッ!!安いよ安いよォ!人間特売日!命が!!たいっへんお安い!!(快活、狐目でまくしたてその場でステップを踏み、逆手持ちにした光剣を回転させ弄ぶ。その余裕には違和感がある、"予備動作が殆ど無い"。互いを弾き間合いを計り直したにも関わらず、反動を流す動作を微塵も見せず態勢を立て直すばかりか、ステップを踏んでいる) 」
ライオット「(研修期間で視た時と動きが明らかに違う…本性も戦い方も今まで隠していたか…ッ )(ラステルムでの某発電所にてヴァニタスと共闘したあの日の記憶と、目の前の現実を脳内で比較しながら態勢を立て直すように姿勢を低くする)――――――― る゛せェッ ! ! (―――― ギ ュ ル ル ル ォ ア ッ ! ! )(前傾姿勢からの疾走。横軸回転による螺旋を描きながら、勢いをつけた突貫をしかける) 」
ヴァニタス「 トッ トッ (ライオットの初動に合わせバク宙、背後に佇む柱へ両足を付け……) ト ン ッ (柱を蹴り高所からライオットへ急降下、強襲。おちょくっているのか模倣するかのように錐揉み回転し……) ギ ィ ィ ン ン ッ ッ !!!! (逆手持ちした光剣が真っ向から衝突、火花を散らす。0距離、互いの眼球の虹彩までもが識別できる距離で、明確な"侮蔑"を込めた笑みを浮かべ、対立す) 」
――― VS.【第10調査兵団戦闘員】ヴァニタス ―――
――― VS.【■■第10■■■■戦■■】ヴァニタス ―――
――― VS.【クリティアスヘイヴン第10格/墟無】ヴァニタス・クライム ―――
ライオット「 ガ ギギ ガッ ギャ ッ ガッ ! ! (光槍を巧みに操りヴァニタスの斬撃を捌ききる。リーチ差こそはあれど、この長柄の欠点である懐へ潜り込まれないように、攻守を維持した立ち回りで拮抗し合う)―――― ボ グ オ ォ ア ア ン ッ ! ! (そんな中、空ぶった突貫がヴァニタスが背合わせたもう一つの柱に直撃。鋭利な矛先は頑丈な石柱をいとも容易く抉り崩すが、肝心の敵は頭上へと翔ぶ。緩慢とした時間の中で瓦礫や粉塵と共に接近するヴァニタスを見据えると――) 」
ライオット「) グ ニ ィ ン ッ ―――― ッ゛!!!( ガ ギ ィ ィ イ イ ン ッ ! ! ! )(咄嗟の判断で光槍が瞬時に縮むと共にナイフ状の双剣へ形状変化。今度は接近戦に特化した戦法で牽制していく) 」
ヴァニタス「っへェ、やるじゃーん!(瓦礫、砂塵、視界を遮る一切を気に留めることなくライオットの振りかざす斬撃を的確に見極め)カッッ カンッ カンッッ キ ン ッ (弾くよりかは"止める"。攻撃が来ると予測される位置、或いはライオットが予測する位置に斬撃を置くかのようにして、伸縮しナイフ形態へ切り替えた光剣を振るう。迎撃、攻撃双方に初動と終わりの予備動作、反動がなく最短最低限の動きで立ち回り) ヒュ ン ッ (再びの違和感。今度は緑白色に発行する残像を残し、結果だけを切り取ったかのように蹴りを"放っていた"。足裏はライオットの鳩尾を今まさに捉えようとしている) 」
ライオット「(こいつ…できる…ッ…!他の同期らとは一味違う…だが……!この間合いは俺の――――)――――― ぐ ゥッ !? (ガッ――ゴッ――― ズザザァーーッ…!)(拮抗する剣戟の最中に見定めたはずの決定打。しかし、それは覆される。瞬時の果てに――理解が追い付くよりも前に――蹴りを"放っていた"ヴァニタスの蹴撃を鳩尾に受けて二度地面にバウンドしつつ、受け身を取った) 」
ライオット「―――――(なんだ…一瞬、疾くなったか……ッ…?)(口元に付着した粉塵の誇りを腕で拭いながら前傾姿勢を維持)――――ダァンッ!(クラウチングスタートのように飛び出すと、握られた双剣の内の一本を逆手持つ)――――― る お ら ぁ ぁ あ ッ ! !( ギ ュ ル ル ァ ァ ッ ! ! ) (旋風を体現するような苛烈な回転斬り。直前上にある者を呑み込み、華麗に切り刻む斬撃を繰り出そうと迫る) 」
ヴァニタス「ハハッ それさァ目ェ回らねえェー?(斬撃の竜巻が接近する。余波のみで前髪が翻るが、光剣を"解除"し両手をフリーにすると、丸腰の状態でライオットへ向け駆け出し……) ジッ (緑白色の残像を残し"消える"、否、ライオットの視界から外れる。スライディングで竜巻の根本、斬撃が通過する位置よりも真下を潜り抜け、ドッジロールで立ち直り) ―――もしかしてロジェの奴……あんたらにこういうの見せなかった?一度も?(世間話をするかのように笑みバックステップ。
アサギ、ロジェスティラ付近まで後退し彼女らへ一瞥をやる) 」
ライオット「―――――!!("また"だ…ッ、なんだ…今の動きは―――)……どういうことだ…『アイツ』のことを知ったような口をッ!(背後へ一瞥を送るヴァニタスへ斬りかかる。その視線の先では、現在進行形でアサギがロジェスティラの救出作業を懸命に当たっている。その邪魔を一度たりともさせないという強い意思が先行したのか、先程よりもやや強情、更には一縷の焦燥感さえ垣間見せて迫る) 」
ヴァニタス「ハズーーレーー。 カンッ(プラスチックの定規でアルミ板を叩くかのような軽い衝突音が反響する。電流を纏う指先、それがライオットの荒削りながら力を込めた斬撃を"つまんで"受け止め、平然と佇んでいた。薄く笑み、"青い筋を浮かべ駆動音を鳴らす"腕をゆっくりと下ろし、自身へ向けられた矛先を床へ逸らさせ、一歩、距離を詰める) いやぁ、大事大事にされたようじゃないか。非力で、機能を制限していれば平均的なスペックの人間として見られると思ったのかなって……お兄ちゃん"妹機"の心境を思っちゃったりして 」
ヴァニタス「――――自分だけが特別不幸と思ったのかなぁ。それとも、自分だけが特別優遇されると思い上がったのか。どちらにせよお笑い草だ、いくら模倣したところで……そもそもこの世界に"人間なんて最初っから殆どいないようなものじゃないか"。ハハッ なあどうだったパイセン?あいつが休日に何をするだとか、将来の夢だとか、そういったプライベートの話題してたか? (該当する記憶はない。ライオットはもちろん、第3調査兵団の団員に共通することだ。ロジェスティラは"雑談"をしたことが、一度もない) 」
ライオット「 ッ゙ ―――――― ? ! (反響する鈍い衝突音。その直後に視界に入り込んだ奇怪な現実に表情は絶句。違和感へと空ぶった斬撃の矛先が行き場を失ったところで振り返るが、そこにはすでに距離を詰めていたヴァニタスが目と鼻の先まで歩み迫っていた)……!?(彼の問いかけに思わず視線を逸らす。脳裏を巡らせるが、確かにこれといった明確な関りをした記憶はない。不確かな自分の本当の記憶とは異なり、これだけははっきりと鮮明に結論が走った) 」
ヴァニタス「"らしい"なぁ。世間一般における人間性と自身の異常性を客観視出来ないから、僕のように能動的に繕えないし、自己を受容もできない。化け物らしい要素を徹底して隠し、嘘をつかずにいる事でしか他者から拒絶されないように身を守る。そんな風にしなくたって…… パ ァンッ (閃光《グリント》を受け止めていた掌で火花が弾ける。形態を維持していた光子にノイズが走り、形状に揺らぎが生じて"反動"でライオットを後方へ吹き飛ばそうとする) 」
ヴァニタス「 だぁーれも!思い描くように人間らしく守られちゃいないってのにね! 身の程を知れって話だよ、彼女も君等も! どいつもこいつも消耗品でしか無いんだ、使われるために、消費されるためだけに腹から生産されてくる。僕らはより"用途"を明確にし精肉されただけだ!本質で物事を捕らえろよなァ! (追い打ち。後方へふっ飛ばしたライオットの頭髪へ掴みかかり、同時に飛び膝蹴りを鳩尾へ見舞おうとする) 」
ライオット「 ぐ ッ゛ ――――― がふ ッ ! (淡々と少女の出自を語る青年の言の葉が銃弾のように心髄に突き刺さり、戦意が喪失。脳信号が肉体に迎撃或いは防御を支持してもその通りには動けず、成すがままに吹き飛ばされて転倒する)…ザ……ズザ…… フゥー……ッ……(歯間から滴る僅かな吐血を吐息と共に噴き出しながら、緩慢な動作で起き上がる)……客観視できてねェ…か……ッハ……笑わせるな……(彼の嘲笑を、そのまま豪快に跳ね返す様な笑みを零す) 」
――――わたしたちを戦争の駒として 改造人間として育てたのはイシスです。でも それでも 私達を生かそうとしたのも彼女です。
マリマロンで私は、エデ女王のあなた達レギュレイターの たくさんの人達の"むじゅん"を見ました。
こまかいことは大人みたいにわかることはできないけれど……
ライオット「……テメェこそ何も知らねェみてえだな… アイツがどうやって生まれ育ってきたのかは知らねェが……テメェが思ってる以上に『ロジェ』の奴ァな…真っ当に"人間"してんだよ…ッ!! 」
――――ただやっぱり"しかたなかったんだ"って、今は思います。
だってこの世界はどこまでもしかたなくって、いみはなくて、悲しい事の先に嬉しいことは待っていなくって。
人はただ生まれてくるだけ、増えるだけ、増やせばいいだけ、消耗するだけ。
人を作ったらそれだけでいい、しあわせかとか、いきられるかとかどうでもいい
それがこの世界で、社会じゃないですか。
―――――それでも
ライオット「自分の意思でアイツ自身の戦いにケリをつけにいく能動(こと)も!自分のいた居場所を理解する受容(こと)も!「俺たち」がどうこう指図するよりもあいつはずっと前からッ!!自分の立場を分かって!その意思で今日まで歩いてきたんだろうがッ!! 」
―――――それでも、いみもないのに団長会議でイシスが抗ったから。あなた達レギュレイターが彼女をかえてしまったから。
平和なんて、嘘だらけの虚しいことばを、ほんとうにしようとするから。
諦めない人がいるから…… そのせいで 私はわからなくなるんです。
虚しいとわかっているのに、諦めることができなくなったんです。
ライオット「誰だってなァ…生まれ意味に直面して虚しさを感じるだろうぜ。ただ惰性に生きて、このまま何も残さず死んでいくのか?ってな。俺だって今でも路頭に迷う時はあるぜ。ロジェも辿ってきたはずだ。だからこそ、分かる。一度その虚しさを通過したんなら、これからの結末(ゴール)をどう描いていこうか、恥ずかしげもなく期待しちまうんだ…そうしなきゃ、これからを生きる意味を見失うからだ。ロジェはきっと…"進もうとした"んだ…!虚無で覆われて何も見えなかった道行く先へッ!! 」
―――――命はただ生まれ消費されるもの 人は生物の一種でしかない。社会とは、命を循環させるための機能。
幸せとか、尊厳とか そんなものはただ、全てが虚しいだけ。なのに…… なのに わたし はあなた達のせいで
ライオット「(―――― 「 あの人を 虚な嘘にまみれた"きぼう"を諦めたくない」) だから諦めなかったんだろうがッ!!こんなクソッたれた虚しさが繰り返されるだけの世界で、たったひとつの「希望」を抱いてッ!!その運命に抗って生きていこうってッ!!! 」
ライオット「……誰も思い描くように人間らしく守られちゃいないだあ……?ッハ!!ロックンロールの風上にも置けやしねェなァ!!人間を捨てたテメェが、"人間"語るんじゃねえ。そいつを叫んでいいのは自分自身を見捨てなかった奴だけだッ!!ロジェは強えぞ…?テメェなんかよりも遥かになぁ…ッ!!(咥内に溜め込んだ血反吐を不敵な笑みと共に吐き出す。かの青年の嘲けりに塗り固められた顔面に唾を吐くかのように) 」
ヴァニタス「…………。……………………(眉を顰める。否定の意というよりは、違和感に困惑しロジェスティラを一瞥。すぐにライオットへ目線を戻し)――――――ハッ(口端を釣り上げ乾いたため息を一つ零し、目線をどこにやるでもなく) 」
『それができねえから、こうなったんだろうが』
ヴァニタス「自分を束縛しているもの、立ち位置と状況を正確に把握できなくちゃ何から抜け出して進むのか定まらない。 繰り返してろよ、白痴が。(おもむろにコートのポケットへ両手を突っ込む。何を仕掛けるか判別がつかない、構えですら無い状態でライオットへ向かって駆け出し……) 」
ギュ イ イ ン ッッッ (熱源が首元へ迫る。緑白色の光線がライオットへ迫っていた。射手はライオットの後方で浮遊するファンネル、ロナが使用していたそれと全く同機種の物だ。相違点は"有線接続であること"。ワイヤーロープ程度のコードが蛇のように自立しヴァニタスのうなじへ接続されている)
ライオット「 ニ ッ … テメェがな、陰キャが (暗闇を走る熱線、言わば四角で判断できるものへの動体視力なら後れを取らない。背後を取ってきた浮遊機へ微かに一瞥を与えつつ、すぐにヴァニタスへ標的を定めると――)―― グ ニ ョ ン ッ … ド ッ ギ ン ッ ! (光で構成された双剣が丸ごと己が両腕に纏われ、ガントレットとして形状変化する)―――ぅぉぉおおらァッ!!(ドグゥォオオオンッ!!!)(そのままヴァニタスへ殴りかか―――らない。振りかぶった拳をそのまま眼下のコンクリート床へ叩きつけることで地盤が拉げ、周囲に砂塵が舞う) 」
ライオット「 グ ル ン ッ ―――― ガ ッ (敵の死角を再び奪った直後、背後から接近を仕掛けるファンネルへ向かって疾走。コード接続部を首根っこを掴むように鷲掴むと…)―――――ぉぉぉおおおおらァッ!!!(――― グ ゥ ォ オ ン ッ ! ! )(コードを豪快に手繰り、砂塵に塗れたヴァニタス本人を瞬く間に引き寄せ、フリーだった左拳による裏拳を顔面部へ叩き込む) 」
ヴァニタス「 ! (認識に身体が追いついている……こいつ、この速度領域に踏み込んでいる……ユナイタル装着の影響か……?) グ ンッ (首が僅かに曲がり、ライオットの意図した通りに間合いへ引きずり込まれる。いかに応答速度、移動速度を底上げしようがこの状況下では回避する術がなく―――)――――ゴッッッ(左側頭部へ左拳が直で入る。ライオットの手に返る感触は、さながら鉱物を殴った歳のそれだ、骨の密度が常人を逸脱している) 」
ヴァニタス「ってぇ~~……(ギョロリとライオット……の背後を一瞥。上空に構える"三機のファンネル"項から有線接続されるビーム射出装置は合計四機。ライオットが捕獲したそれと異なる機体が散開、回転しつつオールレンジ攻撃を仕掛け……) ズォ ビ ィッッ(床についた手を裏返し、掌から直接ビームサーベルを生成。ファンネルからのビームで行動を制限したうえで、ゼロ距離の刺突で頭蓋を貫こうとする) 」
ライオット「―――――(ようやくこの辛気臭え場所にも目が慣れてきたか…?僅かだが見えるようになってきた気がするが…)……っ……!やっぱそうくるよなぁ~~~~~!テメェ、いよいよマジで人間辞めてんだなって嫌でもわからせにきてらぁ……んならよぉ……―――――― もう制限(セーブ)しなくていいってことだよなァ…!!(敵の懐手札が見え危機感こそはあるが、それを上回る絶対的な自信。否…目の前に相対する者を明確に「敵」として認識できたことへの闘争心が、徐々に向上していく) 」
ライオット「師匠…使わせてもらうぜ…アンタの業(ワザ)ッ!!( ビ ュ オ ッ ―――― ! )(ボクシング選手さながらのファイティングポーズの姿勢から潜り込むような接近。脇を閉めた姿勢を保ちつつ四方八方より交差するように自らの心臓を撃ち抜かんと迫る光線群を華麗に見切り、着実に敵本体との距離を詰めていく) 」
明鏡止水 ―――
磨かれた鏡は汚れなどない磨かれた鏡は物事をありのままに映し出すように…
流れることなく静止した水は波紋一つなく物事をありのままに映し出すように…
ただ己を磨き、座して待たれよ。さすれば焦燥する心の鼓動は鎮まり、周囲の音や存在をありのままに感じ取れるだろう。
ライオット「―――――(いつかの人狼の教えが脳裏に過った時、地盤や柱を焼き崩す光線によって齎される喧騒の音の中で…これから穿つべき相手の呼吸の音が強く反響するのが聞こえた。視覚から聴覚、やがて直感から確信を経て、ヴァニタスの間合いへ踏み込むと、その刺突と同時のタイミングで拳を振り抜き―――) 」
ライオット「――――――― "灯狼流し"ッ!!(刹那。紫狼が喰らうかのような厳かな闘気が自身を纏う。所詮は幻影。しかし、その拳に込められた闘気は幻を歪ませる現のものとして強かな輪郭を帯びる。首を右へ思いきり反ってヴァニタスのビームサーベルを掠める程度に回避し、同時に強大な破壊力を誇る鉄拳としてその顔面のど真ん中へ繰り出した) 」
ヴァニタス「(打撃……術理を仕込んでるな、直で受けるのは不味い)ゴッッッ(首を僅かに捻り側頭部で放たれる拳撃を受ける。口端から赤が溢れるが、前へ突き出される腕へ巻き込まれるかのように顔の角度を変え……) ぐる ん っ ズォビィッッ ("受け流し"でダメージを軽減、更にはきりもみ回転しながら吹っ飛ぶのを利用しライオットの頭上へ。天地を逆さに、標的を捉え、複雑に蛇行するファンネルがライオットと一定の距離を取り、都度角度を変えながら熱線を射出してゆく) 」
ライオット「出鱈目に撃ったって俺には当たらねえぜ。何故ならこんなもん…アサギの奴との組み手に比べればちょろすぎんだよッ!!!(正確無比の狙撃を得てとする後輩と何度も交わした組手がフラッシュバック。その記憶と現状の光景を比較し、不敵な笑みをひとつ崩すことなく熱線の雨をステップで掻い潜っていく) 」
アサギ「……?(なんか呼ばれた気がする…気のせい…?)…ッハ!(いかんいかん、と首を左右に振るって目の前の作業に集中。磔にされたロジェスティラの肢体の拘束を丁寧に解くのにかなり時間がかかったのか、やっとの思いで救出を完了させる。前のめりに倒れかかる彼女を抱きしめ、そっとイシスの遺体の傍へ横たわらせる)……大丈夫っスよ。先輩なら、必ずやってくれる。あの人は…"そういう人間"なんすから。(誰に発現するでもなく、しかし語り掛けるようにライオットたちの光線を遠目に伺う) 」
ヴァニタス「(勘がいいだけかと思ったが……動体視力か。いやそれだけじゃないな、後方からの攻撃にも対応していた――――― おかしい、こいつはその領域に踏み込んでいたか?) トッ (垂直落下し着地。一歩の床蹴りで低空飛行し接近。その間、三機のファンネルが先行しライオットを挟み込むようにしてビームを射出、行動範囲を狭め、自身は掌から発生させたビームサーベルを構え正面から……) 」
ヴァニタス「 ギ ンッ (否、交差領域に入った瞬間コンパスで半円を描くかのような軌道を描き急旋回する。残り一機のファンネルがライオットの足元に突き刺さり、それを軸に自身を振り子のようにすることで急旋回を可能としていた。一気に死角へ潜り込み……) ハイ、〆(首へ一閃を、真一文字に振り抜……) 」
バ ス ッ
ヴァニタス「 ? (ビームサーベルが霧散し、空振る。手の甲に風穴が空いていた。)これ、は…… 」
オアシム人形「 キュ オ ッ (ファンネルが合計五機。ヴァニタスのそれに一機紛れ込み、上空に浮遊し口から実弾を射出していた) 」
ライオット「ちッ…!うざってえ…―――――!!(交錯するビーム群を掻い潜る最中、逆に一気に距離を詰めてきたヴァニタスへの対応に贈れてしまい好きを晒してしまうが―――)―――――!?(その窮地を、救われた。よりにもよって、自身にとっては見覚えのある、あの愛嬌のある顔をした「人形」に…)……オアシム……団長……ッ…?(上空に浮かぶ芋虫型の端末に、驚きを示していた) 」
ヴァニタス「(意識転送……!ここに移動してきたのは"義体のバックアップを保管していたから"……生き汚さを見誤った、ミスったな)――――ギュ イ ン(ファンネルの砲塔を全てオアシム人形へ、残る右手にビームサーベルをライオットへ。タスクを二人に割り振り"切った"。この事が明確な"徒となる"―――――) 」
ロジェスティラ「――――――――――――――――― ジッ (指先が、ネジを巻いた人形のようなノイズを立てて痙攣し……) 」
┣" グ オ ッ (爆炎が地下空間を赤く照らす。ヴァニタスが佇んでいた位置、彼の胸部に飛来した光弾《グレネードランチャー》が爆ぜ、後方へ吹き飛ばした)
ロジェスティラ「――――――。――――――フ……フー……ッ !!!! (腕、肩は震えながらも照準は定め動かさない。盾から分離した銃型のガジェットの口は煙を吐き、その方向を希薄な意識ながらも睨みつけていた)――――――2番ッ!!!!(焼き切れた喉、かすれたながらも声を捻り出す。何かの作戦に用いられる符号。"敵側の兵士"としての彼女を知らないライオットからすれば意味破壊せるはずもない、だが『追撃』を雨庵が水であることだけは伝わる) 」
ライオット「―――――― ! ! (意識が分散したヴァニタス、それでも矛先が未だ自分に向けられていたことに警戒し身構えたが…そこに、何処か既視感のある光弾の爆発に目を見開く。黒煙を上げて吹き飛ぶ青年から、光弾が飛来しら方角へ慌てて振り返ると―――)……ロジェ………!……!?(再起を果たした彼女に驚きを、そして、今まで垣間見たことのなかったその姿にも異なる驚愕が走る。しかし、いずれにしても疑う余地などない。何故なら、例え姿形が変わろうとも…今、この瞬間、自らの意思で立ち上がったその姿こそ…自分がよく知る『ロジェスティラ』という人間なのだから) 」
アサギ「先輩…!ロジェっちが…急に、目を覚まして……!(意識が朦朧としながらも直立を維持しようとする彼女を、文字通り背中から支えていた) 」
ライオット「……ああ、どうやらお目覚めらしいな。そうだろ…――――― 「ロジェ」!!(気さくに、しかし強かに、『仲間』へかける時と同じイントネーションで少女を呼びかけると彼女たちを背に自身もまた身構え直す。ガントレット形態から元の光槍へ。閃光《グリント》は、強い輝きを帯びる――――) 」
ヴァニタス「――――――。(黒煙が晴れ、身にまとった火を手で払い"苦痛"を微塵も感じさせない無表情で佇む姿を表す。ファンネルへ接続されていたケーブルは全て絶たれ、遠距離攻撃手段こそ失っているが、戦闘行動に支障ない余裕がまだ払えずにいた。)……。(ライオット、アサギ、お足無人形、ロジェスティラを順に視界に入れると何かを軽巡するかのように頭上を一瞥し) 」
ヴァニタス「――――ハッ(煤笑うと、間髪入れず"バックステップ"を踏み"間合いから更に遠ざかってゆく"。背後はあの大穴へ続く断崖だ) 」
ロジェスティラ「………!(その行動を予見していたかのように誰よりも早く武器を構え、引き金を引こうとするが) ガフッ……(口端から赤が溢れ崩れる。床に手をつきなんとか意識を保ち、声をひり出す)止"め"……て……ッ 今離脱され……ら… とりかえ……か"……ッ 」
ライオット「――――― ッ ! (後退るヴァニタス、その行為に切羽詰まるロジェスティラ。双方の行動を比べるように瞬時に観察した直後、奈落の底へ後ろ歩きで向かうヴァニタスに向かって手を伸ばしながら駆け出していくが―――) 」
ヴァニタス「 に へ ら (手をひらりとふり、前足を大きく前へ突き出して、残す面々を嘲笑う満面の笑みを浮かべ…… 背後へ自由落下。 離脱した。 ) 」
ロジェスティラ「…………!! ゲホッ オ"ェ"………ハッ ハッ……(その顛末に眼球を大きく開き瞳孔が震える。側に居るアサギの服の袖を掴み、酷く取り乱した様子で彼女を見上げ、すがるようにゆする)地上に連絡……ッ ここから離れないと……み、みんな……し…… ……!あ、ぁ……いし、す……『オーロラ』を……『私』を、地下から、出して……!!『アレ』と戦うには、この身体じゃ……! 」
オアシム人形「 ヒュ オ……(ホバージェットを蒸しアサギの側へ着陸。かつて自分だった義体を一瞥してから彼女へアイコンタクトを送り『私"は"無事だ』と短く伝える) 落ち着いてロジェ。同位体は『シンデレラ』『ラプンツェル』『オーロラ』……そして地上の『アリエル』のみ。敵性個体は『シンデレラ』『ラプンツェル』の二機、地上にはロナのアリエルがある。他の団員と連携できれば勝算はある……それに今の貴方ではオーロラとのリンクは生死に…… 」
ロジェスティラ「ウィリアムは"最後の一機"をあなたに共有していない!!あの"文明殺し"には…… レギュレイターは
政府軍は接触させちゃいけない……私が、私が!私がやらなきゃ、あ、ああ……ごめんなさい、ごめんなさい……!(髪をかきむしり、酷く狼狽してうずくまってしまう。深層心理に深く刻み込まれた"何か"が、理性さえも蝕んで五感を覆っているかのようだった) 」
ライオット「 っ゛……! (その手は虚空を掴み、奈落の底へ溶けるように消える青年の姿を、見えなくなった後でも静かに睨みつけていた)……!ロジェッ…!!(だが、いなくなった相手のことよりも、目の前にいる少女の安否が優先だと鋭く振り返り、彼女たちのもとへ駆け寄っていく)ロジェ…大丈夫か…ッ……!? 」
アサギ「っ……!?先輩…!ロジェっちが、何か伝えようとして……! 」
ライオット「…『オーロラ』……?待ってくれ、一体何の話なんだ…っ…?まずは落ち着くんだ…!お前かなりの重症なんだ…っ…!アサギ!確かお前、メディックの心得知ってなかったか…?なんとかできるか…!? 」
アサギ「いやいやいやッ!知らない知らないっすよ!!あたしみたいなぺーぺーの素人に治療は――――?(そんな問答を繰り返している最中、飛来してくるオアシム人形に気づいて振り返る) 」
ライオット「…アリエル…って…確か、そうだ!ロナの奴が乗っていたあのロボットの名前だったよな。まさかロナも……いやいや、今はそんなこと気にしてる場合じゃ……っ……状況が呑み込めねえ……(焦燥感を剥きだすロジェスティラと、落ち着いた声音で問い質すオアシムのやり取りを困惑気味に見つめるしかできなかったが…) 」
ズ ッッッ (地鳴り。その言葉で表現するにはあまりに刹那的、あまりに高圧的。振動が一度だけ、空間ごと全体を揺さぶり重力で圧迫するかのような衝撃が襲いかかる。そして―――――――)
ライオット「ッ゛……!?なんだ…この揺れ…ッ……――――― 」
ギ ュ オ ッ (筒状の空洞、その最下層である深淵で赤の極星が閃いたかと思えば、それは光の柱を残し刹那的に直上。ライオット達がいる階層を、ヴァニタスが飛び降りた断崖の位置に浮遊した。 黒い霧を纏い、節々に赤い発光する線を刻んだ機体が彼らを見下ろしている。人型、犬類の頭部、手にした杖、背に輪と翼を携えたそれは、これまで遭遇した"ユナイタル"と異質な気配を漂わせ、ライオットと対峙した)
――――――曰く、
極東の砂の王国において狼面の神は死を司り罪過を計る天秤と、捌きを下す杖を手にしていたという。
冥府の玉座にて亡者を待つその神を冠する星座の名は……
―― 天狼座:アルシース ――
ヴァニタス【アルシース】「―――――やっ、さっきぶり。(ひらり、手を振りノイズ混じりの一声を発する。 ボディを覆う赤い線が発光する様は、機体が彼の新たな肉体となったことを表すかのようだった)―――――生憎時間なんでさ、"挨拶"だけ済ませておくよ。シンプルにさよならでいいかな? 」
アサギ「……先輩…ッ…『アレ』、て…まさか……っ…―――――― 」
ライオット「――――――― テ メ ェ ッ゛ ! ! (地響きと共にゆらりと顔を見せる、神々しくも禍々しい機人の登場に言葉こそ失いかけるが、その外装を纏う人物の声の正体に、つい数秒前に途絶えたはずのヴァニタスであることに気づいて鋭く睨み上げる) 」
ヴァニタス【アルシース】「ははっ、顔見せる度にそう睨まれたら誰だって傷付いちゃうよ。現場に染まりすぎて社会性が迷子になったのかい?パイセン パチンッ (曲線状に抉れたシルエットが特徴の指を起用に動かし、鳴らす。その瞬間波紋が広がり、空間が一瞬だけ青み掛かって正常に戻る。特にこれと行った変化はない、はずだが……) 」
オアシム人形「 ガ ク ン (その波紋に触れた瞬間、自立に必要な機能が全て停止。糸が切れた人形同然に倒れてしまう)……!?意識同調以外が全てオフラインに……!(違う、電気制御煮関連する……もっと酷い!意識制御以外の機能が全て……!!)―――――逃げろロジェを連れてライオット団員!!そいつは……"レギュレイターは"そいつにだけは勝てない……ッ!! 」
ライオット「ッ……!?どういうことなんだオアシム団長ッ!?さっきから感じる違和感といい…一体この場で何が起こって―――― 」
ヴァニタス【アルシース】「 ヴ ォ ン ッ (五指から発生する蒼白の光線を収縮。一振りの大剣と成す。ただ存在するだけで周囲の気温を上げる熱源の塊を、天へ振りかざすと) ―――――残念、『これから』だよ 」
――――――それは無慈悲に振り下ろされた。
筒状の空間に浮遊する機体が振り下ろした一閃は外壁を溶解させながら破壊。
ライオット達が存在するフロアに光の壁とも認識できる斬撃が介入し、
天井は物一瞬で形を失い、質量の塊が崩れ雪崩込む。
―――――喧騒の中で、彼らの視界は暗転《ブラックアウト》した……。
ライオット「――――――― ッ゛ ! ? (問答の最中にて無慈悲に振り下ろされた断罪の一閃が、空間の一切を破滅へ追い込む。頭上より崩れ落ちる瓦礫を前に、咄嗟的に付近で蹲るロジェスティラの脇に自らの腕を通すが――) ぅ ぁ ぁ ぁ ぁ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ … … … … ッ ――――――――――(残骸と共に崩壊する地下帝国。足場を付しない、重力に呑まれるままに彼らは奈落の底へと沈んでいくのだった――――) 」
― 第10調査兵団事務所 ―
――――ティネル・カルロウの振りかざした凶刃。
常軌を逸した威力の斬撃によってレギュレイター本部は半壊、辛うじて原型を留めている支部も倒壊が進んでいる。
電力の供給が途絶えたことで照明が落ち、暗く冷たく横たえる石の棺のような館内では、
それぞれの持場で待機していた隊員などが脱出路を求め通路を徘徊するなどしていた。
第10調査兵団団員「――――カッ カッ カッ カッ ……(軍靴が滑らかな床板を叩き、小走りで移動する。フロアマップが掲示されたT字路、懐中電灯が床に置かれたポイントに戻り、その場の面々の顔を見やる。 黒髪、年齢は30代前半。第10においては戦闘行動可能な兵士の中でも比較的ベテランな方だ) 全員いるね、よかった。 こっちの通路は粗方クリアリングできたけど望み薄、防火扉は全部落ちてるし、非情口も瓦礫で塞がれてる。辛うじて通路の体を保ってるけど、ちょっとした衝撃で倒壊しそうだから手榴弾で突破も現実的じゃない。 」
レイカ「────フゥー、フゥー……(小さく呼吸しながら、自分にもなにかできることはないかと視線をキョロキョロ)……ぇ、ぇ、ぅ(しかし回復に徹するほかなにかしろの技能や知識、ましてやサバイバル経験などもあるはずもない。ゆえにこういう時どうすればよいかわからない。変なことを発するわけにもいかない。ゆえに縮こまる。その姿は指示待ち。貝のように口を閉ざしたまま) 」
第10調査兵団団員A「とは言えここに長居するわけにもいかない、徐々に酸素濃度も低くなっている。この先の瓦礫で塞がれたルートなら、外の状況を音で把握しつつ、隙間から酸素を取り入れられる。暫くはそこで体力を温存し、救助を待つ事にする。いい?(親指で後方、先までこの女性団員が通ってきた道を指し首をくいと捻る) 」
第10調査兵団団員B「だいっ……大丈夫です、おねがいします……っ(見るからに事務員といった風貌の若い女性オペレーターが挙手。呼吸が定まらず、未だに錯乱状態にあるが首の皮一枚繋がった理性で応答する。隣のレイカへ不安げな目線を送り)だ、だいじょうぶですょ……だ、第0のみなさんもいるんですし、ま、まってればたすかりますって…へ、へへ……(そう自らを含め言い聞かせながら、んエパイの女性団員の方へ歩き出す) 」
レイカ「……(どうしよう、どうしよう、こういうとき、どうすればいいんだっけ? 怪我してる人を見て回る?でも、そんな指示受けてない。勝手に動いたら皆に迷惑かかる。でも、苦しんでる人を助けるのは仕事だし……自分で考えて動くことも大事で……で、でも、もしもそれが余計なお節介だったらどうしよう。私だけが怒られるならいいけど、今の状況じゃ皆に迷惑がかかる……)(平静を装うとすればするほど呼吸が乱れ緊張が全身を巡る) 」
第10調査兵団団員A「 コツ… コツ… コツ…(ライフルを抱え、レイカ、団員Bという二人の後輩を先導し前に進む。光源は足元の非常灯のみ。先に話した通り酸素濃度は薄く、無風状態であるため乱れた呼吸などが顕著に伝わってくる。)ここで待ってて、さっき侵入経路がないことも確認したから無いとは思うけど、念の為ね(二人へ一瞥をやりそう告げると、通路対あたりの曲がり角へ、銃口を向けつつ進んでゆく。曲がり角から後ろに纏めた髪と臀部が辛うじて見える程度の一で、団員は足を止めた。 その影、シルエットから"銃口を僅かに下ろしたようにも見える") 」
第10調査兵団団員A「―――――君は……。 どこから?いや、助かった…… まず外の状況を教えてくれないか…… いやその怪我、 治療が先だな。メディックと行動している、すぐに処置を…… 「 」団員?おい、どうしt 」
―――――パキ ュ ッ (無警戒。 語調からして一切相手を警戒する様子はなく、"始終"リラックスしていた。 だが違和感を訝しんだ頃には、糸のような軌跡を描いた鉛玉が彼女の背後の壁へ血糊を貼り付けてめり込み) ガッッ (それを追うようにして頭部、背を叩きつけて座り込み力なくうなだれる、眉間に空いた風穴から糸のような赤を垂らして。 ヘッドショット、即死だ)
レイカ「────────────ぇ?(突如聞こえた、不慣れな音。なぜ今このタイミングで? 疑問符が飛び交い、脳の処理能力が現実をノイズで包み切っていた) 」
第10調査兵団団員B「ひギっ……!(上ずった悲鳴をあげる。この団員の不幸はありきたりな反応の割に"理性的であったことだった"。戦闘の団員が生存に必要な人柱、命綱であると人視していた彼女は手遅れという現実を受け止めず、恐怖に負け退路に走ることもなく…… 団員Aへ駆け寄ってしまう)――だいっ、大丈夫です、か!!ひ、ひうあ……や、やだぁ…伍長がしんだらおしまい……!れ、レイカ!こっち来て!酷いっ出血!!脳が潰れて死んでる!た、助けて!なんとかしt 」
レイカ「あ、あ、の、あの、あの~、先輩? どうしたんですか? なんか、今、変な音がして……なんでそんなところで座って……なんで……(流血は波紋のように広がり、それを見ていくごとに精神を浸食していくかのようにとある感情が蝕んでいく。────恐怖。過酷な状況からなる不理解な光景が彼女から冷静さを奪っていく) 」
■■■「 ヘ " ッッッ ギ ィ ャ ア" ァ" ッッッッ (続けざまに繰り返される惨劇。銃弾が飛来した方向から、雷光を纏った黒い影が横切り、前へ突き出された足のようなシルエットが団員Bの首を捕らえ、 突き当りの壁、団員Aの躯へ折り重なるようにして叩きつける) ンギ ィ イイ"イ"イ"!!!ピギ ィ" イ"ィ"や"ャ"ァ"ア"ッッッッ!!!!!(唾液まじりの金切り声、奇声を発し、それは力任せに拳と思しき部位を、既に動かない団員A、Bの躯へ何度も振り下ろす。脊髄、脳髄、心臓、生命意思に必要な臓器が叩いて伸ばされ、ミンチにして混ぜられてもなおそれは暴力の限りを尽くした) 」
肉片「 ビ ヂ ッ ポツ コツ コロ…… ("内圧"で千切れ飛んだ頭部がレイカの前に揃って転がる。 眼球も内圧で吹っ飛び、赤がたれた風穴が二つ、閻魔に抜かれた跡のように伸びる舌、 処刑人を呪い殺さんばかりの苦痛に満ちた断末魔で時間が止まった二人の頭部が、レイカを見つめている) 」
レイカ「へ、ひ……ぃ、ぃ? ……ひ(目の前の惨状に生存本能が早鐘を鳴らす。反して筋肉と神経はこれ以上ないくらい緊張し、岩のような硬直が全身に巡った。メディックとして活動はしたものの、前線を渡り歩いたわけではない。ゆえに地獄は医務室の中でしかしらない。彼女は守られていた。
コンラードによって適材適所を見極められ、後方にずっとこもっていた。それゆえの弊害。緊急時、指示なくして動けない。それができるほどの度胸も経験も積んでいない。ただの一般人然としてその場に立ち尽くしてしまう) 」
■■■「 フゥー…… フゥー…… びぢっ びぢっ び ぢ っ (それ自身もまた、酷く狼狽した手負いの獣といった具合に呼吸を荒くし、血肉が散乱する床を、片足を引きずって進む。つま先が水かきの魚人が歩むかのような音を立て、レイカの前に立ち尽くし、手にした"軍用制式拳銃"のトリガーへ指をかけた瞬間だった) ・・・・?ぼま、ぇ レイ、か……?(黒いシルエットはくぐもった声を発した。頭部で蠢く真円に開かれた右眼球は焦点が合わず、潰れた左眼球が辛うじて焦点をレイカへ合わせる。) 」
レイカ「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ……(聞き覚えがあるような、だが狂気と負傷で崩れた声。そして異形めいた体と顔に恐れおののき、呼吸もままならない)ハァー、ハァー、ハァー、ハァー、ハァー、ハァー、ハァー……ッ(突然目の前の怪物に名前を呼ばれた。だが答えられない。メガネ越しに映る恐怖の対象から早く逃げたいのに動けないことで余計にパニックになっていった) 」
■■■→ナガタ「 フシュゥ――…… フシュゥ――……・・・・(幸か不幸か、予備電源が通ったのか自販機が点滅する。その明かりに照らされシルエットのベールを剥がされ顕になった素顔の持ち主は、ナガタであった。 ただし、右足は潰れ、右腕はだらりと下がり、顔に至っては目や口、鼻など穴という穴から血や涙、唾液などの液体が絶えず溢れた人にして人ならざるものであるかのような風貌だ。見開かれた右目はぎょろぎょろと絶えず転げ四方八方を見渡し、潰れほぼと仕掛けた左目は進行方向を薄ぼんやりと眺めている。全身に纏ったアラタは半壊し、露出した導線が火花を散らす様子はゾンビ映画に登場する生態英気の失敗作を彷彿とさせた) 」
ナガタ「 ぶ、じだったがぁ!(歯抜けた口を、耳まで割いて広げ微笑む。 恐怖の絶壁に立たされているレイカの心情など顧みず、"先に処理した兵士同様"味方である彼女の存在、生存を純粋に喜んでいる様子だった) ょがッだ……外は酷い、状況なんだ…… 大丈夫カ?どこか痛いところは ナイか? どこも敵だらけ、だ。味方がいてよかった……! 」
レイカ「(予備電源が入ったことで露わになる姿に……)ヒィー、ヒィイイ。あ、あ、あ……や、やぁ(やっと一歩後ろに足が動く。仲間の姿を見ても先ほどの惨状の元凶が彼であるという現実が頭から離れない。それは余計に彼女を恐怖させた)な、なん、で。なで……な、で……?どう、して……ひ、ひ(辛うじて交わす仲間への言葉。しかし振り絞るその言葉にすら覇気はなく) 」
ナガタ「いいい、いま……ここ、ここにもゼレオロスの兵士がいたんだ……、ここは危ない…… 大丈夫さ!だって俺にはナガタ・イトーがいるんだ! 紹介するよレイカ、俺の親友のナガタ・イトーだ!(右眼球、左眼球がそれぞれ別の方向を見やる。右手は自身の隣の空虚を指し、底抜けなく明るい声を発した) よし、てくれ……俺は一般人だ、ナガタのようにはなれない、君のようにはなれないんだよ、親友……?あ、あれあれあれ……あれ……(左眼球は虚ろに床を舐め回すように見つめ、何かを確かめようと左腕を前に伸ばし……) ガッ (おもむろにレイカの腕を掴む)ああよかった……ここに、いる みみみみ、見捨てないで…… 」
レイカ「────(急に始まったナガタの一人芝居。自分で自分を褒めたたえているというナルシズムとはまた違う狂気を垣間見て、なにも言えず視線が釘付けになってしまい)ガ シ ィ (掴まれた)ひぃ! や、や、あや、やめて、やめてください! 放してください!(一生懸命振り絞った声でナガタの手を振りほどこうとするも、中々離れない。特に鍛えてもいない女の子の膂力では、どうにもならなかった) 」
ナガタ「もう嫌だ吐きそうだ帰りたい俺は普通でよかったんだ人のために命かけるだなんてテテテ最高じゃないか!行こうぜレイカ、殺った分だけ勲章が貰える!家族に胸を貼れる!この手が栄光と臓物に濡れてなにもかもがこわいこんなはずじゃなかった僕は俺はこここおk,こんなとこところこんなところころで沢山活躍するんだ、守れない一般人は自己責任だ、国のために覚悟を持とう!愛国心を叫ぼう!叫ぼう、叫び、叫びが頭から離れないんだ俺は悪くない俺はわるくないだってしかたないじゃないかなんでなんでなんでなんで(レイカの手を引く、すがる、手を引く、笑う、啜り泣く、吐瀉する、拳を振り上げる。チャンネルを絶えず往復するテレビのようだ情緒が不安定どころではない。自身の中に存在する理想像が、自己の本質をあぶり出し、演じることと感情を吐露することが交互に行われ、意識が混濁している。」
レイカ「(乱暴に腕を引かれて体幹が崩れる。体勢を保てないまま彼女は目の前の怪物を前にへたり込んだ。それでもなお飛んでくる、色とりどりの狂気の渦。喜怒哀楽が混濁しあい、互いに拒絶反応を起こしまた別の感情を生み出して排出するどこまでも続く矛盾の連鎖に)わ、わぁああ! わああ! だ、誰か、誰か、助け……!(一瞬手が緩み、彼女は解き放たれるも、そのまま無様に四つん這いのまま来た道を戻ろうとする) 」
ナガタ「逃げるな!!敵前逃亡は恥だ、政府軍の恥だ!!非軍人だ!!この……っっ どうして、 にげ るんだ 俺を 僕を みみみ、見捨……裏切ギギ えぅ、るる、、ぎににいイギギギッッッ(腕という前足を壁へ、左右の足が別方向へと引張、もはや左右で別人格が割り振られているかのような走法ながらもレイカを追うという目的で一致し……) 」
ナガタ「 ガッッッ ズダ ンッッ (手首を掴み、捻り、組み伏せ――――)―――ちがう!やめてよ!!お、おおえっおえのせいじゃない!軍法会議なんていやだ!!いやだ!!軍法会議……会議、かけ、かけてやる!!逃げるな!逃げるな卑怯者!!逃げるな!!俺か、ら!!ああ、ああああ!!!!(拳を振りかざし、相手が"味方である"という共通認識と、処罰の対象、裏切るかも知れない存在という相違のある認識から加減した拳を何度も振り下ろす。嗚咽混じりの恫喝を飛ばすその顔は、左目から涙を、右目からは血を流し狂乱する) 」
レイカ「い、嫌────ッ!やめて!許して、許してええ!(乱暴に組み伏せられ、走る鈍痛。どうして自分がこんな目に? そんな思いすらも打ち消して)ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!(何についての謝罪か。彼を救えなかったことか。なにもできなかった自分にか。ただ意味もなくか。狂乱しながら延々と謝る。かつて初めて乱暴されたときのように、とにかく謝る。なにが理由なのかは不明だがとにかく自分に非があると認め許しをこう。あとは耐える。彼女の処世術がナガタの壊れた精神に響いていく) 」
ナガタ「(それは彼にとって空洞だった。都合よく解釈できる、それ故に都合悪く被害妄想も出来る。ごめんなさいという単語がただただ脳で反響し、やがて自身の声へ変換されてゆく。「ごめんなさい」、その一言だけで自身が今日だけで成してきた過ち/武勇伝がなだれ込み) ああ、あああああ!!やったああああ!!うわああああ!!ち、ちっちががががちがううう!!俺がやったんだ!!俺が成し遂げたんだ!!ちがう!俺じゃない!俺は悪くない!!騙されただけだ!!被害者だ!!やめろ!!やめろ!!!(拳が解かれ喉元に覆いかぶさる。半ば馬乗りに鳴るような態勢で、レイカの呼吸器を潰さんとばかりに握力を強めていく) 」
レイカ「ひぎっ! がっ、ぁ……や、め……ぐる、じ……ぃ(ごめんなさいを連発して発していたため碌に肺に空気が残っていない)バタバタ!!────バタ……ズ、ズズ(必死に暴れる力も尽きて意識が朦朧としてきた。口角から涎、目から涙。充血した瞳は白目を向きかけていて、抵抗する手も緩んでいく)……(あ、死ぬんだ……また、乱暴されて……私、ここで、結局、男の人に殺されるんだ……あぁ) 」
ナガタ「(半狂乱、自我が二分される段階にあったがレイカに対する心象が悪いことだけは共通だった。終いには自身を誤魔化すことも鼓舞することもなく、どこか理性的に据わった目でレイカを見下ろし)グ――――――(首の骨をへし折ろうと、全体重を腕に乗せ圧迫しようとした……) 」
ゴ シ ャ ア ァ ァ ッッッッ (その刹那だった。赤く染まった黄昏時の陽光が轟音と共に差し込む。初めは鋭利な槍のような鉄塊が十本、外壁を貫き、折れ曲がって壁をこじ開ける。それは"鉄巨人"の指だった。 龍の頭部、外側から骨格を纏ったかのような歪な身体、そんな化け物染みた造形の緋色の鉄巨人が、第10調査兵団事務所の壁を開き、レイカ達を見下ろす)
アリエルΛ「 シュ ゥ ゥ ゥ ゥ ゥ ゥゥゥゥゥゥ――――……(口から蒸気を掃き出し、緑白色の眼が閃光を轟かせる。 内部の生体反応を確認し、ぎょろりと睨んで識別すると……)―――レイカさん!!(聞き覚えのある、戦場には相応わしくないあどけなさの残る声を発した) 」
ナガタ「(―――――ゼレオロイド……ッ!?いや、あれ、は……) く、クソ!!(生存本能が警鐘を鳴らす。事これに関してのみ理性的に体が動き、ライフルに弾を込め、怪物の頭部へエイムしようと構え直すが……) 」
アリエルΛ「 ゴ ォ ン (小気味いい金属音が反響した。軽く腕を払い、指先がナガタの側頭部を捉え空き缶のようにふっ飛ばしレイカから引き剥がしていた) 」
レイカ「──── スン (急に軽くなったと同時に肺に流れてくる空気)ぐふ、ゲホゲホ! がは! ぁは……あぁ、ふぅ、ふぅ、アリ、エル……(鋼鉄の乗り物の内部にいるアリエルの声が、パニック状態の脳に冷静さをもたらしていく、のだが────)…………………………………………………………っ(すぐに息が詰まった。先程まで狂いながら襲っていたナガタが、他の団員と同じように死に体となってその場に転がっていたから)ピ チ ャ ァ … (ふと手のぬるつきを感じとり掌を見ると、そこにはベットリと彼の血が付着していた。なんなら歯のような固形の物質まで) 」
アリエル「 ゴ ゥ ゥ ン ……(片膝を付き、レイカの前へ騎士のように傅く。ゆっくりと、異形へ変じたアリエルの面影のある何かは彼女を見下ろした。何かに気付いたのか、ふとナガタをふっ飛ばした方向を見やり) グ ゥ ゥ ン ……(散漫な動作で、腕を伸ばす。拳を握り、後は力任せに…‥ 落とす ) 」
ナガタ「 あ ・ぁ・ ァェ……… ぃ ぃゃだ…じ、 じにだう な ぃ (肉片の山の中。側頭部が潰れ尚も息のあるナガタがは、ヒキガエルのような声を発ししきりに腕を伸ばす。 それが訪れる寸前、確かにレイカと眼があった。純粋に、ただ純粋に生を懇願する、ただの人間として渡前の眼差しを向け)――――― 」
ナガタ「 キ " 」
ブ ( 虫は虫として、処理された ) チ ッ
ヒュ オ ビチッ (風切り音を立てて何かがレイカの側へ飛来し、壁に跳ねて転がる。 眼球だ、恐らくはナガタの、酷く濁った、溝を敷き詰めたような眼球。それが血塗られることなく転がり、レイカを見つめている)
この短時間で何度も自分に向けられた懇願のまなざし。
血しぶきと肉片とともに飛び散る目玉は再びレイカをとらえた。
そう、目玉。目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、血、目、目、血、目、肉、目、目、目、血、血、目、肉…
どこへ行ってもどこを歩いても惨状しかない。
その責め苦を向けるように転がる目玉にレイカの精神は支配されていく。
ロナ「――――― よっ (重厚な金属音、蒸気を吐き出す音。アリエルΛの胸部ハッチが開閉し、足を前へ繰り出して軽快に外へ繰り出す。掌へ、掌から膝へ、膝から……) わわ!?っひゃぁ!?(地上へ転がる、肉片の上へ。柔らかいなにかの部位だったものを踏みつけ着地した故か転倒、尻もちを付き、どろりとした赤い飛沫が周囲に飛散する)いたたた……しまらないなぁ(照れくさそうに苦笑し、腰を上げ眼の前の親友、大切な人をその丸く円らな瞳に捉えると……) 」
ロナ「――――― 助けに来たよ、レイカさん。(純真無垢、汚れなき輝きを帯びた瞳と、 ドロリと粘性があり赤黒く汚れた血肉の纏わりつく手袋をはめた掌を、惜しげなく差し伸べた) 」
レイカ「(目、目、目、目、血、血、血、血、血、手、血、友。今にも砕けそうなか細い理性が、ロナをとらえ)……な、ぁ(自分と違い純真無垢な様子の彼女を見て、目を見開き)なんで……、笑ってるの? 」
「 ────人殺し 」
最終更新:2025年07月28日 14:42