–––悪魔城––– 【戦闘ログ⑥】











––––––最初に私が殺した動体は鼠である。その昔、私の家だった場所に鼠の群れが湧いた 」

毒を巻けば花が痛む、火で払おうとも奴らは逃げ延び杯だけが残る。ゆえに私は憎しみによる攻勢ではなく与えるべき”愛”を望んだ 」

愛とは実にシンプルな方程式である。ドラム缶に彼ら彼女らの好物を詰め込み瞬く間に鼠をそこへ誘い込み貯めおく。鼠を貯金箱に放り込むかのようだ、楽しみが増えた。毎朝どれだけ貯蓄できるか

そのまま纏めて焼き炙るも実験用のラットにしそれぞれに異なる過程と唯一の結果である死を与えるのは花を摘み取るよりも簡単で時間を潰せる。だがそれ自体は容易であっても鼠の駆逐には至らない、偏西風の煽りを受けて彼らの故郷が過酷な環境になったが故の惨事であるとするならばまた鼠はこの庭に訪れるだろう。ゆえに私は何もしない、一つの環境下において選択の自由を得るという愛を与えた

実験より一週間、ドラム缶の中の鼠の数は激減した。 何もしないということは生かすも殺すも放棄するということ、殺されないともすれば、生かされないともすれば鼠達は生きようとする。共食いは私が思い描いた台本の下書きに清書するかのような必然性があった。後には二匹だけ腹を満たした鼠だけが残った。幸い雄と雌が残る 」

愛は時に、種全体に対する愛として自己の命よりも優先される。たとえ己を想う自己愛があろうと、特別な個体に対する愛であろうと関係なしに彼、彼女らは種全体の存続を望み……同族の味を覚えたアダムとイヴを残す

私はこの二匹を、哀れみという仮初めの愛にかこつけた、少女らしい上部の同期の元離してやった。 以降、庭に鼠は流れつかない。アダムとイヴの主食は元同族に変わり、食い殺してはまた狩人を産み落とす

この日より私は愛を信じなくなった。信じるべき対象ではない、ただ現象として存在するだけだ

ゆえに私は。友を笑わなければならない、笑って見送らねばならない



–––悪魔城2F 大図書館–––





––––––空間を歪めたかのように延々と、市松模様の床に背の高い本棚が延々と続く回廊。並ぶ照明は総じて暖色でセピア調の写真に迷い込んだかのような色調が視界に広がっていた 」

コツッ……コツッ………(静寂を加速させる、虚しいほどに響き渡るブーツの音が、その空間の元木魂する) 」

ヴォイド「コツッ……コツッ………(疲労を隠しきれない表情は、宛ら死を直結させる程に甚いもの)フゥゥーー……(健気な深呼吸をしつつ、その空間に足を踏み入れ数十歩。本棚の狭間で稲妻の走らぬ雷神剣の握りしめカーペットを自らの血で汚していく) 」

ニオ「(回廊の最奥、床から天井に達するまでの高さを誇る門の前で書きもの机に錆び付いた分厚い書籍の背表紙を乗せ普段からそうしているようにまた、来客を告げる足音に一瞥をやることなく一人の少女が、悠々と座に腰を下ろし待ち構える)–––––パタンン ッ (そっと活字に一面を覆った視界を瞼で閉ざし、書籍もまた語りを閉ざし沈黙した)–––––餌<回復薬>は与えたはずだけどお気に召さなかったのかしら。舌の肥えたラットは始末が悪いわ 」

ヴォイド「フゥゥー……(ニオの姿が瞳に飛び込むと、脳に感情的な稲妻が走り『気力』としての体力が発生)ビリリッ……(僅かとはいえど、この怪しげな空間で鮮明に剣の電撃音は響く)これが魔女の部屋か(声のトーンは疲労前と変わらず、先ほどまで崩していた疲れの表情は即時消え、そこには行ることの決まった戦士の顔つきが生まれる) 」

ニオ「今は違うわ。魔女の部屋というのはそちらの世界で言うところの台所と一緒。衛生面、機能性が重視される。少なくとも『それ』を持つような野蛮人がいる限りは部屋として成立しない、それは戦場を意味するわ。泣いて悲しむべきことよ(悲観も怒りもなく淡々と声を発する人形のように言葉を紡ぐ。彼女の言葉通り、デスクの上はビル街のように本が積み重なっているが整頓されており、目を閉じたままでいながらにして音もなく目的の書籍を手に取ることができた。ヴォイドが以前森で目にしたことのある書籍である)ウィラーム・V・ハント。ようこそ、我が魔女の要塞へ。ようこそ、人間の掃き溜めへ 」

ヴォイド「……あの悪祭の生存者か……そうなると仇打ちにになるのか(フルネームに対する応答)またその愛読書か……(マジで厄介だ)……やはりイメージ通りだったぜ、あんたのその機械的な物腰、人としては違和感の文字がピッタシだ(雷神剣をしかりと握り、背中の刺し傷の激痛を顔に出さないようにと歯を食

ニオ「当然。人ならざるものであれば読んで字のごとく"ひとなし"。実のところ、私が私という個を保つことにさえも合理性は見出せない、ともすれば違和感の一つやふたう今更でしょう。けれどそれもまた浮世の縁、私はただ単にそういう生き物というだけ、仇を討つ程の怒りもなければあなたをここで生かしてやる情けもない(手にとった愛読書が書きもの机から離れた途端、机は影も形もなく消失し) ド ゴ ォ ッ ズァァァァ––––– (ヴォイドより後方、30m先に着地しそれに連なるように光を乱反射する無色の壁が道を閉ざす) 」

ニオ「この城の主にして盟友、エリザベス・ヴァンシュテイン。そしてその妹、キャロライン・ヴァンシュテイン。二人にとってあなたは余分な障害である。なんとでも反論なさい、死人に口など必要ない(椅子から"立つ"。魔女は魔道書を構えただ冷笑一つ浮かべずにそれを天高く翳した) 」

ヴォイド「――(その合理的なる言動の一致に、若干顔を歪ませるも、歩みは留めず、気力を奮い立たせ目を細める)開戦の合図、なんていう洒落たこともしねェか…………『ニオ』(コンキリオが一度だけ叫んだその固有名詞を、彼女の名と断定して口を開く)……その違和感を一つ、俺の中で決断させる……ニオ――(剣を横に、腰を深く落とし、ニオの構えに呼応するように己も『型』を作り真剣なる眼差しで―― 」

ヴォイド「お前には『愛』がねェ。俺がそれを教えてやる 」

ニオ「–––––(ヴォイドの真っ向から迫る決断に対し、変化のかけらも見せず冷徹な無表情のまま)解鍵、礼装魔力による物理変換、空間座標指数オールリロード、起動せよ【 BOOK OF COSMOS 】(彼女の呼びかけに応えるようにその愛読書の錠が外れる。すると床一面にチェス盤を彷彿とさせる模様をした影が落ち、それが全体に行き渡るのを待たずに淡々と詠唱を続けていく) 」

VS【グラナートファミリエ構成員 ニオ・フォン・ラーゲルフェルト】





          ー悪魔城ー
      【Crimson Overture】
          Round5
        ––Lost child––




ヴォイド「『雷神剣』(雄々しい呼称はせず、剣を一振り)ヴァリリリッ!!(放電が始まると、その場で大きく跳躍し)『嘗て啼き閃光』ライトニングストレートォォォォ!!!(初手、早速と言わんばかりに雷方陣から大技閃光を発射させ、壁を超えるようにニオへと閃光を繰り出す) 」

ニオ「ォォォォォォォオオオ オ オ–––––(空気そものが帯電体であるにも関わらずそれを無視し形を保って突き進む稲妻が、目前まで迫り青白く瞳が照らされようとも全く微動だにせず–––––)【水星晶・アクアマリン】【風星晶・ペリドット】(BOOKOFCOSMOSによる迎撃ではなく、右手指に挟んだ緑白色と青白色の光彩を放つ石を足元の床に落とし、それが床に溶け込むと、背方に青と緑の二つの魔法陣が出現し––––)


ザザザザザザザザァァァァ––––– (青い魔法陣からは真水による濁流が重力に逆らってニオを囲み、シャボン玉のように形を保って彼女を包み込み)ヴァリリリリ!!!(電撃全てを瞬く間に吸収、中に保護されているニオは全く無傷のまま冷笑を浮かべ)┣¨ォウッ!!!(緑色の魔法陣が円形状の風の渦が、ニオを保護する泡の前に出現。泡は高圧の水流ごと前方に電撃を放出し、風の渦がそれに風圧を加え電流を纏った水圧カッターが完成しヴォイドに襲いかかる) 」


ヴォイド「――ッ!?(当たるとは思っちゃいねェ。ただ反射だと……!?)ヌグオァア!!(雷神剣を盾にするも、水雷風の力を纏ったカッターに圧倒され空中から転げ落ち再度囲われた壁の中に放り込まれる)チィッ…!(あと数回分だ。奴にどう近く……) 」

ニオ「一つ、私が愛を捨てた理由を教えてあげるわ(ブックオブコスモスのページを二度タブレットを操作するような感覚でタップし、依然として泡に包まれたまま淡々と囁く) フ ッ … (自らの意思で障壁を"消した"。それが終わるのを待たずに今度は赤い水晶一つを指で挟んで取り出し)–––––無益だからよ。必要なもの、友人、家族、それらを失わないために自らが滅ぶ。己も他者も守らない、救わない。これを無益と呼ばずになんとするのかしら–––––【炎星晶・トパーズ】 」


ヴォォォォゥッ!!(赤い石ころが床に落ちると、同色の魔法陣がニオを包む泡の真下に出現し、泡を中心に二つの炎の塊が衛星が如く旋回し)ズァオッ!!ズァァァーッ!!!(一定の間隔<リズム>で自動的に火の玉をヴォイドへ向かって射出していく)


ヴォイド「そこで止まるんじゃねェ!無益を承知で、ただ何かの為にという行動概念こそが愛だ(目前、烈火の轟音の最中、荒々しく声をあげ)シュンッ!(視界に収めた一定の火玉弾幕を容易に回避していきながら、前方へと掻い潜りニオが佇むその先へと剣を構える)セイリャァァアア!!(気合い十分の掛け声と共に、正面に強く跳躍して泡に包まれるニオへと雷神剣を突き立てる) 」

ニオ「(向かってくるヴォイドに対しただ肩をすくめため息ひとつ零し)人間らしいエゴね。その独りよがりが容易く他者の運命を破綻させ自らの報復を生む。私はそんな合理性の破綻により狂った姉妹をよく知っている––––【氷星晶・ラズライト】(今度は純白色の石を泡に向かって放り、それを溶け込むのを見届けると体重を背に預け後方へ仰け反り)コクーン・クローン化。結界持続及び複製を、そして–––– 」

ニオ「––––––【双星晶・ダイヤモンド】(泡はニオを包む球体と空の球体に分かれ、雷神剣が抜け殻の泡を貫通し)ォォォォオオオオ…・!!(その泡を中心に地を冷気が這いずり)パキィィィンッ!!(泡は凍結し、巨大な"結晶"へと姿を変え爆発的に巨大化しヴォイドを串刺しにしようと枝を伸ばしながら砕け散る) 」

ヴォイド「ズッ(串た泡の作用を彼女が離れた事で察知し)《月は月に》) 」

ヴォイド「《月は月に》ッ!!(巨大化した泡に対して、『退く』のではなく)エゴなのは否定するつもりは毛頭ねェ。形容できねェもんが『愛』だからこそ(敢えて、伸びゆく枝へと向かい、それらを超えるように回転しつつ飛び潜り)雷神剣ッ!!(飛び越え、ニオの頭上まで軸が重なると下方に満月状を繰り出し、雷神剣による落雷も付随した斬撃をくだす) 」

ニオ「––––– あなた(頭上にヴォイドが舞うも一別はやらず、顔を伏し開かれたブックオブコスモスのページに視界を収めながらある箇所を叩き)ッパァァンッ!!!(その効果によって高速で落下したシャンデリアが凍りついた泡の結晶を砕き、それと同時に5回紙面をタップ)––––いちいち煩いわ 」


  フッ  (瞬きも要さない一瞬の事。 泡を維持していた青い魔法陣は一瞬で位置を変え彼女の真下に移動し再びニオを包み、それこそシャボン玉のように浮遊してヴォイドの落下地点から離れ)ォォ––––––ヒュガガガガガガガッッッ!!!!!(更には先に砕いた氷の破片をヴォイドの頭上へ移動、重力に逆らい機関銃のような悲鳴を上げ通常より五倍の速度で降り注ぐ) 」


ヴォイド「(あの泡、魔法壁が邪魔だ……)(彼女が紙面に指を走らせるのを見逃さず)スタッ(着地後に自身に何が降り注ぐのか。以前の戦闘をフラッシュバックさせ、ほぼ当てつけで真上へと上昇し)《虹は虹に》ッ!(降り注ぐ氷柱を破壊すべき、上方に楕円状の剣撃を描きソレを防ぐ)スタッ(二度目の着地、すぐさま態勢を立て直しニオ方面に鋭利に砕けた氷柱を拾い上げ)ヴォンッ!!(愚直な全力投球) 」

ニオ「トンッ トンッ (紙面の上で指がステップを踏み、先ほど召喚した魔法陣が空間転移。以前と殆ど同じ配置に戻り)–––––トパーズによる自動迎撃(地に設置された赤い魔法陣が火球を吐き出し氷柱と衝突して蒸気だけが残る)アクアマリンによる電流への防御結界、ダイヤモンドのカウンター、ペリドットによる自動反射。ブックオブコスモスは駒ではない、あくまで盤上。––––語種からしてあなたは戦士にも人にもなりきれないと見える、私の防御陣形は"無価値"なものに崩せるほど脆弱ではなく、よしんば崩せても替えは十二分に効く。言うなればこれはただの"作業"に過ぎないわ 」

ヴォイド「――(表情を変えるな。再確認できただけマシじゃねェだろうか……こいつとの相性は”史上最悪”だ)言ってくれるな……(思考の停止に陥るな。この相性化でもやれることはある。ただ今はそれを見つけなくちゃならねェ。この……満身創痍を加速させてでも)――ッッ!セイリャァッ!!(あまりにも直情的で、愚かしい程に真っ直ぐすぎる程。複数の魔法陣を担うニオ目掛け駆け出し、縦に剣を下ろそうと駆け出す) 」

ニオ「–––––(叫び、行動共に愚直に真っ直ぐなヴォイドに相対し一瞬怪訝そうに眉を潜め––––)浅はかね、ついには玉砕で華々しく散ろうってわけ?おあいにく様、ここは勇者の戦場ではないわ(––––いや、そうじゃないだろう。やはり同パターンを見せればそれなりに道筋は見出すか。ここは––––)"クラック"(パチンと指を鳴らしニオの散歩先にあるマス目が砕け破片が舞い)薙 ぎ 払 え (赤の魔法陣が火球を生成し破片と混ざり、擬似火山弾としてヴォイドへ向かって3発砲弾が如く飛来する) 」

ヴォイド「――『カチッ』――ダンダンダッ!!(雷神剣を持たぬ左半身を手前に押し出し、その火炎弾を身乗りして受けきると)ヴォアアァァアア!!!(ヴォイドを包み込むように一気に発火し、端から見ればその場で火ダルマとなって姿形が火で包まれる) 」

ニオ「(ただ冷淡に、目の前に起こる全てを"現象"として捉え黙視を続け)–––––まだ名も無き消し炭ではない。屍生者となっても機能できないようにしてやるわ(既に"詰み"への秒読みを確信したのか、目を伏せ腕を上げ)–––––"チェック"(彼女を中心とした四方のマス目から床が正方形に切り抜かれ消失、四つの大理石が上空から火だるまになったヴォイドを囲うように落下しようとする) 」


―――電子銷却砲―――


ヴォイド「ウ ゛  ア゛  ン ゛  ッ   !(ニオとは真逆方向に、火だるま最中に変形させていた『閃撃』の雷神剣で超出力のレールガンをぶちかまし、その反動で音を置き去りにする速度で大理石を潜り抜ける。目を伏せ、視界を休めた彼女の一瞬の隙に)バシュッ!(彼女の包む泡の中に炎を灯す己の体事、真水に投じて消化)スッ(反動に対して筋肉硬直や、炎によるダメージで、同じ泡の中にいる彼女に対してのアクションが遅れながらも彼女へと手をバッと伸ばす) 」

ニオ「    ・・・………–––––––!!!? な……ッ!!?(二の句を口にする間も与えられない、表情こそ大きく崩れないが瞳を小さく縮小させ、アクションへのラグ、その一瞬の内に宝石をまた一つ取り出し)【純星晶 パール】!!!!(もはや秒数を数えるのも馬鹿らしい刹那、拳が届くのが先か、術によって発生した光の粒子が身を包むのが先かという瀬戸際–––––) 」


『面白いな、魔女。ならば私がお前にとっての、新たな摂理となってやろう』


ニオ「ッツ––––– (かつて同じように、摂理を超えた技を持って拳を振るってきた友の姿と、ヴォイドが重なり瞼を固く瞑る) ┣¨  ォ    ッ    (拳がニオの顔面を捉える確かな手応えと、衝撃が自信に跳ね返るような痛みがヴォイドに跳ね返る。光の粒子を残し、ニオの体は泡を容易くつきやぶり背面の門に激突し土煙が爆発した) 」

ヴォイド「――~~~~ッッッ!!!(雷神剣の感覚麻痺では補えない激痛は全て、奥歯で噛み締め表情を殺し)ゲホッ!ゲッホツ!(泡の中から身を乗り出し、雷神剣を杖にして膝を地面につけず休む)ッシャアッ(普段の雄叫びは上げず、小さく掛け声をあげ、吹き飛んだニオの方へと閉じかけている視線を移す)……(感じるべきではない違和感があった、だがそれは『気のせい』だ、今のこいつは……)まだだろう、ニオ……ッ! 」









––––––––––『私のことは嫌いか?』友の問いかけが未だに、整頓化された書斎のように無駄が一つない静粛に居座るノイズとなって私から自由を奪う

『好き』か『嫌い』か。そのようなカテゴライズは利益を生まない。何故ならそれを好いたからとて、それを嫌悪したからとて浮世は常に一方通行に回転する歯車でしかなく主観性は無意味であり主観性から生み出された客観性は虚偽。偽りであれ真実であれただ実体のある現象を現象として受け止める以外に身を守る術などあるはずもないのだ

『ただそうね。あえて私のとりとめもない願望を口にすることが、許されるのであればともすれば–––––––





ニオ「(大太鼓を打ち鳴らしたような耳鳴りが響く大図書館。正門の前には土煙が山のように盛り上がっていた。その中央にポツリと人影として彼女は姿を現し)【風魔・シルフ】(緑色の蛍火が土煙の中央で瞬き、土煙を円形の旋風が薙ぎはらう。そこにはヴォイドの捨身の攻撃を受けたにもかかわらず、口から微量の鮮血を流す以外に外傷の見られないニオが佇んでいた) 」

ニオ「空っぽね。他者に理由を預ける以上アナタの剣も拳も私の理論を砕くには至らない。ともすれば所詮はアナタも戦争の味を舐めた程度の凡人と変わらない。––––––––時間の無駄ね。"まだ"ではないわ、"終わり"よ(鉄仮面のような表情は崩れない。閉ざした本のような心は開かない。書斎に座す魔女は"処理"するべくしてかつての魔女狩りと対峙した) 」

ヴォイド「硬ェのか、姿勢が悪かったのか……(最早、今はどうでもいい)……(服の上からも、身を削り去っていくような痛さを伴う旋風の溢れ風を感じ、水で濡れ切った衣服装飾品装備髪から水滴は流れ、足元に薄っぺらな池を作るも、池はすぐに風により連れ去られてしまう)心底驚いているぜ。俺が出会った魔女の中でもあんたは多属性に携わっていやがる、やってほしくねェ努力もあるもんだな 」

ニオ「そ、さぞかし雑魚を相手取ってきたようね。今がそのツケを払う時なんじゃない?(それぞれ青白色、緑白色の二つの水晶を取り出すが、それに亀裂が入り砂に帰るのを目の当たりにし眉間にシワが寄る)(石を二つ削らせるとはね……見誤ったのはお互い様……いや、こちらが侮ったか)––– まっ、お陰でこうして厄介な魔女が生き残ったわけだけど(属性決起は展開せず、BOOK OF COSMOSを開き天へかざす) 」



ゴ ォ ン ッ ……(部屋という一つの箱が外的要因で揺さぶられたかのような地鳴りと振動が響く)ギギギ…… フ ッ  (そして、チェック柄の床のマス目の一部が消失し––––) オ ォ ッ (ブロック型に切り抜かれたマス目が、十字形に連なってヴォイドの頭上に飛来しようとしていた) 」


ヴォイド「結構なことだ。魔力技術の高低差なんざ関係ねェ、俺は魔女を相手に生き残ってきた人間だ(スパークのない雷神剣を担ぎ、剣先を天へと掲げる)(玄界大法院第一区外郭執行機関)SMDD異端審問官『ウィラーム・V・ハント』(最小限の電力は、方陣の形を取り、降り注ぐ十字架に触れ防ぐと)これが俺の魔女(ミステリー)への推理だ、行くぞ『黙識の魔女』―― 」


ヅ ガ ガ ガ ガ ァ ァ ア ア ッ !(方陣に触れたブロックは轟々しく崩れ、砂煙が舞う)


ニオ「(毅然と佇み崩れゆくブロックの破片の一片一片を見分け、切断された際の余波で長髪が靡く)いいわ。その解を示してみなさい、この方程式の前に子供じみた落書きを並べるようにね。 (広げたブックオブコスモスを目の前に浮遊させ虚無に座すかのごとく腰掛けた姿勢のままふわりと全身が宙に浮き)時象再演算。対象、【炎星晶・トパーズ】。リロード<再演算> 」


フ ォン ッ (瞬きする間もなく赤色の魔法陣が浮遊する彼女の直下にある床と、その横一列に並ぶ床のマス目全てに出現。複数の魔方陣、そこから生成される炎の衛星。それらの不尽が揃う刹那––––)


┣¨ゴォ ズァォッ!!!!(魔方陣が設置されたマス目の半数が消失し、ヴォイドを囲む四方八方に配置。残る半数は前方に列を構える。そしてそれぞれ配置されたマス目の上に浮遊する炎の衛星全てが、火炎弾をヴォイドへ向け照射した)


ヴォイド「『風は風に』(前方を横薙ぎ、等身大小竜巻を生成すると)フ ォ ンッ!(竜巻に自らを投じ、隼のような速度で宙へと放り出される)チャキッ……(トンネル天井に描かれた絵画を背景に、ニオへと照準を定め)『雪は雪に』ッッ!!(ニオの愛読書による能力で落下する羽目になる物体よりも、遥かに上回る速度でニオ目掛け急降下しつつ剣を突き出す) 」

ニオ「 【B2】へ––––––(ヴォイドの姿を確認するまでもなく接近戦を持ちかけると読みタブレットをタップするかのような動作でページを指で軽く突き) フ ッ  (先ほど配置した火種の位置と自身の位置を入れ替え、ニオはヴォイドの背後へ、火種(炎星晶)はヴォイドの目の前へ移動し)自壊せよ<クラック>(パチンと指を鳴らす) 」


チュ┣¨┣¨┣¨┣¨ドドドドドド!!!!!(ニオと入れ替わった炎星晶が自爆、それに連鎖するかのようにヴォイドを取り囲んでいた炎星晶の配置されていたマス目が一斉に爆発しヴォイドを火炎のベールが包む)


ヴォイド「――ッ!ヴォオオオオオオオオッ!!(爆発に飲まれ、その姿は爆炎に消える) 」


ボオオオォォォォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ  ォ …… (やがて爆炎は収まり、静かに鎮火していくと) 」


ヴォイド「  バ  ッ   ! (黒き硝煙が完全に消え去る前に、己自身が槍が如く姿を勢いよく現し剣を光らせ)ダダダダダッ!!(火傷による痛みを完全に無視し、ニオへと再び一直線に駆け抜け至ってシンプルな牙突を繰り出す) 」

ニオ「––––––学習しないわね(セリフと言い終える頃にはすでにBOOK OF COSMOSの紙面を軽く叩き、今度はヴォイドが切り崩したブロックの断片と位置を入れ替えヴォイドと10mの間合いを開けた位置へ移動し)ならば理解すら必要としないなら闘争も意味はなし。そもそも–––––アナタは何と戦っているの?(無表情を貫いたまま右手の五指の先端に蛍火のように泡光を灯し、【口元に掌をかざしてから】右腕を真一文字に振り払う) 」


ザウッ ズァオ!! ズァァァァ––––– ッ!!!!(五つの光弾が曲線の尾を引いてニオの前方へ。それぞれが五つの光弾に分離、そして再び分離。ヴォイドへ届くまでの過程で鼠算式に増殖した光弾の雨が弓兵部隊の放つ火矢の弾幕が如く降り注ぐ) 」


ヴォイド「――(表情はピクリとも変わらない、若干痛みに耐えようとする強がりが変わらず合間見えるだけだが)――(『其処』に移動したニオに対して、光弾の隙間からその瞳は確かに笑っていた)雪は雪にッ!(その場で低空ジャンプ、即座に急降下すると、床のブロックを叩き上げ、障壁を築き雨を防ぐ) 」


ビ     ッ   ビ  リ   ッッ ビ リ リ ビリリリビビビヴィヴィヴィヴィヴィヴァヴァヴァヴァヴァヴヴヴヴヴァァァ!!!(ニオの悪元のブロックの亡骸の隙間から、僅かな光が膨張し始め軈て肥大化し、空間ごと焼こうとするスパークが発生)


ニオ「(空間全体を対象に……まあ当然そうなるわね)(依然として表情は崩さず肥大化していくスパークを見上げながら手元に石を転がし)甘いわね。仮にもあの戦争でヒトを……魔女すらも敵に回し生き延びた私が、今ここにあるという事実が吉運の賜物だったとでも?【雷星晶・ヘカタイト】(それを腕を払うように振り抜いて前方へ投擲。すると5m先で黒く瞬き)ジジ……ジジジジ––––––– 」


ビビビビ ビチ バリ ビビビイ……ッ!!(青い電流を纏う黒球が、雷雲を球体に固めたかのようなそれが拡散した伝習を吸収したかのように肥大化し、ニオに降りかかるはずの攻撃すらも吸収して、電流の塊となり出力を増していく) 」


ニオ「–––––ウィラーム・V・ハント。貴様の剣が神という神秘を笑うならば、私は神も、神という偶像を生み出した人間も!自らの創造物を滅ぼし、滅ぼされるその矛盾を!全てを笑ってやろうッ!!(黒球が磁石になったかのように砂塵が、大気が、電流が飲み込まれていく。その光源に照らされ、髪をなびかせながら彼女は表情を歓喜にも憤怒にも歪めることなく高らかに宣言してみせる) 」

ヴォイド「ガラガラッ……(ボロボロニなり、穴だらけになった障壁を自ら押して崩し、白い光で瞳の色を変えて行く)神を、人を、その心を蔑ろにするんじゃねェ。その矛盾こそが愛の形容だ(受け止めてやると、受け切ってやると、覚悟とは程遠い許容を基とした心情を構え、剣を掲げる) 」

ニオ「ならば愛を抱いて滅びろ。さもなくば救われるべきだった……彼女は––––(ただの一つも背負えそうにないくせに、全てを背負おうとするあの小さな背中は)救われるべきだった!!お前の死を、『そのようなものは存在しない』という照明にしてやる!!–––【大電塔 アブ・シンベル!!!!】––– 」


【 BOOK OF COSMOS】を天上へ掲げる。それに呼応し、天上のシャンデリアと巨大な雷の塊が入れ替わり、照明にはあまりにも強い光源が【太陽】が如く鎮座し、その直下に瓦礫が磁力で渦を巻き、さながら塔のように連なる。頂点に君臨するは神も人もあざ笑う純粋な力の具現、雷で形成された新たな神話たり得る太陽であった

–––––– ズ   ォ    ビ ィ ッ !!!!  (光源の瞬きが最大に達した刹那、雷で形成された太陽は雷という次元から逸脱した直線系の光線を、横一文字の焼き跡を残すように左から右へ放った) 」

ヴォイド「――(その膨張した、最も身近に存在した太陽が放った光に) ヅッ (剣の腹を当てると) 」


ビッギィィンッッ!!(鉄が当たる、光が反射する、そういった類の音ではなく、言葉にすれば、ゲージが溜まりきった合図が雷塊が唸らせる雷鳴よりも響音する) 」


ヴォイド「ジリジリ……(膨大な神秘性を受けきったことにより、腕は痺れカタカタと剣を震わすが、雷神剣の鳴き声が戻る)ヴァリリ……ヴァリ…… ……お前の生で、彼女を導くべきだ(コアの光る雷神剣を、一振りし、虚勢ではあるが太陽を受けきった証をニオへと強調する) 」

ニオ「––––––(【大電塔 アブ・シンベル】は雷を放出しきり、消し済みとなった中核であった宝石が砂塵となって降り注ぐ。地表を焼き尽くす光線を前にし耐え切ったヴォイドを前に開いた口が塞がらない)–––––––(意志の力が、データを狂わせるおいうことは【彼女】を通して知っていた。だがしかし、目の前にいる、キャロルのことなどろくに対話もしたことのない部外者がその力を発揮した事実が彼女の理論に綻びを走らせた) 」

ヴォイド「ヴァリリリ、、、ヴァリリ、、、………(雷神剣のスパークは軈て静止、コアも光らず、剣と化す)……(数多の宝石が消し炭になったのを直視した)あと在るのは、その本と赤宝石だけだ、ニオ(諭すような台詞を、似合わず吐き捨て、抉れた床の上にバランス悪くたち尽くしその距離からニオを凝視) 」

ニオ「––––(思考が今までにないほど乱れる最中、ヴォイドのいう赤宝玉を見やる。先の高威力の魔法を放った影響でその全てが光を失い宝玉の全てを破られたこと認識するが)––––それが何?あなたの魔力を利用し返す大魔法、宝石を利用し少量の魔力消費で済む宝石魔術。それらを失っただけ、私が【魔女】であることに変わりはなく、今のあなたを葬るなど造作もない。(再び、五指に光を灯し身構える。攻撃の予備動作に入る直前【手を口元に】当て、余った方の左手に握られた何かが光を発し、一瞬の隙が生じた) 」

ヴォイド「パァンッ!(その隙を逃さず、かといって大振りな技を振るう訳ではなく、牽制程度の雷弾をニオへと放ち)カチリッ……(鞘を背中ではなく、腰に装着させ、剣を鞘に収め柄に手を添える) 」

ニオ「ッ!!(すかさず腕を裏拳のように振り抜き指先に添えた光弾を放って雷弾を相殺しつつバックステップを踏み間合いを取る)ゴボ…ッ かふッ…ァ"…ッッ(しかし直後、着地もままならず片膝をつき口元に手を当て咳き込み首を垂れる。その直下には血だまりが赤を床に塗り)ゲホッ!!こ…… こ"ん"な"……ッ!こんなことで……ッツ 」

ヴォイド「我慢比べ、意地の張り合い。それがここまでの持久戦を生み出した(ニオの目の雨、間合いは既に入っており、体勢は正しく『居合』)少なからず俺は、アンタを心で理解した 」

ヴォイド「ダンッ(右足を前に、重心を置き、左足をあげて一歩大きく進み)ヴォンッ!! 」


―――愛は愛に―――


ヴォイド「(『鞘』ごと振り切りながら、ニオを通り過ぎ樣に斬り刻む)アンタの、心をな 」

ニオ「ゲホツ!! ヒュ…コヒュ……(呼吸が…指先から感覚が抜け……魔力切れ…嘘だ、こんなはずじゃ……こんなことで……回復、回復、いや防御を–––––)フォンッ––––(ふざけないで)–––––(救われないといけないのよ)–––––– ド ッ (あの娘は––––救われないといけないのよ––––––) 」

ドッ……バラバラバラバr……(ニオの殻がクスれると同時にBOOK OF COSMOSもまた地に果てる。開かれたページからは学者がさじを投げたかのように術式が施されたページが巻い、方程式にの崩壊を意味した)

ニオ「    –––––––……(意識は飛んではいない。ヴォイドのだめ押しを食らう以前に【攻撃と同時に行っていた回復】を阻害された時点で肉体に脆い彼女には限界がきているはずだった)ゴボッ……ヒュ…コヒュッ……ヒュー…!!(地に伏せ頭髪を床に広げながらも、手を地に突き立て上体を持ち上げる)ヒュ……ヒュー……ツ(そこにあるのは冷静沈着、冷淡に鼻で笑う面影などない、歯を食いしばり口内に広がる鉄の味と悔恨を噛み締めながらも必死に一矢報いようとする悪魔の【友】姿があった) 」

ヴォイド「……(鞘を腰に装着し、先ほどまで力んでいた全身の力は緩まる)……声は出ねぇだろうからそれ相応の返事でいい(ニオに寄り添う事もなく、立ち尽くし、立ち上がろうとする者の姿を見下ろす)俺の勘違いが、あんたにとっては邪魔なんだろうな。だが俺の目的はあの少女を救う事だ。お前はどうだ? 」

ニオ「それが……"あの子"を救うという事が"どちらも救わない"……ッ!救うことはできない!(地に知多腕を床に叩きつけ向かう先の無い憤りを吐瀉した)キャロルを救えばあの子自身が絶望するのよッ!私も、ジゼルも……何よりあの娘が!リズが救われない!!誰も救われることは無い! 」

ニオ「–––––あの子は……リズあの小さな体で何もかもかかえこんできた、己の何もかもかなぐり捨ててtきた!!父親さえも、僅かなりともそこに思い出のあった部下さえも……ただ救いたかっただけ、笑って欲しかったというだけでッ!! そんな【愛】があの子を滅ぼすなんてあっていいはずがない!!!! 」

ニオ「キャロルを甘やかして……ジゼルを困らして……シェンを振り回し、クイントをからかい、私に無理難題を押し付けて……そんな当たり前の日常が、いつまでも続かないといけないのよッ!!!!!(がれきが散乱し、焼け跡がくすぶる図書館に吐血混じりの嗚咽が旋律する。ようやく立ち上がった彼女は回復に回すべき微量な魔力を手に込め始め、火炎魔法を無言詠唱するも虚しく黒煙が上がるのみ)そのためには、あなたでは…あなた程度にでは何もできはしない。英雄でなければならない、非常でなくてはならない、あの子達を取り囲む運命を、私たちにでさえ出来なかった奇跡を起こせなくてはならない!! 」

ヴォイド「……確かに俺が英雄として赴くのもお門違いだ。だからといって俺は非情にもなれねェ。状況は最悪だな、だったら―― 」

ヴォイド「お前達の信じる『奇跡』を俺が起こす(気休めだとか、嘘偽りだとか、負を連想させる要素のない、曇りなき精神を言葉に紡ぎ、血塗れの顔に光が宿る)生ある限り足掻いてこそ人間だ。当たり前を続けたいと思うなら、精々俺が真の意味合いで”救った”後に大いに悩みやがれ。お涙頂戴のストーリーなんざもうウンザリなんだよ 」

ニオ「––––––(その光の奥に、"今は亡き""友"の面影を垣間見たのか、瞳に一瞬光が灯り)……はっ(それを、そして己をあざ笑うように笑みをこぼし)簡単に言ってくれる。私程度に手こずる魔女狩り風情が……そんなことでは……あの子には…届かな–––––– 」

ヴォイド「勝手に奇跡を起こす。勝手に約束させてもらう……勝手に俺が保証するぜ、キャロルは救ってみせるってな、安心して其処で寝てろ、ニオ(意識があるかどうかはわからない彼女に言葉を投げ、血の道を築きながら、その身を大扉へと向かわせる)






『なあニオ、私のことは好きか?』 」


『今日こそ聞かせてもらおう、ズバリニオ!お前は私のことが好きか!』


『おはようニオ。起き抜けに聞かせてくれないか……––––すき?』


『ふははは!よし!ともずれば決まりだ、私が勝ったなら今日こそお前の心を聞こう!』


ニオ「–––––––––––ほんと、バカばかりね…… 」


『勝負するというなら教えてあげないことはないけど……–––––"身体を理由に"手を抜いたら、【絶交】だから』


ニオ「––––––––––(まどろみの中に意識が溶けていく。瞼が鉛になったかのように重く力尽きていく)


『どうでもいい奴と絶交する馬鹿なんてどこにいるのよ』















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最終更新:2020年09月27日 22:53