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ムナゴ=サヤナ

性別

女性

表の職業

脱走兵

エクスキャリバー

特殊な銃弾の発砲と同時に非常に強力な光線を発し広範囲を薙ぎ払う。能力の発動媒体となる銃弾はあと一発しかない。(プロローグで一発撃っているが、それを合わせても元々世界に二発しかない)

能力原理

故の知れぬ、既存の規格に当てはまらない口径の弾丸。すなわちEX-caliberの発砲を通じて絶大な威力を発揮する。
大義も誇りも意味もない戦場の中で、造られた兵士は意味のない生産と消費の中で生まれたそれこそが戦場で生まれて死んでいった姉妹たちの生きた意味だと信じた。
実のところ、件の弾丸は単なる大量生産の中から出てきたエラー品である。単なるエラー品ではあるがごく希少な品であることは事実。
別に撃つときに叫ぶ必要は無いが、気合が入ると声が大きくなってしまう。

参戦動機

エクスキャリバーを使って勝利することでその価値、ひいてはそれを生み出すに至った戦争とその中で死んでいった姉妹たちの犠牲に意味があったのだと証明するため。

会員との契約内容

魔人闘技会での戦いで、能力を多くの人に披露する機会を得る。
また、勝利した際には残されたクローン兵士たちに大規模な人道支援が行われるほか、プラント跡に戦没者の慰霊碑が建てられることになっている。

キャラクター説明

自動プラントで製造されたクローン兵士。稼働開始から2年。肉体年齢は19歳相当。
ムナゴ=サヤナは愛称。本名…というか製造番号はE-675387。
女性型。緑灰色の短髪。内向的で口数が少ないが、喜怒哀楽が表情に出やすい性質ゆえに傍から見ると出自の割には感情的な印象を受ける。
生まれながらに一通りの戦闘技術は持っている。身体能力も魔人相当にある。

その関心事は専ら「自分たちは何のために造られたのか」にある。多くの人間にとっては果てしなく難しい命題であるが、兵器として製造された彼女とその姉妹たちは、生まれながらにその答えを持っている『はずだった』。
自分たちの存在に意味を求める指向性がその出自によるものであるのかは不明。

元々使っていたアサルトライフルが壊れて撃てなくなったのをいいことに、コロッセオに持ち込んでいる。実際撃てないが、ハッタリにはなる。銃剣が取り付けられているので実質的には槍のようなもの(立会人は了承済み)。他にもルールの範疇で持ち込める軍需品をいくらか持参している。
  • 規格外口径弾専用銃
手作り感溢れる単発拳銃。銃身側面に『EX-CALIBER』と刻まれている。魔人能力の行使に必要。弾丸ともども常に肌身離さず持っている。引き金が大変硬く、放つには渾身の力を籠めねばならない。弾は一発しかない。

とある亡国の戦場跡ではクローン兵士を作り出すプラントが今もなおいくつも稼働しており、かつてそこに存在した敵対勢力の敵対関係そのままにとうに終わった戦争の延長戦を繰り広げている。
もはや命令を撤回できる人間もいないまま、造られたクローン兵士たちは自分たちの戦いの無意味を知りながらも戦い、死んでいく。

E-675387は大量生産のクローン兵士たちの中に生まれたエラー個体。
いくつかのエラーと偶然が重なった結果、軍を離反(とはいってもすでに上層部は崩壊しており、実質的にはプラントで稼働を続けていた自動AIに反逆した形)しプラントを破壊。ずっと続いていた勝者無き戦いを終わらせるに至った。
そうして彼女の戦いは終わった。
あるいは彼女が生まれる前にとうに終わっていた。

その勝者無き戦いに意味はあったのか?
その戦場で生まれ、そして死んでいった命たちには意味があったのか?

無かったとは言わせない。

彼女の手の中には、長く続いた戦いの中で生まれた、一発の弾丸がある。
沢山作られたから、この一発の弾丸がある。
延々生まれて延々死んでいったから、彼女が生まれた。

――闘技場よ、我らが戦場の生んだ一発、屍の山のうちに生じた輝きを見よ。

プロローグSS

某国の内戦が終結してから、もうすぐ7年になる。
E-675387が製造されてから、もうすぐ2年である。

「…………………」

E-675387は息を潜めてうずくまり、がぢゃん、がぢゃん、という多脚戦車の足音を聞いていた。
とうにE-675387と同じクローン兵士の姉妹たちの他に人間がいなくなって久しい、廃墟の戦場でのことである。

「…………………」

がぢゃん、がぢゃん…という多脚戦車の足音が遠ざかって行くのを、E-675387はじっと動かないまま聞いていた。
この戦場を徘徊する多脚戦車は歩兵の身ではとても勝ち目のない相手ではあるが、じっとしていればやり過ごすことができることを、E-675387は知っていた。

「…………………」

多脚戦車をやり過ごしたE-675387は、ゆっくりと身を起こした。
その視線の先では、L-173446がクズ肉になって死んでいた。多脚戦車の自動機銃で滅茶苦茶に撃たれた結果であった。
L-173446は、E-675387の姉妹分であった。「サヤナ」「シシム」と互いに渾名をつけて呼び合う程度には、仲が良かった。
この戦場で製造されるクローン兵士たちの脳髄にはチップが埋め込まれており、命令に逆らうことは原則できない。E-675387とL-173446のチップには製造段階での不具合があったため、命令を受信することは今日までなかったのだが。
偶然今日はL-173446の脳内のチップが正常に動作したため、L-173446は多脚戦車への攻撃を行い、そして当然に死んだ。千切れた腕が引き金を引かれることのなかった対戦車ロケットランチャーに引っかかっていた。

「………………ばかやろぉ…」

E-675387は、L-173446の亡骸から遺品を回収した。
ほとんどの遺品は大口径の機銃に撃たれたことで原型を留めていなかったが、僅かに残っているものがあった。
防水紙に包まれた銃弾が二発。拳銃が一丁。
L-173446には、蒐集癖があった。「生きる意味」というものがおよそ見当たらない戦場で、そうした趣味を生きる理由に置いているような、そんな人物だった。
二発の銃弾は、この戦場で出回っている銃では発砲することのできない、規格から外れた口径のエラー品である。L-173446が探し集めた、無意味ながらも希少な品であった。
拳銃は、ありあわせの資材でL-173446が自作したものである。銃身には『EX-CALIBER』と刻まれていた。

「…………………」

弾丸と拳銃とロケットランチャーを回収すると、E-675387は歩き始めた。
戦場の端の方を迂回すれば、いくらか安全に移動することができることを知っていた。それでもL-173446はあっさりと死んでしまったが。

地平線近くに、僅かに壁が見える。
主を無くした暴走自動兵器が迷い出ないようにするための封鎖壁である。
E-675387とL-173446は一度その向こうに行けないか試したことがあったが、暴走兵器と誤認され―誤認ではなかったかもしれない―さんざんに撃たれながら戦場に逃げ帰ったことがある。
この戦場にいる兵士にも、兵器にも、すでに主はない。高度なオートメーション技術によって実現した『全自動戦争』に停止命令を下せるものがいなくなった結果がE-675387の誕生であり、L-173446の死であり、その他諸々の兵器たちの製造と消費であった。

「…………………」

E-675387は、目的地に辿り着いた。無骨なつくりの、大きな建物である。
この戦場で消費され続ける兵器たちを生産し続ける、自動プラントであった。E-675387が製造された場所でもある。

プラントの門前には、E-675387とよく似た顔の門番たちが数人いた。
ドブのように澱んだ瞳の、あまりにも士気の低い軍勢であった。彼女たちはプラント奥に収められた頭の固い機械と違って自分たちの所業の不毛さをよくわかっている。E-675387との違いは、命令に逆らうことができないという点だけだ。
そんな門番たちは、友軍であるE-675387をあっさりと通した。仕様上クローン兵士の裏切りは想定されておらず、当然門番たちもE-675387を止めるような命令は受けていなかった。

「…………………」

E-675387は、あっさりとプラントの最奥にたどり着いた。
巨大なモノリスのような機械が、目の前にある。このプラントで兵器を製造し、またクローン兵士たちに命令を送信し、全自動で戦争を継続する高性能な―ある意味では兵士たちよりもずっと物分かりの悪い―統括AIだ。
とっくに当初の目的が無くなっていることなど構わず、統括AIは戦争を継続し、兵士たちを生み出し、また殺していた。

「…………………」

E-675387は、大きく息を吸い込んで。

「くたばれ馬鹿やろおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

叫びとともに対戦車ロケットランチャーを統括AIの筐体にぶち込んだ。爆炎と轟音が撒き散らされる。

「みんなわかってるんだよ!とっくに戦争が終わって、私達だけが戦いを続けてるってことは!」

手榴弾のピンをいくつもまとめて引き抜き投げつける。再びの爆炎と轟音。

「何のために私たちを作ったんだ!何のために戦いを続けてるんだ!何のためにシシムは死んだんだあああああ!!!」

ずっと肩から提げていたアサルトライフルの銃口を向けて、フルオートで引き金を絞る。
弾丸は、筐体の表面で虚しく弾かれた。元よりこの場に統括AIに傷をつけ得るような火器の持ち込みは認められていない。E-675387があっさりとここに立ち入れたことそのものが、彼女には何もできないということの証左なのだ。

「畜生!ちくしょう!ちくしょおおおおおおおお!!!」

弾切れしたアサルトライフルに銃剣を取り付けて、全速力で突っ込む。
バギン、と銃剣がへし折れて、勢い余って硬い金属の板に打ち付けた額から流血しただけだった。

「うぅぅぅぅううぅぅぅぅううぅぅう………」
無力だった。
E-675387は一介の歩兵で。
生まれながらに不具合を抱えた不良品で。
作られた時すでに作られた意味はなくて。
僅かにいた仲間を守ることもできなくて。
憎い相手に傷をつけることもできなくて。
嘆きを聞いてくれる相手すらいないのだ。

辛かった。
惨めだった。
悲しかった。
虚しかった。

何よりも、無意味だった。

『私たちは何のために造られたのか?』
兵器として作られた彼女には、生まれながらにその答えがあるはずだった。
その答えがよいものであるか否かはさておき、何らかの意味は本来あってしかるべきだったのだ。
その「何のため」がとうに喪われた戦場に生を受けたのでなければ。

ぞろぞろと、門番をしていたクローン兵士たちが部屋に入ってきた。
部屋からE-675387をつまみ出すように命令を受けたのだろうが、そこはかとなく同情的な視線ではある。彼女たちもE-675387と殆ど同じ立場だ。

死のう。生きていても辛いだけで無意味だ。
そう思ったE-675387は銃剣を取り外して自分の首を突こうとしたが、生憎と折れている。
ライフルも弾切れ…以前に銃剣突撃の衝撃で機関部が壊れていた。安物である。

死ぬこともままならない。
絶望に打ちひしがれる中で、手に触れるものがあった。
一丁の、素人の手作りの拳銃である。『EX-CALIBER』と、あまりにも大仰で格好つけた銘が刻まれている。
そして、二発の弾丸である。L-173446が、その恵まれていたとはいいがたい生涯で戦場を探し回って大事に持っていた品である。
―まるで、それが『生きた意味』であるかのようであった。

震える手で、銃弾を拳銃に込める。
そして、前に向ける。

それが、L-173446の生きた意味であるならば。
それを、E-675387が生きる意味にすることが許されるならば。
この無意味な戦場と、無意味な量産と、無意味な消費と、無意味な誕生と、無意味な死が―無意味ではないと叫ぶのならば。

それには価値があるはずだ。
そこに輝きがあるはずだ。

魔人能力―覚醒。

「「「「!!!!」」」」

統括AIが何かを察したか、周囲の兵士たちが銃を向ける。
だが遅すぎる。

渾身の力で、引き金を引く。未知の力が、一発の銃弾から溢れ出す。
「エクス…」
叫ぶ。
私たちの生きた意味は、此処にあると。
無意味なことなど、なにもないと。
その輝きを、存在意義を、いま世界に示すのだと。
「キャリバー!!!」

銃口から迸った金色の光は、絶大な灼熱と圧力を以て統括AIの筐体を一瞬で蒸発させ、余波で大地に赤熱した亀裂を刻み付けた。
この日、戦争はもう一度終わった。


……
………

某国の内戦が終結してから、7年になった。
E-675387が製造されてから、2年が過ぎた。
自動化された戦争が止まり、一か月が経とうとしていた。

E-675387が統括AIを破壊したことで戦闘は止まった。
封鎖も近いうちに解かれることだろう。

『や。闘士としてのオファー、考えてもらえたかな?』
「はい。一晩考えましたが、お受けします」
瓦礫に腰かけたE-675387の前には、ラジオめいた通信機器が置かれている。
通信の向こう側にいるのは、魔人闘技会の会員である。どのような伝手を使ってか統括AIを破壊したのがE-675387であることを突き止め、闘士として魔人闘技会に出場しないかと誘いをかけたのだ。
これはE-675387にとっても渡りに船であった。彼女の手元にある一発の弾丸の威力は、それそのものが彼女自身と、それをはぐくんだ戦場全ての存在した意義である。彼女はそう信じている。
であれば、それは大いに知らしめられなければならない。
大舞台で「エクスキャリバー」を用い、勝利することでその価値を世界に証明すること。それが今の彼女の生きる意味だ。

『そうかい。報酬は何を望む?勝利の暁には、いろいろ便宜を図れるよ』
「………では」

E-675387は、ちらりと横を見た。
そこには、命令してくる上役を失って途方に暮れたクローン兵士たちが座り込んでいる。突然の自由に困惑しているのだ。
「生き延びた姉妹たちが、生きる意味を見つけられるように」
『オーケー。一般社会での居場所を見つけられるように配慮しよう』
「それと」
『それと?』

E-675387は、懐の拳銃を押さえた。
「死んでいった姉妹たちが…その犠牲を忘れられることのないように」
『オーケー。君が統括AIを消し飛ばした跡に、慰霊碑を建てるとしよう』
「ありがとうございます」
『君が勝ったらだ。それと』

通信の向こうの会員は、軽い調子で言った。

『君の名前は?』
「E-67…」
言いかけて、途中で止める。
自分は自分で新しく生きる意味を見つけたのだ。もう「造られた意味」に従う兵器ではないのだから人間としての名前が必要だろう。

「ムナゴ=サヤナです」
『オーケー。闘士サヤナ、魔人闘技会は君を歓迎しよう。すぐに迎えが来る』

ムナゴ=サヤナは歩きだす。
示しに行こう。自分の生きる意味を。姉妹たちが生き、死んでいった意味を。

EX-caliberは戦場のどん底で生まれた輝きなれば。
――闘技場よ、我らが戦場の生んだ一発、屍の山のうちに生じた輝きを見よ。
最終更新:2026年04月30日 21:23