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新海(しんかい) 幸子(さちこ)

性別

女性

表の職業

母親・弁当屋

母の愛(最強の魔法)

対象の母親になる。

母親になった幸子はその瞬間に対象の能力をコピーし、対象よりも高い水準で使えるようになる。
特殊能力だけでなく武術などの身体特技もコピーする。

対象と幸子の記憶が書き換えられ、対象の習得している特殊能力およびその扱い、武術などの身体特技のすべては幸子から教わったものとなる。

能力および技能水準は幸子がコピー時の対象により決定される。
コピー後に対象が成長しても、付随して母親は成長しない。

一度母親になったらやめることはできない。
対象は複数同時になることはない。必ず一人息子か一人娘である。

動物、人工物や無生物、その他生命体以外も対象可能。
その場合は幸子が何らかの手段で教育できると確信しなくてはならない。

対象が無性キャラの場合は息子か娘のような存在になる。

息子や娘は外部からの強烈な刺激、矛盾がなければ違和感に気づくことすらできない。

幸子の能力で変化するのは、幸子の記憶と身体、対象の記憶のみ。
戸籍など外部の情報は一切変化しない。

母となるときに幸子と対象の記憶はすべて書き換えられるが、幸子の最初の一人息子、智則の記憶だけは必ず幸子の中に残る。

対象を反省すると書き換える前の記憶が全て戻ってきて、徐々に肉体も普通の母親に戻る。

母親になる条件。
1つ、幸子に息子や娘がいないこと。死亡している、または死亡したと幸子が思い込んでいる必要がある。

2つ、最低限、対象の姿を認識する必要がある。
顔や名前、全身を認識する必要はなく、ヒトがいると認識したら母親になることが可能。
これは写真や動画でも可能。

3つ、対象がヒト以外の動物または無生物の場合は、対象を幸子が何らかの手段で教育できると確信する必要がある。
言語が通じずとも、恐怖による教育などができると判断すれば能力使用が可能となる。
多くの動物の場合、恐怖による教育が可能と幸子は思っているため姿を認識するだけで母親になれる。

能力原理

対象(息子や娘となった人物)は幸子と共に記憶が書き換えられ、本人達にとっては親子関係となる。

対象の習得している特殊能力およびその扱い、武術などの身体特技のすべては幸子から教わったものとなる。
幸子が教育したのだから、幸子も同じ能力を使えるのである。
教育した記憶に辻褄が合うよう、幸子の肉体は強化される。

参戦動機

強き息子、あるいは娘を探している。

会員との契約内容

試合で勝利した息子や娘を生かして、自分の子とする。
試合に勝利したとき、これから幸子が能力で息子や娘を作るたびに、会員が半永久的に戸籍などの身分関係を証明する記録を用意、または抹消する。

キャラクター説明

一度母親になればやめることはできない。
新海幸子もそうだった。

45歳。近所から優しい母親と評判だった。

彼女の人生は一人息子である新海智則(しんかいとものり)を自殺したときから、おかしくなった。

シングルマザーである彼女が智則を激務の傍ら、良き息子であろうと厳しく育てた結果。中学校でいじめられていることにも気づかず、逃げ場を失った息子は自殺。

精神を病んだ彼女は、道行く人間を息子や娘と勘違いするようになる。
能力が発現したのはこの時である。
母の愛により、赤の他人が息子や娘になった。

最初は他人の息子や娘を自身の子と言うため近隣住民から通報されたりしたが、今では孤独な大人を自身の子と言うことで回避している。

母親として安定し始めた今では、過去の事件を反省して強き息子や娘を求めている。

今まで反省した回数は62回。

62回息子や娘を反省した。

性格は基本的に温和だが、うまくいかないとヒステリックなる。

強き息子や娘の母親になるため、息子や娘を探す。

プロローグSS

 母の腹の中をひとつの世界と見るならば、もともと皆、世界は違っていた。

 俺は新海アツシ。
 高校二年生。
 俺は今、電車の中で寿司詰めになって立っている。
 決まったレールを走っていた。

 窓の外を見ると、名前の知らない鳥の集団がV字になって飛んでいる。

「あ、ごめんなさい」

 目の前の女子高生に足を踏まれ、謝られる。
 制服を見るとどうやら同じ学校らしい。

 汗ばんだ肌が目に入る。
 最近まで寒かったのに、五月になって思い出すように暑くなった。
 車内でもエアコンが効いてない。
 衣替えが間に合わず、まだ冬服の人だって居る。

 それでも人は社会というレールに外れないよう、身を寄せ合うようにして集まる。

「良いよ。全然」

「きゃっ」

 大きく揺れた。
 女子高生が倒れ掛かってくる。
 彼女はすぐ遠慮がちに離れた。

「ごめんなさい、ごめんなさい……あっ」

 彼女は俺の服を見て、同じ学校に通っているのだと察した。
 見上げて、俺の顔を見る。

「えっ……。す、すみません……」

 彼女は驚愕した。
 そして即座に狭いながら、精一杯の距離を取る。

 俺は背筋が冷える感覚に襲われた。

 俺の顔を見る奴は皆、そんな顔をする。

 三十代後半のおっさんの顔だからだ。
 工事現場で十年も働いているかのようなおっさん顔。

 そんな人物が学生服を着て、高校に通っているのだ。

 俺はこの老け顔が嫌だ。

 何故こんな顔なのだろう。
 父が余程老け顔だったのか。
 ひとり親の俺は父の顔を知らない。

 母親を恨む気にはなれないが、逃げた父には文句を言ってやりたい。


 …………
 ……


 電車を降りて、改札の前。

「お前、アツシじゃねえか……!?」

 男に声を掛けられた。
 三十代後半のガタイが良い男だった。
 人の良さそうな笑顔。

「すみません、どなたですか?」

「あ? いやいや、ふざけんなって。アツシ。オラだよ。剛田リュウキだよ」

 覚えのない人物だった。
 どうやら俺を誰かと間違えているらしい。
 俺は老け顔だから、このおっさんの知り合いに似ているのかもしれない。

「アツシ、お前学生服なんて着てどうしたんだよ。まだ傭兵稼業やってんのか。……それ潜入任務か。似合ってねえなァ~! アハハ!」

 リュウキと名乗った男は豪快に笑いだす。
 道行く人が何事かと見たが、すぐに興味をなくして改札を通り抜ける。

「今、道場やってんだ。ほら見てくれ」

 腕を回されて、道の端に寄る。

 スマホの写真を見せてきた。
 そこには道着を着たリュウキと子供達が映っていた。

「お前、結構強かったよな? まだ腕は衰えてねえだろ。相手の背後にワープする能力、あれ子供達に武術を教えるのに役に立つと思うんだ。よかったら先生やらねえか?」

 思わず彼の顔を見た。
 何故俺の能力を知っているのか。

「共闘した仲だろ?」

「え……?」

 リュウキはスマホを操作して写真を出す。
 彼と仲がよさそうに腕を組んでいる俺の姿があった。


 その日は授業に集中できなかった。


 …………
 ……



「ただいま」

 アパートの扉を開けて、誰もいない家に挨拶する。

 俺は何故彼のことを忘れたのだろうと考えていた。

 海外に出たことはない、はずだ。

 中学時代か、一年の修学旅行だったのだろうか。

 覚えていないのはおかしい。

 荷物を置いて中学の卒業アルバムを探した。
 どこにもなかった。

 うちの家は高校になってもスマホが禁止だから、写真を確認するならアルバムしかない。

 探している間に気づいた。
 中学時代の教科書もない。
 高校に通うとき引っ越したから、そこで処分したのだったか。

 それにしても、思い出になるものがまったくない。
 幼稚園で書いた絵。小学校で書いた親への手紙。

 家の何処を探しても見当たらなかった。

「ただいま~」

 母親が帰ってきた。
 手を洗う姿を見ながら俺は声を掛ける。

「母さん、アルバムってどこにやった?」

「アルバム? どうして必要なの?」

 母親は笑顔で俺に聞いてくる。

「いや、ちょっと振り返りたくてさ」

「……そう」

 蛇のような瞳が俺を射抜いた。
 今まで感じたこともない威圧に、身の毛がよだつ。

 中学時代、俺に武術を教えているときでもここまでの威圧感はなかった。

 母親は叫んだ。

「またなの……!? どうしてうまくいかないの!!」

「か、母さん」

「私はこんなに頑張ってるのにっ! 毎日毎日毎日我慢して、私やりたいこといっぱい我慢してるのっ! それなのに私を誰も感謝しないし、誰も褒めてくれない、みんなみんな私をおかしい人扱いして、私をなんだと思ってるの! 私の人生を何だと思ってるのっ!」

 ああ。始まった。

 こういうとき、なんて言ったらいいのかわからないから苦手だ。
 学校でも教えてくれない。
 誰が悪いのだろうか。
 俺か。いなくなった父か。職場か。社会か。

「そうね……そろそろ反省しなくちゃね」

「母さん?」

 いつもは小一時間続くのに、癇癪がすぐに終わった。

 だからだろうか。
 反省という言葉に、妙な違和感を持ったのは。

「ご飯すぐ作っちゃうから、部屋で待ってなさい。今日はアツシの大好きな骨付き肉よ」



 …………
 ……



 朦朧とする意識の中、俺は誰かに介抱されながら電車を降りる。
 ホームの電灯がチカチカと点滅している。

 肌寒い。
 波の音が聞こえる。

 ここは何処だ。

 俺は誰かに連れられて歩いている。

 視界がぐるぐると回って、頭がふらふらする。

 俺は酔っているのか?
 随分と眠たい。

 俺は何をされた?

 ざばんと、俺は水の中に投げ込まれた。

「あがばっ……!」

 しょっぱい。海水だ。冷たい。

 沈んでいる。
 反射的に水をかく。

 浮かばない。
 右足が引っ張られている。

 頭が冷えてきた。
 状況を理解し始める。

 誰かが俺を突き飛ばしたのだ。
 何か右足に錘が付けられている。

 まだ浅い。
 水面から相手の姿が辛うじて見える。
 俺の能力『残像』で、相手の背後にワープできればこの窮地から脱出できる。

 背後に立って拘束すれば、相手が誰かもわかるだろう。

 俺を突き飛した奴には、お灸をすえなくてはならない。

「残像」

 ぐにゃりと慣れた感覚。

 奴の背後に立ってすぐ、俺は腕で首を絞める。

「母さん……!? どうして」

「う、ぐぐ……」

 後ろから顔を見ると、相手は俺の母親だった。

 それでも腕を緩めない。

 彼女は俺を殺そうとした。

 この場は気絶させて、後で話を聞こう。

 そう決めた瞬間。
 彼女は消えた。

「なっ……!」

 腕で縛っていたのに、こつ然ときえた。
 一体何処へ。

「がっ……!」

 今度は俺が後ろから首を絞められた。

「忘れたのかしら。あなたに能力の使い方を教えたのは私よ~? お母さんだもの。息子のことは何でも知ってるの」

「ど、どう……して」

「残像は一度使えば、三十分は使えないのよね? わかるわ。私も同じ能力だもの」

 違う。
 俺が言いたいのは、どうして息子を殺そうとするのか。

「ダメよ~。男の子なんだから。強くなきゃ。反省しなくちゃいけないわ」

「が、が……」

 子供を優しく窘めるような声。

 けれど腕は固く、ビクともしない。

 走馬灯が頭を駆け巡る中、俺は理解した。

 母親に能力の使い方を教わったのは偽物の記憶だ。
 こいつは、俺の母親ではない。

 意識が薄れる。

 力が入らなくなってきた。

「あらあら~眠たくなってきたのね。おやすみなさい」

 最後に見たのは、愛しい子供を見る母親の顔だった。


 波の音。海の音。泡の音。
 遠くでレールを走る電車の音。


 寒い。
 冷たい。


 俺は独りだ。



 〇



「反省だわ」

 港を後にした幸子は苛立ちながらひとりごちる。

 今回の息子は一ヶ月しか持たなかったからだ。

 彼女は社会にきちんと出られる強い子を育てなければならないと思っている。

 幸子は確信していた。

 強くなければ、社会は生き残れない。

 過去を振り返るのは弱いからすることなのだ。

 強い子はいつだって未来を見ている。

 一番最初の息子、智則(とものり)は過去ばかりみる弱い子だから死んだ。

 強くなければいけない。

 幸い、人生はやり直しが出来る。
 何歳からでも。

 今回もしっかり反省して、次の息子か娘を探そう。

「あーあ。何処かに強い子はいないかしら」

 海沿いの壁。
 貼られたポスターが潮風にパタパタと揺れていた。

「魔人闘技会……?」

 ポスターの内容を読み、彼女は望外の喜びを感じた。

「あらまあ〜♪ あらあらあらあら〜♪」

 いるではないか。
 ここに。

 とっても強い子がいるに決まっている。
 教育しよう。私が教育するべきだ。

「うふふふふ♪」

 上機嫌になって飛び回る。

「あら?」

 ポケットに違和感。
 何かが入っている。
 跳んで初めて思い出した。

 夕方に食べた骨付きの鳥肉だった。

 最期、あの子に食べさせるためひとつ持ってきたのだが忘れていた。

「反省ね」

 肉を食べて、骨は海に捨てた。

 墓は建てなかった。


新海幸子 プロローグSS 終わり
最終更新:2026年04月30日 21:28